真剣で鳴神に恋しなさい!S   作:玄猫

3 / 37
2話 武士道プランの申し子たち 後編

 義経たちの今住んでいる場所には大きな書庫がある。九鬼が武士道プランのメンバーのために集めたもので量も質も非常に高いものだ。そこを特に愛用しているのは清楚である。

 

「あ、勇介くん」

「やっぱり清楚はここだったんだな」

 

 清楚は勇介が来たのを見て読んでいた本を閉じる。

 

「いいのか?」

「うん、勇介くんが来るまでの時間つぶしだったから」

「んじゃ、今日は何から調べるかなぁ」

 

 清楚は自分が何の英雄なのかを知らない。恐らくはヒュームやマープルなどは知っているのだろうが、少なくとも25歳くらいまでは教えないといっていた。それでも、清楚はなんとか自分が何者なのかを知りたいと思い、勇介に相談していた。

 

「じゃ、何度も繰り返すけど清楚のことをもっと知らないとな。好きなものとかから書き出していこうか」

「う、うん」

 

 何故か少し頬を染める清楚だが、勇介がそれに気付くことはない。日の差し込む部屋で二人並んで座り勇介の質問に清楚が答え、それをノートに書いていく。

 

「う~ん……何かここにヒントがあるはずなんだけどなぁ」

「……」

「ん、俺の顔に何かついてる?」

「う、ううん!?大丈夫だよ!」

 

 あわあわと手を振って否定する清楚に軽く首を傾げながらも書き出した内容に目を通す。

 

「歴史的な偉人ねぇ……清楚だと本当に清少納言やらの文豪とかが似合うけど、何か違う気がするんだよなぁ」

「え、そう?私はぴったりだなって思うんだけど……」

「それは同意。ただ俺の勘だと違う気がするってだけだし。まぁ何にしても」

 

 清楚に向き直った勇介が笑顔で。

 

「清楚は清楚だ。それは清楚が誰のクローンであっても変わらないさ」

 

 

「はぁっ!!」

 

 裂ぱくの気迫と共に義経の鋭い一撃が放たれる。それを紙一重で避けた勇介はお返しとばかりに同じような斬撃を放つ。

 

「っ!」

「義経!」

 

 その一言と共に割り込むように弁慶が大振りの一撃を勇介に繰り出す。避けるのは困難なタイミングで繰り出された攻撃を勇介が刀で受け止める。

 

「うぉ!」

 

 予想以上の威力に勇介の身体がぐらつく。

 

「吹き飛ばすつもりだったんだけど、ねっ!!」

 

 弁慶は義経への一撃の仕返しとばかりにあえて隙を見せつつ攻撃を繰り返す。その隙を突こうものなら義経や、その更に後方からこちらを狙っている与一の弓による一撃が来るだろう。

 

「その連携力はやばいな」

「それはどう、もっ!」

 

 あえて弁慶の一撃を受け距離を取る。すかさず与一の弓による牽制が来るが最低限の動作でそれを避ける。

 

「ちっ……義経、兄貴に力をためる時間を与えちゃいけねぇ!」

「分かった!」

 

 勇介が気を高め始めたのに気付いた与一の一言で義経が疾風の如く駆け寄る。

 

「震脚って知ってるか?元は八極拳とかの拳法では踏み込みを技の威力に乗せるものだが」

 

 ぐっ、と地面を踏みしめる。ドンという音と共に義経の足元が揺れる。

 

「うわっ!?」

「義経っ!」

「弁慶、その動きは悪手だ」

 

 義経に駆け寄ろうとした弁慶へと勇介が一気に肉薄する。弁慶の武器である錫杖を振り回しづらい距離まで入られたことで弁慶は防戦へと追いやられる。

 

「ちっ、姉御ときれいに射線をあわせてやがる……流石は兄貴!」

 

 与一も位置取りを変えながら何とか援護をしようとするが、それにあわせて勇介も動くためなかなか射線に入らない。

 

「弁慶っ!」

「あ、義経!駄目……って、遅かったか」

 

 義経が弁慶の援護に近づいた瞬間、義経の喉元に勇介の刀が突きつけられていた。

 

「う……」

「義経、何度目だこのパターン」

「うう……義経は深く反省する……」

 

 ぽんぽんと義経の頭を叩くと弁慶へと向き直る。

 

「前までに比べるとかなりよくなってきてるけど、まだまだ義経を狙われたときの動きが悪いな。ヒュームさんあたりだと弁慶は一撃で吹き飛ばされて終わりとかあり得るぞ」

「……身に覚えがあるから否定できないのが悔しいね」

 

 そう言いながら手に瓢箪を持ち透明な液体をごくごくと飲みだす。弁慶が飲んでいるのは大好物の酒……ではなく川神水だ。ノンアルコールではあるが場で酔えるという便利な代物だ。

 

「ほどほどにな。で、与一だけど」

 

 先ほどまでの訓練の反省点などを挙げていく。

 

「でもいいのか?俺はまだ教わる立場だけど」

「義経は勇介くんに教えてほしい!」

「私も賛成」

「兄貴なら異論はないぜ」

「……まぁ、俺の本来使う鳴神の技は特殊だけど色々と生かせる部分はあるだろうしな。教えることで復習にもなるし」

「ふふ、皆お疲れ様」

 

 そう言って清楚がタオルを差し出してくる。

 

「清楚も護身用の技くらいは覚えておかないとな」

「うん、一応弁慶ちゃんと運動はしてるよ」

「清楚さんは意外と力があるんだよ、ユウ」

「ちょ、ちょっと弁慶ちゃん!?」

「へぇ、意外と武力タイプの偉人だったりして」

 

 

 そんな和やかな日々は約一年続いた。義経たちは本土の学校へと通うため、この地を離れるのだ。

 

「……よし、これで全員分そろったな」

 

 こつこつと四人にばれないように勇介がやっていたこと。それは手作りで贈り物を作るというものだった。材料や道具はクラウディオに頼むことで「容易いことです」と全てすぐに集めてくれた。

 

「でも一年も色々探したけど結局清楚の正体は分からなかったなぁ。……怪しいことといったら昔に何かの歌を詠んだときに意識が~とか言ってたくらいか」

 

 色々な辞世の句を集めては見たが、どれも反応するものはなかった。

 

「そうなると日本の偉人じゃないのか?……分からん」

 

 全員分のプレゼントを持って勇介は部屋を出る。

 

 

「勇介くん!皆を集めておいたぞ!」

「あぁ、ありがとな義経」

 

 いい子いい子と頭を撫でる。少しくすぐったそうにしながらも嬉しそうに頬を染める。

 

「で、ユウが私たちを集めたのは何?もしかして宴会でもする?」

「弁慶は相変わらず川神水のことばかりだな。……えっと、皆もうすぐ転校……であってるか分からんが本土の学校に通うって聞いた。つまり俺もここから離れることになる」

「勇介くんは一緒に行かないのか……?」

「はは、俺は武士道プランには無関係……とは言わないけど、一緒に行くのは違うだろ。元々俺も修行の途中で寄ったようなものだしな」

 

 そこまで言ってこほん、とひとつ咳払いをする。

 

「で、だ。とはいっても、俺からしたら四人とも大事な存在だしこのまま別れるのは俺自身が嫌だった。だから」

 

 勇介がそこまで言ったところでクラウディオが四つの箱を持ってくる。

 

「俺から贈り物だ。まず与一」

「おう」

「正直、何がいいか分からなかった。だから俺が注文した弓に俺が装飾した」

 

 流石に弓は作れなかったと笑う勇介。

 

「兄貴……!いいのか、こんないいもの貰ってしまって」

「むしろ貰ってもらわないと困る。弓も使えなくもないけど俺は素手と刀がメインだしな」

 

 弓に彫られた龍を見て与一が目を見開く。

 

「こ、これ、兄貴が彫ったのか?」

「あぁ。弓に変な癖がつかないようにバランス崩さないようにとかめちゃ気つかったぞ。大事にしてくれ」

「あぁ!!」

 

 満足気に引いてみたり確認している与一を見て勇介も満足そうだ。

 

「次に弁慶」

「ん」

「俺お手製の瓢箪だ」

「……まさかと思うけど、ユウ」

「ははは、それの加工は俺がやったよ。あとついでにその紐も俺が組んだ」

「組んだ、って……」

 

 驚いたような呆れたような反応の弁慶。

 

「一応、九鬼の加工部門に頼んで耐久性と衛生面を完璧に整えてもらった。そこは俺が適当にするわけにもいかないからな。ついでにほら」

 

 既に瓢箪の中に入れてある川神水を注いで弁慶に差し出す。

 

「こ、この香りは!」

「飲みたいって言ってた大吟醸。まぁ瓢箪のおまけな」

 

 瓢箪を弁慶に渡すと癖っ毛を優しく撫でる。

 

「義経を頼むな」

「言われずとも。……ふふ、いつも義経の頭ばかり撫でるからちょっとだけうらやましかったんだ」

「おいおい、人の膝でたまに寝てただろ。そのときよく撫でてたぞ」

「え、そうなのか。寝てて損したな」

 

 弁慶がそういうのを聞いて苦笑いを浮かべる。

 

「さ、義経」

「う、うん!」

「義経には刀飾り用の組紐と、新しい髪結いの紐だ。ごめんな、このくらいしか思い浮かばなくて。流石に刀は打てん」

「義経は嬉しいぞ、勇介くん!」

 

 目をキラキラとさせながら義経は喜ぶ。

 

「ほら、義経」

 

 勇介に手招きされ、更に一歩近づくと頭を出す。なれた手つきで義経の今つけているリボンを解くと新しいものをつける。

 

「ん、やっぱり似合うな」

 

 さらっと頭を撫でる。

 

「ありがとう、勇介くん!」

 

 満面の笑みの義経に勇介も微笑みかける。

 

「さ、最後に清楚」

「うん」

 

 すっと勇介の前に進み出る清楚。

 

「清楚に質問」

「何かな?」

「俺からのプレゼントと、清楚の正体の可能性。どっちがほしい?」

 

 勇介の言葉に驚いたような清楚だったが、すぐに微笑みを浮かべる。

 

「勇介くんからのプレゼント以外の選択肢はないよ?」

「はは、清楚ならそういうと思ってた。何があっても」

「私は私、でしょ?」

「そうそう。で、清楚には」

 

 綺麗な桐の箱を開けるとその中にはヒナゲシの髪留めが。

 

「あ……」

「ほら、清楚の好きなものでヒナゲシって言ってただろ。だから髪留めにしてみたんだ。これならいつでもつけていられるだろ?」

 

 はは、と笑いながら言う勇介の前に進み出る清楚。

 

「つけてくれる?」

「ん、勿論」

 

 清楚の髪に手を伸ばすと優しく髪留めをつける。

 

「おぉ、我ながら完璧だな」

「ふふ、勇介くんありがとう」

 

 

「もうよろしいのですか?」

「はい。ちゃんと四人に渡したいものも渡しましたし大丈夫です」

 

 翌日。予定通り義経たち四人は本土へと渡ることとなった。

 

「勇介くん!困ったことがあったら、すぐに言ってほしい。義経たちはいつでも勇介くんの力になるぞ!」

「あぁ、ありがとうな、義経」

「ユウは意外と無茶するからね。絶対にいつか会いに行くから」

「待ってるよ、弁慶」

「兄貴、メールするからな」

「ほどほどにな」

「勇介くん」

「ん?」

「また、会えるよね?」

「会えるさ。義経が何かあれば来てくれるって言ってたけど俺も何かあれば駆けつける。ヒュームさんとかクラウディオさんとか、そのあたりに言ってくれればいつでも会えるんじゃないかな」

「……そうだね」

「さぁ、行きましょう」

 

 従者の一人がそう言って義経たちは乗り物へと乗り込む。最後に清楚も乗ろうとするが、一瞬止まる。

 

「ん、清楚……」

 

 タッと勇介のほうへと駆け寄った清楚が顔を寄せる。頬に感じる柔らかな感触。

 

「……え?」

「またね!」

「おやおや……青春ですねぇ」

 

 状況が把握できていない勇介と真っ赤になって乗り物へと乗り込んだ清楚を見てクラウディオは優しい笑みを浮かべていた。




清楚ちゃんマジ清楚(ぉぃ

ヒロイン力高めですが、まだメインヒロイン確定ではありません!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。