Johnny Joestar's Phantom Blood   作:桟橋

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6行空きで場面切り替えしてますが、もし分かりづらければ横線を入れるようなスタイルに変えます。



2話

 

 

 

 

 

「じゃあ、ジョニィは家に居場所がなくて、ここまで来て馬のお世話をしていたの?」

 

「ああ。ぼくは失敗をしたんだ。自分から関わろうとするやつもいなくなった」

 

「へんなの。ジョニィは寂しいと思わないの?」

 

「寂しい……そう思ったことはないな。考えていることは、ぼくを銃で撃とうとした奴に復讐をすることだけ」

 

「それって、すごく寂しいわ。それにつまらないじゃない!」

 

 腰ほどの高さの倒木に腰掛け、ジョジョの話しを聞いていたエリナは何かを思いついたのか、ジョジョの後ろに回り車椅子を押して駆け出す。スロー・ダンサーも連れ、驚くジョジョを尻目にエリナは野原をジョジョと一緒に駆け回った。

 

 しばらくして、疲れ切ったエリナはジョジョを椅子から下ろし、自分もその隣に座り込んだ。

 

「どう? こうやって何も考えずに遊ぶのもすっごく楽しいでしょ?」

 

 ジョジョは認めたくは無いが、かつて初めて馬に跨がり野を駆けた時の事を思い出し、楽しんでいた自分の気持を自覚し無言で頷いた。

 嬉しそうに走り回るスロー・ダンサーを見ながら2人はお互いの事を話し合った。

 

「それじゃあ、ジョニィは足を治す方法を探してるんだ」

 

「幸い、家には本が沢山あるし。ディオはいつも忙しそうに友だちと遊びにいくけど、ぼくには時間も有り余っているからひたすら読み漁ってるんだ」

 

「へぇ、治るかもしれないの?」

 

「それは……まだ分からないけど、家には基本的な医学だけでなく東洋の物もあれば、古代の人体について研究された本もある。全部を読むには時間がかかるだろうけど、いつかはきっと治してみせるさ」

 

「そうね、明るく考えるべきだわ! それに家にこもってるだけじゃ考え事も捗らないでしょ? また一緒に遊びましょう!」

 

 エリナの眩しい笑顔を見て、ジョジョの胸に久しく無かった温かい気持ちが生まれる。もう人と関わるつもりのなかった自分が、大きく変わった気がした。

 

 ジョジョはエリナとまた会う約束をして別れた。ジョジョと忌憚なく接するエリナの存在は、ジョジョの暗く沈んだ心を明るく楽しいものに変えた!

 普段と変わらない帰り道さえなんだか新鮮に思え、ゆっくり横を歩くスロー・ダンサーを置いていくスピードで車椅子を飛ばした。

 

 

 

 

 

 

 足が動かないジョジョは一日の大半を家の中で過ごす。幸い、彼の退屈を癒やしてくれる本は数え切れないほどに有った。元々頭も悪くなく、また貪欲な知識欲も持つジョジョは少しずつ医療書を理解し始め、人間の身体への知識を深めていく。自らを治す手立てを探す内にジョジョはジャンルを問わず本を読み漁り、自身の糧になるように吸収していった。

 

 直情的で短絡的な行動の多かったジョジョは、いつしか思慮深く紳士然とした振る舞いを身につけるようになった。父の指導する教育にも素直に従い、テーブルマナーもジョースター卿は気づいていないようだが以前より洗練された動きになっている。ディオは危機感を抱いた。

 確実にジョジョは父親から疎まれている、それは依然として変わりない事実だ。親として愛情はあるようだがジョジョが命を失いかける事故に至るまで、その行動を止められなかった事が負い目になっているのだろう。

 いずれはこのままジョジョの居場所を無くし、このジョースター家から追放してやろうと考えていた。

 

 だが、最近のジョジョはどうだ。初めて屋敷の前で出会った時とは異なる、強い意志を持った目をしている。

 自分が街へ出ている間に、家に引きこもってしている読書でなにか自身のケガを治す手立てを見つけたのだろうか。

 

 ――いや、それはありえない。ディオは自分の考えを即座に否定する。

 圧倒的な蔵書数を誇るこの屋敷の書庫ならば、確かにジョジョを治す方法は見つかるかも知れないが、以前自分が目を通した限りでは理解することの難しい高等な学問書が多く有ったはずだった。

 自分が読むことの出来ないほど高度な医学書ならば、ジョジョには手が出せるはずもないだろう。そう、ディオは思った。

 ジョースター家の書庫には医学書の他に、貴族の礼儀作法を記した本とジョースター卿の趣味の古代の伝承を纏めた本が多くある。ジョジョの仕草振る舞いが変わった理由は説明できるが、彼の死んでいた目が活力を取り戻した理由は説明不能であった。

 

 そこでディオの頭に1つの心当たりが浮かぶ。

 そう言えばジョジョは、週に一度ほどの頻度で馬を連れて屋敷から外出をしていた。

 競走馬を引き取ったのだから、閉じ込めておくだけではなく運動させることは当たり前で、ディオは特に注意を払っていなかった。

 自身のケガを治すという最大の目的を、おそらく果たす目処すら立っていないはずのジョジョが、何に拠ってその振る舞いを変えるほどの活力を得たのか。

 街で交友関係を広げる予定から、ジョジョを尾行してその原因を解き明かす事に今週の目的を変更した。

 

 

 

 

 

 

 ジョジョはエリナとの待ち合わせの場所へ、逸る気持ちを抑えながらスロー・ダンサーを連れ向かった。

 エリナがジョジョの事をどう思っているのか、気になって仕方ないその疑問がジョジョの背筋を正す。かつては自身に言い寄る人が数え切れないほど居たが、その誰にも好かれたいと思って接したことはなかった。

 ただエリナからは幻滅されたくない。初めて抱くその気持は、ジョジョの礼儀作法を学ぶ気持ちを強め、横暴な振る舞いを正させた。

 初めて会った時から少しづつ変わっていくジョジョの様子を、エリナは好ましいと思っているのか反応は悪くない。幼い恋心が、ジョジョの心で小さく燃えていた。

 

「おーい、ジョニィー! こっちよー!」

 

 木陰に座りジョジョを待っていたエリナが、スロー・ダンサーを連れてこちらに向かうジョジョを見つけ、立ち上がって手を振る。

 ジョジョも手を伸ばし、エリナにはっきりと見えるよう大きく手を振りながら返事をした。

 

「ふぅ……どう? 気持ちいいでしょう?」

 

 陽の当たる原っぱで、仰向けに2人は寝転んでいた。隣で顔をジョジョの方に向け、エリナがそう問いかける。

 ――悪くないな。そうジョジョは思った。

 頬をくすぐる草の柔らかさと、全身に浴びている日差しの暖かさが心地よくジョジョの体を包み込み、隣を向けば笑顔のエリナと目が合い、心の中に温かく優しい気持ちが広がった。

 

 黙って自分を見つめるジョジョに、エリナは照れくさそうに笑い体を起こす。腕をジョジョの背中に回し体を起こしてくれるエリナを見ながら、やはり足を治す手立てを早く見つけなければとジョジョは強く思った。

 

「他の、お気に入りの場所を教えてあげる! ジョニィもきっと気にいるわよ!」

 

 ジョジョを車椅子に乗せたエリナは、後ろから車椅子を押し、スロー・ダンサーを連れながら自分のお気に入りの場所をジョジョに紹介して回る。代わりにジョジョは、自分がもっと小さな頃に馬で駆けた思い出の道をエリナに教えた。

 

 夕方になり、日が落ちる前に帰るため待ち合わせの場所に戻る2人と1匹。何となくジョジョは、エリナがどうして自分のことをジョジョではなくジョニィと呼ぶのか聞いた。

 

「どうして? みんながジョジョと呼んでいるからって必ずそう呼ぶ必要はないわ。私は、ジョニィの事をジョニィと呼びたいからそう呼ぶの」

 

 ジョジョは自分とエリナとの関係が、なんだか他の人との関係より特別なものの様に感じ、そしてエリナの揺るがない自分を持つ姿に強く憧れを抱いた。

 

 もうじき日が暮れるので早く帰らなければ、そう言って別れを告げるエリナを引き止め、来週もこの時間に来れば会えるかどうかジョジョが聞くと、エリナは待っていると微笑んでから急いで帰ってしまった。

 

 満たされた気持ちでスロー・ダンサーを連れ帰りを急ぐジョジョ。

 

 2人の別れ際のやり取りを、少し離れた場所でディオは見ていた。

 

 

 

 

 

 

 ジョジョが少女と楽しそうに話す姿を見て、ディオは確信する。

 ここ最近のジョジョの変化の訳は、あの女にあると。屋敷では一度も見る事のなかった、ジョジョの自然な笑顔がエリナに向けられている様子を見て、最近の活力にあふれるジョジョの原動力はエリナであると悟った。

 

 エリナという女はジョジョに希望を与える。それはディオにとって自身の計画の邪魔をするという事と同義であった。

 ――奴をジョジョからなんとしてでも遠ざけてやろう。ディオは具体的な計画を、2人を見つめながら練っていた。

 

 ジョジョはエリナに夢中で、エリナはそんなジョジョの事を憎からず思っている。ならばその2人の関係を利用するべきだろう。ディオはそう考えた。

 

 エリナがジョジョから距離を起き、ジョジョがエリナを避けざるを得なくなる方法。

 ディオは自身の脳内で様々な手段を講じ、それによる2人の反応を想像する。さらなる手がかりを求めて、ディオはジョジョと別れた後のエリナを、ひっそりと尾行した。

 

 少しして、帰り道の途中でエリナが立ち止まる。慌ててディオも足を止めた。

 

「はぁ……ジョニィってすっごく面白い人ね。何か影はあるけど、ボクシングなんて野蛮なスポーツに夢中になっている他の男の子とは違って、すごく落ち着いて居てカッコイイし」

 

「本当は週に一度だけではなくもっと会いたいと思っているけれど、ジョニィが本を読む邪魔をする訳にはいかないわよね……」

 

 独り言か……ディオは自身の尾行がバレたわけではないことにホッと胸をなでおろした。

 そして思う。エリナもジョジョに好意を抱いている訳だ、これは使える。

 エリナをジョジョから引き離す策を思いついたディオは、実行に移す準備をするため一先ず家に帰ることにした。

 

 

 

 

 

 

「す、スゴイ! 挑戦者、ディオ・ブランドー! チャンピオンを全く寄せ付けずKOだ!」

 

 ボクシングに飛び入り参加したディオは、足元に倒れ伏した元チャンピオンを見下す。

 スラム仕込みの素早く鋭いスウェーとステップに翻弄された相手は、拳に力を込め巨体を活かした豪腕を振るおうとしたのだが、予備動作である体のひねりと拳の引きを見逃さなかったディオによるカウンターで、顎を撃ち抜かれ地面に沈んだ。

 

 本人は意識があるものの、足に力が入らず起き上がることが出来ない。レフェリーが10カウントを終えると、ディオはリングを出て観衆に声を掛けた。

 

「今のは新しいボクシングの技術を使っただけだ! 興味があるやつには教えてやろう!」

 

 新チャンピオンの誕生に沸いていた観客は、そのディオの言葉に次々と集まる。その様子を見ながらディオは目的通りの展開に1人ほくそ笑んだ。

 

「あぁ、落ち着いてくれ! きちんと全員に教えよう! ただ、彼には教えないでくれよ。教えたやつは信頼できないやつとして扱うからな」

 

 未だに地面に伏せたまま起き上がることの出来ない、元チャンピオンを指さしてディオが言う。そして素直に頷いたものにスウェーやダッキング、ウィービングなど、攻撃を躱す為の技術を教えていく。

 たったの一試合で人気ものになったディオの圧倒的な実力とカリスマに、強く影響された信奉者は自らディオの言葉を喜んで聞くようになる。

 

 都合のいい手下を手に入れ、いよいよ作戦通りだとディオは笑みを深めた。

 

 

 

 

 

 

「へへへ、お嬢ちゃん。ちょっとこっち来てくれよ」

 

「な、なに!?」

 

「おっと、悪いが動かないで貰おうか」

 

 道を歩いていたエリナの前に3人組の男が立ち塞がり、その内2人に逃げられないように両腕を掴まれる。突然の事態に困惑するエリナを尻目に、残った1人の男がエリナへと近づいてきた。

 

「悪いな。アンタに恨みはねぇが、ディオに言われてるからよ」

 

 そのまま男はエリナの頭を掴み強引に口を奪う。必死で顔を背けようとするエリナを掴んだまま離さず、永遠とも思えるような長い時間はエリナが抵抗する力を失うまで続いた。

 

「へっ、どうやらジョジョの野郎と仲良くしているみたいだがどうだ? キスは済ませたのか? まだだろう。お前の初めての相手はこの俺さ」

 

 男は、力なくその場にへたり込んだエリナを見下ろしそう吐き捨てた。エリナはその言葉を聞き、さめざめと涙を流している。せめてもの抵抗にその場にあった水たまりで口を濯いでいた。

 

「こ、コイツっ……! 俺の口がその泥水よりも汚いと言いたいのかァ!?」

 

 激昂した男の手がエリナの頬を叩く。乾いた張り手の音があたりに響いた。

 それでも泥水を口元に運ぶのを止めないエリナに、男は我慢ならず振り切った手を今度は逆向きに払う。手の裏側、ゴツゴツした骨がエリナの顔を吹き飛ばした。

 

「ま、マズイって。流石によォー!」「お、俺は知らねーぞっ! ディオに命令された事をやっただけだ!」

 

 無抵抗の少女に暴力を振るい続ける男の姿に、怖気づいたのか先程までエリナの脇を抑えていた2人の男がその場から走って逃げ去る。エリナに手を出した男も、自分が1人になってその激情は鳴りを潜めたのか、冷静さを取り戻し捨て台詞を吐いてその場を去った。

 

 1人その場に残されたエリナは、口に残った消えない感触に、ジョジョのことを思い涙を流した。

 

 

 

 

 

 




ズキュウウゥンは名場面の1つですが、バレたらマズイことをディオがするだろうかと考えたので間接的に手を出す形にしました。
ただ、子分がディオの事を話してしまっているので無駄ですが。
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