本隊に先立ち敵をあらかた全滅させた沖田と土方は、近藤をすっかり忘れたままターミナル内へ人質を救出せんと乗り込んでいた
「総悟。おまえに聞きたいことがある」
「?なんでさあ、土方さん」
走りながら土方のほうを向き、首をかしげるという器用なことを行う沖田。
「あのさ・・・後ろの、それ・・・」
「ああ、これですかい?真奧ですが」
・・・思わずくわえていた煙草を落とす。それにも構わず、土方は俊敏に沖田の背後にまわり、ズルズルと引きずられていた真奧を救出した。
「なぁにやってんだ総悟ぉぉ!!」
「なにって・・・覚悟見せろって言質取ったばかりでさぁ」
「そーゆーことじゃねーよ!!」
ぐったりして意識などとうにない。仕方なく真奧を肩に背負って走るが、なにぶん大の男であるからして、負担が大きい。弱音を吐くほどではないが、それでもこの後のことを考えると、不安がのこる。
「・・・つーかテメエのせいなんだから、俺が背負う必要はねえよな」
「土方さん、責任転嫁はいけませんぜ」
「だーからテメーのせいだっつってんだろ!!」
良くも悪くも、人のいい土方であった。
***
一時は混乱に見舞われた街であるが、しかし真選組、そして万事屋四人の奮闘によって、徐々に沈静化して、などいなかった。
「もう、なんなのコレ!?全然へりやしない!!」
「ウザッたいアル・・・あ、やべタマ切れそうネ」
どこから湧いて出てくるのか、斬っても斬っても新手の雑魚が立ちはだかる。いつまでたってもターミナルに近づけない状況に、誰もが苛立ちを感じていた。
「どうします、銀さん?」
「知るか、そんなもん・・・とにかく進むしか手がねーよ」
「でも、それじゃ・・・」
すぐにタイムオーバーになってしまう。既に戦闘開始してから十五分。体力云々よりも、目下それが一番の懸念であった。
「爆弾おとされたらおしまいネ・・・シッ!!」
「何か手はないかしら・・・ん?ねえ、銀時!!」
「あ?なんだ恵美」
「あれってさ・・・もしかして」
そういって恵美の指差した先にみえたのは、真選組部隊、そして
「あー・・・ゴリラだ」
「悪質ストーカーですね」
「毛むくじゃらゴリラGアル」
「・・・近藤さん、だよね」
あまりにひどい言いぐさに苦笑する恵美。ちなみになぜ知っていたかというと、ちょっとわけありなのだが、余談は許されない状況である。
「お、そこにいるのは・・・やっぱりお前らか、万事屋!!」
神楽が狙撃するよりもはやく、近藤が万事屋の存在に気付き、駆け寄ってくる。
「なんだよゴリラ、テメーとお友達になった覚えはねーぞ」
「そうだけどさ、って酷くない!?」
「あの、失礼ではありますけど、用件だけいって帰ってくれませんか?」
「視界から消えろ害虫ゴリラ」
「・・・泣いていい?」
割と本気でショックだったのか、ハンカチを探そうとポケットを漁りだす。ちょっと同情した恵美は、話を進めるために声をかける。
「えっと、真選組の近藤さんですよね?同じ戦場で戦っている者としてできれば情報をくれませんか?」
ある意味、ずうずうしい要求である。民間人がなに聞いているんだ、と拒絶されればそれまで。だが、見ている分では銀時たちと少なからず面識があるようなので、ある程度目処は立っていた。そのせいもあり、おもいきって飾らずにきいたのだが。
「あ、そうですか。えーと・・・」
「遊佐恵美です」
「そうですか!えー恵美さん、実はまだこちらとしてもなかなか敵陣地に突破できなくてですね 」
いやいや、あっさりすぎる。思わず呆気にとられてしまった。それは銀時も同じようで。
「おいおい、警察サマがそんなかんたんに情報開示していいのかよ?」
「ん?いや、この方、お前の仲間だろ?なら断る理由はない」
まあ。こんな豪胆な性格だからこそ、荒くれ者ぞろいの集団をまとめるに足りるのかもしれないが。
(ほんと、教会のお偉いさんに見せつけてやりたいわ)
過去の不満とともに、そんな感想を近藤に抱く恵美だった。
「そーいや、サドとマヨはどうしたアルか?」
「確かに、こんな状況だったら喜々として斬りこんでそうですが」
脳裏にサドのしたり顔と、マヨの瞳孔の開き切った目を浮かべながら近藤に問う。
「あー、そのな・・・うん。もう、フィーバーしちゃってね。ここにはいないんだー」
「へーそーなんだーあははー」
「あははー」
「・・・・」
「「「「はぁぁあああぁぁ!?」」」」
ここにはいない。つまり、このうざったい雑魚弾幕を難なくクリアし、ターミナル内部に入ったことに他ならない。こちらがヒイフウいいながら足止めされていた間に、先駆けとは。
「あの野郎、会ったら覚えとけよ・・・」
「ちょ、怖い!!こわいから!!」
銀時と神楽の驚きようは半端ではなく、もう一周まわって殺気を練り始めている。
「だって仕方ないじゃん、あの気迫見たら!二人とも突進して吹き飛ばしていってさ、って部下が、」
「それだ!!」
え?と怪訝そうに恵美を見つめる一同。当の恵美は、まるで試験終了ギリギリに解法を思いついた受験生よろしく、目をキラキラさせて、
「そうよ、邪魔ならふっ飛ばせばいいのよ!!ああ、なんでこんな簡単なことに気付かなかったのかしら?」
「あのー、恵美」
「そうと決まれば行くわよ 銀時!!」
ガシッと銀時の手首をつかむ。戸惑おうがどうしようが意に介さず、フゥと息を吐き、
「顕現せよ、魔を滅する光よ・・・!!」
刹那、恵美の全身が眩いばかりの光に包まれる。思わず敵も味方も戦いを中断し、目をつむる。
「・・・これが」
そうして集束した聖法気が、“破邪の鎧”や“聖剣・ベターハーフ”をかたちづくり、
髪が本来の、高貴に光る銀色へと変貌し。凛としたその姿、
「・・・勇者、エミリア・ユスティーナ、なのか」
「さあ、行くわよ!!全速力!!」
「すげぇ・・ってちょ、まてまてまてエミリアさーん!?ストォォップ!!」
もちろん聞き入れられることなく小脇に抱えられ、
ターミナルへと、規格外の速さで、光のごとく突進し、
「ああ、なんだ!?」
「てめぇ止まりやがれ!!とま・・・え?」
「おい・・・まて、くるなぁぁ!!」
たったの一閃。それだけで、
「天光駿靴!!!」
道は、開かれた。
***
そしてターミナル内部では。
「土方さん、監察によればそろそろ人質の場所だそうでさぁ」
「そうか・・・ん?なんで監察の奴ら、居場所が分かったんだ?」
「どうせ山崎あたりでしょうぜ」
「ああ、ザキか」
彼の名前が出た瞬間、疑問はどこかへ消え去った。深い意味はない。ただ、地味の彼方へ消えてっただけである。よく分からない表現だが、ジミーとはそういうものなのだ。
「で、どうします?突撃ですかい?」
「ああ・・・いやちょっと待て。確実に見張りがいるだろうから」
「じゃあいきますぜい」
「おいだから真奥が目ぇさましてねーんだよ!!」
それを聞き、しぶしぶと物陰にもどる沖田。
現在状況として、通信端末に送られてくる大まかな情報をもとに、人質のいる部屋の前まで来ている。あとは真奥が目を覚ますだけだった。
「ん、んん・・」
そうこうしているうちに、真奥が意識をとりもどす。
「こ、ここは・・・」
「はあ、やっと気づいたか」
「・・・え、土方副局長?それに・・・ターミナル?もしかして・・・」
せっかく赤みを帯びてきた顔が一瞬にして血の気が引く。
「いやそんな顔されても困りまさぁ・・・ププ」
「総悟・・・まああのバカはほっといてだな・・・」
かくかくしかじか、と説明中・・・
「そうですか・・・すみません覚悟見せろといわれたのに・・・」
「まあ気にすんな、俺だってそこまで鬼じゃねえ」
「よっ、おに~のふ~くきょ~くちょ~」
バッと腰の刀に手を伸ばす土方。
「総悟・・・死にたいか?」
「テメーが死ねクソヒジカタ」
「ああ``!?」
「ちょっとやめてください二人とも!!」
あわてて止めに入る真奥。何べんもあったのか、慣れた手つきである。
「とにかく今は人質にされた方々の救助が先です!!行きましょう!!」
そういって真奥は二人の手をとって駆け出した。不満そうな顔も一瞬だけで、土方も沖田もすぐに真剣な表情となる。
かくして扉は開かれる。待っていたのは・・・
「・・・なかなか前奏が長かったでござるな」
***
時はもどりて、ターミナル下の混戦地帯。
エミリアの人外な突進の威力の程は、
「・・・・」
「・・・・」
「・・・・」
「「「・・・は?」」」
敵も味方も度肝を抜かれ、そこに立ち尽くすしかなかった。
「あのー新八くん?つかぬ事を聞くけどさー。・・・なんなの、彼女?」
「・・・その、勇者です」
「それと姉御ネ!!」
すでに、近藤のライフは0を下回りました。
それほどまでの、常識外のパワーだった。同時にそれは、敵に畏怖と、味方に士気を与える結果となる。
「な、なんだあいつ・・・」
「じゅうぶんやばかったけど・・・マジ、ありえねえ」
「なんだ、いまのは・・・」
「おい、こりゃチャンスじゃねえのか!?」
「局長、おねがいします!!」
「お、おう・・・総員、とつげきだぁぁ!!」
「「「おお!!」」」
勝てる。名も知らぬ人だが、この好機を無駄にするまい。
まさに、彼らの顔には、希望が見え始めていた。
「よし、僕らも行こう神楽ちゃん!銀さんや恵美さんにまけないようにしないと!!」
「・・・」
「・・・神楽ちゃん?」
新八は、傘を振り回さず、ただ上空の一点を凝視する神楽を不審に思い、その視線の先を追う。
「・・・!!」
「なに、アルか・・・あれ!?」
それは、ただの一人の、堕天使“ルシフェル”。
「あれ、まだぜんぜん盛り上がってないじゃん、つまんないなぁ・・・」
「それじゃ、いきますか」
手に収束した魔力。次の瞬間には、あたり一面に、
爆撃。魔力弾の嵐が吹き荒れた。
***
「あのさ、」
「ん、なんだよジム?」
「おれらさ・・・ぶっちゃけ暇じゃネ?」
「まあな・・・まあ二、三人なかに入れちゃったけど、その程度なら上の方が始末するだろうし」
「そうそ、ただの見張りでいいって言われたモンなー」
「なー」
「ところで、サム」
「おいおいなんだいジムくん?」
「あれってなんだ?」
「あれって・・・」
ドガァァァン!!
ジムとかサムとかいうやつらは、地上の彗星に一気になぎ払われた。
もちろん彗星とは、エミリアのことである。
「ふぅ・・・ここまで派手にやると、さすがに、キツイわね」
「たりめぇだバカヤロー!!俺を殺す気かぁ!?」
すでに銀時のテンパは救いようのないほどに暴風に蹂躙され、荒れ果てている。
「テンパはどうでもいいだろうが!?テンパに悪いやつはいねぇンだコンチクショー!」
「・・・?ま、まあ気を取り直していくわよ」
銀時の誰にたいしてなのか、突然の怒りに首をかしげつつ、歩き出す。
銀時を、小脇に担いだまま。
おまえなぁ、と呆れかけた銀時の口が、急につぐんでしまう。
恵美の纏う破邪の鎧 元をただせば聖法気、それが、徐々にぼやけ始めている。細かい、細かい光の粒子が大気中に離散していく。小さな事もようでいて、それがとても重大なことにあるのは、誰よりも銀時が理解している。
聖法気の、枯渇。
もうすでに、恵美の体力は限界に近いはず。枯渇したからといって即死するわけではないが、全身を循環する聖法気、なくなれば体に与える影響はただでは済むまい。
「恵美・・・」
「ん?どうしたの銀時」
それをおくびにも出さず、平然を装う。なにが彼女をそこまで駆り立てるのか?
復讐か、正義感か、それとも予想外の事態への、焦燥か。
(ま・・・俺が悩んで、どうにかなることではないか)
そう、なにがどうなろうと、たとえ柳生九兵衛が男性とイチャコラする事態に陥ろうとも、結局は、自分自身の問題だ。
だから、現状、銀時のやれることは。
恵美を、そっと見守ること。
まあ、そっとなんて彼の性分ではない。
よって、
「恵美、とりあえず降ろせ。さすがにあれは抱えたままじゃ荷が重いだろ?」
「え、なにいって・・・!」
突如知覚した、さっきの巨大さに、思わず歩みを止める。
「さーて、そろそろ真ち登場ッスよ!!」
「わたしは戦闘向きではないのですが・・・まあ、今回は勝算があることですし」
「コハァ・・・」
来島また子。
武市変平太。
名も知らぬ、荼鬼尼×3。
今までとはあまりに違う相手の気配に、思わず恵美の背中に冷や汗が垂れた。
***
「なるほど、これは綺麗な和音を奏でる。しかし 」
べベン、と相槌のようにならし、敵を静かに、無感動に見つめる。
「しょせん、荒いだけの、三流ロックでござる」
刀に重心を預け、しきりに肩で息をする警官三人は、その言葉に口を歪ます。
「ほぉ・・言ってくれるじゃねぇか」
「確かにそうかもしない、けど」
「あいにく、ここからが一のサビでございまさぁ!!」
グッと力を込め、ばらばらに立ち上がる。血にまみれようとも、その目はぎらぎらと滾る。
だが、満身創痍なこの状況では、さすがに分が悪い。
「心配せずとも、あと三十分ごの爆撃が済めば、五体満足に返還するでござる。だから、」
「ひけ、とでも?言うかボケ」
腰を落とし、素早く河上の懐に飛び込む。だが、速度も落ちた今、
「かわせぬ道理はない、でござる」
刺突を難なくよける。そして刀を抜き、上空の、
「グッ!!」
真奧の上段切りも難なく弾く。
「で、終わりだとおもいまさぁ?」
「っ!!」
背後からの沖田の右切り上げを紙一重で回避し、そのまま、
「土方さん!!」
「もらったぜ、河上万斉!!」
風をも切りかねない荒々しい太刀が
届くことなく、阻まれる。
「!?」
「これまでで一番良いコンビネーションだったでござる・・・まあ、」
「結局は、拙者を本気にさせただけのこと」
気づけば沖田も、真奧も一歩も動けずに茫然としている。
「チッ・・・あれか、三味線の弦か」
「ご名答、といっても前に披露したでござるな」
刀にぐるぐるとまかれ、鈍い光沢を放つ、鋼鉄の弦。伊東鴨太郎の変の際、銀時や土方たちを苦しめた、厄介な攻撃手段。
「そちらの初見の方のため・・・たかが弦だと思うと、誤って肉を断つ恐れがあるでござるよ」
「!!」
驚きに染まった真奧の顔を見ながら、「白夜叉には効かなかったでござるが・・・」と呟く。まあ、このメンバーにあの芸当ができる者はいない、と思い直す。
「で・・・どうする気だ。これでチェックメイトとでもいうつもりか?」
「まあ、そんなもんでござるよ」
興味をなくし、立ち去ろうとする万斉。ギリ、と歯噛みする彼らに、ああそう、と思い出したかのように声をかける。
「そういえば、そろそろルシフェル殿も制圧が完了する頃でござるな・・・予定通り、なら」
「「「!?」」」
いま、何と言ったのか、このグラサン侍は。
それが本当なら・・・
「計画が、ひっくり返るじゃねえか・・・」
幹部連中は揃ってターミナルにいるはず。それは万事屋も、真選組も同じ認識だった。このままでは、
下にいる者は
「拙者も止めようかと思ったが・・・何分、わがままさの程は、先日の襲撃事件で証明されているでござるよ」
「!あれは・・・あの馬鹿ニートだったのか・・・」
エンテ・イスラ侵略当時から彼の性格を熟知している真奧は、なぜ気付かなかったのか、下唇をかんで悔やむ。
「・・・んじゃねぇ」
ミシッと嫌な音が、万斉の手元の三味線から漏れる。
「ッ!?ば、ばかな・・・」
白夜叉しかできないとおもっていた、蛮行。
まさか、それが、
「ふざけんな・・・そうそうてめえらの思い通りになると思ったら・・・」
こんな、剣を振り回すだけのマヨラーに・・・
「痛い目みんだよクソガァアア!!!」
やすやすと、突破されるとは。
「も、もしや・・・」
内なる修羅を、呼び起こしたか。
「んなわけ、このバカ土方におきるわけないじゃないでさぁ」
「!?」
「いや、この状況でケチ付けるのはやめましょうよ・・・」
「・・・」
もはや、口をただ開ける事しかできない。万斉の目に映るのは、
ぼろぼろの弦を纏う、三人の侍。誇り高き男たち。
「つうわけで、ここは頼んだ、沖田と真奧」
「はぁ?誰が土方なんかに手柄を譲ってんですかい?」
「はっ、任せてください!!・・それと、彼に連絡を・・・」
「・・・あいつか?理由は知らんが・・・わかった」
「サイナラマヨネ~ズ」
「あ、まて総悟!!抜け駆けしてんじゃねえぇぇ!!」
嵐のように、まるで少年のような無邪気さを思い起こさせるような、緊迫感もなにもない。だが、それは、彼らなりの、覚悟のあり様だ。
「さて・・・ここからは、こっちのターンだB級ザムライ」
ようやく正気に返った万斉が放った弦を、刀に絡めて封じてから、言い放つ。
「一番隊真奧貞夫・・・参る!!」
今回はちょっと詰め込みましたかね・・・。6000文字越え。
さてさて、覚醒フラグのたった真奥!
そして、恵美たちの戦いの行方は!?
そして・・・
乞うご期待!更新、多分遅れます・・・。