お昼を食べ終わり、一堂はパラソルの設置した場所に戻ると騒然としていた。
「離れて下さい!」ライフセーバーの方々が何やら土に埋もれているものに対して群がっていた。
「あ・・・!」
「にいちゃん・・・。」越谷姉妹が絶句する。
顔面を土に埋められシュノーケルで呼吸をする変態、いや物体に通報を受けたのだろう・・・。
・・・ ・・・ ・・・・ ・・・・ ・・・・・
「午前中は色々あったけど、ようやくみんな揃ったな!なにして遊ぶ!!」夏海が切り出す。
「はいっ!はいっ!のん。」
「おっ!れんちょん、いい意見があるのかな?」
「うち、中当てやりたいん!今中当てが熱いんな!!」どこからかボールを取り出すと瞳に炎が宿っていた。
「さすがれんちょん・・・、どこに行ってもあなたのすたんだーどには感心するよ。」夏海のツッコミにほのかすら軽く頷いた。
「れんちゃん、せっかくの海なんだから新しい遊びにしない?」蛍が切り出す。
「じゃあ!ビーチ中当てなん!!」れんげはとことん中当てにこだわるそうだった。
「ビーチ中当て!ぼくやった事ないよ!なにそれ!!」
「まさかの反応あった!!」小鞠が驚いてぼく君を見る。
「さすがぼく君な・・・、うちが見込んだだけはあるのん。
このビーチ中当ては、ただの中当てとは違うんな・・・。」
「おっ!れんちょん何か秘策があると見た!聞いてみよう。」
「このビーチ中当ては一見普通の中当てのように思えるが、舞台は海・・・。海でするのん!!」
「海で!これはまた難易度が高い!!」夏海が叫ぶ。
「砂浜でしないんだ・・・。」そして蛍の鋭いツッコミが入る。
「うんうん!それで?」ぼくはその先を聴きたくなって話を促す。
「ボール以外にも水鉄砲で妨害ありのデストロイなのん!」
「・・・つまり、中当てしながら水鉄砲で妨害しながら中にちょっかい出していいって事?」
「それだけではないなん!外の人間同士で外野の支援を邪魔しあう事も可能なん!」
「面白そう!やってみようよ。」
「中当てよりも、水鉄砲合戦になりそうだな・・・。」ぼく君の意見とは裏腹に夏海は展開を予想する、そしてカバンより取り出すはポンプ式の水鉄砲であった。
「え?でもそんな、水鉄砲なんて持ってないよ。」
「あ、私もだ・・・。」蛍と小鞠は無装備
「のん!」れんげちゃんは夏海と同じくポンプ式の水鉄砲に、ほのかちゃんはハンドガンタイプを取り出し
「ぼくもあるよ!」ぼくも同じくハンドガンタイプを
「・・・・・・。」そして卓もまたハンドガンの水鉄砲を取り出した。
「みんな何を予想したの!」小鞠は驚いて突っ込む。
「じゃあ蛍と姉ちゃんは別れて、ぼく君が蛍と、ねえちゃんとにいちゃんがコンビね!」
「外野は、にいちゃん側にれんちょんとほのかちゃん。ウチが蛍側でバランスいいかな?」獲物と年齢的に分けたのだが異存はなかった。
早速海へ入り、膝くらいまでの深さの所で大まかに区分けをすると各々水鉄砲を満タンにして始められた。
じゃんけんで先攻を決めると蛍が勝ち取り、ボールは蛍チームになる。
「えいっ!」蛍は卓に向かって攻撃するが正面からのボールなどとりそこねはない、卓は簡単に受けようとするが眼鏡の奥の眼球が側面を捉える。
「・・・・・・!」卓は突然横へ飛んで逃げる。それはボールではなく夏海のすべての水を使った高圧放水であった、ボールは外野へと外れ夏海はキャッチする。
「ちっ!」凶悪な顔をした夏海が舌打ちすると、再び内野へとボールを戻した。
「オーライ・・・。」ぼく君はそのボールを受け取ろうとすると、ほのかちゃんの水鉄砲がぼくの目を直撃する。
「目が、目があ!!」ぼくは大事な場面で突然ダメキャラになるように目をこすりながら右往左往する。
その間にボールはれんげの手元に移る。
「ほのかちん、ナイスなん!!」そのまま目を潰されたぼくにれんげは追撃の一撃を放とうとするが、蛍がぼくへの攻撃を代わりに受け止める。
「ほたるー!ナイスアシスト!!」夏海が外野より声援を送る。
蛍はそのまま外野の夏海にパスを送ると、夏海は受け取る少し前に卓に水鉄砲を見舞う。
「・・・・・・!」流石に油断した卓はその水圧の強い水鉄砲に面を喰らい、ボールを受け取った夏海は速攻する。
「えっ?」しかしそれは卓への攻撃ではなく、卓を封殺した上で小鞠への攻撃だった。小鞠はその不意の一撃を受けて直撃し倒れこむ。
バッシャーン!!
「小鞠先輩!!」蛍は心配になり声を上げる。
小鞠はゆっくりと立ち上がり水がはいった耳を頭を傾けて出す仕草をする。
「油断したー。今のはお兄ちゃんのアシストをなくした攻撃だったのか〜。」
「なっつみちゃんの頭脳プレイだよーん♪」ガッツポーズをして浮かれる夏海をよそに小鞠はかなり悔しそうであった。
「うわあ、夏海に言われると余計に腹がたつなぁー。」トボトボと外野へと引っ込んで行く。
「・・・・・・。」卓は外野のほのかへとパスを送る。
「えっ・・・と、はいっ!」卓が再度こちらへと手を上げているのでほのかは素直にボールを送る。
蛍とぼくに警戒を前後へと振り分けるが、こちらも水鉄砲で卓の顔面を狙うが頭につけていたゴーグルを装着していた、目潰しは効かない。すぐさまぼくに狙いをつけて攻撃を放つ。
「うわっ!!」その早いボールをなんとかかわして外野へと流れたが、誰もいない水中からシュノーケル姿のれんげが飛び出してボールをキャッチする。
「ボク君覚悟なんー!!」卓かられんげの連続攻撃にぼくの腹部に命中する、ぼく君も水の中に沈んでいった。
「あーあ!やられちゃった。」ぼくは悔しそうに外野へと移る。
「ふっふーん♪ほのかちんとにいにいでパスを行えばウチへの警戒が緩むと思ってたなん、その隙をついて水中で待ってたんな・・・。」
「なんと・・・、あちらにも知将がいたとは・・・。」夏海が悔しそうにつぶやいた。
「ほたるー!チャンスだ、こちらの攻撃で終わらせるよ!」夏海はボールの主導権を握った蛍に指示を送る。
「う、うん!」外野のぼくはボールを渡すと卓へ攻撃態勢をとるが、外野の夏海に早いパス回しをする。
足場は水の上に砂地、早くボールから逃げられる訳ではないのですぐに距離を不利な体制に持っていける。夏海→蛍→夏海→ぼく→夏海に渡った時、夏海と卓は至近距離になっていた。
「にいちゃん!覚悟!!」夏海渾身の攻撃だが、卓は見事にキャッチした。
「・・・・・・。」ゴーグルの奥の瞳がキラン、と光る。
「あれを止めるか・・・、蛍!!」
「きゃあー。」蛍に目をやると、れんげとほのかちゃんの一斉掃射で蛍は陥落していた。
水鉄砲の細い水を蛍の脇腹を狙いくすぐり攻撃、そしてれんげの水圧の強いタンク式水鉄砲でよろけていた。
「・・・・・・。」卓はその場から山なりにボールを投げて、蛍の頭にボスンと当てると内野二人アウトになりゲームは終了した。
「あちゃあー。」
「やったのんー!」
「れんげちゃん、やったー!!」夏海を余所にれんげとほのかはハイタッチをして勝利を称えあっていた。
「れんげちゃん、ビーチ中当て面白かったよ!」ぼくはれんげにそう伝えると再びふっふっーん、の顔になったのであった。