Johnny Joestar's Phantom Blood   作:桟橋

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口調や文体がジョジョっぽく無かったり、こんなのはジョニィじゃない! と思うかも知れません。

また、ジョニィの本名はジョナサンなので最初はジョナサンと呼びますが、ジョジョという呼称が出てきてからはジョジョと呼び替えます。

その他にも、家柄や育ってきた環境は1部の殆どを踏襲したものになるので、7部ジョニィの性格そのままでないことをご了承ください。


少年期
1話


 

 

 

 

 ジョースター家の一人息子、ジョナサンは天才騎手と持て囃され幼少の頃からその溢れる才能を発揮していた。

 天性のセンスと技術で様々な賞を勝ち取り、自室には輝かしい成績を表すトロフィーが並ぶ。

 周囲から向けられる称賛と羨望は彼の幼い自尊心を歪んだ形に肥大化させ、挫折を知らない彼は高慢で鼻持ちならない性格へと変わっていった。

 

 高いプライドから周囲を見下した態度で接する彼の周りからはいつしか人が離れていき、彼を敵視する者さえ現れ始めた。彼はますます強気に大胆になっていき、過剰なパフォーマンスを求めて危険な挑戦を繰り返すようになる。無謀なその行動を諌める者も居なくなり、実の親でさえも彼の蛮行を止めることが出来なかった。

 

 ある日、ギャラリーに煽られ暴れ馬に乗せられたジョナサンは、見事に馬を宥めすかし完璧に制御しきる。自分を害するつもりなら更に無理難題を吹っかけてみせろと、逆に挑発を仕返すジョナサンを、物陰から見つめる影が一つ。

 

 馬にまたがるジョナサンを狙い構えられたライフルは、狙撃主の呼吸と共に銃先が揺れていた。

 上下するタイミングを合わせ引き金を引く。火薬が爆発する大きな音がジョナサンを含む周辺の人々の鼓膜を揺らした。

 

 ――撃たれた撃たれた!

 

 騒然とする人だかり――その前でジョナサンを乗せる馬は暴れ出し、捕まりきれなくなったジョナサンは為す術無く落馬した。

 外したか……。痛みに暴れる馬にボロ雑巾のように踏みつけられるジョナサンを見届け、人影は路地裏へ姿を消した。

 

 

 

 

 

 

 貧民街に住む少年、ディオ・ブランドーは父ダリオの遺言からジョースター家の事を知り、その財産に目をつけた。ジョースター家に息子が1人居る事を知った彼は、自身の計画の障害になるであろうその息子を始末することを決断する。

 強運とイカサマを駆使しスラム街のギャンブルで大金を稼いだ彼は、その若さから舐められながらも裏社会で少しづつ影響力を拡大し、自らの指示を聞く人員と人殺しの武器を手に入れた。

 

 ジョナサンの悪評を利用し彼を殺害する計画を立てたディオは、失敗した時に自らへ辿られぬよう手下を通して殺し屋に金を積み、ジョナサンの殺害を依頼した。

 

 

 

 

 

 

 依頼を請け負った殺し屋は受け取った前金で気性の荒く人気の無い馬を格安で買い叩き、残りの金でギャラリーを先導するサクラを雇いジョナサンを挑発させ目的の馬に乗せる事に成功する。

 予想に反してジョナサンが馬を見事に御して見せるも、冷静に念の為用意していたライフルを構え引き金を引いた。

 

 タイミングを外し放たれた銃弾は馬体へ吸い込まれる。銃声と突如体に走る痛みに驚いた馬はパニックに陥り、自らの上にまたがる騎手を振り落とそうと体を揺らした。

 堪らずジョナサンが落馬し、蹲るジョナサンを成人男性の数倍の体重を持つ馬の蹄が踏み抜く。骨が砕ける音が周囲のギャラリーまで聞こえた。

 

 ――死んだな。

 

 ピクリとも動かなくなったジョナサンを見届けた彼は、騒ぎが落ち着かないうちに任務の成功を依頼主に告げに、1人その場から姿を消した。

 

 

 

 

 

 

「依頼した者から任務の完了の報せがありました。これでジョースター家に入り込めば、家を丸々乗っ取り、ディオ様がジョースター家の遺産を継ぐことが出来るでしょう」

 

「フン……。貴様が依頼した殺し屋は誰だ」

 

「問題が御有りでしょうか」

 

「大有りだ。ジョナサンはつい先程目を覚ましたと言う」

 

「それは……申し訳有りません。ですが、任務に失敗したと評判が流れれば、彼は今後仕事を行うことが困難になるでしょう。命令をいただければ、すぐにでも噂を流してまいりますが」

 

「気に入らんな。すぐにでも殺してやりたいが……。まぁ、聞くところによるとジョナサンは下半身の自由を失ったようだ。命だけは許してやろう。成功報酬の半額を渡したら、噂を流してこの街に居られなくしてしまえ」

 

「はっ、すぐにでも」

 

 小屋から出ていく手下を見届けたディオは、ジョージ・ジョースターへ手紙を認める。

 母親が死に、父のダリオが亡くなった今貧民街に身寄りもなく貧しい暮らしをしている事と、父が死に際に言い遺したジョースター家を頼れという言葉を頼りになけなしの稼ぎで手紙を出す事を書いた。

 薄汚い盗人である父を信じた甘ちゃんならば、この手紙の存在を無視出来ないだろう。

 

 ディオはいつ迎えの使いが来ても良いように手下へ稼いだお金の大半を渡し、残ったお金で身の回りの荷物を用意し父の遺した小さな家に住む貧しい少年に擬態した。

 

 

 

 

 

 

 ジョースター家の屋敷の前に一台の馬車が止まる。不審に思ったジョナサンが車椅子を漕ぎ屋敷の門から出ると、キャビンから荷物が乱暴に投げ出され1人の少年が飛び降りた。

 

「君がジョナサン・ジョースターだね」

 

 ジョナサンに話しかける少年――ディオ・ブランドーは車椅子に乗るジョナサンは歩み寄る。

 こんないけ好かない顔の男は知らない、ジョナサンはそう思った。

 ディオはジョナサンの前に立ち、自身の胸ほどの位置にあるジョナサンの顔を見下ろし手を差し出した。

 

 ジョナサンは自らの眼前に出された、薄汚れた手を見て少年の正体を思い出す。

 父が言っていた、かつての恩人の息子とはコイツのことか……! 湧き上がる感情のままに出された手を払いのけた。

 

「ディオ・ブランドー……! 悪いが、君と仲良くする気はない」

 

 そう言い放ちその場で回転して屋敷に戻ろうとするジョナサンを、プライドを酷く傷つけられたディオは逆上して車椅子ごと蹴り飛ばす。放たれた回し蹴りは車椅子の側面を捉え、ジョナサンごと地面になぎ倒した。

 倒れ伏したジョナサンを見下ろしたディオは、車椅子を起こそうと芋虫のように地面を這いつくばるジョナサンを踏みつけその場から動けないようにする。

 

「ジョナサン! お前のそのムカつく態度を、このぼくが矯正してやるッ!」

 

 ジョナサンに向けて放たれ続けるディオの平手に、ジョナサンは身を捩る事しか出来ず高価な服は地面に擦れボロボロに破け薄汚れてしまった。

 ジョジョを嬲り満足したディオは、蹴り飛ばされて横転した車椅子を起こし、地面に横たわるジョナサンを持ち上げ車椅子に座らせる。

 

「いいか? 君はぼくとの出会い頭に、馴れない車椅子の操作を誤り転倒した。そして、それをぼくが助けた」

 

「ジョースター卿はぼくに感謝し、そして詫びるだろう。不出来な息子が済まないと」

 

「もし君が真実を父親に告げれば、君の父親は君を非難するだろう。なぜ嘘を付くんだ。ディオ君がそんな事をするはずがないだろうと」

 

「君は自らの親からも見放され孤立する。この家に居られなくしてやろう」

 

 痛みに朦朧とする意識の中でジョナサンは思った。

 ――コイツ、ぼくと家の事を知っている……! このままでは、ジョースター家はディオの思うままになってしまう……!

 ディオの狙いに気づき危機感を覚えるも、ジョナサンの車椅子を押し屋敷の扉へ向かうディオを止める術を、ジョナサンは持ち合わせていなかった。

 

 

 

 

 

 

「ジョースター卿、父を亡くし路頭に迷っていたぼくを助けていただき、大変感謝いたします」

 

「いや、当然のことをしたまでだ。君のお父さんが居なければ、私は既に谷底で野垂れ死んでいたのだから。それに、ジョジョのことを助けてくれてありがとう。」

 

 父とにこやかに会話をするディオを、ジョジョは黙って見つめることしか出来なかった。

 

「それよりも、少し汚れている。遠いところから来て疲れただろう。体を流して少し眠ると良い。食事はその後に出そう」

 

「ありがとうございます」

 

「良いんだ。自分の家だと思ってくつろいでくれ」

 

 自らが蚊帳の外にされている事実にジョジョは傷ついた。そして、まんまとディオが父親に取り入っていることを許せなかった。しかしディオが自分にしたことを告げ口することは出来ない。

 汚れた体を洗うため使用人に連れられながら、ジョジョは自らの無力さを嘆いた。

 

 

 

 

 

 

 

「ディオ君、もうこの街には馴れたかい?」

 

「はい、ジョースター卿。新入りのぼくにも優しくしてもらっていて、友だちもできました」

 

「そうか、それなら良いんだ。これから長く暮らすことになるのだから、いずれは故郷のように思うようになるだろう」

 

 ジョジョと父、そしてディオの3人で取る夕食では基本的にジョジョが自分から話すことは無い。

 父はいつからかジョジョとの距離を測りかねていて、気を遣ってはいるようだがここしばらくは親子らしい会話も無かった。

 ディオに関しては、ジョジョに話しかける事はもちろん自分から話を切り出すこともほとんど無く、ジョースター卿から質問が有ってから初めて返答を話すようにしている。

 父がそのディオの態度を好ましく思っているだろうこと、ディオの思い通りになっているだろうことにジョジョは歯噛みして悔しがった。

 

 自らはディオの正体を知っていること、それを吹聴して回っても誰も自分の言うことは信じないだろうこと。そのどちらもが分かっているだけに、ジョジョはせめてこれ以上自分の立場が悪くなることがないように努めていた。

 

 

 

 

 

 

「引退したお前を高い金を払って引き取ったのは、まだぼくが競馬の世界を諦めきれて居ないからかも知れないな……」

 

 数々のコンテストを共に戦った愛馬、スロー・ダンサーを撫でながらジョジョは語りかける。

 歳をとり引退したスロー・ダンサーの代わりの馬を探していた矢先に銃撃事件が有り、半身不随になったジョジョは自身に残った多額の賞金の一部でスロー・ダンサーを買い取った。

 自身の高慢さで身の回りの人が離れていき、馬に乗る事が出来なくなって賞金や名声目当ての人が離れていった。いつしか味方が居なくなったジョジョは、利害関係無しに自らに接してくれる馬に縋るしかなくなっていたのかも知れない。

 

「足が動かなくなってから何もかも思い通りにいかない。この屋敷を移動することさえ1人では出来ないんだ」

 

 嘆くジョジョの顔には表情がない。冷たい無表情だが、目の奥には確かに強い意志があった。

 スロー・ダンサーは首を下ろし自身の顔をジョジョに近づけ頬ずりをする。ジョジョは顔をほころばせ年相応の笑顔を見せた。

 

「くすぐったいな。フフ、やめろって」

 

 そんな1人と1匹を、木陰から見つける影が1つ。落ちている木の枝を踏んで折る音をジョジョは聞き逃さなかった。

 

「そこにいるのは誰だッ!」

 

 ジョジョが音のした方向へ振り返る。木陰から覗いていたのは、自分と同じくらいの年齢の女の子だった。

 

「ご、ごめんなさい。邪魔をするつもりは無かったの。ただこんな外れに馬と居るのが不思議だっただけで」

 

 女の子は怯えた様子でジョジョを見ていた。その表情を見てジョジョは警戒を緩め、敵意むき出しの顔から元の無表情に戻った。

 

「すまない、怖がらせるつもりはなかったんだ。えっと、ぼくはジョナサン。君はなんて言うんだ?」

 

 敵意の消えたジョジョの落ち着いた様子に安心した女の子は、ジョジョとスロー・ダンサーの元へ近づいていった。

 

「私はエリナ。ここで何をしていたの?」

 

 ジョジョは自身に偏見なく近づく人の存在に馴れておらず無愛想に答えるが、エリナはそんなジョジョを好ましく思ったのかめげずにジョジョへ何度も話しかける。気づけばジョジョも、そんなエリナの様子に絆され会話を続けていた。

 

 

 

 

 

 




書き溜めは少年期編の終わり(全3話)まであるので毎日投稿します。
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