はたらく魔王さま!~IN EDO~    作:ジャンヌ

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第九話 侍、修羅に覚醒する。

「はぁっ!!」

「・・・」

「ていっ!!」

「・・・」

 

「あのさー、恵美」

「なに、銀時!?」

「・・・そろそろ、かわろーか?」

 今現在の状況。恵美が総勢二名を相手しています。

 当初は消耗している恵美を案じ、銀時が前線に出ようとしたのだが、本人の強い希望で、大人しく待っていた。荼鬼尼に囲まれながら。

 邪魔とは思いつつも、まあすぐ終わるだろ、と楽観的に観戦していたのだが。

「・・・ふむ。これが勇者の全力ですか」

「甘いっスねぇ!!そんなんじゃ虫も寄ってこないっすよぉ!!」

「いえ、逆に寄ってくるでしょう」

「揚げ足とんな変態!!」

 予想以上に、苦戦していた。

 確かに、今の恵美はすでに聖法気を使える体ではない。ダメージと残量不足により、せいぜい微弱な身体強化ぐらいにしか使えない。だが本来なら神楽や新八ですら圧勝が可能な相手、特に武市変平太などはただの頭脳派。肉体派の恵美が勝てない道理ではない。

 なのに、互角。いや、相手が、紙一重で強い。

 

「なにを・・・したっていうの・・」

「おっ、気になるっすか?いいっすよ教えてやるっス!!」

「また子さん、それ死亡h」

「なんで私たちが、正確にいえばルシフェルが辻斬りや強盗まがいのことをしたか分かるっすかぁ?」

 ここに土方や沖田がいたら、新事実に激昂して斬りかかるところだろう。あいにく、彼らはまだ十階付近を通過中だ。

「せいかーい・・・それが、この世界で唯一の魔力補強手段だからっス!!」

「っ!!」

 恵美と銀時は瞬間、息をのんだ。これは由々しき事態だと・・・。こちらが持っていない、もしくは回復手段が判明していないのに、敵はそれを知っているという。アドバンテージは、既にスタートラインの前に大きくつけられていたというのか。

「悔しいっすよねぇ!?あんたの世界の力が、それも敵の力が好き放題に使われているんっすからぁ!!」

「ちなみに我々が有している魔力は限界がありまして、持久戦に持ち込めば勝てますよ」

「そんなに私の揚げ足がとりたいんスか!?」

 さらりと暴露する変平太。エンテ・イスラよりは使い勝手が悪いらしいが、だからといって戦局が変わるわけではない。

「・・・んな」

「は?」

「・・ふ、ふざけんなぁぁぁぁ!!!」

 怒声とともに、一気に聖法気を解放した恵美は、爆発的なスピードでまた子へと突進していった。右、左と踏み込み、右腕を振りかぶる。

 右拳への、聖法気一点集中。極限状態の中、恵美が無意識に行った、最大燃費効率を可能にする、奇策。加えて体得された武術の心得が、さらにパワーを超重的なものへと昇華させゆく。

 最短軌道で、敵のこめかみを狙う。一発で、意識を刈り取る、一撃。

 

「で、どうしたんスか?」

 ここまで瞬時に分析<・・>したうえで、難なくまた子は恵美の拳をつかみ、握り締めた。

「うそ・・・」

 まさか、と顔にはっきり出るほどに恵美は虚を突かれた思いだった。

「ま、そういうことっス。で・・・」

 

・・・・死んでくれっス。

 

 

 自身の腹部を貫いた銃弾を感知しながら、薄れゆく意識の中。

 聞こえたのは、それだけだった。

 

***

 

チーン。

「はい一階、一階でございやす~」

「おめぇさっきからうるせーんだよ!!おかけで電話もろくにできやしねぇ!!」

 そういいつつも、しっかり済ませているところが、さすが土方さん。パネェっす。

「で、誰にかけたんですかい?」

「近藤さんと、芦谷だよ。大体わかんだろ」

「・・・ああ」

 それを聞いて、納得したように口をつぐむ沖田。もっとも、黙った理由はそれだけではない。

 殺気が、一階フロアの殺気が急激に増大したのだ。

「土方さん、早くいきやしょう!!」

「おい、いきなりそんなに真面目になられても、」」

 

 パァァァン!!

 

「「っ!!クソッ!!」」

 走る、ただ走る。警官として、己が使命を果たすため。

 プライオリティ、1。被害者の救出。

 そして、その2.加害者の、制圧。

 彼らの頭を占有していたのは、近藤たちよりも、ただそれだけだった。

 足元の命を救えないで、何が警官だ。滑稽も度が過ぎる。

 だから、彼らは救うために走る。

 

 それが、因縁ばかり強まる、敵側の陣営でも。

 

「はぁ、はぁ・・・鬼兵隊・・・被害者は、あの女か」

「!!あの女・・・」

「知っているのか、総悟!?」

「あー、たしか真奧のストーカーでさぁ。物陰からこっそり睨んでました」

「マジでかっ!!」

 よりによって、犯罪者とは。数奇なことも、あるものである。

 だが、見過ごすわけにはいかない。刀を抜き、真っ先に駆け寄ろうとしたところで、またもや沖田に止められる。

「ああ、なんだ総悟!いい加減行かせろ!!」

「・・・土方さん、あんたの目はアイマスク付きですかい?」

「あぁ``!?」

 ふざけてる場合じゃねぇだろ、と愚痴を吐きながら、沖田の視線の先をみる。そして、一瞬で、理解した。

 

 

***

 

ドサリ、と崩れ落ちる恵美を足でけり、また子は変平太を振り返る。

「さ、いくっスよ先輩!!あとはあの白髪パーマ侍だけっすよ!!」

 敵を消したからだろうか、ウキウキとした様子で、足まで踏みながらけしかける。これだけでも、彼女の異常性が分かっていただけるだろうか。

 

 彼女は、別に殺人狂なわけではない。

 ただ、高杉晋助への、愛。それだけが、彼女の行動原理の全てだった。

 ゆえに、その障害はすべて排除。なんの疑念も、挟む余地がない。

 恵美を殺したのも、ただゴキブリを新聞紙でつぶしたくらいにか感じていない。むしろ、これからどうやって手柄をとることしか考えていないのだ。

 

 武市変平太は・・・いっか。メンドイ。

 

 と、いうより、なにもない。

 

「正しいですけどね~、訴えますよ?」

「ほらいいから行くっスよ!」

 はいはい、とまるで近所のおっさんみたいな挙措で重い腰を上げる。

「で、どこに行きます?」

「はぁ、先輩、バカっすか?」

 ほら、玄関に、と言いかけて、

 固まった。

 

 なぜなら・・・

 

 

「よう、お二人さん。遺言は、それでいいのか?」

 

 ぐちゃぐちゃの肉塊と化した、荼鬼尼だったものを踏みつけ、

 知濡れの木刀、服、髪、完全に開ききった瞳孔。

 

「つーわけで時間切れだ。うちの家族をいたぶったお礼は・・・」

 

・・・・延長料金じゃ、すまねぇぜ?

 

***

 

 ・・・あれは、いつもの白夜叉なのか?

 雰囲気はなるほど、まさに地上を地獄絵図へと塗り替えた、そうまさに夜叉。

 ですが・・・それはあくまでただの呼称。あくまでかれは、人だ。

 だから・・・あんな、ドロリとした殺気を、私は感じたことはありません。

 

 そもそも、なぜかれが勇者を助けにこなかったのか。否、来れなかったのです。あらかじめ戦闘前の話していたすきに、簡易的な結界を張り、荼鬼尼たちと彼をとじこめました。いやあ、さすが悪魔大元帥の名は伊達ではないですね、彼はもはや指一本たりとも動かず、気づくこともない。チートと呼ばずして、なんて呼べばいいのか。

 

 で、それが一瞬にして壊されたわけですが。

 

 いやー、確実にまた子さんのあれがまずかったんでしょうねぇ~。息はありますけど、二人とも死んだと誤解しているみたいですし。訂正?無理無理まだ死ねませんよ、私は。

 

「ちっ、いいっす、だったら魔力を加味して神速を超えたまた子のはやゲブゥ!!」

 

 あー、それ、死亡フラグですよー。いや、立った瞬間に壊すのもどうかと思いますが。

「ねぇ、銀時さん?」

 ま、せいぜい時間稼ぎ程度に。話しますか。智将らしく。

「今のあなた、魔力と似た力を感じますねぇ・・・どうやって手に入れたんですか?」

「・・・」

 あ、ごめんやっぱ無理。

 だって知濡れの顔で薄笑いしながらこっちにゆっくり歩んでくるとかこれなんてバイオハザードォォォ!?

「ちょ、まだ生きてますよ、だから彼女の救出を」

「・・・」

「ちょ、まってぇぇ!!」

 がっと胸倉を掴まれ、地面に押しt・・・

 

 ドガァァン!!

 

 

 あの、人間って、クレーター作れましたっけ?

 

「・・・死ね」

 

 あー、さよなら晋助様。

 今、あなたを超えた狂気の男に、殺されます。

 

 ビュオッ・・・

 

 

 

 

 

 

 

「・・・ぎんときっ!!」

 

 




まさかの銀さんが覚醒。これはちょっと、やりすぎましたかね?

ほんとはまた子も変態も、瞬殺でおわらす予定だったんですが・・・どうしてこうなった。あれだ、荼鬼尼を増やしたからだ。

ちなみにルシフェルの作った結界、あれは堕天使の羽根に高度な魔力を込めたものです。同じく、また子たちが魔力を使えたのも同様です。もちろん、同調するとか使用条件がありますが。魔力を手にした人間がどうなるのか・・・?

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