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「勇介くん!」
教室に帰るなり、義経が駆け寄ってきた。
「義経はちゃんと出来ていただろうか?」
「あぁ、よかったぞ」
勇介が褒めて義経の頭を撫でる。くすぐったそうに目を細めながらも義経は嬉しそうだ。
「や、ユウ」
「弁慶。大丈夫か、学年で5位とか大変だぞ」
「私の頭の良さは知ってるでしょ。……ただ、ちゃんと安全策を打って5位だからね」
「はじめは弁慶、4位以内って言ってたんだが、勇介くんがいることを知って変えたんだ」
「ほぅ……?私たちは敵にならない、と?」
マルギッテが威嚇するように言う。ただし、口に出さないだけで同じように考えている人も少なくはない。
「そういうわけじゃないよ。ただ私たちも武士道プランの人として示さないといけない威があるからね」
「ふ……そういうことなら」
マルギッテが腕章を出すと弁慶の前へと叩きつける。
「歓迎といきましょう。受けなさい、弁慶」
川神学園らしい歓迎……つまりは決闘だ。やる気なのはマルギッテで、弁慶は面倒そうな様子を崩さない。
「弁慶、受けてやらないとマルさんは納得しないぞ」
「うーん……面倒だけどユウが言うなら仕方ないか。……それじゃ、私が軽く錫杖で叩くから。それで吹き飛ばされなければ私の負けでいいよ。戦うのは面倒くさい」
「……ものぐさですね、宇佐美先生を見ているようだ」
「オジサンと弁慶は余裕を持った人間同士、気が合うんだ」
ものぐさ=宇佐美という発言をマルギッテがしたのに対して巨人がそう言う。
「決め付けないでください。年上は好みじゃありません。ね、ユウ?」
「いや、そこで俺に振られても。っていうか、やるなら早く始めよう」
勇介の言葉にマルギッテが構える。
「来なさい。トンファーでガードをした私はまさに堅牢。その防御力は古の城塞にすら匹敵する……」
「そぉい」
ブン、と見た目だけならば大して力の入っていないような一撃。それは綺麗にガードをしているトンファーへと吸い込まれる。ただし、見た目以上の力をこめてある一撃が、だ。
「なっ!?」
驚くマルギッテはその一撃で廊下まで押し出される。
「一撃で、廊下まで押し出すとは……トンファーがなければ危なかった、ということですか」
この結果は流石に予想していなかったのだろうか、一気にざわつく教室。
「つうか普通にすっげぇ強いな、オイ!」
そう声をあげたのは準だ。確かに背は高いが見た目は普通の女性である以上そう感じてしまうのは仕方がないことだろう。……川神百代などの規格外な存在が多い川神であっても。
「この腕の痺れ……今ので軽くか……フフ、面白い」
マルギッテは 弁慶を気に入ったようで勇介はうんうんとうなずく。
「では次は、義経が威を示す番だな!」
そう言って取り出したのはなにやら色々と書き記された大学ノート。
「実は皆に認めてもらうために自由研究をしていたのだ。多馬川に来る野鳥の数の推移を一ヶ月単位でまとめたものだ!これを見ながら、義経と地球環境についても考えていこう!」
笑顔でいった義経に静まり返る教室。
「……あれ?なんだこの反応は、皆さめてるぞ?」
「だから言っただろ、義経。そんなことしてもウケが悪いって」
「は、はじめて聞いたぞ!?」
「あれ?そうだっけ、ごめんね」
「弁慶ぇ……」
少し涙目になりながら小声で弁慶を呼ぶ義経を見て満足そうに川神水を一口飲む弁慶。
「……その顔がいい……とか思ってんだろうな、アレ」
「で、では……気を取り直して。まずカルガモが……」
「あー義経。それ長くなりそうだからまた今度な」
「……カルガモ……」
「義経、後で俺が聞くから。もうすぐHR終わっちゃうし」
「う、うん!」
嬉しそうに頷く義経と、そっと勇介に目配せして手を上げる巨人。
「ところで、一年も二年もS組に人数が増えた分、Sクラスの最大人数も増えたのであろう?」
「おう、そのとおりだな」
「ぬるいのぅ。此方は嫌じゃぞ、席が余分に増えるなど」
心が言う。
「確かに。少数精鋭クラスであるなら、徹底すべきです」
ドイツの猟犬部隊という少数精鋭の部隊を率いているマルギッテだからこそ特にそう感じるのであろう。
「ということで、三人入った……いえ、鳴神くんも含めると四人ですね。その分四人落とすべきだと思います」
あずみも提案する。
「勿論、この三人とユウが落ちるかもってこと~?」
「うむ。対等な真剣勝負……これが我らなりの歓迎だ」
「俺は構わないよ。っていうより、俺も突然編入された側だからな。拒否権はないだろうけど」
「ううむ、なんだか申し訳ないな。義経たちのせいで……」
「そんな心持ちだと、落ちるのは本当に義経になるよ」
「……む。それでは武士道プランが物笑いの種だな」
「万が一落ちたらユウとも離れちゃうしね。罰としてリアル勧進帳ごっこだね」
「あれは、弁慶が義経を叩くだけで義経は痛い……」
「……フフ、それがいい。義経のそういう顔が見たい」
「弁慶、義経をあまりいじめるなよ?」
「分かってるって。フフフ……」
その日の放課後。
「おお、義経たちがいたぞ……スキがないな」
「弁慶も凄く強いわね。間近で見るとよく分かるわ」
クリスと一子がSクラスに入ってきてそんなことを話す。
「あれ?確か勇介くんの……?」
「やぁ源さん。東西交流戦ではどうも」
「ん、大和か」
「わざわざ挨拶にきてくれたのか!ありがとう!」
嬉しそうに笑顔になった義経が大和たちへと駆け寄る。
「弁慶ー、与一ー、お前たちも来てくれ」
「はーい」
なぜか弁慶に手を引かれた勇介も一緒に向かう。
「機関からの刺客かもしれねぇ。俺は会わないぞ、絶対にな」
「わけの分からないことを」
「弁慶、落ち着け。与一、俺の友達だから大丈夫だって。来い」
「兄貴が言うなら仕方ないな」
しぶしぶ、といった感じではあるが与一も来る。そして始まる自己紹介。一通り挨拶が終わり、挨拶の中で義経に恥をかかせた、と弁慶に判断された与一がプールへと投げ捨てられるなどあったのだが。
「よーしつーねちゃん、たったかおー☆」
そんな遊びに誘いに来た友達のような感じで現れる武神。
「あ、お姉さま!」
「おー、妹に弟に愉快な仲間たちも一緒か」
百代は一子と大和の頭を軽く撫でながら周囲を見る。
「……来たか、やっぱり」
呟くのは弁慶だ。予想していたのだろう、というよりは予想しないほうがおかしい。
「私にお任せください弁慶さま。この場を収めます」
何処からともなく現れる完璧執事クラウディオ。
「クラウ爺……いつの間に後ろに現れたんだ」
少し驚く弁慶。
「武神は義経さまたちに勝負を挑みたいとお見受けしました」
「ワクワクしすぎて先生に注意されたくらいですよ」
「しかし今はお断り致します」
きっぱりと百代に対して言い放つクラウディオ。
「そうですか、じゃあ仕方がないですね。……なーんて引っ込むような性分じゃないんですよ!戦わせてくださいよ、ウズウズしているんです!」
結果としては百代は義経たちとの決闘を挑もうとする川神学園外部の挑戦者たちの選別をすることで手を打った。勿論、いずれは義経たちとも戦いの場を設けるというおまけつきで。
「あ、勇介はちゃんと私と手合わせするんだぞ?」
「まぁそれで我慢してくれるならいいかな?」
勇介自身にとってもマイナスの少ない話だ。いずれは最強を目指す身である以上、百代は同年代では最高クラスの壁なのは間違いない。
「義経、俺もその決闘予約したほうがいいか?」
ふと思いついたように勇介が尋ねる。
「えぇっ!?ゆ、勇介くんも義経に挑むのか!?挑んでくるなら受ける、けど……」
「ユウなら別に決闘なんて場使わなくてもいいでしょ。私たちとは一つ屋根の下になるんだから」
「弁慶、言い方」
「はーい」
勇介にこたえた弁慶と百代がなぜか見つめあう。
「……」
「……」
「先輩と弁慶……二人はちょっと似ている感じだね」
京がそう言う。
「そうか?背は少しモモ先輩のほうが高いけど、あまり雰囲気は似てないと思うけど」
「というか、間近で見ると本当に可愛いねーちゃんだ」
何を思ったのか、百代が無造作に弁慶の胸を揉む。
「!?」
固まる男性陣。
「ン……先輩も」
弁慶も負けじと揉み返す。
「くぁっ……返してくるとは……。なかなかやるな、武蔵坊弁慶」
「初対面で舐められるわけにもいかないもので」
じっと百代を見た弁慶が。
「……90?」
「91になってしまった。んー、お前は89かな」
「負けた……」
「ふふ、武蔵坊弁慶に勝ったぞ。お前たち!」
何の勝負をしているのかは分からないが勝ち誇った百代がファミリーに声をかける。
「ど、どんな勝負だっつーの、くっだらねぇ!」
「モ、モモ先輩にも困ったものだね」
悲しいかな、前かがみになりながら言うガクトとモロの言葉に説得力はない。
「……しょーもない」
「ユウ、慰めてくれ。ベン・ケーは負けた……」
「そう言いながらしなだれかかるな。皆見てるぞ」
「私のだって、マーキングしておかないと」
「何々ー!僕も混ぜてー!」
弁慶と逆側から小雪も抱きついてくる。
「ユキ、遊びじゃないって」
「弁慶がいいんだから僕もいいでしょ?ダメ?」
「ダメじゃないけど」
「くそー!!大和、何でアイツばっかりもてるんだ!?」
「……俺からはなんともいえないけど」
「う・ら・や・ま・し・い・ぞぉぉぉぉ!!!」
ガクトが魂の叫びを上げる。
「アレもユウの友達なの?」
「あぁ、さっき自己紹介してただろ、ガクト」
「名前は覚えてるよ。でもユウと仲良くなりそうなタイプじゃないだろ?」
「そうか?……っていうか、俺そこまで交友関係多くないな、そういえば」
「ユウって女の子ばっかりだよねー」
「あぁ、それ分かる」
「ちょっと待て。それは聞き捨てならんぞ」
小雪と弁慶の言葉を否定しようとする。
「じゃ、交友関係思い出してみて」
「……」
……言われて記憶を辿り、友人と言っても過言ではない相手を思い浮かべる。
「……あまり否定できないな」
結果、勇介の友人には女が多いというのは事実だと自覚することになる。
それを聞いたガクトが血の涙を流しながら紹介してくれ、といったのはまた別の話。
お気に入り1000越えたらお礼の単発SSを書くと言った二日後に達成するとは思いませんでした(動揺
一旦ヒロイン希望の中で実現が難しそうな人を描こうかと思います。
誰が書かれるかご期待ください!なんとなく分かるでしょうけど!
感想、評価等いつもありがとうございます!