今回は思いつきではなく、前半部分は計画に計画した部分で私的にお気に入りです。
賛否ありましたら是非感想等お聞かせ下さい。
すっかり陽も傾いて西日になろうとしていた時、ぼく君と蛍は着替えを終えて人が少なくなった砂浜を歩いていた。帰り支度を始めた時、資源ごみなどは自治体の回収があるらしく、そこへゴミを持ち込んで少しでも持って帰る量を減らそうとしたのである。それ以外のゴミは出張のかがやにお願いして便乗する事が出来たので随分楽になった。
ザザーン・・・。
波打ち際を歩く蛍とぼくはその音に耳を傾けていた。
「昼の砂浜も活気があってよかったけど、夕方の砂浜は落ち着いた感じがするね・・・。」
「落ち着いた、というより寂しく感じるよ。」ぼく君の答えに蛍は口を尖らせた。
「ぼく君はもう少し女の子の気持ちを汲み取らないと、れんちゃんに嫌われちゃうよ。」
「え!なんでそこでれんげちゃんが・・・。」ぼくは驚いて振り向く。
「え?あ、そっか!ぼく君が行方不明事件があったから有耶無耶になったけど、じつは・・・。」ぼくがいない間にあった出来事を伝えるとどんどんと表情が暗くなっていく・・・。
「夕方の砂浜・・・、落ち着いていいなあ。」ぼくは口ずさんでいた、現実逃避で自分の世界へと逃げているのである。
「ぼく君がまた壊れたー。・・・・・・よしっ!!」蛍は頬っぺたを両手で叩いて気合を入れる。
「ボク君ー。」蛍の呼びかけに、ボクは虚ろな表情のまま振り向くとロングの髪を両手でサイドに持ち
「ウチ、ザリガニとか好きなん・・・。」蛍のモノマネにボクは冷静になる。
「れんげちゃんはきっとサワガニが好きだと思うよ・・・。」
「そ!そうだよね、ザリガニはダメだよね!!」
「ダメじゃあないと思うけど・・・。」二人はにらめっこのように見つめ合うと不思議と笑いが噴き出した。
「ボク君、れんちゃんの真似うまいねー。」
「蛍お姉ちゃんはベタすぎるよー。」
二人はなんだが楽しい気分になり、手を繋いでみんなの待っている場所に戻る。
波打ち際の砂浜で、時折足にかかる海水が心地よかった。
「あーるーぷーすーいちまんじゃーく、こやりのうーえーでアルペン踊りをさあ踊りましょ♪」
「らーんら、らんらんらんらんらんらん、らーんら、らんらんらんらんらんらん・・・。」
二人の楽しげな歌に帰り支度する人々を和ませた、側から見れば仲のいい姉弟のようにみえたであろう。
「ちょっとー。お嬢ちゃん達、いいですか?」突然呼び止められて二人は浜の方は向くと突然のフラッシュが焚かれた。
「え!・・・何?」蛍は呆然とすると、そこには1人の外国人がカメラを片手に手を振っていた。
「突然でごめんなさい、私は世界中の夕日を撮ることがすきなフォトグラファーです。この美しい夕日と君達がマッチしていたのでつい写真を撮ってしまいました。」名刺を渡されて、自己紹介される。
「へー、それで金髪のおじちゃん。写真はくれるの?」
「もちろんでーす。でも私ここで数日過ごしたら富海に帰らなければなりません、よかったらメールアドレスか送り先があれば送りますよ。」
「やったあ!じゃあボクの住所とメールアドレスっと!」キッズ携帯に登録していた情報を紙にかいた外国人は笑顔で答える。
「心の広い坊や、ありがとねー。近々送るから、楽しみにまっててよ。」手を振って外国人を見送った。
「・・・警戒の強いボク君がよく住所を教えたね。」
「え?だってあの人はいい人だよ、どうして?」ぼくの目は常に輝いていた。親から言われた事を純粋に信じ、自分の目で見た物を信じる。その追求がぼく君の原動力なのだろうと蛍は思い、納得する。
「なーんでもないよ、さあ帰りましょう。」
「・・・へんなお姉ちゃん。」頭を傾げて蛍の後ろを追っていくのであった。
帰りの電車では疲れ果てた一向は終点の乗り換えまで寝てしまい、電車連絡の待ち時間でお腹がすいてきたので駅中のうどん屋さんに目星をつける。
「いやあ、都会になるとお店があるから助かるなー。」
「次で最後ので電車だから遅れても知らないよー。」一穂の忠告が背後から飛んできた。
「・・・結構田舎なような・・・。」夏海の一言に蛍は小さく突っ込む。駅の外を見ても街灯は少なく、夏みかんの畑が見える・・・。ぼくも同様の意見であったので頷いた。
そんな2人の疑問を他所に根っからの田舎暮らしの方々は気にすることもなく、反対方向の駅にあるうどん屋さんへと足を踏み入れた。
「いらっしゃい!!」お店の人に誘導され、一角へと案内されるとぼくとれんげとほのかちゃんが立ち食いするには身長が足りないそうで椅子を三脚渡された。
「椅子は三脚で大丈夫ですか?」その言葉に小鞠は反応する。
彼女は相当気にしたらしく、うどんが出されてもまだ蛍とその話から逸れなかった。
その間、夏海は唐辛子の蓋が外れて一瓶分をぶちまける。吹き出す汗、そして視線で隣の姉のうどんに狙いをつける・・・。
唐辛子が山盛りになった油揚げをひっくり返そうとした時
「夏海お姉ちゃん!それはロシアンルーレットだね!!いつもお姉ちゃんは遊び心があって面白いよ。」
「びくっ!!」ぼくの言葉に一斉に夏海のいたずらを看破された。
小鞠は自分のうどんを死守して守る。
「夏海、今何を企んでた!」
「にゃははは・・・、瓶の蓋が取れた・・・。」涙目になると、その騒動を受けた店主が出てくる。
「お客さん、すみませんねえ。せっかくのうどんをだめにしちゃって・・・。今すぐ取り替えますので少々お待ちを!」そして出し直されたうどんにはエビが一尾乗っていた。
「なっつみちゃんラッキー♪ぼく君!ナイス!!明日海の潜水に負けた分もあるから秘密を一つ教えよう!!」
「明日だね!やったー!」ぼくは大喜びではしゃいだのだった。
「先輩!電車来ました!!」そこそこお腹が満たされた頃に蛍の警告が飛んだ。
元のホームから警笛をあげながらホームに滑り込む電車の陰に急ぎ出す。即座に反応した蛍は小鞠を抱え、夏海がれんげを背負う。
「ほのかちゃん!寝ちゃだめだよ!」ぼくは揺らして起こすが彼女はお腹が満たされて再び熟睡に入り出した。
「えへへー、海楽しかったなあ・・・。」
「だめだこりゃ。」ぼくは諦めて彼女を背負うと走り出す。
階段を駆け上がり、反対ホームに着くとぼくとほのかちゃんの荷物はすでに車内に運びこまれているのでそのまま滑り込んだ。
「セーフ・・・。」震える足に喝を入れながら走りきったのでその場で崩れそうになるが、ほのかちゃんを座席に置いてなんとか横に座る。
「ぼく君頑張ったね!君ならできると思ったよ。」夏海が褒めちぎる。
「絶対、ほのかちゃんを忘れていたでしょ・・・。」
「まあまあ、無事みんな乗れたんだから言いっこなしで・・・。」
「お兄ちゃん、いつの間に・・・。」小鞠が絶句する、あの短時間で全員分の荷物まで車内に運び込まれていたのだ。余裕な顔をして音楽を聞いていた。
「ねえねえは?」れんげの一言でみんなはハッとして、外を覗くと夜風に当てられて気持ちよさそうに眠る一穂の姿が見えた・・・。
「れんちょん・・・、ドンマイ。」
「・・・ウチ、どんまいなん!」
一行は家に帰るなり、親に救援を求めるのであった。
・・・ ・・・ ・・・・ ・・・・ ・・・・・
「あら?もうねちゃったの?」蛍とぼくは帰るなり疲れ果てて寝てしまい、2人はリビングで仲良く寝てしまっていた。おばちゃんは2人の寝姿にくすっと笑いながらタオルケットをかける。
「今日で2人とも姉弟になったみたい・・・。お風呂入ってないけど、明日にしてあげましょう・・・、おやすみ♪」おばちゃんは電気を消すとリビングを後にする。
翌日の朝、蛍は一番から混乱するのは言うまでもない話である。