真剣で鳴神に恋しなさい!S   作:玄猫

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ヒロイン希望の内容を集計して少し間に挟みこみます!
流れが少し変わってますが気にしないでください……。


6話 幼き頃の記憶

 幼い頃の一日というのは、大人のそれよりも濃く長く感じるものである。幼い頃の勇介は、祖父である天膳に連れられて修行の旅を続けていた。その最中、実はある場所へと立ち寄っていた。

 

 川神。成長した彼はこの地を過去に訪れたことがあるということを今はまだ思い出してはいない。そしてそのときに、運命の出会いを重ねていたということも。

 

 

「やーい、椎名菌!悔しかったらやり返してみろよー!」

「……」

 

 複数の男の子にいじめられている少女。少女といってもガリガリに痩せていて着ている服もボロボロだ。

 

「おい、石投げてやろうぜ」

「そうしよう!」

 

 幾つかの石を何とか避けていた少女だったが、ひとつの石が頭に当たる。

 

「あぅ!」

「はは!命中!!」

「おー!おれたちも続けー!」

 

 怯んだ隙に投げつけられる石。次に来る衝撃に少女が目を瞑る。……だが、来ると思った衝撃がいつまで経っても来ない。

 

「……?」

「おい、抵抗する気のない一人に対して複数でとか、卑怯だな」

「な、なんだよ!お前何処の学校だー!?」

「お前も椎名と同じばい菌かー!」

「ばい菌?」

 

 言われた言葉に首をかしげて少女を見る。俯いた状態でよく分からないが、怯えていることだけは勇介には分かった。

 

「何処に菌があるんだ?あぁ、自分たちがばい菌だって言ってるのか。確かにそうだよなぁ、卑怯で馬鹿だし」

「何だと!」

 

 怒った少年の一人が勇介へと殴りかかる。

 

「素人のガキ相手に本気出したら怒られるから手加減してやるよ」

「皆やっちまえ!」

 

 繰り出される駄々っ子のようなパンチを右手一本で弾く。しかも結構な威力のようで弾かれた子たちは腕を押さえて蹲る。

 

「な、何だよこいつ!?」

「い、石投げろ!」

 

 離れて石を勇介に向かって投げつける。だが、勇介にあたるはずの石はそのままの流れで全て投げた本人へと返って行く。

 

「ぎゃ!」

「痛いっ!!」

 

 石にあたって更に蹲る子たちが増える。中には泣き出す子もいた。

 

「で?まだやるのか?」

 

 そう言って一歩踏み出した勇介に怯む子供たち。

 

「に、にげろー!」

「ばけものだー!」

「ふん、しょーもない」

 

 勇介はそうつぶやくと、少女に向き直って手を差し出す。

 

「立てるか?」

「う、うん」

 

 そう言って勇介の手を取ろうとした少女だったが、何かに気付いたように手を止める。

 

「どうした?」

「わ、私、汚いから……」

「……汚くないよ」

 

 引っ込めようとしていた手を強引につかんで立たせる。

 

「ほら、大丈夫?」

「う、うん。あ、あの……」

 

 モジモジしながら上目遣いで勇介を見る少女。

 

「あ、ありがと……」

「ん。気にしないでいいよ。俺があんなしょーもないことしてるのが嫌だっただけだから」

「しょーもない?」

「うん。君がばい菌なわけないじゃん。変な奴らだな」

「……ふふ」

「何で笑うんだよ」

「だって、私のこと嫌がらない人、いないから……」

 

 川原で二人で話をする。ぽつぽつと語られる話は勇介にとっては驚きのものばかりだった。

 

「うーん……そんな奴らと一緒の学校、行きたくないな」

「でも、ちゃんと勉強しないと立派な大人になれないよ?」

「そうかなぁ?勉強しててもそんな大人には俺はなりたくないな。でも、その仲良くなりたい子たちとちゃんと話せるようになったら、仲間にいれてもらえるんじゃない?」

「そうかな……」

「そうだって!俺、いつまでここにいるか分からないけど、また仲間になれなかったら俺が一緒にお願いしてあげるからさ」

「う、うん!」

 

 それからも幾度か、勇介と少女は放課後に話をしていた。あくる日、放課後にある少年と話をしている姿を見て勇介はほっとする。

 

「なんだ、ちゃんと話かけられたみたいだな」

 

 勇介に対して浮かべていたのと同じ笑顔で少年と話しているのを見てほっとした勇介はその場を後にする。互いに名前を知らないまま分かれた少女と勇介が会うのは、はるか先の話となる。

 

 

 同じ頃、もう一人勇介とであった少女がいた。あっちへフラフラ、こっちへフラフラと少しおぼつかない歩き方の少女だ。

 

「どうしたの?」

「あ……」

 

 同じ年くらいだろう、真っ白な肌と同じく真っ白な髪。真っ赤な目が特に目を惹く少女だった。

 

「もしかして、お腹すいてる?」

「う、うん」

 

 倒れそうな少女の身体からうっすらと見える気で勇介が尋ねると静かに頷く。

 

「今持ってるの、お菓子しかないけどあげるよ」

「いいの?」

「うん。普通のマシュマロだけど」

 

 差し出されたマシュマロを口に入れた少女が目を輝かせる。どうやら気に入ってもらえたようだ。

 

「おいしい?」

「うん!僕、こんなにおいしいの初めて食べたよ!」

 

 お腹はふくれていないだろうに凄く元気になった少女に勇介も笑顔になる。

 

「はは、それならよかった。今度会うことがあったらおにぎりくらい準備してあげるよ」

「ありがと!」

 

 

 それから、何度か少女とあった。いつも勇介に会うまでは元気がなく、食事もまともに食べていないような状態だったが、勇介が昼に食べる予定だった握り飯などをあげたり、気に入ったようだったマシュマロを上げたりしているうちに少し元気が出てきたようだ。

 

「ねぇ、僕お母さんに好きになってもらえるかなぁ?」

「……」

 

 それとなく、少女から家のことを話で聞いていた勇介は口を噤む。子供でも分かるほどに少女の母親は不安定だ。下手をすれば最悪の事態が待っているのではないかと思ってしまうほどに。

 

「ユキはさ、どうしてもお母さんと一緒に居たい?」

「うん……きっと、お母さんが僕に冷たいのは僕が何か悪いことをしたからなんだ」

 

 どうしても母親に愛してほしいユキはそういう。

 

「そっか。俺も子供だし、何かしてあげられることは少ないと思う。でもそうだな……うん、大好きなお菓子とかあげて誰かと仲良くなるとかいいんじゃないか?」

「マシュマロを?」

「そうそう。皆でおいしいお菓子食べたら仲良くなれるんじゃないかな」

「僕とユウみたいに?」

「そうだね。同じ学校が難しいなら、違う学校でもいいんじゃないかな。そのあたりで遊んでる子とか」

「うぅ……大丈夫かなぁ?」

「大丈夫だよ」

 

 そう言って勇介は優しくユキの頭を撫でる。

 

「こんなに綺麗な髪と目をしてるんだから、きっと仲良くなれるさ」

「う、うん!頑張ってみる!……でも、ユウは?」

「俺はもうすぐ次の修行の旅に出ると思う。いつ帰ってこられるか分からないから……だから、仲間に入れたら教えて」

「うん!僕、頑張ってみるよ!」

 

 後日ユキは、無事にあるグループへと入ることになる。それを見届けある日少女の前から勇介は姿を消す。またいつか会いたいな、とユキの心に幾ばくかの寂しさを与えて。

 

 

「っ!」

 

 椎名京は昔の夢を見て飛び起きる。隣ですぅすぅと寝息を立てているのは直江大和。京が絶賛片思い中の相手だ。あらゆる手段を講じて京の侵入を阻止しようとしているが全てが空振りなのもいつものことだ。

 

「小さい頃の夢、久々に見たかも」

 

 ぼそりとつぶやく。幼い頃の夢を見ると、汗でぐっしょりとなり正直気持ちのいいものではないことが多いのだが、今回の夢は違った。最近では忘れてしまっていた、懐かしい思い出。

 

「……どうしてるのかな、あの子」

 

 名前も知らない少年だったが、京にとっては大きな影響を受けたことは否定できない。もしずっと傍にいてくれたなら、今とは違う自分がいたかもしれないと思えるくらいには。

 

「……しょーもない」

 

 ぼそりとつぶやいた言葉は、京の覚えている少年の言葉だ。悩んでいたことをたった一言で斬り捨てた言葉。今では京の口癖とまではいかないにしても、よく使う言葉となっていた。

 

「どんな子だったっけ。とりあえずすっごく強かったことは覚えているけど。……モモ先輩には勝てないだろうけど」

 

 そんなことを考えながら大和の布団へと再度もぐりこむ。……とはいえ、大和が望まない以上、添い寝でやめているのは褒めていいのかは分からないが。

 

「ふふ、きっと元気にしてるよね」

 

 

 時を同じくして、もう一人の少女……ユキと呼ばれていた少女も無事に成長を遂げていた。あの後、母親による虐待が明るみに出て別の少年たちによって救われた少女は、優しい義理の父母を得て幸せな生活を送ることができた。

 

「久々に昔の夢を見たのだ」

 

 独り言、というには少し大きな声でユキはつぶやく。

 

「ユウ、元気にしてるかな~」

 

 ユキ……榊原小雪はそう呟きながら、ベッドの傍においてあるマシュマロの袋を見る。

 

「また会えたら、今度は僕がマシュマロをあげるんだ」

 

 その袋は、初めて会ったときに勇介から貰ったものだ。綺麗に洗ってこれまでずっと大切に保管していたのだ。

 

「でもよく考えたら僕、ユウって呼び方だけで苗字とか聞いてないなぁ。うーん」

 

 困ったように腕を組んで首を傾げるが、考えても答えが出ることはないだろう。話の中で聞いていない……聞いていたとしても、実際に呼んだりしていない以上記憶には残っていないのだから。

 

「う~ん、わかんないや。明日トーマと準にきこーっと」

 

 答えは出ない、という答えが出た小雪はそう言うと再度ベッドに横になる。

 

「僕がこんなに元気になったって知ったらびっくりするかな?トーマと準を守るために強くなったって聞いたら褒めてくれるかな~?」

 

 再会したわけでも、再会できると決まったわけでもないのに楽しそうに、嬉しそうに独り言を言う小雪の表情は、昔と違い満面の笑みだ。

 

「よーし!明日また新しい紙芝居を書くのだ。それでそれで……」

 

 そんなことを言いながらすぐに眠りへと落ちていく。

 

 

 二人の少女と、勇介。

 

 再会の日は、刻一刻と迫っていた。




状況としてはSの幼少期分岐で、大和が受け入れることを許したルートになります。
ですが、そちらのルートほど大和に懐いている状態ではありませんので、大きな違和感はないと思います。
賛否両論あるかもしれませんが、ヒロイン希望も視野に入れたお話だと思っていただけると幸いです。
とりあえずは、二人の幼い頃に勇介が影響を与えているルートと思ってください!
(ちなみに本来マシュマロを小雪に上げたのは名も知らないおばさんです)

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