真剣で鳴神に恋しなさい!S   作:玄猫

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24話 西から来る納豆小町

『およ?勇介くんから電話くれるなんて珍しいね。お姉さんの声が聞きたくなちゃった?』

「相変わらずだね。久しぶり燕」

『お久しぶり勇介くん!それでホントにどうしたの』

「いや、久々に燕の声が聞きたくてね」

『あれま。もしかしてお姉さんのこと口説こうと思ってる?』

 

 そんな他愛のない話をする勇介と燕。

 

『あ、そうそう。そういえば私もうすぐ川神に転校するんだけどさ、勇介くん、川神にいるよね?』

「よく知ってるな。もしかしてモモ先輩を倒すのが目標とか?」

『可愛いツバメちゃんには武神の相手は務まらないよ』

 

 無理無理と笑いながら言う燕。

 

「ん~、燕ならいい勝負できると思うけどな。それでいつ来るんだ?」

『もうすぐだよん。それでさ!よかったら迎えに来てくれないかな?』

 

 

 川神駅前。こちらにもうすぐ来るという燕との待ち合わせの場所だ。

 

「ありゃ、私遅れちゃった?」

「いや、そんなに待ってないよ。それに予定の時間よりは早い」

「ならよかったよ。おはよ、勇介くん」

「おはよう、燕。久しぶり。部屋着とは違って可愛い服だな」

「アレ一応お気になんだけど?」

「あはは、俺はアレもアレで好きだけどな」

「アレっていわないの。でもごめんね、わざわざ休みの日に」

「いいって。修行終わったらやることは特にないしな。それじゃいこうか」

「うん。……勇介くんって休み何してるの?」

「修行して、読書して……あと修行だな」

「あれま。相変わらずストイックな生活してるのね」

「そんなことはないさ。友達と遊びに行ったりもしてるし」

「お友達できたんだ、うんうん。よかったよかった」

「……完全に馬鹿にしてるだろ」

「してないしてない。お姉さん的には心配してたのよ。あ、後おかんも心配してたからまた電話かメールでもしてあげてね」

「そういえば、久信さんとはまだ仲直りしてないの?」

「もうちょっとだとは思うんだけどね。おとんったら、いいところでお酒飲んでたりしてさー……」

 

 二人で歩きながらそんな話をする。すれ違う人々の視線がちらちらと勇介と燕に向けられる。

 

「流石は納豆小町。皆が振り返るな」

「ふふ~ん。って言いたいところだけど、私関東じゃまだ無名なのよね……」

「そういえばこっちじゃポスター見なかったな」

 

 携帯を操作して待ち受けの画面に燕のポスターを表示する。

 

「あはは、勇介くんがそういう画面出すのって凄く違和感があるよ」

「……否定はしないけど」

 

 何故勇介の携帯に燕のポスター画像が入っているかというと、以前に会ったときに燕がいたずらで入れたからだ。それを勇介は大事に……というわけではないがそのまま保存していたようだった。

 

「じゃあ燕が可愛いから見てるってことか」

「……勇介くんって時々そう言うキラーパス飛ばしてくるよね。私びっくりだ」

「ん?」

「いやいや、何でもないよ」

 

 

「え、それじゃ、勇介くんもう武神と立合いしたの?」

「組み手程度だけどな」

「どうだった?」

「強いな。明らかに俺たちの年代じゃ最強だろうな」

「へぇ……でも、勇介くんなら勝てる?」

「どうだろうな。最近同じ質問よくされるんだけど、対策はいくつか考えてるよ」

「なんだろ、私も気になるなぁ」

「燕は頭いいんだからすぐに思いつくと思うぞ。得意技だろ?」

「うわ、ひどい。私がまるで悪女みたいに!」

「悪女……」

 

 じっと顔を見つめる勇介。

 

「な、何?」

「悪女って感じじゃないな。……小悪魔?」

「小悪魔って……一気に可愛いイメージに」

「燕だしそのくらいでいいんじゃないか。っとついたぞ。ここが噂の大扇島だよ」

「へぇ、今勇介くんがすんでるんだよね」

「あぁ。そろそろちゃんと家探さないとなんだけどな。鍛錬するにしても何をするにしても便利でなぁ」

「九鬼の施設使わせてもらってるんでしょ?それなら確かに納得かも」

「ヘイ!こっから先は……って、なんだ勇介か」

「ステイシーさん。あれ、今日って立ち入り禁止?」

「いや、お前なら構わねぇんだけどさ。……ん、お前どっかで……」

「ステイシー仕事をサボって何をしているんです」

「待て待て!私がサボってるとか冗談でも言うんじゃねぇ!……ヒュームのジジイが何処から聞いてるかわかんねぇんだから……」

「全く……勇介と」

「松永燕です!これ、ウチの商品の試供品です!よかったらどうぞ!」

 

 何処からともなく納豆の試供品を指し出す燕。

 

「燕、相変わらず商魂たくましいな」

「あ、勇介くんも食べる?食べるなら食べさせてあげるよん」

「こらこら、パック出さない。そしてあけようとしない」

「おいしいのに」

「おいしいのは知ってる。でもご飯と食べるのが一番だろ」

「ファック!こいつら私たちのことを完全に忘れてやがるぜ」

「あ、ステイシーさん、李さん。今日俺、燕のところによってくるので帰り遅くなると思う」

「分かりました。私から伝えておきます。迎えなどがいる場合にはすぐに呼んでください」

「勇介くん、もう九鬼従者部隊のメイドさんを口説き落としたの?」

「人聞き悪いな。俺がいつそんなことをしたよ」

「えぇ……勇介くんって自分に対する評価と好意に対して感心薄いよね」

「……そうか?」

 

 

「おとんー、ただいまー」

「おかえり燕ちゃん!……って、もしかして勇介くん!?」

「お久しぶりです久信さん」

「いやぁ、本当に久しぶりだねー!元気してた?」

「勿論です。久信さんも元気そうで」

 

 燕の父親であり、ミサゴの夫でもある松永久信はニコニコと笑いながら声をかけてくる。

 

「元気だよ!今日こっちの知り合いと会ってくるって燕ちゃん言ってたから誰かと思ったら勇介くんだったんだねぇ」

「一応おとんも知ってる人って言ったでしょ」

「普通女の子だと思うじゃない。デートだって言ってくれれば僕だって気を使って出かけてたのに」

「……そんなこと言って、お酒のみに行くつもりだったんでしょ」

「ギクッ!そそそ、そんなことはないよ!ねぇ勇介くん!」

「ミサゴさんから久信さんのダメなところはいっぱい聞いてるのでノーコメントで」

「えぇ?!唯一の仲間候補が……」

「おとん、本気でお酒飲みに行ったりしたら……分かってるよね?」

 

 先ほどまでより数度、温度が下がったような空気を纏った燕の言葉にぶんぶんと首を縦に振る久信。

 

「それにしても……久信さん、本気でミサゴさんと仲直りするつもりあります?」

「勿論!」

「勇介くん、それに関しては私も保証するよん。おとんはおとんなりに認められるように頑張ってるの」

 

 松永の家名を高めるために必死で色々な発明をしていたことや、その中で資金繰りのために株に手を出して失敗。それに呆れたミサゴが家を出るという家庭事情を知っている勇介としてはそこは心配していないのだが。

 

「それで、燕がここに俺を連れてきたのは」

「お願い!おかんに電話してうまいこと言ってくれないかな?」

「俺は構わないけど、たぶんそれミサゴさん気づくよな」

「……だね。それでも、一歩でも進むにはなりふり構ってられないの。ね、おとん!」

「う、うん!そうだね!」

「ほら、私がご飯作ってあげるから!ね?」

「まぁ、いいんだけどさ。俺もミサゴさんに連絡するつもりだったし」

 

 

『はいはい、お久しぶりね勇介クン』

「お久しぶりですミサゴさん。今時間大丈夫です?」

『勿論。キミからの連絡だったらいつだって受けてあげるわよ』

 

 そんな会話を聞いて驚くのは燕と久信である。

 

「……おとん、おかんがホントに勇介くんのこと気に入ってるみたいだよ」

「う、うん。あんな優しいミサゴの声、久々に聞いた気がする」

「……それはおとんが悪い」

 

『それで、もしかして燕ちゃんと付き合いはじめましたーって報告?』

「いやいや、それはないです……いたっ!?」

 

 隣に座っていた燕がわき腹のあたりをつねる。

 

『どうしたの?』

「い、いえ何でも。あー、それでミサゴさん今何処に?」

『今は仕事で中国よん。勇介くんはまだ九鬼にいるのかしら?』

「えぇ。ヒュームさんたちに修行をつけてもらうのにも便利ですし。倒すのにも一番いいと思いません?」

『フフ、そういうことを本気で言える若さっていいと思うわ』

 

「盛り上がってるね。おとん、もっと話術磨いたほうがいいんじゃない?」

「ちょ、ちょっと燕ちゃん。父親に対してきつすぎないかな?」

「……いや、だって私勇介くんがおとんになるとか嫌だよ?」

「生々しい想像やめてっ!?」

 

『で、この仕事終わったら日本に戻る予定だからそしたらどこか食事くらい行きましょうか。燕ちゃんと三人水入らずで』

「すごい自然な流れで久信さん抜かないでくださいって。泣きますよ久信さん」

『自業自得でしょうに。……で、電話をこっそり聞いてる久信クンはちゃんと節制して生活できているのかな?』

 

 聞こえてきたミサゴの言葉に久信の背筋がぴんと伸びる。

 

「ちゃんと自分を律して生活しています!」

「おとん、なんでそんなに緊張してるのさ……」

『ならばよろしい。燕ちゃんに今度迷惑をかけたら別居じゃなくて離婚だから。覚悟しておくように』

「は、はいぃ!」

『全く……勇介クンもごめんなさいね、ウチの家庭問題にまで巻き込んでるみたいで』

「いいですよ。俺が勝手に入り込んでるようなものですし」

『燕ちゃん、前にも話したけど逃がさないようにしたほうがいいわよ?』

「おかん!?」

『優良物件だよ、確実に』

「もういいから!」

『それじゃ、また暇なときにでも連絡してくれていいのよ?日本に帰るときにまた燕ちゃんと勇介クンに連絡するから』

「ちょっと僕は!?」

『それじゃーねー』

 

 言いたいことを言って電話を切るミサゴ。

 

「ゆ、勇介くん。いや、師匠!」

「「師匠!?」」

 

 勇介と燕の声がシンクロする。

 

「ミサゴの心を掴む方法を教えてください!」

「いやいやいや!ミサゴさんの心を掴んだのは俺じゃなくて久信さんでしょ!?じゃないと燕は生まれてないわけで!」

「勇介くん、なかなか大胆なことを言ってるよ?」

 

 そんな賑やかな松永家が川神にやってきたことで、またひとつ大きな出来事へとつながっていくのだが、それはまた後の話。




燕ちゃん可愛いですよね。
ミサゴさんも綺麗ですよね。

ミサゴさんが投票される理由はよく分かる(ぉぃ
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