休日の朝。九鬼財閥極東本部廊下。
「んー、今日も清々しい朝であるな!」
「おはよう、紋白」
「おお、勇介!昨日はなにやら凄い気を放っておったな!」
「ごめん、迷惑かけたな」
「フハハ!あの程度で我は動じんわ!」
「ありがとな」
くしゃっと頭を撫でる勇介。
「こ、こら!誰かに見られるかも知れぬ場所ではやめいといったであろう」
そう言いながらも嫌そうなそぶりは見せない。
「それで紋白は今からご飯か?」
「うむ。よければ共にどうだ?」
「いただこう。そういえば、クラウディオさんが明日くらいに揚羽さんと局さんがこっちに来るって言ってたぞ」
「おおっ!姉上と母上が!予定が早まったのだな」
「はい。取り掛かっていた仕事が速く片付いたそうで、私も手伝っていた甲斐がありました」
突然現れたクラウディオがそう会話に入ってくる。
「さすが母上姉上。そしてクラウ爺の手際のよさよ!」
「簡単なことでございます」
いつものように微笑みを浮かべてクラウディオは言う。
「楽しみだなぁ……そわそわしてしまう」
「はは、本当に紋白は揚羽さんと局さんのことが好きだな」
「うむ!自慢の姉上と母上であるからなー」
「いいことだな。……しかし、揚羽さんと局さんか。紋白も成長したら美人に育ちそうだな」
「フハハ!今の我は違うと?」
「そうだなぁ。美人よりは可愛い感じだろ?」
「むぅ、それはなにやら威厳が足りぬ気がするが」
「可愛くても美人でも、大切なのは人を惹きつけるカリスマ性とかだろ?」
「むぅ」
そんな話をしながら食堂へと向かうのであった。
食後にクラウディオが淹れてくれた紅茶を飲んでいると、勇介の携帯に小雪から電話がかかってきた。
「小雪、どうした?」
『ユウー、僕たち遊びに行ってもいい?』
電話で突然小雪が尋ねてきた。
「唐突だな。俺は別に構わないけど、九鬼の本部だからちゃんと許可取らないといけない相手がいるんじゃないか?」
『その点は大丈夫ですよ、勇介くん。英雄には前もって許可を貰っていますし、私たちであれば顔パスでいけるんですよ』
『悪いな、勇介。ユキがどうしてもお前と遊びたいんだと』
スピーカーホン状態だろうか、冬馬や準の声も聞こえてくる。
「おぉ?勇介の友人か?」
『今の神々しいお声は紋さまっ!?勇介お前……』
「紋白、俺の友達であり兄の英雄が認める数少ない……友人の葵冬馬だよ」
「あの男か!ということは榊原と井上も来るということだな」
「流石、よく覚えてるな」
『おい勇介!?お前紋さまとまさかとは思うが一緒に食事を……』
『むー!ハゲー!僕とユウが話すの邪魔するなー!』
「まぁまぁ。ユキは遊びに来るならそこでいくらでも話が出来るだろ?」
『うん!まっててねー』
電話を切る。
「フハハ、相変わらずにぎやかな奴らであるな」
「否定は出来ないな。それでクラウディオさん」
「大丈夫ですよ。葵さまや井上さま、榊原さまは優先してお通しするように英雄さまからもお伺いしておりますので」
「それなら安心ですね」
「ユウー!」
いつものように勇介を見るなり抱きつく小雪。
「おぉ!?勇介の奴がなにやら抱きつかれてるぜ?」
「あれは榊原小雪さまですね。確か勇介にかなり懐いていると記憶しています」
「ははっ!ロックな話だな」
「おや、勇介くんはあのお二人のような大人の女性がお好みですか?」
「違うぜ、若。勇介は俺と同じロリコニアへの入国を希望しているんだ」
「ちょっと待て」
「ユウ、ロリコンだったの?」
「違うって。何で急にそうなった」
「え、だって紋さまと一緒にご飯食べてただろ」
「その程度で可能性でるのかよ、怖いな。……で、こんなところで話すのもなんだし俺の部屋でいいかな?」
「そ、それで、どうして義経の部屋に来ているんだ!?」
「あー……流れ?」
「そうそう流れ流れ。義経もクラスメイトともっと仲良くなるためにこのようなことを考えてはいたんだろう?」
「……うん。でも義経は弁慶が川神水を飲みながら楽しそうに見ているのが不思議でならない」
「不思議なんてないよ。そこに川神水とつまみがあるから飲むんだ、ね勇介」
「作れってか。まぁいいけどさ」
「ユウってご飯作れるのー?」
「普通には。準ほどじゃないと思うけどな」
「俺もそこまで得意ってわけじゃないんだぞ?若とユキの分を作ってるうちに出来るようになっただけでな」
「そういうところは似てるな。俺もクリスとマルさんの分を作ってたらな。マルさんとか料理できなくもないんだけど、普通に任せると丸焼きやらワイルドな奴がよく出てくるからな」
「……軍人って怖いな」
「全員じゃないぞ。猟犬部隊じゃちゃんと料理できる人いたし。まぁ、行軍なんかで味気ない食事が多いのも事実だけど」
さらっと作ったつまみを持ってくる。
「あ、義経。冷蔵庫の中のもの借りたぞ」
「あ、ユウ。義経の秘蔵の漬物だして」
「お前鬼か」
「だ、ダメだぞ、弁慶!?アレは義経が大事に食べているものなんだから!」
「ケチ」
「け、ケチじゃない!前に少しだけだぞってあげたら全部食べちゃったじゃないか!」
「いやぁ、ごめんね。おいしくて」
そんなまったりとしている義経たち。
「準、どうしたんです?」
「いや、今一つ屋根の下に紋さまもいると思うと、感無量というか」
「一つ屋根って……むちゃくちゃ人いるし、学園でもそうだろ」
「いやいや!勇介、お前は分かっていない。神に等しい存在である紋さまだぞ!?」
「?確かに紋白は凄い。義経は沢山学ぶべき場所はあるといつも思っている」
「間違いじゃないんだけど、義経少し間違ってるよ」
まじめに反応した義経に弁慶が返す。
「ユウ、僕も食べていい?」
「大丈夫だよ。ちょっと多めに作ったから。ほらなんかジュースとかほしいなら言ってくれたらすぐに準備するぞ。……従者の人が」
「それじゃ、榊原さんは勇介くんに助けられたのか」
「うん!そのときのユウすっごく優しかったんだー。僕にマシュマロもくれたしね!」
「そういえば義経も榊原さんからマシュマロ貰った。あの時はありがとう」
「いいよー。ユウの友達なら僕も友達なのだー」
「あぁ!」
「あれ、なにやら意気投合してる?」
「それなら私と意気投合しませんか、弁慶さん?」
「んー……好みじゃないからやめておくよ。ユウとなら喜んで意気投合したいところだけど」
「結構話あってると思うんだけどな。おーい、準。帰って来い」
「っは!危うく意識がロリコニアに飛ぶところだった」
「準はいつも飛んでるよーん。頭が」
「ひどいわっ!?」
「そういえば、与一くんはどちらに?」
「与一なら今頃ネットサーフィンでもしてるんじゃないか?」
「それは残念です。ぜひともお近づきになりたかったのですが」
本気で残念そうに呟く冬馬に苦笑いを浮かべる一同。
「まぁほどほどにな。それでユキ、今から何する?このまま話をしてるだけでも構わないけど」
「僕はユウとお話がしたかっただけだから何でもいいよ」
「私もたまにはのんびりとしたかっただけだから」
「弁慶はいつものことだろう」
「義経がいじめるー」
「私は九鬼の執事やメイドというのも気になりはしますが……色々とレベルが高いですからね、やめておきましょう」
「俺は紋さまとお会いできないか手段を考える」
真顔で言う準の肩を勇介がポンポンと叩く。
「今日は一日予定がぎっしりだから邪魔をするほうが失礼なんじゃないか?」
「くっ、こんなに近くにいるのにお会いできないとは……あーんまーりだー!」
「おやおや、本当に準は英雄の妹に惚れてるのですね」
「ま、準の意見はスルーするとして、たまにはこんな風にのんびりするのも悪くないか」
途中で勇介の顔を見に来た紋白と遭遇し舞い上がった準。準が暴走して色々な賛辞を述べるが、それに舞い上がるのではなく普通に受け入れているのは器のなせる技か。
飲み物を運んでで来た李やステイシーを交えて突然女子トークが始まったり。
のんびりとした休日はこうして終わっていくのであった。
仕事終わってから次の仕事までの間が8時間ほどしかないのであまり書けませんでした……。
しかも次は日を跨ぎそうなのですみませんが短めで更新となっています。