IS-恒星に手を伸ばす-   作:嘉瀬

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凄まじく暑くなってきたので初投稿です。



では第一話「始まり(ハプニング)は突然に」張り切っていきます




1:始まりは突然に

 空を見ても何も思わなくなったのはいつ頃からだっただろうか。

 

 俺、藍澤要(あいざわかなめ)は手に持った書類を起き幾数ものコードに繋がれた機械、インフィニット・ストラトス――通称ISを眺めてふと思う。

 ここは宇宙開発機構イシムラの研究施設の一室。部屋の中央に黒い西洋の鎧をあしらったISが片膝を付いて佇み、その現在の状態を表示された複数のモニターとそれを置いてあるデスク。そして床のいたるところには付箋が張られたIS関連の書類が山積みになって置いてある。

 

 この部屋は本来彼の両親が宇宙空間で扱える工具類を開発していた場所なのだが、その両親がチームを引き連れて海外へ長期出張へ行っているため、留守番として置かれた息子の(かなめ)がISの整備に使っている。今はイシムラが企業代表の機体―(クロガネ)の整備をしている最中である。

 

 と言っても内部フレームと駆動系統の調整だけだったのでシステムが立ち上がるのを待つばかりであるが、既にメインシステムの再構築を始めてから20分経過しているが一向に終わる気配がない。

 

 

 今整備しているISだが、ISを開発した篠ノ乃束(しのののたばね)博士は当初、宇宙のあらゆる環境で動くことを想定した操縦者を覆うパワードスーツとして世に発表した。

 

 が、宇宙進出は一向に進まず、一時は「兵器」へと転用されるも現在は各国の思惑からアラスカ条約が締結され、スポーツ用へと落ち着いている飛行パワードスーツとして扱われている。"女性以外に使用できない"という致命的欠陥を抱えている。

 

 そう、()()()()()()()()()のである。

 

 彼の夢は空の先、宇宙に行くことだ。そこに至る手段を目の前にして性別の壁が立ちはだかり、すぐそこまで迫っているのに手が届かない状態がかれこれ5年続いている。

 

 我ながらよく道を外さずにここまでまっすぐ育ったものだと思う要は苦笑いをしながら背凭れに体重を預け天井を仰ぐ。

 

 ISが発表されてから5年。5年も経つのに人類は未だに宇宙へ飛び立とうとはしていない。生殺しにされてる気分だ。5年あれば俺ですら似たようなものを作れるというのに……嗚呼、忌々しい。そんなにお偉いさん方は地べたを這いながら元のコンセプトを無視してまで自身のプライドを守ろうとするのか。理解できない。そんなにデカい顔したいなら誰よりも先に宇宙へ出て衛星を作るなり惑星を探査するなりさせればいいものを。そもそも―――」

 

 恨み、というわけでないがそれに近い感情を各国のお偉方に向けていると甲高い機械音が(クロガネ)のメインシステムが立ち上がった事を知らせてきた。

 

 いかんいかん。こうも暇だとどうでもいい事を考えてしまっていけない。というか口に出ていたか。俺は頭をかきながら(クロガネ)に取り付けたコードを取り外すべく立ち上がり機械類でやや入り組んでいる道のりを難なく通りコードを外していく。

 

 「お疲れさん、(クロガネ)。いつも愚痴って悪いな」

 

 お前も愚痴りたいだろうにと(クロガネ)に話しかける。

 ISのコアには感情がある。と誰かが言っていたのを聞いたことがあるので整備している時には話しかけるようにしている。信頼関係が大事だからという理由でだ。まあ基本的に会話というよりは話しかけるだけの一方通行。傍から見たら変な人だ。搭乗者ならある程度コアの考えていることが分かるらしい。俺も乗れればあるいは……いや、考えるだけ無駄か。

 

 とりあえずメンテナンスは終わらせたので後は最終チェックの為に動かさないとならない。搭乗者である幼馴染の情報端末に整備が終わったと連絡を入れた。

 

 最近受験勉強が忙しかったらしく連絡を取るのが憚られていたので会えていなかったが、今日の午前で入試が終わったらしいから遠慮なく入れる。

 

 ちなみに俺は前期で志望校に受かっているのでこの時期に勉強に追われるなんて事はないと告げておく。

 

 俺は椅子に座り、友人と何気ない会話を興じるように(くろがね)に語りかけながらすっかり温くなった珈琲を啜り、共に搭乗者(幼馴染み)を待つことにした。

 

 

 ~〇~

 

 

 私は風戸優埜(かざとゆうや)。どこにでもいる普通の中学3年生です。

 窓の向こうから顔を覗かせる夕日が差し込む中、研究所の廊下を早足で進んでいます。

 

 目的地は私の相棒であるISと幼馴染が待っているであろう第三研究室。

 最近受験勉強漬けであまり会えなかったので逸る気持ちを抑えつつ、すれ違う職員さんにあいさつしながら進んでいます。

 

 そんな私ですが、本日付けで受験勉強が終わりました!そして面接と筆記も手ごたえばっちりだったので肩の荷が下りています。だから心なしか足取りが軽くて、例えるならもう何も怖くない、ってかんじなのかな。

 

 等とやっている間に第五研究室の前に到着したので私はノブに手をかけてノックもなしに部屋に突入する。

 

 「おっひさー!カナー、クロちゃん迎えに来たよーっておろ?」

 

 部屋に入ると、隅には新品同然になっている私の相棒のIS(クロガネ)のクロと、その前の机には幼馴染のカナこと藍沢要(あいざわかなめ)が疲れ果てたのか突っ伏して寝ていた。その顔を覗いてみると少し幸せそうである。大方、宇宙に行っている夢でも見ているのだろう。そんな中悪いけど揺すって起こすことにする。

 

 「カーナー。おきてー」

 「……ん、ん?ああユウか。……かなり寝ちまったな」

 

 私に気が付くとカナはゆっくりと上体を起こし、腕時計を見て顔をしかめた。どうやらちょっと寝るつもりが熟睡してしまっていたみたい。待たせ過ぎちゃったかな。

 

 カナはスリープ状態になったパソコンをつけてから立ち上がるとコーヒーメーカーの前まで歩いていった。

 

 「随分かかったじゃないか。砂糖は?」

 「色々あってね。4つお願い」

 

 私はカナが珈琲を入れてくれている間に(くろがね)を待機状態のネックレスにして首から下げる。おかえりなさい、クロ。心の中で優しく語りかけると待機状態の(くろがね)の宝石部分が胸でキラリと光った気がした。すると目の前に珈琲が差し出される。

 

 「あいよ。何かトラブルでもあったのか」

 「ありがと。試験自体は平和に終わったんだけどね」

 

 ずずっと珈琲を一口。あー暖まるー。

 

 「いざ帰ろうとした時にさ、何か受付のお姉さんがパニックになっちゃっててさー。それでいてその場にとどまるように放送があって、待ってたらこんな時間だよ。ごめんね待たせて」

 

 ここで珈琲をもう一口。甘味と苦味を調和がたまらない。カップから目を戻すとカナはいつの間にか書類の束に手を伸ばしていた。そして中身を確認してからその書類を渡してくる。

 

 「気にしてないさ。はいこれ、今回の破損箇所の詳細」

 

 後で目を通しておいてと言われたので手に持っていたカップを置いて。両手で受け取る。中を軽く見ると、この前新しい武装の稼働テストで()()()()()無茶した際に感じた違和感の原因が書かれていた。

 

 ―――過負荷によるフレームの稼働域の破損、及び使用武装の外装の融解、etc.etc...

 

 ……今度からは無茶しないようにしよう。

 

 「毎度言っているけど、もう少し優しく扱えないのか?俺は整備とか好きだからいいけれど、そろそろ(くろがね)に呆れられるぞ」

 

 そっと見なかったことにして書類を鞄にしまった私を見て溜め息を吐くカナに、そうしますと項垂れるしかない私。何かクロからもしっかりしろって言われてる気がするし、ホント、善処します。はい。

 

 いつもごめんねーと左手でクロを撫でているとカナはクロのスペックデータをPCのモニタに出した。どうやら向こうの準備が終わったみたい。

 私は研究室の実験用の開けた場所まで駆け足で移動する。途中配線に足をとられそうになったけど気合いでやり過ごす。

 

 「さて、時間が惜しいからさっさと済ませてしまおう。ユウ、(くろがね)を展開してくれ」

 「OK、カナ。……おいで、(くろがね)っ!」

 

 手にしたクロが発光し、暖かい何かに包み込まれる感覚がする。久しく感じていなかったこの感覚に懐かしさを覚えて思わずにやけてしまう。久し振りということもあってか心なしかクロも嬉しそうだ。

 

 光が収まると、先程膝を付いて佇んでいた鎧を身に纏う私が立っていた。

 目の前には展開する前の光景に加えて、残存SEや武装の残弾数、そして破損状態がリアルタイムで表示される厚さを感じさせないディスプレイが視界を遮らないように展開される。

 

 手を握ったり開いたりする。以前と比べて滑らかだ。流石カナ。イシムラの技術主任代理の名は伊達じゃないね。……うん?

 

 腕の仕込みと右手に付けられた盾の状態を確認していたら、拡張領域(パススロット)に何も入っていないことに気がついたので手を振ってカナに確認する。

 

 「問題なさそうだな。常時展開の武装も良し…と」

 「ねえカナー、拡張領域(バススロット)に何も入ってないんだけどー」

 

 モニタに表示される現在の(くろがね)のデータと以前のデータを見比べていたカナはキーボードを弾きながらこちらを見ずに答える。

 

 「まあ今日は本体の調整だし、後付けの武装は第二研(むこう)で修復中だからな」

 

 てか融解し( と け )た物を修復ってなんだろうなと言いながら物凄い早さで手を動かしている。

 第二研とはここの1つ隣りの棟にある第二研究室のことで主にISの武装を研究開発している所である。

 しかし、今思い返しても手にしてた銃が熔けたことが不思議でならない。あの時は他社の企業代表の人と普通に模擬戦していただけだったはずなので、取り分け熔ける何て事はないと思うのだけど……。

 

 謎だぁと腕を組んで考え込む私。何かクロもクエスチョンマークを出している気がするし割かし原因不明なのでは?

 

 「どうした。何か不具合でも見つかったか?」

 

 そんな私たちに手を止めてこちらを見てくるカナ。私はいやいやと手を横に振って違うよーというジェスチャーを送る。ついでに首も横に振っておこう。

 

 「?……ならいいんだ。丁度こちらの確認も完了したからもう終わりにしよう」

 「はーい。じゃあ戻ろうかクロ」

 

 二人ともお疲れと言ってカナはモニタの電源を落していく。それを見てから私はクロを待機状態に戻し、足元に注意しながらカナの処へ向かう。走ってきたのはいいがこの床は何とかならないものなのだろうか。いつか転びそうで怖いよ。

 

 張り巡らされたコード類に足を取られないよう慎重に慎重に進む私。軽くトラップと化したコード群を渡りきった頃にはカナは全ての作業を終わらせてドアの前で待っていた。

 私は慌てて鞄をとってドアに走る。それを見てカナは慌てなくていいのにと苦笑い。

 陰る日を横目に二人で廊下を歩く。そして家に帰るまで何気ない会話が続き、やっと孤独な受験勉強から解放されたのだと、いつも通りの日常が帰ってきたのだと(大袈裟すぎるが)私は実感した。そしてこれからもこういう普通の日常が続いていくのだろうと思っていた。

 

 

 翌日の朝、『男性で始めてのISの適正がある人物が見つかる』というニュースが流れるまでは。

 

 

         Next ___

 




次回、『二人目の搭乗者』
冒険の舞台が君を待つ
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