大崎柑那はシスコンじゃない   作:かわらまち

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前回のあらすじ プロデューサーはいい人


え、印税だけど

 

「そんで、家帰ってからがまた大変でな、甘奈が甘えん坊モード全開で離してくれなかったんだよ。いやー兄離れできない妹にも困ったもんだわ」

 

「そうですか」

 

 いつも通り後輩と食堂で飯を食べている。後輩も俺たちのことを心配していただろうから昨日のことを話してやってるんだが、どうにも反応が薄い。

 

「どうした新田、反応が薄いぞ」

 

「なんだか、バカップルの惚気を聞かされてるようでお腹いっぱいなんです」

 

「は?俺たちは兄妹だぞ、そんじゃそこらのバカップルなんかと一緒にするんじゃねぇよ」

 

「やってること一緒だと思いますけど」

 

 呆れたようにそういう後輩を見て俺は溜息をつく。こいつは分かってないな。

 

「甘いぞ新田ぁ!アイツらは他人、しかし俺らは血の繋がった兄妹。そこにある愛の大きさが違うんだよ!」

 

「分かりましたから座ってください」

 

 立ち上がった俺を少し冷たい目で見てくる。いつもならもっと恥ずかしがって止めに来るんだが。

 

「なんか今日は冷たくないか?」

 

「惚気みたいなのを聞かされたら冷たくもなりますよ。先輩には分からないでしょうけど」

 

 よく分からんが機嫌があまりよろしくないみたいだ。俺が話した中で後輩の機嫌が悪くなるような内容はなかったはずだが。至って普通の兄妹の話をしただけだし。

 

「あー、そうか。お前がなんで機嫌が悪いかわかったわ」

 

「え?」

 

「悪いな、お前の気持ちに気づいてやれなくて」

 

「ちょっと待ってください!そ、それって……」

 

 後輩の目を真っ直ぐに見つめる。こいつの反応を見る限り間違いない。

 

「うちの妹達がアイドルになったから機嫌が悪いんだろ?」

 

「わ、私は先輩のことなんか……はい?」

 

「強力なライバルが現れちまったからなー。アイツらなら間違いなく売れるし」

 

「ホント、先輩は何を言ってるんですか?」

 

 先程までの冷たい目を更に冷やした目を俺に向ける後輩。核心を突かれて機嫌をさらに悪くしてしまったようだ。

 

「大丈夫だ安心しろ。新田もうちの妹ほどではないが、可愛いからな。俺が妹ぬきで好きなアイドルはお前だけだ」

 

「な、何を言ってるんですか!」

 

 顔を真っ赤にして立ち上がる後輩。急に大きな声出して立ち上がって恥ずかしいやつだな。もう少し落ち着いてもらいたいものだ。しかし完璧なフォローだと思ったんだが何かが悪かったらしい。あれか、アイドルたるもの1番じゃなければいけないみたいなあれか。

 

「お前プロフェッショナルだな。ミナミニッタだな」

 

「……はぁー、先輩はそういう人でしたね。」

 

 よく分からんが呆れられた。とりあえずもう怒ってないみたいだから気にしないでおこう。

 

「そういえば先輩の家って妹さんたちが住めるほど広いんですか?」

 

「いや、うちは二つしか部屋がない」

 

「これから三人で暮らすには厳しくありません?」

 

「まぁなー。だからマンション買った」

 

「……はい?」

 

「俺としては今までの部屋で一緒に寝て生活するのも悪くないんだけど、あそこ283の事務所から結構遠いんだよ。レッスンとかで遅くなったら危ないじゃん?電車なんか乗ったら絶対痴漢に遭うじゃん?もちろん兄として毎日送り迎えしてやるつもりではあったけど、それでも今の家だと帰るのがしんどいだろうし、まぁ、俺が二人をおんぶと抱っこで運んでもいいんだけど、それだとどっちが抱っこしてもらうか喧嘩しちゃうじゃん?あ、もちろn」

 

「いやいや、ちょっと待ってください。先輩のシスコンっぷりはこの際置いといて、マンション買ったってどういうことですか!?」

 

 勝手に置いとくなよ。シスコンでもないし。これくらい兄として当然だろ。

 

「だから、さっき買ったんだってば。3LDKのマンション」

 

「な、なにを言ってるんですか?マンションがいくらすると思ってるんですか?」

 

「ん?確か俺が買ったのは6000万くらいだった気がする。なんか新築だって書いてあったからそれにした」

 

「そんなコンビニで新商品のお菓子を見つけて買う感覚で買えるものではないんですよ?頭おかしくなりましたか?」

 

「お菓子だけにってか。やかましいわ!」

 

 こいつは俺のことを何だと思ってるんだ。先輩だぞ。俺、先輩だぞ?

 

「結構前から妹たちがいつ来てもいいように契約してたんだよ。それでさっき正式に買ったの!明日には引っ越すんだからな!」

 

「そ、そんなお金どこから……まさか先輩、ついに悪徳金融から借金を!?」

 

「だからお前は俺を何だと思ってるんだよ」

 

「天然バカシスコン鈍感男」

 

「おいコラ表出ろ」

 

 どれだけキャラ盛ってんだよ。もはや渋滞してんじゃねぇか。俺は天才敏感系男子として有名なんだぞ。あとシスコンではない。

 

「じゃあどこからお金を?」

 

「え、印税だけど」

 

「なんの!?」

 

「落ち着けよ新田。さっきからキャラ崩壊してんぞ」

 

「す、すみません。取り乱しました」

 

 色々ストレスでも溜まっていたのか?アイドルってのは大変だな。日本はストレス社会だってよく言うしな。

 

「おっと、もうこんな時間か。んじゃ帰るわ」

 

「え?ちょっと待ってください」

 

「今から甜花達が通う高校の手続きしに行かなくちゃなんねーんだわ。それじゃ」

 

「ちょ、結局、印税って何ですかー」

 

 後輩の声がこだまする中、食堂を後にする。甜花と甘奈が俺を待っているんだ。急いで帰らなくてはならない。兄なら妹を一番に優先するのは当たり前だ。だから俺はシスコンじゃない。

 

 

 

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