ぼくのなつやすみ 〜のんのんと一緒〜   作:Edward

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8月4日の朝

「二人とも、忘れ物はない?」おばちゃんが玄関口で二人に呼びかける。

ぼくと蛍は準備万端とばかりに・・・

 

「はーい!いっぱい持ったよ!」元気よく返すと玄関を出る。

日課のラジオ体操の時間より早く起きたくらい楽しみな海!今から何をするか楽しみにしつつテンションを上げてラジオ体操を終えると越谷家へと向かう。無人野菜売り場にて買い物をするように夏海に受けたが、それは一体なんだろう・・・と思いながら向かう。

 

「蛍お姉ちゃん!きっとこれだよ・・・。」ぼくは畑の横にある小さな屋根付きの棚に沢山の野菜が置いてる一角を見つける。

袋に数個に分けられた野菜が入っており、全て100円というとんでもない安さであった。

 

「本当に無人で販売してるんだね・・・。」

 

「そんな訳無いよ、きっと監視カメラが置いて・・・ない!じゃあ、この賽銭箱みたいな物は・・・取り外せる!・・・こんな防犯でどうやって商売が成り立つの!!」ぼくはとんでもなく取り乱した。

 

「ボク君、私も信じられないんだけど・・・。この辺りの人の家は出かける時でも鍵をかける事なんてないらしいんだ・・・。」

 

「えっ!」ぼくは蛍の話を何かの怪談のように感じて振り返った。

 

「それどころか、夏海先輩は家の鍵すら見たことないって言ってたよ。」もはや恐怖すら覚え、寒気が走る・・・。

 

「がーん!近隣ではゴミ出しのタイミングを見て泥棒が入るから、一瞬でも家から離れる時は鍵をかけるようにって教えられてきたよ・・・。」

 

「ボク君、それはまた極端な環境だね・・・。」蛍は驚きつつ、頼まれた野菜を集めてお金を入れた。

 

「・・・・・・ありえないよ。」ぼくは頭の中で先ほどの蛍の話が信じられずまだ混乱の最中にいた。

 

「パソコンにはウイルスソフト、携帯電話には自動ロックに指紋認証、家の鍵はディンプルキー二箇所だと当然のように思っていたけど、田舎はぼくの予想をはるか上を超えてくる・・・。」

 

「ボク君が壊れちゃった・・・、ボク君!しっかり!!」蛍はなんとかぼくの手を引いて歩いてくれていたが、突然手のかかるポンコツと化した弟に涙が出そうになる。

 

「にゃんぱすー。」れんげとほのかが同じ越谷家に向かうので合流する形となる、いつもの謎の挨拶がかかる。

 

「あっ!れんちゃん!!お願い、ボク君を助けてあげてー。」

 

「どうたんほたるん、ボク君がどうなったですか?」

 

「無人販売所を見て、ショックを受けちゃったのー!」

 

「ありえない・・・。お金はレジに・・・、レジのお金はすぐに警備会社が・・・。」

 

「おーい!ボク君どうしたんですのん?」

 

「あっ!れんげちゃん!!無人販売が野菜で、売ってるお金が!」

 

「・・・・・・取り敢えずボク君は疲れてるんな、コマちゃんの家で今日は休んでおくんな。」

 

「えっ!」ぼくは我に還える、れんげの吸い込まれるような瞳を見ていると段々と頭が冷静になっていった。

 

「これをみるんな?」れんげは突然ポケットに入っていた毛糸を手で引っ張り出してあやとりをする。

 

「これはウチが考えた宇宙なん!この中心をよく見れば、ボク君の考えることなんてちっぽけな宇宙の一部にしかすぎないんな!!」

 

「・・・・・・たしかに、この広い宇宙にはそれくらいの違いがあっても大したことないかも。ボク、何難しいこと考えてたんだろ?」

 

「・・・・・・海に行くんな、海に行けば全てを包んで流してくれるん。」

 

「うん!・・・難しいことは忘れて海に行こう!!」ガッツポーズを取ったボクは元のテンションに戻り、元気を取り戻した。

 

「れんちゃん、ある意味すごい・・・。」蛍は落ち着いたが、その意味のわからない一種の催眠じみた誘導に驚きを隠せないでいた、それはほのかちゃんも同様で呆然としていたのだった。

 

 

 

「いただきまーす!!」越谷家についた一同は早速渡した野菜を使って朝ご飯が出来上がる。

ラジオ体操でお腹を空かせた子供達は一斉に朝の和食コースを食べ始めた。

 

「雪子おばちゃん、お味噌汁にトマトがはいってるよ!」ボクは味噌汁に浮かぶトマトをみて驚く。

 

「本当だ、トマトが入ってる。」ほのかちゃんもお箸で摘んで目を丸くした。

 

「あら?都会のお味噌汁には入ってないのかい?」雪子さんはさらっと返して

 

「まあ食べてみなよ、ナスと同じくらいメジャーな逸品だから。」夏海が促した。

蛍とぼくとほのかが一斉に食べるとその酸味と味噌汁の塩気が微妙なマッチで夏の味噌汁として完成されていた。

 

「やっぱり・・・、うちの住んでいるここは田舎なん?」れんげは一学期の時に投げかけられた事案を繰り返す、外の世界を知らない彼女ならではの質問であった。

 

「だから、それはないって。夏海ちゃんの住むここが田舎なわけないじゃん!」全く回答にならない答えにれんげの心に全く響いてなかった。

 

「だって、みんな車は最低一台は持ってるし!」

 

「都会は公共機関が行き届いてるから必要がないときくのん。」

 

「アスファルトの道は高速道路だし!」

 

「信号をつける必要がないから早く着くだけのん、それに都会には砂地の道路なんかないとひかねえが言ってたのん。」

 

「・・・・・・。」夏海は完全に言い負かされていた、というかここまで結論出ているのにれんげはここを田舎と断定してないのはどういう事だろう・・・。

 

「ここはたしかに都会ではないけど、都会にはないものだらけで新鮮だよ。」ぼくはれんげちゃんにいう。

 

「どういうことなん?都会はいい所だとひかねえは常々いってるのん。」

 

「ここに比べたら物が溢れて人が多いけどそれだけだよ。それよりも、ここには東京にはない無人野菜販売もあるし、泳げる川もあるし、虫相撲をする虫も探せば手に入る。東京なんて買わないと手に入らないんだから。」

 

「なんと!虫を買わないと手に入らないとは・・・、ウチの常識が壊れていきそうなん・・・。」

 

「ぼくもそうだよ、さっきの無人の野菜販売にはびっくりしたんだから。」都会には都会の、田舎には田舎のいい所がある。その答えにれんげは満足したようだった。

 

「さあさあ、ご飯食べたら早く支度しな!そろそろ一穂ちゃんが迎えにくるんよ!」雪子おばさんがお開きといった感じでぱんぱんと手を叩く。

 

「あれ、にいちゃんは?」

 

「何言ってんだい?とっくに食べて部屋に戻って準備しているよ。」

 

「はやっ!あたしも準備しないと!」夏海は残りを口にかきいれて部屋に戻るのだった。

 

「なんで二人とも直前まで準備しないのかな・・・。あ!お母さん、私の水着は?」小鞠は思い出したように母に聞く。

 

「あんたは身長伸びなかったから去年と同じでいいでしょ?」

 

「え!だってそれは・・・。」雪子は片付けで忙しく、小鞠をそのまま放置した。

それは小鞠にとって楽しい海から転落する事を意味していた、ここから彼女の不幸が始まろうとしている・・・。

 

「あたし海なんて行ったことないから楽しみだよー。」ほのかちゃんが嬉しそうにぼくに言う。

 

「東京には泳げる海なんてないからね、ぼくも楽しみなんだ!」

 

「ふっふーん♪ここには砂浜がたくさんあるのん、ボク君には改良型の水鉄砲をお見舞いするんな!」

 

あたりの浮かれた言葉を聞きながら小鞠は深海へと沈んでいった・・・。

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