IS-恒星に手を伸ばす-   作:嘉瀬

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一ヶ月足ったので初投稿です。

今年の夏は酷暑で台風が複数発生した上に変態軌道を描いて各地に被害を及ぼし、更に追い討ちで地震。最近の日本はどうなっているのでしょうか。
自分はそろそろ日本が沈むかもしれないと戦々恐々としています。

……この勢いでゴジラとか出てきても不思議じゃないな。

では第三話「IS学園(まくつ)への切符」、始まります。


3:IS学園への切符

――○

 

 雲一つ無い澄んだ空。白い鳥と黒い鳥が仲睦まじく翔んでいる姿がとてもよく映えるなと俺は窓から空を眺めて思う。

 

 本日は快晴で、こういう日は外に出て運動したくなるものだ。河川敷に沿うようにランニングしたり何かしらのスポーツに興じるのも良いかもしれない。さぞ楽しいだろう。

 

「――ああ、空はあんなに青いのに」

 

 どうしてこうなってしまったんだ、と俺はため息混じりに独り言を呟いている。

 

 事の発端は一時間前の出来事。

 

 母校で行われた適合者試験にてISを動かしてしまったことが切っ掛けだった。

 

 時間以外の何もが停止して俺自身も今後のことを考えすぎて混乱していたところ、ある女性の一声で我に返ることが出来た。

 

 その女性の名前は織斑千冬(オリムラ チフユ)。元日本代表のIS搭乗者にして、第1回IS世界大会「モンド・グロッソ」で優勝した『ブリュンヒルデ』の異名を持つ女性だ。

 

 現在は引退してIS学園で教鞭を振るっているらしいがその覇者のオーラは健在で、騒ぎかけていた体育館内を一睨みするだけで静めしまったほどだ。

 

 そんな人物から学校の応接室で待つように言われて今現在言われた通りに大人しく座って待っている。一瞬だがこのまま逃げてしまおうと思ったけれど、大魔王からは逃げられないので、もう色々諦めて窓の外をぼんやりと眺めている。

 

 そんなお通夜ムードの室内には俺ともう一人いる。それは幼馴染みであるユウだ。

 

 ユウはあの時慌てていたものの逸速く復帰して側にいてくれたのだ。正直いてくれて凄く助かっている。今も安心させようと俺の手を握ってくれているのだが、その手は若干震えている。それに気が付きユウの目を見ると不安の色を映していた。

 

 突然幼馴染みがISを動かしてしまえばこうもなる。

 

 昨日と同じ今日が、今日と同じ明日が永遠に続いていくと思っていたのに。突如として変わってしまったから

。にも関わらず、それでも必死に笑顔を作っていつもの言葉を口にする。

 

「私がいるんだから大丈夫だよ」

 

 安心して。私が着いているんだから、と。

 

 物心ついた頃から耳にしている台詞。それを聞けば不思議と落ち着ける、魔法の言葉。

 

 それを聞いて現実逃避気味だった精神が帰ってくる。

 

 どちらかと言えば安心させなきゃいけないのは俺の方なのに、本当に、俺には勿体ないくらいに優しい幼馴染みだ。

 

「ごめんな、心配かけて」

 

「いいんだよ。クロのことでいつも心配させているのはこっちだもん。こういう時くらいは私に頼ってよ」

 

 俺が謝ると一瞬キョトンとしたが頬を掻きながら気にしないでと言ってくれた。さて、これからどうするかと窓の外を見ながら考えようとするとユウはだ・け・ど、と続ける。

 

「こういうときは「ごめん」じゃないでしょ?」

 

 それを言われると痛い。

 いつもユウに言っていることを言われる日が来ようとは思わなかった。いつの間にか天使のような微笑みがイタズラっぽいものにシフトチェンジしているし。普段の意趣返しか。してやられたな。

 

「……ありがとな」

 

「どういたしましてだよ、カナ」

 

 

「いい雰囲気のところ申し訳ないが、そろそろいいだろうか」

 

 

 ノックの音。

 気が付けばお互いに見詰め合っていたが、部屋に第三者が入ってきたことにより気恥ずかしくなったので急いで視線をそらし座り直す。

 

 その第三者――織斑千冬は青春だなと呟きながら俺らの対面に座り、肩から提げていたカバンをテーブルの上に置く。

 

「まずは遅れて申し訳ない。場が乱れていたので撤収作業に時間をとられてしまった」

 

 ピシッと背を伸ばしてこちらを見据えてくる織斑さん。その凛としたその雰囲気に当てられ自然とこちらも姿勢を正してしまう。

 

「い、いえ。気にしないでください」

 

 緊張で声が上ずる。目の前に世界最強がいて緊張するなという方が無理だろう。こんなん誰でも緊張するわ。現に隣に座るユウもカッチカチに固まっているし。

 

 そんな俺ら二人を見てふふっと笑うと織斑さんは置いたカバンの中からマル秘と大きく判の押してある書類の束を取り出して俺に差し出してきた。

 その書類を失礼の無いように受け取ると織斑さんは懐からボールペンを取りだして目の前に置く。

 

「既に教員から話はいっていると思うが、君にはIS学園に入学してもらわなければならない」

 

 確認のために説明させてもらうと織斑さんは言った。それは朝のホームルームで担任が言っていたことと同じで、受験に受かっている者は取り消しとなり強制的にIS学園へと入学しなければならないというものだった。渡された書類にもその事が長々と書かれている。内容は理解しているけれど一応は目を通しておこう。こちらに不利な項目があるかもしれない。 

 

「……聞けば、君は志望校に受かり後は卒業を待つだけだったそうだな。こんなことになってしまって本当に申し訳なく思っている。だが、これは君の身の安全を考慮してのことだと理解してほしい」

 

 一行一句漏れがないように目を走らせていると織斑さんが申し訳なさそうに言ってきた。真剣に読んでいる姿がこの人には、どうにかして志望校に行く方法を必死になって探している様に見えたらしい。

 

 まあ志望校に未練がないと言えば嘘になるが、そこはそれ。諦めがついている。命を危険に曝してまで普通の高校には行きたくないからな。

 

 それに引き換え、ほぼ女子高とはいえIS学園なら安全だろうなとは思った。

 

 手元の書類には「学園の土地はあらゆる国家機関に属さず、いかなる国家や組織であろうと学園の関係者に対して一切の干渉が許されない」とある。言い方は悪いが貴重なサンプルを保護する為にはうってつけと言ってもいいだろう。俺としても危険が少ないのが一番である。

 

 一応は大企業である石村に匿ってもらえば一番安全だとは思うけれども。

 

 そんなことを考えながら一通り目を通し終えて差し出されたボールペンで同意のサインを必要箇所に書き込む。

 

「分かっています。それに、さっき覚悟出来たので」

 

 そう、覚悟は出来た。ならばやることは決まっているだろう。真っ直ぐ先を見据えて進むだけだ。ちらりとユウを見れば未だに固まっている。お前のお陰なんだけど、締まらないなこれ。

 

 織斑さんは俺の視線を追い、なるほどなと言うと書類を受け取り、今度はタウンページくらいの分厚さの冊子?を取り出してきた。表紙には必読と大きく書かれている。片手で軽々と渡してきたから軽い素材でできているのかなと思って油断したが、かなり重くバランスを崩しそうになった。

 

「これはISに関する参考書だ。入学までに目を通しておいてくれ。それと近いうちにIS学園で操作確認を行う予定なので日程は追って連絡させてもらうが、何か質問はあるか?」

 

「えと、じゃあ一つだけ。あのラファールなんですけど……」

 

 何とか耐えて参考書を横に置き、ふと先程のラファールのことが気になったのでそれを聞いてみる。あのラファールを見た瞬間に感じた違和感、既視感といえばいいのか。それの原因が分からないのだ。何であの機体から(くろがね)に似た感覚を感じたのか。それが知りたかった。

 

 そんなことは知らない織斑さんは、ああ、あれかと何でもないかのように答えてくれた。

 

「あのラファールはIS学園の教員用に配備されたものなんだが、中々の問題児でな。気紛れにしか人を乗せなかったんだよ。だからもしかしてと思って引っ張り出してきたんだが、正解だったようだな」

 

 気紛れ、か。そんな事が起こるのかと思ったがISには人格(こころ)があるらしいので一概に無いとは言えないだろう。ということは(くろがね)も気紛れな性格なのだろうか。

 

「ともあれここでやることは以上だ。後日迎えを寄越すので心の準備はしておいてくれ」

 

 織斑さんは腕時計を見ながらではなと書類を纏めて席を立つ。それに俺は思考の海に漕ぎ出しかけた意識を繋ぎ止め慌てて立ち上がり、頭を下げて見送る。

 

 やがてドアが閉まる音がした。それと同時に緊張から解放されてソファに倒れるようにもたれ掛かる。

 

 あー緊張した。緊張しすぎて所々ぎこちなくなってしまったじゃないか。それに関節が軋んで若干痛いし。

 

「ユウ、おいユウ。もう織斑さん帰ったぞ」

 

 だから目を覚ませと肩を掴んで軽く揺すってやれば何処かに出張に行っていた精神が帰ってきたみたいで、はぅっと小さく言ってあたりを見渡している。数分前の俺の感動を返せ。

 

「あー緊張したー。この距離は心臓に悪いってー」

 

 くたぁという音が聞こえてきそうなくらいに脱力してソファの肘掛けにゆっくり倒れるユウ。まあ超が付くほどの有名人が目の前数十センチにいたらそうなるよな普通は。俺がおかしいのかな。

 

 いやきっと、そんなはずはないと頭を振りながら参考書(どんき)をどうやって鞄へ入れようか手に持ちながら考えていると、ユウはふと何かに気がついたようであっと声を上げる。

 

「どうした?」

 

「いや、どうしたも何もないよ。よかったの?おじさんとおばさんに連絡しないで決めちゃって」

 

 

 

 あっ。

 

 

〰️◯〰️

 

 

 結論からいうと両親から行ってこいと言われた。

 

 あの後ユウに言われて直ぐに海外に赴任している両親に電話を掛けたところ、父さんから「行っても構わんよ」と言われ、母さんからは「女子高の女の子は飢えているから気を付けなさいよ」と、とても有難い(どうでもいい)助言を父さんと変わってから頂き、げんなりした。

 

 息子がISを動かしたのだから何かしら言うことがあるだろうに。

 

 スマホを持っていない空いた左手で額を押さえながらぼそっと口の中でいうとそれが聞こえてたみたいで母さんは続ける。

 

『 何かしらってなによ。もしかしてあなた本当は女の子だったの?性別間違えて産まれてきちゃった? 』

 

「いや何でだ。あんたから産まれてきたのは正真正銘、男の子だよ。そこはボケなくていいわ」

 

『 うーん、でもそれくらいだしねぇ。それに私とミナくんの子だもの。ISに乗れたって不思議じゃないわ 』

 

 何気なく手を当てていたけど本当に頭痛がしてきそうだ。能天気にもほどがあるだろう。下手すりゃその息子がホルマリン漬けにされるやも知れないというのに。ちなみにミナくんとは父さんの渾名であり本名は御波(みなみ)。母さんの名前は遥希(はるき)である。

 

『 それに大丈夫よ。貴方が思ってる様なことは起こらないわ。理由は言えないけど、それはこのお母さんが保証します 』

 

 ふふんと受話器越しに胸を張ってしたり顔してそうな雰囲気の母さん。言えない理由とは一体……と思ったがどうせ石村柄みだろうと考えるのをやめる。物心つく頃から両親に連れられ研究施設に入り浸っていたけど、あの会社は謎が多すぎるから考えるだけ無駄と言うものだろう。

 

『 いい機会なんだから、学んでらっしゃいよ。物を知るには本場の方がいいとお母さんは思うな 』

 

「その意見は研究者としてのもの?それとも母親として?」

 

『 両方よ。それにミナくんも同じこと言うと思うわよ。隣で頷いているしね 』

 

 だから存分に学んでらっしゃいと母さんは背中を押してくれた。

 

「分かったよ母さん。ありが『それはそれとして』何さ」

 

 今こんな顔をしながら言っているんだろうなと思い浮かべながら、ありがとうと言って切ろうとしたら遮られた。幸いにも切断を押さなかったからいいけれど、まだ何かあるのか。

 

 窓際に寄り校庭で走り込みをしている陸上部の様子を眺めながら何だろうと待っていると、次の母さんの言葉でスマホを落としそうになった。

 

 

 

 

『 女子しかいないからって他の子に目移りしちゃダメよ?お母さんはユウちゃんしか認めませんからね♪ 』

 

 

 

 

「なっ?!」

 

『あらあら慌てちゃって。それじゃあね』

 

「あっ、待てよ母さ『ツー ツー ツー』……切りやがった」

 

 手からこぼれ落ちそうになるスマホを掴んで急いで止めるも既に母さんは電話を切った後だった。

 

 最後の最後で不意討ちをくらってしまった。

 

 久々の電話で最後に言うことがそれとか、どうしてこうなったと言わざるを得ないだろう。

 

 いい雰囲気で終わるかと思ったらこれである。

 

 溜め息を吐きながらスマホをしまうと脱力状態から復帰したユウが近付いてくる。

 

「どうだった?」

 

「快く許可してくれたんだけども、母さんが……」

 

「おばさんがどうかしたの?」

 

「……いや何でもない」

 

「何それ?……ていうか何でそっぽ向いてるの?」

 

 ぐいぐいと詰め寄ってくるユウに、そのユウの顔を見れない俺。見れないどころか赤くなっているであろうから見せられない。そんな俺を見てユウは、ふぅんと言いながら後ろ手に手を組み、下から覗き混んでくる。な、何さ。

 

「何でもないよ。それより早く帰ろ。色々あって疲れちゃったや」

 

 先に昇降口行ってるねと言いながら、くるりと方向を変え伸びをしながら応接室を出ていくユウ。

 その姿を見届け、バレていないよな?と思いながら参考書(どんき)を鞄に詰めてからゆっくりと後を追う。

 

 今日は一日が濃すぎると独り言を言いながら廊下を歩いていく。

 

 

 

 

 

 

……カナのへたれ

 

 

 遠目に見えるやや不機嫌な幼馴染みの一人言は俺には届かなかった。

 

 

 

 




告白待ちの優埜ちゃんに
告白する勇気が足りない要くん

彼らは両思いだから最初から付き合っている設定にすりゃよかったと後悔中の投稿者。

さっさとくっつけよ焦れったいぜ。

次回、「ラファール改め」でまた会おう
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