「ん、んんん・・・ん?」ぼくはいつのまにか寝ていたようだった。
体に重さを感じて動かそうとするがぼくの上に乗っかっている物体に阻まれてうまく動けない、徐々に息苦しくなり手足をばたつかせる。
むにゅ♡
なんか手に柔らかいものが触れる、すごく触り心地がよくて何度かぐっぱっ、ぐっぱっ、と繰り返した時・・・。
「んにゃー。」人の声がして引っ込めた、この声は・・・。
「夏海おねえちゃーん、苦しいよー。」
「ん、あれ?ウチも寝てた。」予想通り夏海が被さるように寝ていたらしく、よだれを拭きながら覚醒する。
「ぼくが寝ている間に何してたの?」テレビはつきっぱなしで、まだ寝る前のアニメが続いていた。
「いやあ、気づいたらボク君が気持ちよさそうに寝ていたんでついウチも・・・、と思ったら寝ちまった・・・。」
「ぼく病人なんだから寝るのは当然だよ。」
「めんごめんご、しっかしよく寝たなあ。」大きく伸びをすると、夏海は身体に違和感を覚えて顔を歪めた。
「ボク君、・・・もしかして寝ているウチをいい事に、揉んだ?」振り返りながら夏海は真顔で見ていた。
「なにを?」
「ウチの・・・、おっぱい。」
「え!・・・そういえば、さっき苦しくて足掻いてる時に柔らかいものを掴んだかも・・・。」右手に残る感覚が思い出される。
「ボク君、・・・高くつくよ。」
「えっ!」
「ふっふーん、ボク君の弱みをとうとう見つけたよ♪蛍に言われたくなかったら・・・。」脅しをかける夏海にぼくはタジタジするが、ちらっとテレビを見るといつのまにかアニメはおわりホームビデオになっていた。
「ねえねえ夏海お姉ちゃん・・・、あれ。」
「ふっふっふっ!言い逃れは・・・!!」夏海もちらっとテレビを見ると、小さい頃の自分が写っていた。
『あー、にいちゃんだー!!ウチにいちゃんのお嫁さんになるー!』
ダダダっ!ブチッ!!
テレビの前に瞬間移動したかのような夏海がスイッチを切って硬直していた。
・・・ ・・・ ・・・・ ・・・・ ・・・・・
「・・・とりあえず、これでチャラって事で・・・。」ぼくはゲームをしながら、落とし所を見つけて一言を言うが夏海には届かない。
「ああああああああ・・・。」悶絶しながら夏海は床の上を転がっていたのであった。
「ボク君、夏海先輩、お昼食べ・・・。どうしたんですか?」蛍が扉を開けながらお昼を促すがその光景に瞳を丸くする。
「うん、ちょっとね。中二病みたいなものが爆発して・・・。」
「・・・?夏海先輩は中一だけど・・・。」
「似たような症状だけどすぐに収まるから、夏海お姉ちゃん、治ったら降りてきてね・・。」蛍の背中を押して部屋を後にした。
「うわあ、これが茶粥。お茶の味がして美味しいー。」ぼくはサイコロくらいに切られたお芋が入った茶粥を食べながら舌鼓を打った。
ほうじ茶の風味と、サツマイモのほのかな甘みが食欲を失ったぼくに優しく胃袋へと浸透していった。
元気な4人は焼きそばが準備され、食卓を囲んでいた。
「よかったわ、その食欲があればすぐになおるわよ。」おばちゃんは優しく微笑んで、おかわりを要求するぼく君の茶碗を受け取ってよそってあげる。
「焼きそばも美味しいです。蛍はいいなあ、こんな美味しいご飯食べてるんだ。」小鞠は丁寧に食べながら蛍に感想を言うと嬉しそうに頷いた。
「夏海ちゃん、どうしたんでしょうね?」おばちゃんが心配していると、夏海がよろよろと一階に降りてきた。
「・・・あれは応えたー、アルマゲドンと地震が一度に来た気分だわ。」
「あっ、夏海お姉ちゃん!落ち着いた。」
「なんとかねー・・・。ボク君!これでウチらの友情はさらに深まった、これからも夏休みを謳歌しようではないか。」
「・・・う、うん。」夏海の妙なテンションにみんなは唖然としながら夏海は焼きそばにがっつき出すのであった。
一方その頃、越谷家で掃除をしていた雪子が布団の中から見つけた一学期の成績表とテストを発見し、本物のアルマゲドンが夏海に降り注ごうとしていたのだった・・・、その殺気に気付いた卓はすぐ様家を脱出したそうな・・・。
「午後からどうしよっか?」小鞠はお腹が落ち着くとお昼からの話を相談する。
「ボク君には悪いけど、暑くなってきたから川で飛び込みでもしよっか!今日はれんちょんとほのかちゃんが川でカニを取るとか言っていたから合流しよう。」
「うん、お見舞いありがとう。ぼくは昼からも寝ておくよ、夏海お姉ちゃんのゲームしばらく貸してもらっていい?」
「いいともいいとも!ただしあのアルマゲドンは慎重に保管するように!」夏海はぼく君にしかわからない暗号であのビデオの取り扱いに釘を刺された。
「うん、わかったよ。じゃあぼくは二階に行くね。」お腹が満たされたぼくは部屋に戻る、みんなは見送ると一斉に家を飛び出した。
「あの、飛び込みってなんですか?」蛍はその言葉におどおどする。
「その言葉の通り川に飛び込むんだよ、こんな暑い日は川泳ぎに限るよ!」
「大丈夫だよ、ちょっと高いけど快感だよ。・・・あ、そうだ!怖かったら一緒に飛び込んであげる。」
「小鞠先輩と?・・・はい!やってみます。」そういうと夏海と小鞠の2人は笑い、蛍を促すように走り出していった。
二階からそのやりとりをみていたぼくはちょっと羨ましく思いため息をつく。
「飛び込みかあ、ぼくもやってみたかったなあー。」布団に入って本音を言った。薬のせいか随分体は楽になっているが、行くと言えばおばちゃんに止められるだろう。
「早く治ってくれないかなあ・・・。」ぼくは、そう願いながら再び眠りについていった。
ぼくは夢を見ていた。
それは幼い時に行った北海道で遊んだあの一日。牧場で草滑りをして、怖くて途中で転んで泣いたっけ・・・。
みどりちゃんに手を引かれて遊びまわって楽しかった、牛を見て泣いて、ベルトコンベアに乗って泣いて、あれ?これって楽しかったのかな?
それで夕方にみどりちゃんと・・・って、あれ?なんか約束したような・・・。なんだっけ?
夢が覚めた頃、目がさめる。
「あれ?なんでみどりちゃんの夢を見たのかな?」不思議に思うぼくは喉が渇いて一階に降りた時、おばちゃんが片付けをしていた。来客がいていたのだろうか、カップが二つあった。
「あら?今目が覚めたの、さっきまでみどりちゃんがきていたのよ。ボク君と遊びにきたみたいだけど、風邪って聞いてお見舞いに変わっちゃったんだけどね。」
「そうなんだ、みどりちゃんに悪いことしちゃったな。」
「また今度遊びましょう、って言ってたわよ。早く身体を治して遊びに言ってらっしゃい。
それにしてもみどりちゃん、親戚の集まりで一回あったけど大きくなって・・・。」
「・・・だから夢を見たのかな?」ぼくは懐かしい幼き日々を思い出していた。
ぼくはみどりちゃんとなんの約束をしたんだろう、本人には聞いては行けない気がして自問自答をするのであった。