真剣で鳴神に恋しなさい!S   作:玄猫

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13話 風間ファミリー

「なるほど……それじゃ、京と会ったのは俺たちと仲良くなる前なのか」

 

 京の口から語られた内容を聞いた大和が言う。

 

「うん。大和に声をかける前にその切欠をくれたの」

「そんな大層なことじゃないさ」

 

 京の言葉に対して謙遜する勇介。

 

「いや、京の言うとおりだろう。結果としてお前の言葉のおかげで京は大和に声をかけて、そのおかげで私たちとファミリーになれたんだからな。それは間違いなくお前の手柄だ」

 

 そう言って百代が優しく京の頭を撫でる。

 

「お前、本当にすげーんだな!感心したぜ!……大和!」

「……あぁ、何が言いたいのかは分かったけど……」

「もしかしてキャップ、勇介くんをファミリーに加えるの?」

 

 一子が翔一と大和の会話で気づいたように尋ねる。

 

「おう!クリスの幼馴染でまゆっちの知り合い、そして京の恩人だろ!?文句なしファミリー入りの資格ありだろ!それに面白そうだ!」

「ふ……キャップはいつも通りだな。だが私も賛成だ。昨日手合わせもして悪い奴じゃないのは分かったからな」

「姉さん、それって拳で語ったからってことか?」

「あぁ、よく分かってるじゃないか」

「私も賛成!私も勇介くんのこと、信頼できるって思うから!」

 

 一子も百代に続いて賛成を表明する。

 

「俺様はどちらでも構わないぜ」

「僕は……正直全然知らないから今のところなんとも言えないかな」

 

 ガクトは賛成よりの保留、モロは保留。

 

「自分は反対する理由はないぞ!」

「わ、私も賛成です」

『オラもオラも!』

 

 クリスと由紀江は問答無用の賛成。勿論、松風も賛成である。

 

「……俺も一旦保留かな?まぁ、賛成寄りではあるけど」

 

 大和はそう言うとチラッと京を見る。

 

「……私は……」

 

 全員が固唾を呑んで見守る。

 

「……賛成」

「決まりだなっ!!」

 

 京の言葉に嬉しそうに翔一がいう。

 

 

 そして案内されたのは、廃ビルだった。

 

「おぉ……廃ビルか。いいな」

「だろ!?男のロマンだよな!」

 

 既に親友かのように勇介の肩を抱く翔一。

 

「私たちは普段は自由に集まる感じで、金曜日だけ全員揃うようにしているんだ」

「通称、金曜集会だな!」

「俺様の筋トレ道具とかモロの漫画とかあるぜ!」

「皆好き勝手に改造してるからな。鳴神も好きに使ってくれ」

「あぁ……とはいえ、俺あまり物とか持ってきてないからな。何か面白いもの探しておくよ」

 

 そんな話をしながら階段を昇った先にそこはあった。

 

「ここが……」

「俺たちのたまり場さ!ようこそ勇介!改めて俺のことはキャップと呼んでくれ!」

「あぁ、よろしく頼むよキャップ」

「ようこそ鳴神……いや、俺も下の名前で呼ばせてもらっていいか?」

「勿論、直江……じゃなくて大和」

「あぁ、改めてよろしく」

「……まぁ、座りなよ」

 

 そう勧めてきたのは京だ。

 

「おいおい、京が大和以外の男に優しくしてるぜ。俺様驚きだ」

「はは……京にとってはそれだけ特別だってことだろうね」

「……しょーもない」

 

 そう呟く京を大和が少し優しい笑みを浮かべてみている。

 

「どうした、大和?」

「いや、いい傾向だなって。京を助けてくれたのがお前でよかったよ」

「そうか?俺は切欠作っただけだからな。本当に助けたのは大和なんだろ、旦那さま」

「いや、冗談にならないからやめてくれ」

「……私はいつでもいいよ?」

「ふふふ、自分はユウがここに来てくれて嬉しいぞ!」

 

 ソファに座った勇介の隣にぴったりと寄り添うようにクリスが座っている。そんな彼女の頭を優しく撫でる勇介。

 

「わ、私も嬉しいです」

 

 流石に勇介の隣には座らなかったが傍に座っている由紀江だ。

 

『オラも歓迎するぜ、勇介ボウヤ』

「松風もありがとな」

「ねぇねぇ、勇介くんって京を助けたときから武術の心得があったの?」

「そうだね。既に祖父さんと修行の旅をしてたからね。その途中でここに立ち寄ったから」

「私とその時代に会っていてくれれば暇じゃなくて済んだんだけどな」

「ははは、今までがあったからこそモモ先輩に少しは認めてもらえるだけの力がつけられた、とも考えられるからね。……まぁ、京もユキも出来れば最後まで見てあげたかった、っていうのはあったけど」

「……ありがと」

 

 いつもと様子の違う京に首を傾げる一子やクリス。そして少し嬉しそうに見守るそのほか……のような構図。

 

「ユキも懐いてたけど、勇介って変わった子を懐かせる能力でも持ってるのか?」

「何だそれ。俺は普通にユキと話したりしてるだけだぞ。それにあの子もいい子だよ」

「はは、知ってるよ。だからこそ感謝してるんだよ」

「……お蔭様でこんなに元気に育ちました」

 

 普段は大和にだけ向けられているといっても過言ではない京の好意。それが明らかに本人が意識しているかは別として勇介に対しても向けられている。それに風間ファミリーの面々は喜んでいるのだ。

 

 

 翌日。

 

「あ、ユウなのだー!」

 

 通学中に勇介を見つけて吶喊してくる小雪を優しく受け止める。

 

「おはよう、小雪。ただそんな突撃したら危ないぞ?」

「ユウならちゃんと受け止めてくれるから大丈夫だよー」

「すごい信頼だな」

「まぁ、お前さんならその期待に応えられるだろ」

「なんでしたら私も受け止めてくれたら嬉しいのですが」

「それは全力でお断りするよ。男に抱きつかれても嬉しくないだろ」

「私は嬉しいですよ?」

「そりゃそうだろうけどな」

 

 俺はノーマルだよ、と笑いながら小雪の頭を軽く撫でる。

 

「そういえば、ユキは人気あるんだな」

「えー、何でー?」

「ほら、よくユキが抱きついてくると周囲から殺気やらの視線を感じるから」

「あー……ユキは見た目はいいからな」

「ハゲは見た目も犯罪者なのだ」

「誰が犯罪者顔だ!」

 

 わいわいと騒ぎながら多馬大橋へと差し掛かったあたりで大和たちと合流する。

 

「あ、大和ーはろー」

「ユキ、おはよう」

 

 大和に挨拶をした小雪が京をジーっとみる。

 

「……おはよ」

「京も思い出した?」

「……うん」

「僕のほうが先に思い出したんだよー!」

「むぅ……」

 

 よく分からないが何かを張り合う小雪。

 

「おぉ……なにやら京が押されてるわ……おはよ、勇介くん!」

「おはよう、一子」

「ユウ、おはよう!」

「クリスおはよう」

 

 すぐ目の前まで駆け寄ってきたクリスの頭を優しく撫でる。

 

「ん、ちょっと髪跳ねてるぞ」

「えっ!?ちゃんと自分で整えたのに!」

 

 勇介が鞄から櫛を取り出すとすっとクリスの髪を梳く。

 

「これでよし」

「ありがとう!」

『クリ吉甘やかされてんなー。もっと自立しろよー』

「こら、松風。いいすぎですよ、おはようございます、勇介先輩!」

「おはよう、由紀江」

「おっす!」

「おはよう」

「おはよう、ガクト、モロ……うん、何か違和感」

「ははは、なれるまでは仕方ないさ。おはよう」

「大和もおはよう」

「空から美少女参上!」

 

 空から降り立つ美少女こと百代である。

 

「おはよう、愉快な仲間たち」

「おはようモモ先輩」

「姉さんはまた変な登場して」

「何だとー。変とはなんだー。弟の癖に生意気だぞー」

「痛い痛い」

 

 大和の言葉に不満そうに頬をつつく百代。

 

「それにちゃんと下着が見えないように飛んできたんだぞ。えらいだろー」

「はいはい」

「ははは、モモ先輩は普段から規格外なんですね」

「何だよ、勇介ならこれくらい出来るだろ?」

「出来るのとやるのとではちょっと違いますからね」

「ねーねーユウ!僕空飛んでみたいのだ!」

「うーん……空を飛ぶのレベルによるけど……」

「……モロ、モモ先輩以外にも人外レベルが増えた気がするんだが、俺様」

「あはは……」

「おぅいガクト。今こんな美少女のことを人外とかいったか?」

「いぃ!?」

 

 そんな話をしていると橋に差し掛かったところで目の前に一人の男が立ちはだかる。

 

「武神・川神百代だな!」

「……ふむ」

 

 普通の武道家といったところだろうか。勇介の判断では百代どころか川神であればその辺りにいる人にすら負ける可能性がある程度の強さだろう。……まぁそのあたりにそういった人材がゴロゴロしている時点で川神がおかしいのだが。

 

「我が名は武王山下!武神と呼ばれ調子に乗っている川神百代に鉄槌を降ろすものだ!」

「武……王」

 

 勇介が頬を引きつらせる。

 

「はは、面白いことをいうな、お前」

「女子といえど手は抜かぬぞ!」

 

 そう言ってチラッと周囲にいるメンバーを見る。人の目を惹く美少女揃いなのだから少し気になるのは仕方がないだろう。

 

「ふふ、川神百代を倒しその女子どもを可愛がってやろう」

「うわ、三下の台詞だ」

「もう旬が終わってるのにな」

「いや、僕に同意を求めないでよ!?」

 

 モロの言葉に準が反応するが、その言葉に同意を返すことは出来ない。

 

「ユウ、なんかあの人変な目でこっち見てたのだ」

「……あぁ、そうだな」

 

 そんな勇介をチラッと見た百代が何か思いついたように勇介の肩にしなだれかかる。

 

「勇介、私こわーい」

 

 棒読みだ。

 

「え、何々~!僕もやるー!」

 

 そんな百代を見て遊んでると思ったのか、小雪が反対側の腕に抱きつく。

 

「何だ、ユウに近づいたらいいのか?」

 

 よく分かっていないクリスも勇介へと近づいていく。そんな感じで気がつくと女性陣が全員勇介の傍に集まっている状態になっていた。

 

「な、何だ貴様はっ!?決闘の邪魔をした挙句何をしている!?」

「……いや、俺は何もしてないけど」

「くそー!勇介、羨ましすぎるじゃねぇか!!」

 

 ガクトがモロの肩を掴んで揺らす。

 

「うわぁ!?揺らさないでよガクト!……というより、京があれに混ざってるのが僕は驚きなんだけどね」

 

 本人の意思というよりは小雪に腕を掴まれてという感じではあるが、特に嫌がっている様子がないのは驚きだ。

 

「さ、勇介。どうする?」

 

 ニヤニヤと何かを試すように百代が勇介を見る。

 

「いいんですか?俺がやっちゃって」

「あぁ。こんなのとやるよりお前とやってるほうが楽しいからな。それにこの間の楽しかった気持ちを消したくはない」

 

 そんな百代の言葉を聴いて勇介も苦笑いだ。

 

「それじゃ、一瞬で片付けますね」

「お前何を」

 

 腕を掴んでいた百代と小雪が腕を放す。それと同時に勇介が一礼する。

 

「すみませんが、武王さん。モモ先輩は俺が倒す予定ですので、お帰りください」

「お前のような雑魚が倒せる相手のわけがないだろう!」

「……おい、お前。悪いことは言わないから自分の分は弁えたほうがいいぞ」

 

 百代の忠告に耳を貸すような男ではない。怒ったような男は勇介に向かって突進する。

 

「ひとつ、相手との力の差がわかっていない」

 

 突進してきた男の肩を片手で軽く止める。

 

「なっ!?(び、びくともしない!?)」

「ひとつ、戦う相手への敬意を持って対峙していない。これはモモ先輩と向き合っていたときの話だな」

 

 膝がぶるぶると震え、強制的に膝を突いた状態に追いやられる。両手で腕をなんとかはずそうとするがその試みが成功することはない。

 

「最後に」

 

 一瞬だけ勇介の瞳が黄金に輝く。

 

「俺の仲間に手を出そうとするな。武人としてならいつでも対峙してやるよ。それはモモ先輩も同じだろ……って、聞いてないかな」

 

 手を離した勇介の前には気を失った武王が跪いていた。

 

「あ、あと。王やら神やらつけられる重さを知るべきだな。いくら何でもその程度で王は……軽すぎる」




後どれくらい毎日更新続けられるかなぁ?
出来る限りは頑張ります!

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