ぼくのなつやすみ 〜のんのんと一緒〜   作:Edward

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8月1日の夕方

駅から車で走る事20分程、殆どが昔ながらの古民家ばかりの家が見える中で一条家はコンクリートの新築の一戸建てであった。

東京ではよく見た家であるが、田舎にあるとマッチしないと思うのはボクだけだろうか・・・。

 

すぐに家に通されたボクはすぐさま二階の一室に通された、蛍のおねえちゃんのとなりにある部屋で中は簡易なベットと机が置いてあるだけの六畳の洋間。

 

「ここがボク君のお部屋よ。東京からきた荷物は先に開けて適当に直してみたけど、違ってたら直してちょうだい。

もう少ししたら夕飯だけど、よかったらそれまでの間近くを散歩してみる?」

 

「うん、わかったよおばちゃん。ちょっと見てくるね。」

 

「あ!ちょっと待って、これ渡しておくわ。」おばちゃんはエプロンから小さな携帯電話を出すと、ボクの首にかけた。

 

「これは?」

 

「キッズ電話よ、これがあれば私の家に電話できるし戻ってきて欲しい時は連絡できるの。防水だから濡れても大丈夫!」おばちゃんは抜かりなしとばかりにボク君にポーズをとる。

 

「おばちゃん、でも電波ないみたいだよ。」ディスプレイを映しても電波のマークは圏外であった。

 

「はう!?ああー、ボク君の身長では電波が届かないかあー。」

おばちゃんの手に携帯が渡ると再び携帯は電波をキャッチする。

 

「ここでは電波は高いところしか飛んでないんだ。」

 

「田舎だからねー。じゃあ狼煙でもあげよっか?」

 

「ずこー!」ボクは滑る仕草をしておばちゃんにリアクションで返した。

 

電波はあまり飛ばないが、GPS機能は動くそうなのでいざという時は場所が特定できるのでそのまま持たされる事となり、いざとなれば迎えにきてくれるみたいだ。

とりあえず外に出ると声がかかる。

 

「ボク君、お出かけ?」蛍は玄関で同じように出かけるそぶりであった。よくみると足元に犬、そして持つリードで散歩に行くことがわかる。

 

「うん、ちょっと辺りを見て回ってみたくて。蛍お姉ちゃんは散歩?」

 

「この子うちの飼い犬でペチっていうんだけど、今日は散歩できてないから・・・。そうだ!私がこの辺りを案内してあげる。」

 

「ありがとう蛍お姉ちゃん!」

二人はペチのお散歩コースを兼ねて辺りを回ってみる、道のほとんどはアスファルト舗装はほとんどされていなく農道のような道が多い。

夕方の田舎道は車の往来もなく、虫の合唱と蝉時雨が響く。

蝉は都会でよく聞くアブラゼミとクマゼミではなく、ひぐらしとツクツクボウシの心地よい合唱がはじめての田舎を迎えてくれるように旅の疲れを癒してくれた。

 

「ボク君、今日は東京からの長旅で疲れたでしょう?明日からはもっと色々な所に連れて行ってあげるね。」

 

「ありがとう蛍おねえちゃん。ぼく、夏休みの宿題はだいたい終わらせてきたんだけど、自由研究とか絵日記とか残ってるから困ったら教えて欲しいな。」

 

「いいよ♪自由研究するならここは題材が一杯あるよ、どんなことしたい?」

 

「うーんとね、・・・まだ思いつかないや!」

 

「そうだよね、まだきたばっかりだからね・・・。私もまだ決めてないから一緒にやろう。」蛍は右手にリード、左手にボクの手を引いて帰路につきだした・・・。

 

 

 

 

 

「まよった!!どーしよー!!ごめんね、ボク君!!私が迷子になって、ああーどーしよー!!」蛍の取り乱しにボクは硬直する、さっきまでお姉ちゃん風を吹かせていた蛍は、一転して取り乱す。

思ったより遠くまで歩いてしまい、近道を提案した蛍お姉ちゃんは山道に入った。ボクは嫌な予感がしたが、しっかり者のお姉ちゃんなら大丈夫と思ったのが失敗だった。

そういえば遠い記憶に蛍のお姉ちゃんは方向音痴で、こんな事があったような気がする・・・。

あの時はボクの地元だったから先導したような気がするけど、今回は知らない土地・・・、正直お手上げだった。

 

「蛍お姉ちゃん、大丈夫だから泣かないで。多分おばちゃんとおじちゃんが探してくれてるよ。」

 

「だってー。お母さん達もこの辺りのことまだわかってないから探しきれないよー、うえーん!ごめんなさいー!!」蛍お姉ちゃんはとにかく取り乱していた。

 

「ペチー。君ならわかる?」ボクは犬のペチにおばちゃんの臭いがついた携帯電話を鼻先へ持っていく、ペチは悟ったのか鼻をすんすんと勢いよく吸い込み辺りをくるくる回るとリードを激しく引っ張り走り出した。

 

「ペーーーチーーーー!!」蛍はグイグイ引っ張られて叫ぶ。

 

「大丈夫!!ペチはきっと家に帰る道を教えてくれてるんだ。」引っ張られる蛍の背中を押すボク、蛍は目を白黒させながら前から後ろから押されるのであった・・・。

 

 

 

あれから、とてつもない山道や獣道を通されたが最短距離で家にたどり着いた二人は疲れ果てていた。荒い息を整えてドアを開くとおばちゃんが心配しておりパタパタと出迎えてくれた。

 

「二人ともどこいってたのー、もうとっくに夕飯の時間よ。」

 

「ごめんなさい、蛍お姉ちゃんに色々案内してもらっていたら遅くなっちゃった。」ボクは謝ると、蛍お姉ちゃんは驚いて訂正しようとするがペチが蛍に飛びかかってじゃれ始める。

 

「わっ!ペチ、何するの!?」

 

「ペチお腹が空いてるんだよ、早くご飯あげないと。」ボクはペチのグッジョブにフォローを入れてこの話題をここまでに切り上げる。

 

「まあいいわ。蛍はペチの脚を拭いてご飯をあげて、ボク君は手を洗ってきなさい。」

 

「はーい。」二人は洗面所とお風呂場で各々の作業に取り掛かる。

ボクは手を洗い、蛍はペチの脚を洗う。

 

「ボク君、ありがとう。私の事何も言わないでくれて・・・。」

 

「なんでもないよ、蛍お姉ちゃんの意外な一面が見れただけで楽しかった。」

 

「もうー。」フォローしてくれているのか、からかわれてるのかわからないボクの態度に蛍は眉をひそめるのであった。

 

 

 

 

「ボク君、・・・ボク君?」ご飯を食べた後、お風呂に入ったボクは長旅と想定外の散歩で寝てしまっていた。おばちゃんはそっと肩を揺らすが小さな寝息を立てて寝てしまっていた。

 

「長旅で疲れてるんだろう、東京から6時間はかかるからな・・・。よし俺が連れて行こう。」おじちゃんはボクを抱きかかえる。

 

「軽いな・・・。」おじちゃんの言葉に蛍が反応する。

 

「おとうさん、誰と比べたの?」

 

「ははは、すまん。蛍と比べてしまったよ。」おじちゃんにかかえられたボクは二階へと通され、ベットに入れてくれた。

寝顔の可愛さにおじちゃんもおばちゃんもほっこりしてしまう。

 

「やっぱり男の子いいわねえー。」

「だな!」

 

「ちょっとー。お父さん、お母さん!」蛍は非難の声を上げる。

二人は笑いながら下へと降りるのであった。

 

「もう!・・・おやすみボク君。」蛍はボク君にお休みを伝えると、ゆっくりと扉を閉めるのであった。

 

 

 

絵日記

8月1日 一条家に到着!いきなり迷子になって蛍お姉ちゃんと一緒に頑張った!


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