ぼくのなつやすみ 〜のんのんと一緒〜   作:Edward

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8月6日の午前

ぼくは蛍の部屋にある映し鏡で確認する。

 

「なかなかにあうじゃん♪」ぼく君が着られそうな服をいくつか見つけて着込むとなかなかどうしてかにあう格好になっていた。

ぼくが選んだ服は青いワンピースに帽子は白いキャペリン、もともと線の細い、色白の男の子なので頭を帽子で隠せば女の子に見えなくはない・・・。

早速これでみんなを騙せるかどうか、試したくなり外に出かけたのだった。

 

「靴は、これでいいか!」ピンクのサンダルを見つけた僕は、靴下を脱いで外へ出かけたのであった。

 

「うーん、なんかスースーして落ち着かないなあ・・・。」ぼくは歩きながらぶつくさと言いつつ、ジェットサイダーの王冠集めを怠らない・・・。目が自然と茂みやら物陰を見ながら歩き、見落としていた一個を見つける。

 

さて、誰からからかってやろうかな・・・。

この服を知ってるのは蛍、彼女に見つかったらアウトだけど今は街まで買い物に行っている。小鞠も一緒・・・、それ以外の誰にしようか・・・。うん!あの人にしよう!!ぼくは狙いをつけて向かう先は・・・。

 

 

「ふふふ・・・。これなら絶対にバレないぞ!どんないたずらしてやろうかな。」嚙み殺すように笑いながら歩くいていると・・・。

 

「すみません。」声をかける人がいた・・・、振り返るとそこにはなんとみどりちゃんがいた、ぼくは予想外の遭遇に一瞬名前を呼んでしまいそうになる。

改めてキャペリンを深くかぶり直して正体がバレるのを防ぐ・・・。

心臓が早鐘のようになりだし緊張が走った、これは去年の冬に舞台で主人公を演じた以上にやってきた緊張感であった。

 

「はい、なんでしょう?」みどりちゃんはかなり汗をかいていて疲労困憊であった、顔色も悪くてフラフラしている・・・。

 

「一条さんのお家はこのまま真っ直ぐで大丈夫ですか?」

 

「え?・・・はい、合ってます。

でも、どうされたのですか?疲れてるみたいですけど。」

 

「実は、バスで向かってたんだけど財布をバスに落としてしまったみたいで・・・。探しているうちに降りるところで降り損ねて、慌てて降りたらどちらも中途半端になっちゃったんだわ。」しっかり者のみどりがそんな事になるなんて・・・、ぼくは少し以外な一面を見れてこの姿になった価値はあったかも、と思ってしまった。

 

「そうだったんだ、でも一条さんのお家も距離があるし・・・。よかったらそこで少し休んでお財布を探す方法を聞いてみましょう。」

ぼくが目指そうとしていた駄菓子屋を指差した。

 

「え?でもわたしお金もってないよ。」

 

「ぼ・・・私に任せて!今日は暇だし・・・。それにあなたのその訛りからして地元ではないのでしょう、一緒に探してあげる。」

 

「でも・・・。」

 

「いいからいいから!一条さんの家の用事があるなら、よってからでもいいけど・・・。」

 

「うーん、ちょっとお見舞いがてらに覗きにきただけだから急ぎではないかな・・・。じゃあ、お願いします!助けて下さい。」

 

「うんっ!じゃあ早速聞き取りしましょう。」ぼくは駄菓子屋へと入って行った。

 

 

 

「いらっしゃい。・・・確か君は海でいた子だね。」楓は海での出店した時にいたみどりを思い出した。

 

「はい!みどりと言います。」

 

「よろしくな。・・・そっちの子は?」

 

「え?私・・・。私は・・・、こはくって言います。」ぼくはとっさで迷ったが、ビーチグラスの珍しい色が琥珀色っていうのをネット検索して知ったので、それを名前にして名乗った。

 

「こはくちゃんか・・・、聞かない名前だな。」楓は色々と考えているが、まずいボロが出るかも・・・、これは先手を打った方がいいと考えたぼくは。

 

「おねえさん。そのみどりさんが、バスにお財布を落としちゃったみたいなの、何かいい方法はない?」

 

「え?財布を・・・。この辺りのバスは最後は隣町の終点に集まるからバス会社のある停留所に行けば見つかるかもしれないな・・・。」

 

「みどりちゃん、行ってみよう。きっと見つかるよ!」

 

「うん!ちょっと元気がでてきたわ。」みどりは立ち上がって早速行こうとする中、ぼくは・・・。

 

「お姉さん、かき氷のイチゴと小豆下さい。」みどりの手を繋いで制止すると、かき氷を持って外の長椅子へ座らせた。

 

 

「なんでいかないのさ・・・。」みどりは小豆のかき氷をしゃくしゃくしながらぼくに非難した。

 

「みどりちゃん汗だくだよ、ここで休憩して水分取らないと倒れちゃいそうだから。」ぼくはイチゴのかき氷を頬張ってかえす。

 

「でも・・・。小豆のかき氷が好きってよく知ってたね、偶然?」

 

「ぎくっ!・・・あっ!ほら!疲れた時は甘いものが必要でしょ!小豆はカロリーもあるからいいかなっと・・・。」ぼくは失態の修正に都合のいい言い訳を考えついた。

 

「こはくちゃん、ありがとう。こんなに親切をしてくれる人はボク君以来だよ。」

 

「・・・ぼく君?」

 

「こはくちゃんも知ってる?夏休み中こっちで一条さんの家でお世話になってるの。」

 

「・・・ごめんなさい。一条さんのお家の人は知ってるけど、ぼく君は会ったことないです。」

 

「そっかあ、ボク君は私の従兄弟なんだけどなんだが不思議な男の子なんだわ。」

 

「そうなんだ・・・。みどりちゃん、そろそろ。」ぼくは嫌な方向に話が進みそうなのでかき氷も食べ終わったし行こうとするがみどりがスイッチが入ってしまって話を続ける。

 

「私の大切にしてた目覚まし時計をバラバラに分解するわ、リモコンの赤外線は鏡で反射してテレビをつける事が出来るか実験してみたりするの、おかしいでしょ!

草滑りでスピードに乗ると大泣きして、夜に牛を見せたら目が光っているのをみて人魂だー、って言ってまた大泣きするし。私と相撲して負けてべそかくし、まー情けない男の子なんだわ。」

 

「・・・・・・へー、そうなんだ。」ぼく、そんなのしたっけ?

 

「でもね。ボク君は本当に優しくて・・・、私救われたんだ。」

 

「えっ?何が・・・。」ついボクはこはくちゃんになりきれず普通に語り返してしまう。みどりちゃんは感慨にふけっているのか、かえす言葉はなく彼方の雲を見続けていた。

 

「ごめんなさい、変な話をしちゃったね・・・。さあ、いくよ!!」みどりちゃんは立ち上がるとボクのかき氷の器を一緒に楓へ渡すと歩き出す。

 

「ま、待ってよみどりちゃん!・・・楓お姉ちゃん!ごちそうさまでした。」

 

「お、おう・・・、お粗末様でした。」慌てて出て行くぼくに手を振るのであった。

 

 

すっかり元気になったみどりはさらに向こう側の隣町へ歩き出す。バスで行こうと提案したが、みどりは歩いて行くと言い出したのだ・・・、なんでも北海道では見当たらない物が多くて歩くだけでも楽しいらしい・・・。

まさか女装したまま過酷な歩き旅になるなんて、神様は悪戯を許してくれないそうである。はあ・・・、と小さくため息を吐くが満更嫌というわけではなかった。それはみどりの口からぼくが忘れてしまっている吉本家での記憶を教えてくれるので、この機会にぼくの脳裏が何かに反応して蘇る事を期待していた。


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