ぼくのなつやすみ 〜のんのんと一緒〜   作:Edward

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8月6日の朝

絵日記

 

8月5日

今日は朝からばてばて・・・。

ほのかちゃんが東京に帰っちゃった、ぼくも帰ったら会いに行ってみよう。

 

 

2日連続で夜に絵日記を忘れたぼくは頭をかきながら反省する、やはり1日の終わりに書かないと少しだけ絵の質が落ちているように感じた。ノートをしまうといつものラジオ体操に繰り出す。

今日の体操は少し気が重かった・・・。

 

 

軽快な朝の体操に混じってダンスを踊る相変わらずなれんげちゃんに、ぼくは隣で体操する。

 

「にゃんぱすー。」僕から声をかけるとれんげは目を輝かせていた。

 

「ボク君からウチの挨拶で来るとは、ようやくここのルールがみにしみてきたんな!それよりも、もう体は治ったのん?」

 

「うん・・・、すっかり・・・。れんげちゃん。ラジオ体操が終わったら話がしたいんだ、ちょっと時間をくれるかな・・・。」

 

「!・・・。ボク君どうしたんな、なんかいつもと雰囲気がちがうのん。」

 

「ちょっと真剣な話なんだ。・・・だから、お願い。」ぼくのただならぬ気配にれんげは頷いた。

 

「ありがとう。・・・じゃあ!元気にいくよ!」ぼくはれんげのダンスに負けじと体を目一杯動かした。

 

「ボク君・・・、本当にどしたの?」れんげは小さくつぶやきながらダンスを続けるのだった。

 

 

体操が終わり、いつもの恒例の雪子さんのスタンプ作業の中で公園のはずれで昨夜の一件を伝えた。次第に悲しくなったれんげは瞳から涙がこぼれだした。ぼくはポケットからハンカチを取り出すとそっと拭くと、ぼくのシャツに顔を埋めて鳴き声のない涙を溢れさせていった。

 

「ほのかちゃんもすごく泣いていたよ。れんげちゃんに顔を合わせてさよならしたかった、って・・・。

だからね、この携帯で動画を撮っておいたんだ。」

ベンチに携帯を立てるようにしておくと再生ボタンを押す、れんげは食い入るように画面に顔を近づけていった。

 

 

 

「れんげちゃん、お別れの言葉も言えずごめんなさい。

ほんの数日だったけど、すっごく楽しかった!ありがとう!!

ここはお父さんの実家のある場所だから・・・。また今度休みがあったら遊びに来るね、だかられんげちゃんも・・・、泣かないでね。」

ほのかの最後の言葉で泣いてしまう、それをみていたれんげもとめどなく泣いていた。

 

「・・・ごめんなさい。・・・れんげちゃん、今度会う時は今日見に行く予定だった水車を見せてね。約束だよ。」画面でゆびきりのポーズをするほのかちゃんに、れんげもまた小指を画面越しできりあった。

動画を切るときにはれんげはごしごしと涙を拭いて、いつもの顔に戻る。

 

「ありがとなん、ボク君が出歩いてなかったらこの動画を見れずにもっと落ち込んだと思う。だから・・・。」

 

「うん、わかってるよ。れんげちゃん、これ・・・。」ぼくはポケットから例のビーチグラスを取り出してれんげに渡した。

 

「・・・綺麗なん、貰っていいのん?」

 

「うん、ほのかちゃんには橙のグラスを渡したけど、れんげちゃんは青のグラスをあげる。」

 

「・・・大事にするのん。」たすき掛けにかけていたポシェットに大事にしまうと、ぼくに丁寧にお辞儀をすると雪子さんのスタンプを貰って帰っていく・・・。もらい終わった後、その足取りがしばらくしてぴたりと止まると振り返った。

 

「ボク君は、勝手ないなくならないように!ウチ・・・、もっと泣いちゃうんな!!」びしっと指差すと、走り去っていった。

 

「うん・・・、ボクは大丈夫だよ。」走り去るれんげの背中に小さく答えたのだった。

 

ぼくも大仕事をやり遂げることができたと、一つ息を吐いて安堵して雪子さんのスタンプをもらいに行った。

 

「ぼく君もやるねえー、れんげちゃんを振るなんて。

・・・あの子のどこが気に入らなかった?」

 

「え?なんの、事?」ぼく君のスタンプは雪子さんの押し付ける圧力で液が深く刻まれ、その部分がシワになっている。

これは、まさか夏海のいうアルマゲドンでは・・・。

 

「れんげちゃんを泣かすなんて、いいお大尽ね・・・。」雪子の目は冷たくぼくを射抜いていた。

 

「え?いや、ちが・・・。」ぼくはしばらく雪子からの追求に朝ごはんが伸びて行くのであった。

 

 

 

 

「ボク君・・・遅いなあー。せっかく先に帰って目玉焼きとソーセージ焼いたのに・・・。」両親はすでに食事を済ませておじちゃんは出勤し、おばちゃんは家事に勤しんでいた。

蛍はまだ帰らないぼくを待ってくれていて、テーブルに突っ伏していた・・・。不意に自宅の電話が鳴り、蛍は近くの子機で受ける。

 

「あっ!蛍?私、小鞠。」

 

「先輩!どうしたんですか?こんなに朝早く。」

 

「えっと、今日よかったら街までお出かけしない?・・・昨日、うちの家にアルマゲドンが落ちて夏海が外出禁止になっちゃったんだ。

お母さんが帰ってくる前に出かけてとばっちりが来ないようにしたいんだ。」

 

「はい!行きます!・・・・・・。わかりました、じゃあ駅で!」電話を切ると、蛍はにぱーっと笑う。

 

「先輩と街へお出かけー。・・・はっ!服どうしよう、目一杯おしゃれしないと・・・。おかあさーん!!」

 

 

 

「ただいまー。」ぼくはとぼとぼと一条家のドアを開けて帰ってきた、雪子さんに散々冷たい目で睨まれた挙句ようやく誤解が解けたときには8時を回っていた。

お腹もぐうぐういわせており、テーブルに突っ伏した。

 

「ボク君、やけに遅かったわね。蛍がご飯一緒に食べようとしてたけど、用事ができたみたいでさっき出かけたわよ。」

 

「そうなんだ、お姉ちゃんに悪いことしたなあ。」

 

「ふふっ、ラップしてあるからそれ食べて遊んでらっしゃい。・・・それと、夜遊びなんてしちゃダメよ。」

 

「ぎくっ!!」ご飯を口に入れておばちゃんの言葉につい咀嚼もそこそこで飲み込んでしまう。

 

「ボク君の部屋に掃除に入ったらびっくり!蛍が一匹飛び回ってたのよ。捕まえて網に入れておいたけど、夜中に歩き回らないでね。

万が一の事があると悲しむ人がいるんだからね。」

 

「ごめんなさい。」

 

「わかってくれればいいのよ。好奇心旺盛なのはいい事だけど男の子はこの時期に事故が多いから・・・、無茶はしないでね。」

 

「うん!わかったよ。」

 

「いい子ね、気をつけて目一杯遊んでらっしゃい。」おばちゃんはそういうと、台所を後にした。

 

「そっかあ、蛍お姉ちゃんは留守かあ・・・。あっ!ちょうどいいや、その間に頼まれてたゲーム機直しておこうっと♪」食べ終わると二階に上がり、蛍の部屋に入る。

 

ゲーム機のコントローラーの調子が悪いといっていたので早速トルクスドライバーで開けて調べていった。

 

「うーん・・・。あっ!バッテリーの接続ケーブルが焼けてるなあ、バッテリーの電圧が落ちると焼けやすくなるからバッテリーも手配しておいた方がいいかな?」手直しをしつつ、バッテリーの型式を控えて後からネットでまだ購入できるかどうか調べる事にする。

 

 

「それにしても・・・、お姉ちゃん急いでいたのかな?服がベットに散乱してる。」

 

さっきまで着ていた服から、お洒落着まで色々引っ掻き回したそうでベッドにはいろんな種類の服が置いていた。

 

「!!ボクも着れるかな?」不意に頭によぎるのであった・・・。


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