ぼくのなつやすみ 〜のんのんと一緒〜   作:Edward

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随分と投稿が遅くなりましてすみません。

子供達の夏休みは、大人にとって凄まじく忙しい夏です・・・。土日は家族サービス、平日は渋滞まみれの中でお仕事・・・。
8月はあっという間に日々の忙殺で何も出来ずでした。

さらに9月は4日の台風で関西圏は地震に続いての惨事でさらに忙殺されました、ようやく少し落ち着きましての投稿となります。

ペースはまだ上がらないとは思いますが、合間を見つけて投稿しますのでお願い致します。


8月6日の午後

「まだ着かないのかな?」みどりの弱気な言葉が飛んでくる。

ぼくはポケットから携帯電話を取り出してGPSで居場所を突き止めて、目的の停留所を調べた。

 

「まだまだですね、あと7キロくらいはあるよ。」

 

「うえー。やっぱりバスに乗ればよかったかな?」

 

「・・・今更遅いよ、それに気付くなんて。」ぼくは子供の歩く速度で考えると二時間くらいと見積もる・・・、暑さで汗がとめどなく流れ出るが帽子は絶対に取ることは出来ない。汗があちこちで服に張り付いて不快感を生んでいた。

 

ジーワジーワと泣いているアブラゼミの鬱陶しい暑苦しさに耐えながら、ぼくとみどりは次第に口数は少なくなり、あたりを見回すと言っていたみどりはその余裕をなくし、ただ足を前に運ぶだけの作業になっていった。

 

「ねえ?みどりちゃん、北海道はやっぱり涼しいの?」

 

「涼しくはないべさ、北海道も短いけど30度を越すこともあるわさ。・・・って!私、北海道に住んでるっていったっけ?」

 

「え!・・・!違ったかな?その訛りは北海道のものだったから。」僕は慌てて切り返す、みどりは一瞬納得したが勘が鋭くて逃れられない。

 

「その割には、断定して言い切った感じがするけど・・・。」みどりちゃんは少し不審がって帽子の中身を覗き込もうとするが、とっさに深くかぶり直して誤魔化す。

 

「あっ!みどりちゃん、あそこに無人の販売所があるよ。休憩ついで少しお腹に入れよう!」とたとたと走るぼくを目で追いかけるのであった。

 

(あっぶなー!みどりちゃん勘良すぎ!)無人販売を覗き込むと茹でトウモロコシがカットしてある皿を見つけ、お金を投入して取り出した。

 

横には水道もあり、水を水道から直接ガブガブ飲んでトウモロコシを頬張った。

 

「こはくちゃんは服装の割に男の子みたいね。」ぼくの様子に再びギクリとする。たしかにワンピースにこんなキャペリン被れば小さいとは淑女そのものである、ほたるお姉ちゃん小さい時から女子力半端ねーと心の中で叫んでしまった。

対するみどりちゃんは髪こそ伸ばしてはいるが、服装は動きやすいスボンに水玉のシャツ姿と夏海お姉ちゃんと変わらなくボーイッシュである。

 

「そ、そう?この辺じゃあ、別におかしい所はないよ。みどりちゃんもやって見なよ。」

みどりは視線をトウモロコシに落として見つめると、茹で上がって時間が経っているにも関わらず甘い匂いがまだ残っており、そして瑞々しい・・・。その黄色い粒々をみていると自然と唾液が溜まり、かぶりつくとその粒々が甘みを弾けさせて喉に落ち込むと爽快感を得るのである。そしてぼくと同じように水道の水を飲むと、水にも甘みがついたかのように変貌していつのまにか同じようにガブガブと飲んでいたのである。

 

「確かに、そうかも・・・。」みどりの住む北海道ではトウモロコシはよく取れる名産の一つであるが、この暑さの中で歩き回り喉もカラカラだと食べる炭水化物と水分はそれを飛び越えて美味しく感じた。

 

「でしょ!元気出てきた。」

 

「うん!バッチリ元気。琥珀ちゃんありがとう。」

 

「ナンモさ。」北海道の言葉で締めると二人はひとしきり笑って、歩き出した。

 

 

「・・・そういえば、みどりちゃんはどうしてここにきたの?」

 

「この夏休みに弟か妹が生まれるんだ、毎日牧場の手伝いしてるから邪魔にならないはずなのに親戚が手伝いに来てくれるからいいってさ。

・・・まあ、生まれたらそれこそずっと働きづめになるから、最後の長期休暇を楽しめってことなんだわ。」

 

「牧場って大変なんだね。毎日何気に飲んでる牛乳とかお肉を大事にしないと罰が当たるような気がするよ。」

 

「ふふっ!ちょっとでもわかってくれたら嬉しいな。」みどりははにかんで頰を緩ませた。

 

「ボクくん・・・、私の親戚なんだけど小さい時に来た時は随分好き嫌いが多かったなあ。うちの野菜とか牛乳を飲んで随分好き嫌いがなくなって帰っていった時は嬉しかったよ。」

 

「へえー。よっぽと美味しかったんだね、みどりちゃんの家で取れる食べ物・・・は・・・。」ぼくの頭の中に突然浮かぶ真っ赤なトマト・・・、それは唐突に現れて心臓が大きく拍動した。

 

・・・そうだ、ぼくはみどりちゃんの家で確かに数日過ごした。みどりちゃんは小さい時はもっと男勝りで、ぼくはよく泣かされていた。

 

あ!・・・あれは、トマトだった・・・。みどりちゃんはある日、心無い男の子に家のトマトを勝手に食べられた挙句、そのトマトをまずいといって投げつけられたんだ。

スカートにべっとりとトマトの赤い果汁が付きその場で崩れて泣いていたみどりちゃんを余所目に、僕はその子に飛びかかったんだっけ。二人とも畑で取っ組み合いになって泥だらけになってもボクは手を緩めなかった・・・、最後にはその男の子は泣きながら逃げていったけど、本当はぼくの方がとっくにベソかいても不思議じゃなかった。

 

「みどりちゃん、もう大丈夫だよ。」ぼくは畑のそばにある水道のホースを持ってきてみどりちゃんのスカートに水を落として洗い流す、トマトの果汁は水では落ちないが早く処置しないと洗濯でも落ちなくなりそうだと思っての行動だった。まだ泣き止まないみどりちゃんにぼくはうなだれると、そこにはさっき投げられたトマトが泥にまみれて潰れていた。

 

「ほら、みどりちゃん。」ぼくはそのトマトを拾い上げ、水ですすぐとおもむろにトマトにかぶりつく。

 

「あ・・・!」みどりはあっけに囚われていたが、ぼくは笑顔で答える。

 

「なんだ、不味いっていってたけど嘘だね!みどりちゃん家のトマトは美味しいよ。」ぼくはそのままそのトマトを胃に落とし込んで笑いかける。

 

「みどりちゃん、一番美味しそうなトマトはどれ?もう一つだけ食べたいな。」みどりちゃんは、すっと笑顔を見せるとぼくの手を引いて案内してくれた。

 

・・・そうだ、ぼくはこの一件から野菜をたくさん食べ始めんたんだ、あの時みどりちゃんが泣きやんでくれる一心で考えて起こした行動からぼくは好き嫌いがずいぶん減ったんだ。なんで忘れていたんだろう。

 

「琥珀ちゃん、どうしたのさ?ぼさっと歩いちゃって。」

 

「・・・ごめんなさい、なんだか昔の事を思い出しちゃって。」

 

「へえ、どんな?」

 

「・・・・・・うまく言い表せないかな、なんか心臓がどきどきしてるけどみどりちゃんに口で伝えてもわからないような、へんな気持ち。」

 

「・・・わかるべさ。」

 

「えっ?」ぼくはどきりとしてみどりちゃんを見る、彼女の目はとても澄んでいて遠くを見つめるかのような表情に二度どきりとした。

 

「私も、そうなんだもん・・・。」そういうと彼女は走り出す、まるで火照った体を無理に風を切って冷やすように・・・。

 

陽が傾きすっかり冷えた風を浴びたみどりちゃんが、息が切れるまで走りついた先は目的の停留所であった。

目的の財布は無事に見つかり、二人は無事帰りのバスに乗ることができたのであった。

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