真剣で鳴神に恋しなさい!S   作:玄猫

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16話 東西交流戦 中編

 放たれた三つの魔弾は一子を射抜くコースを綺麗に辿る。

 

「!」

 

 宙でそれに気づいた一子は驚きの表情を浮かべる。すでに回避は不可能な状況。だが、一子には勿論、優秀な仲間がついている。同じように飛来する三本の矢は魔弾をなぎ払う。

 

「弓兵なら、こっちにだって優秀なのがいるんだから!」

「……しょーもない」

 

 勇介が示した方向にいる毛利を目視した京が強弓を引き、毛利に狙いを定める。対する毛利もさすがは天下五弓。矢の射線から京の位置を特定し、すぐさま身を翻す。

 

「ふっ、この距離で華麗なる私を狙撃するつもりか。と、凡夫ならば油断するだろうが、妖艶な私は違うぞ」

 

 京の射線では狙えない物影に隠れた毛利。

 

「京、行けるな?」

「余裕」

「ならこっちは任せる。大和から各所の応援を頼まれた。アレさえ落とせばある程度の安全は確保できそうだしな。それに何かあればすぐに戻ってくるよ」

「うん、任せて」

 

 そう言って構えた京の矢の先端には爆薬がくくりつけられていた。

 

「椎名流弓術、爆矢。相手容赦ないからこっちもね。……必要ないかもだけど」

 

 結果を見ることなく京は勇介を見て。

 

「気をつけて、ね?」

「勿論」

 

 

 京の一撃で毛利を落とした後も、焔の攻撃の手は止まらない。それを避け続けている一子にも少しずつ疲れの色が見え始めていた。

 

「一言教えてやるぞ東の!この大友に弾切れはない!」

 

 回避を続けている一子の狙いは見破られており、新しい弾の束を担いだ兵士が焔の後方から現れる。

 

「ガーン!せっかく弾切れ狙ってたのに!」

「たわけが!補給線を築いておく。戦の初歩と知れい!」

 

 笑いながらそう言う焔。だが、その言葉をさえぎるものがいた。

 

「その兵站を破壊するのも、戦の初歩と知りなさい」

「クリスお嬢様の部隊がお前の後方を撹乱中だ。もう弾はそれが最後と知りなさい」

「笑止!こんなこともあろうかと、すでに各所に弾薬は隠して保管済みだ!」

 

 焔は地面をドンと叩きながらそう言う。

 

「……なるほど。だが、お前を倒せば同じこと!」

「!ふ……いきますよ!」

 

 何かに気づき、ニヤリと笑ったマルギッテが獣のように跳躍する。

 

「愚かな。対空……」

 

 言いながら筒をマルギッテへと向けていた焔の目に飛び込んできたのはマルギッテを掠めるように飛来したコインだった。

 

「なっ!?」

「隙を見せましたね!トンファーシュート!」

 

 マルギッテの手を離れたトンファーは大筒の銃口へと吸い込まれる。

 

「しまっ……」

 

 大筒は発射口にトンファーが詰まったことによって暴発してしまう。その爆発をもろに受けた焔。

 

「ふっ、トンファーを外せば私の負けだったかもしれませんが、こよなく愛する武器を外すわけがない」

 

 そう言ったマルギッテ。

 

「まだだ、マルさん!」

「危ない!」

 

 一子がマルギッテに飛びつき、押し倒す。その二人をかばうように飛び込んできたのは勇介だ。焼夷弾へ衝撃を与えずに後方へと受け流す。

 

「大友家、秘伝……国崩し……!」

「ほぅ……諦めない、か。見事だな」

「ユウ、合わせなさいっ!」

 

 マルギッテはそう言うと、迷うことなく一気に間合いを詰める。咄嗟のことに負傷した状態では焔も対応できずに素手でマルギッテの攻撃を防ぐ。

 

「卑怯と思うなよ!」

 

 マルギッテと逆の方向から何処から出したのか勇介の手にも同じ武器……トンファーが握られ焔へと攻撃を繰り出す。まるで何かを確認するかのように同じ動作で攻撃する二人についにはガードが崩される。

 

「マルさん!」

「トンファーアームストロング!」

 

 トンファーによる猛打で吹き飛ばされた焔は無念と叫びながら意識を刈り取られる。

 

「あはは……なんかすっかり相手を取られた気分だわ」

「大火力の足止めをしていただけで十分と思いなさい」

「一子の戦い、ずっと見てたけどよかったぞ。がんばったな」

 

 勇介が一子の頭を撫でる。

 

「えへへ、勇介くんって何かおにいちゃんみたいね」

「そうか?」

「うん」

「……コホン、私はお嬢様と合流する。お前も前線へ行きなさい。ユウは……」

「俺は本陣を確認してくる。なにやら隠れて近づいてる気配があるしな」

「望むところよ!敵将一人くらいは倒さないと!」

 

 

 本陣へと戻った勇介の視界に飛び込んできたのは負傷した生徒たちが治療を受けているところだった。そこで英雄が全員に対して激励を送っている。

 

「お前たちは、西の連中にやられたままでいいのか?雪辱を期す好機ぞ!行けるものは行き、武勲をあげよ!!」

 

 その言葉に負傷していた生徒たちが立ち上がる。

 

「よし、俺は行ってくるぞ!自分のために」

「武士の血を引いているんだもの……負けないわ!」

 

 次々に戦場へと戻っていく生徒たち。英雄の檄は大きな影響を与えていた。

 

「流石は英雄、って言っていいのかな」

「おぉ、鳴神!一子どのは無事であったか!?」

「勿論。俺とマルさんが獲物の横取りしちゃったけど奮戦してたよ。一番槍もそうだけどね」

「フハハハハ!ならば我も大将としての仕事をせねばな!」

「俺も同じく、なんだけど」

 

 ちらっとあずみを見る。頷く様子を見て勇介は動くのをやめる。

 

「あずみさんにお任せしますよ。……というか、英雄は気づいてるんだな」

「我は幼き頃より狙われることが多かったからな。こういった気配には敏感なのだよ」

 

 そう言いながらも全く動じない。

 

「あの気配……鉢屋か!一人で来るなんて西の乱破は頭が悪いのか?」

 

 急降下してくる影をあずみは迎撃して蹴り飛ばした。何かあずみと話した後、分身する鉢屋。

 

「おお、分身か」

「あずみ、さっさと片付けろよ」

「了解しました英雄さまぁぁぁ!!」

 

 英雄の言葉に答えるやいなや、五つの敵を一瞬で切り捨てる。だが、どうやら手ごたえがない残像らしく警戒するあずみ。そんなあずみの背後に回りこんでいた鉢屋は後ろから取り押さえると、地を蹴った。

 

「まさかあれって……飯綱!?」

 

 伝説の技と言ってもいいものが目の前で披露されて驚く勇介。実現しようとすればできるだろうが、今までにやってみるというところには行き着いていなかった。

 そんな技をかけられていたあずみだったが、落下中に突如爆発する。そしていつの間にやら鉢屋とあずみの位置は入れ替わっており。

 

「ぬぐわっ!!」

 

 叩きつけられた鉢屋が意識を失い、あずみが立ち上った土煙の中から現れる。

 

「へっ、爆発くらいで手を離すようじゃヌルいぜ」

 

 ボソリと素で呟くあずみだが、すぐさま切り替え。

 

「お騒がせしましたっ、英雄さま!!」

 

 平常運転のあずみである。

 

「ヤキ、いれたるーっ!!」

 

 そんな声とともに重量級の女生徒が突進して本陣へと入ってくる。

 

「宇喜多隊!敵本陣に一番乗りで報奨金アップやー!」

「ははは、まさか力押しで攻め込んでくるとはね」

「敵総大将に、一騎打ち申し込んだるわ!」

「たわけ。総大将として軽々しく相手はしてやれぬ」

 

 英雄が突っ込んできた女子……宇喜多秀美に言い放つ。

 

「だったら全員ぶちのめすまでや!」

「退屈していたところじゃ。此方が遊んでやろう」

 

 それとなく勇介が英雄と宇喜多の直線上に立ちはだかったところで心が進み出る。

 

「フハハ不死川か。好きにするがいい」

「英雄、大丈夫なのか?何かの武術の心得はあるみたいだけど」

「まぁ見ていろ。あの程度なら大丈夫であろう。それに本当に危険ならば」

「割って入れる距離、だな。わかった」

 

 巨大なハンマーを構えた宇喜多が突進してくる。それに対して心も駆け出す。突っ込んできた宇喜多の胸倉を器用につかむとそのまま内股で投げ飛ばす。

 

「おぉ、柔道か」

「うむ。あぁ見えて不死川は全国区レベルの使い手だ」

「いっぽーん!敵将、此方が討ち取ったのじゃー!!」

「あぁいう手合いは投げに弱い。相性がよかったな!」

「まぁそういう運も、実力に含まれてますからね」

 

 勝どきを上げた心に対して英雄とあずみが容赦ない一言を言い放つ。

 

「素直に此方を褒めぬかー!!」

「はは、でもすごいじゃないか、不死川さん。いい内股だったよ」

「ふ、ふふ!鳴神はよくわかっておるのじゃ。全く、ほかの者たちときたら……」

「大丈夫。英雄やあずみさんもわかってるって。それじゃ、俺は冬馬たちのほうへ行くよ。不死川さんにココは任せていいかな?」

「うむ!此方に任せるのじゃ!」

 

 機嫌がよくなった心に勇介は微笑みかけて姿を消す。

 

「うーむ、鳴神はなかなかの人心掌握術であるな」

「女性限定みたいですけどね」

 

 意外と見ているあずみであった。

 

 

「いきなり後ろから現れるとは」

「ぬははは!海を泳いで後ろから回り込んできたわ!」

 

 高笑いをしながら言ってきたのは長宗我部宗男。四国でも有名な一族であり、更には十勇士最高の攻撃力を誇るオイルレスラーである。

 

「念のために備えをしていてよかったです」

 

 そう言った冬馬の周囲に川神側の生徒たちが現れる。

 

「ほぉ、予想以上に敵が多いな……だが、すべて吹き飛ばす!」

 

 長宗我部は壷を取り出すと、中に入った油を自分の身体にかけた。

 

「ヌルヌルだ!最強のオイルレスリングを見せてやる!」

「あれはあまり触りたくはないな。正直」

「そうですか?私は戦いでなければかまいません」

「マジか」

 

 冬馬の後ろから現れた勇介が長宗我部を見てそう言うが、冬馬は平気そうな表情のままだ。

 

「ちゃんと、海に向けて飛び込んでくださいよ」

「ん?今なんて言った?優男」

「念のため、用意しておいて正解でした、ね」

 

 冬馬の手から放たれたのは着火したライター。長宗我部の身体についた油に着火し、火達磨になる。

 

「ぬぐああああ!?ノリ悪すぎだろ!!」

 

 そう叫びながらも勇介たちのほうへと突進してくる長宗我部。

 

「やっぱりこうなるか」

「ユウ、僕がやっつけるよ!」

「はは、じゃ一緒にやるか」

「うん!やるー!」

 

 突進してくる長宗我部とすれ違うように小雪が背後へと回り込む。勇介へと接近してきた長宗我部を強烈な蹴りが襲う。小雪に向かって一直線に吹き飛んだ長宗我部を次は斜め上空へと打ち上げる。勇介と小雪は視線を一瞬合わせるとともに跳躍する。まるでボールをパスするように互いに長宗我部を蹴り合う。

 

「ちょっ!?お前らっ!?」

「まだ余裕そうだ、なっ!」

「あはは!海側だよね?」

「勿論。いくぞ!」

 

 長宗我部を完全に飛び越えた二人がともに上空から蹴りを放つ。交差する二人の蹴りで海へと長宗我部は落下していった。

 

「ちゃんと海側に叩きつけておいたよ。えらいえらい?」

「えらいえらい」

 

 そう言って勇介に頭を撫でられ嬉しそうに笑う小雪。

 

「わはーい!もっともっとー♪」

「はは」

「しかし……躊躇なく焼いたな。凄い」

 

 驚きながら軽くひいてる大和。

 

「でないと、大和くんがヤキモチを妬いてしまうでしょう?私が敵の男と油まみれになってしまうなんて」

「絵的には嫌すぎる……絵的には。って電話か」

 

 電話に出た大和の表情が厳しいものになる。

 

「どうした?」

「クリスから。敵の最前線にいるけどどうも大将が姿を消したらしい」

 

 東西交流戦の決着は近い。




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