中編を見ていない方は前話からどうぞ!
「姿を消した、ね。それでどうする?俺がまた高所から探そうか」
「……いや、やっと俺も役に立てそうだし出陣するよ」
「兵隊を連れて行かなくて大丈夫ですか?」
大和に対して冬馬が声をかける。
「一人でいい。雑兵相手は回避に徹すれば何とかなるさ」
「ふむ、大和」
「ん?……ってあぶなっ!」
「はは、それなら大丈夫そうだな」
「試したのかよ」
「勿論。それじゃ、俺はまた京の護衛に戻るよ」
「頼む。……ちなみにだけど、勇介は京と同じ場所から何か援護とかできるのか?」
「ビームか?残念ながらビームは無理だ。コインとか石とかなら届くだろうけど」
「……いや、それも大概ヤバイ気がするけど。まぁ何かあったら支援頼む。状況次第で」
「任せろ」
「勇介くん、ユキを一緒に連れて行ってもらえますか?」
「別にかまわないけど……冬馬は大丈夫か?」
「残った十勇士の人数を考えるともう大丈夫でしょう。それに私が危なくても駆けつけてくれるでしょう?時間稼ぎくらいはしますよ」
笑いながら言う冬馬に頷く。
「じゃ、ユキも行くか」
「うん!いってくるねー」
「よ、京。無事だったみたいでよかったよ」
「そんなこと言って。こっちもちゃんと気にしてたでしょ。何度か目合ったよ」
「バレてたか。さすが弓兵」
「はろはろー」
「や」
勇介におぶさった状態で小雪が挨拶をする。それに京もこたえる。
「お前たち仲いいよな」
「そうかなー?そうかもー」
「ちょっとだけ似たもの同士……だからね」
「ねー」
微笑みながら二人が言葉を交わす。
「ふむ……あ、京。大和が敵将探しにいったんだけど場所わかるか?」
「勿論」
「京は大和センサーついてるんだよー!」
「大和センサー?……大和専用の気の探索みたいなもんか?それは凄いな」
「そんなことはないよ。……いた、あそこだね」
京が指をさした先を見る。
「……おお、本当にいる」
「ぶい」
ブイサインを勇介に向けてする京。
「んで、どうやら見つけたみたいだな。……なんだこの音」
「え、なになにー?僕には何も聞こえないよー」
「……まさか勇介も犬笛聞こえるの?」
「まぁはっきりと、とは言わないけど。一子はこれを聞き分けてるのか」
「そうだよ。……そういえば勇介はまだ犬笛貰ってなかったね。私の上げてもいいんだけど」
「次の集まりのときに貰うよ」
ポンと京の頭を優しくたたいて大和のほうへと視線を向ける勇介。小雪が京の耳元に顔を寄せる。
「京、大胆なのだ」
「え?」
「だって、自分の吹いてる笛をユウにあげようとしたんでしょー?」
「っ!?」
言われるまで特に意識をしていなかったのだが、確かにそういうことになる。それに気づいた京が顔を真っ赤にする。
「京、顔真っ赤ー」
「……ユキ、今の話は」
「わかってるよー。ユウには内緒にしといたげる」
「……うん」
「どうした、二人とも。楽しそうだな」
「えへへー。僕と京の秘密なのだー」
「そう、秘密」
「?なんかわからんが楽しそうでよかったよ。とりあえず、一子が合流して槍使いを相手するみたいだな」
「大和の援護する」
弓をつがえた京がそう言うと同時に矢が放たれる。刀を抜き放った天神館総大将の石田三郎に直撃する。
「ははは、さすが京。そして大和がなにやら挑発を……って、アレはやばいな」
突如、石田の気が爆発的に上昇する。それを見た勇介が手すりに足をかけ、飛び降りようとするが。
「っ!この気……!」
ばっと空を見上げる勇介。京は続けて石田に対して矢を放つが、一度目とは違い余裕を持って矢を打ち落としていく。
「っ!勇介!」
「そうか、来たか。京、この戦いは終わるから下に降りるぞ」
「え?どういうこと?」
「僕もわからない!教えてー」
「援軍が来るんだよ。まぁ流石に大和も予想外だろうけどな」
勇介が指をさした先の壁を垂直に駆け下りていく人影。
「何あれ」
「俺の友達の一人さ」
「源義経!推参っ!!」
凛とした声と共に石田へと接近した義経は強化状態の石田にすら反応させない速度で切り捨てる。
「ぐ……はっ!?その名前、お前も……俺や島と同じように武士の血を引く人間、か……!」
「違う。義経は武士道プランで生まれた者。血を受け継ぐものにあらず……そのものだ」
「よく、わからんが……理不尽なまでの強さ……惚れ……る……」
「義経は、同じ学舎の友としてお前に助太刀した」
そう言いながらキョロキョロと周囲を見渡す義経。
「?どうした?」
「……いや、義経の友人がいると思ったんだが……」
「友人?誰だろう……」
そんな会話をしている最中に一子と島右近の戦いも決着がつく。石田が敗れたことに気をとられた隙を見逃さなかった一子の一撃が島の意識を刈り取ったのだ。
「川神流・水穿ち!!」
綺麗に入った一撃を見た義経がぱちぱちと拍手をする。
「見事な薙刀さばき。義経は感心した」
「あはは、どうも」
「これくらい感心した」
手をバッと横に広げて表現する義経。そして。
「敵将!全て討ち取ったわーっ!!」
「勝ち鬨をあげろー!!」
一子と義経の声で東西交流戦は終了する。
「フハハハハ!義経、もう来たのだな!」
「うん。義経は武士だ。戦と聞いては黙っていられない。あ、あと……英雄くん、えっと……」
「義経、久しぶりだな」
義経の背後から声をかける勇介。ぱぁっと花が咲いたような笑顔になった義経が振り返った先には求めていた存在がいた。
「勇介くんっ!」
抱きつくような勢いで駆け寄る義経。
「いい太刀筋だったぞ。ちゃんと鍛錬は続けてるみたいだな」
「うん!義経は義経だから、ちゃんと立派にならないといけないからな!」
「そうだな。……って、すまん。話中だったか?」
「いや、構わぬ。義経も鳴神に会いたかったのだろうよ」
「そうなのか?」
「う、うん……よかったら義経たちが泊まってるところにこないか?今日は一旦ホテルなんだが……」
上目遣いにちらちらと見る義経。
「そんな怖がらなくてもいいぞ。勿論行かせて貰うよ。……まぁ俺も九鬼で世話になってるんだけどな。……構わないか、英雄?」
「あぁ、あずみ。そのように手配しておけ」
「かしこまりました、英雄さまぁっ!!」
「ユウどこいくの~?」
「今日はちょっと義経たちと話をしてくるよ。ごめんな、ユキ」
そう言って近くまで来ていた冬馬と準を見る。
「頼むな」
「言われるまでもありませんよ」
「ユキ、俺たちと帰るぞ」
「京はこっちな」
「大和、さっきの戦いかっこよかったよ、結婚して」
「お友達で」
「~♪」
勇介と義経は徒歩でホテルへと向かっていた。そんな中、鼻歌交じりで歩いている義経。
「ご機嫌だな」
「あぁ!久々に勇介くんと会えたからな!義経は嬉しい」
「みんな元気か?」
「勿論だ!でも、義経から聞かなくてもすぐに会えるぞ?」
「俺は義経から聞きたいんだよ。駄目か?」
「いや!そんなことはないぞ!えっと……」
最近の弁慶は川神水を飲みすぎだ。与一は以前よりもさらにネットにのめり込んでいる。清楚さんは変わらず義経たちを見守ってくれている。……色々な話が次々と出てきて、身振り手振りを交えながら楽しそうに義経が話す。
「本当によく見ているな、義経。やっぱりお前は立派だよ」
到着したホテルのロビーではすでに弁慶、与一、清楚が待っていた。
「や、ユウひさしぶり」
ひらひらと手を振りながら川神水を飲んでいる弁慶が一番に声を上げる。
「弁慶、義経から聞いたぞ。川神水飲みすぎだって」
「だって、ユウがくれた瓢箪使わないともったいないでしょ?」
「こら、弁慶!勇介くんのせいにするのは駄目だ!」
「ふふ、ごめんね義経、ユウ」
謝罪をしながら勇介にしなだれかかる弁慶。
「弁慶、色々当たってる」
「ふふ。役得でしょ」
「こら、弁慶ちゃん。勇介くん困ってるでしょ」
「う……なんでだろう、清楚さんに言われると抵抗できない」
困ったように勇介から離れる弁慶。
「清楚」
「勇介くん……」
目が合うなり黙ったまま見つめあう二人。
「?清楚さん、どうしたんだ?」
「う、ううん!なんでもないよ!……久しぶり、勇介くん」
「あぁ、久しぶり。また綺麗になったな」
「っ!?」
社交辞令的なものだとはわかっていても、清楚は顔を真っ赤にする。
「おや……?」
何かに気づいたように弁慶が切れ長の目をさらに細めてニヤニヤする。
「ちょ、ちょっと弁慶ちゃん?」
「いやぁ、清楚さん。どうかしたんです?」
「い、いいから。弁慶ちゃんは川神水飲んでて、ね?」
「清楚?さっきの困った状態は川神水飲んでたからじゃないのか?」
冷静に勇介が質問する。
「い、いいの!勇介くんも気にしないで!ほ、ほら、与一くんも待ってるよ!?」
「え、俺かっ!?」
突然話を振られて驚く与一。
「っていうか、与一も来てくれたんだな」
「当たり前だろ、兄貴」
そう言って二人は拳をぶつける。
「ネットにはまってるんだってな?」
「この醜くも美しい世界の真実を教えてくれるからな。兄貴もよかったら色々教えてやるぜ?」
「はは、頼むよ。俺はそっち系はあまり得意じゃなくてな」
「こら、与一。ユウを闇の世界に引き込むんじゃない」
「何を言う姉御!インターネットを馬鹿にするな!」
「ほぉ?私に口答えする気か、与一?」
「う……」
「ほらほら、喧嘩するな」
ポンと弁慶の頭を叩いて優しく癖っ毛を撫でる。
「色々と話をしたいし、部屋に連れて行ってくれないか?ここホテルのロビーだぞ?」
「で、義経が」
「ちょ、ちょっと待て弁慶!その話は内緒だって約束したじゃないか!」
「あ、ごめん。忘れてた」
「弁慶ー!!」
通された部屋は大部屋のような場所だった。すでに与一は自分の部屋へと戻っており、女性陣と勇介だけになっている。
「はは、楽しそうで何よりだな。さ、明日から学園に通うんだよな?そろそろ寝るか?」
「あら、もうそんな時間。ユウとあまり話できなかったね」
「明日からいくらでもできるだろ?さ、じゃあまた明日かな?」
「ユウ、何処にいくつもり?」
「え、部屋ってほかに取ってないのか?」
「うん。いやー、つい忘れちゃってねー」
棒読みで弁慶が言う。義経と清楚は頬を染めている。
「義経は駄目だって言ったんだぞ?ホントだぞ?」
「あれ、義経はユウと一緒は嫌だった?」
「嫌じゃない!……でも……」
「恥ずかしいよ……弁慶ちゃん」
「ちょっとちょっと。私だって恥ずかしくないわけじゃないんだけど」
「……待て待て。流石にヤバイだろ、それは」
「ん、ユウは私たちに何かする気なの?」
「いや、そういう意味じゃなく」
寝巻きへと着替えた三人。義経はお気に入りの紫色のパジャマ、弁慶は勇介が昔着ていたワイシャツを身に着けている。
「弁慶……まだそれ使ってたのか」
「ほら、人が使い込んだやつって程よくやわらかくっていいでしょ」
「……だからって俺のやつ使わんでも」
「ほら、私ばっかり見てないで清楚さんもいるんだから」
そういって弁慶の指さした先にいる清楚はライムグリーンのパジャマに身を包んでいた。
「清楚も似合ってるよ」
「ユウは和服なの?」
「いや、緊急だったからな。備え付けのやつだけど寝巻きを借りたんだよ」
「勇介くん、似合ってるぞ!」
「ありがとな、義経。それじゃ、俺の布団はあっちのほうで」
「いや、ユウはこ・こ」
ポンポンと叩くのは弁慶の隣だ。その反対側には清楚が、義経は弁慶の反対隣だ。
「……一応最終確認だが、本当にいいんだな?」
「私は構わないよ?襲っちゃう?」
「襲わない。どうすんだよ、そんなに煽って」
「あはは、ごめんごめん。再会が嬉しすぎたの。許してくれる?」
「怒ってはないよ。……ただ、そういう煽り方は危ないから気をつけろよ?」
「やらないよ、ユウ以外にはね。ね、義経」
「えぇ!?そこで私かっ!?」
「じゃあ清楚さん?」
「わ、私も……そんなこと聞かれても困るな」
「まぁ、寝るだけだからな」
「あれ、意外と落ち着いてる系?」
「まぁ、昔からクリス……幼馴染の子な。それと猟犬部隊の子たちと一緒に寝たりすることが多かったからな」
「……意外とライバル多いな……」
ボソリと弁慶が呟く。
結局、弁慶の最初に言った配置のままで眠りについた。……ただし、しっかりと眠れていたのは勇介だけだったようなのだが。
ギリギリのところで毎日更新してます(白目
仕事がもっと余裕あれば……。
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1000件いったらお礼の単発SSを書く予定です(ぉぃ
誰にしようかなぁ……。
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