ぼくのなつやすみ 〜のんのんと一緒〜   作:Edward

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お久しぶりです。
色々ありまして最近投稿から離れておりました、申し訳ありません。


8月7日早朝

昨日に書かなかった日記をラジオ体操前に書き込む。

 

8月7日

みどりちゃんの財布を探しに歩いて停留所に・・・。

消しゴムで消す。

 

きのう、とうとうアシスト君が完成した!

決戦は近い。

 

 

 

 

「おおー!今日のボク君は気合がはいっるんなー。」隣でいつものレッツダンシングしてるれんげから声がかかる。

 

「うん!ラジオ体操が終わったら池の主を釣りに行くんだ!今度こそ吊り上げて夏海ちゃんの釣果に勝ってみせるよ。」手をブンブン振って気合を入れるボクにれんげは両横腹に指を入れる。

 

「ひゃい!」素っ頓狂な声を上げて体操をしているみんなの視線を浴びた。

 

「れんげちゃん、なにするんだよ。」

 

「ボク君は力がはいりすぎなんな、こういう時こそリラックスして魚に気取られないようにするん。」

 

「・・・本当に、主に読まれるの?」ボクはれんげにからかわれていると思ったが、彼女のだるい目はいつもの目・・・。嘘はついてなさそうだ。

 

「主は今まで釣られずに生き残った猛者、そう簡単にはいかないんな・・・。それにボク君は最近アタリを逃している、警戒はハンパないはず・・・。」二人は器用に話し合いながら体操を続ける。

 

「なるほど・・・。」

 

「今日は水面には近づかず、音も立てずに静かにするのん。

水中から覗く魚は光の屈折で先までみえているみたいだから、気は抜かないんな。」

 

「わかったよれんげちゃん、色々ありがとう。しかし、れんげちゃんは本当に小一なの?」光の屈折を理解する一年生にボクは驚いていた。それに以前車の速度の話題をしているときにれんげちゃんは時速50キロメートルを理解していた。

 

「小三で、いろんな機械を作り出すボクくんに言われたくないんな・・・。」と瞬間に返される。

さらに横にいた、蛍は・・・。

 

「2人とも低学年とは思えないよ・・・。」と体操をしながら突っ込んでいたのであった。

 

つつがなく体操を終え、昨日完成したアシスト君を乗せた台車をごろごろと運ぶボク。蛍は前回の事もあって付いてきており、れんげも新兵器に興味深々と言ったところである。

 

「ボクくん、それって電気がいるんでしょ、どうやって動かすの?」

 

「・・・ちょっとがめついお姉ちゃんにお願いしたんだ。子供相手に足元見てふっかけてきたからたいへんだったよ。」

 

「だーれが、がめついお姉さんだって?」

 

「え?」ボクの後ろを通り過ぎつつ、ワンボックスカーのウインドーが開くと楓が睨みながら登場する。

 

「楓お姉ちゃん♪手伝ってくれてありがと、いてっ!」

 

「聞こえてたっつーんだ。何に使うかわからんが、せっかく発電機持ってきてやったのにその態度はよくねーぞ。」かるく小突かれた僕は、「はーい」と反省の言葉を入れつつ小突かれた頭をさすった。

 

「その箱の中身にこの発電機使うのか?」

 

「そうなんだよ。楓お姉ちゃん、大きいから先に池まで行っててよ。

あ、蛍お姉ちゃんもれんげちゃんも先に車に乗せてもらう?」

 

「ウチ、乗せてもらうんー!」れんげは飛び乗る。

 

「私はボクくんと交代でこれ運ぶよ。」アシストくんをみて一緒に池へと向かう。

 

「じゃあ、先言って準備しておくからなー。」

「ボクくん、ドンマイんなー!」

 

ミンミンゼミが早くも鳴き始め、暑さを感じられるようになる・・・。

2人は車で先行く2人を見ながら・・・。

 

「どんまい、ってこんな時に使う言葉だったっけ?」

「・・・れんげちゃんの言う事は気にしないほうがいいよ。」

 

「・・・蛍お姉ちゃん、それってディスってる、てやつ?」

「あわわわ!ち、違いますー!」

今日も旭ヶ丘は平和であった・・・。

 

 

 

 

池に着いた時には発電機を車から下ろし、燃料を入れ終わったところであった。

楓はアウトドアが得意なんだろうか?手際が良く、簡易なパラソルまで準備していた。

 

「楓お姉ちゃん、ありがとう!ボクも早速準備しないと・・・。」台車上にある大きなコンテナボックスから取り出すのは組み上げ前の竿に、アクリルケースに入った動力モーター。うっかり手が入ってベルトに巻き込まれないようにアクリルケースで覆う安全仕様。

竿をケース横にある固定金具に装着すると、釣り糸をガイドに入れてモーター部分で巻き取るように設置する。

そして竿の根本に変わった器具を装着し、モーターの横のコントローラに配線する。

 

「おいおい、主を釣るのになんて機械を作ったんだ、ボク君」

 

「昨日見て思ったんですけど、これって自力で釣ったことになるのかな?」

 

「大丈夫!自分の力で設計、部品調達、組み上げをしたから自力と言えるし、これは自由研究の一環でもあるから!」

ガチャガチャと音を立てながら断言するボクに二人は何もいえなかった・・・。

 

「よし!これで準備完了。楓お姉ちゃん、発電機お願い。」

 

「はいよー。」池より十分離した発電機はスイッチを押すと、自動車のアイドリング状態のような音が響く。コンセントを刺してコントローラーのボタンを押すと電源が入る。

 

「よしっ、いけー。」竿を手に持ってリリースすると、すぐさまアシストくんの固定部に差し込んであとは待つ・・・。

 

「いけー、だけにいけー・・・。」沈黙を続けていたれんげは静かになったタイミングでぽつりと言う・・・。

ボクは顔が真っ赤になって頭を掻いた・・・。

さむいボケに主も底に沈んでのか、一向に当たりはなくアイドリングの音だけが響く・・・。

 

「さて、あとはヒットするのを待つだけだけど・・・暇だね。

発電機もある事だし、僕は内職でもしようかな?」

 

「え・・・内職?」蛍は首を傾げる。

 

「蛍お姉ちゃんのお父さん、昨日お風呂でスマートフォンを湯船に落として電源入らなくなったみたいだから分解清掃しようと思ってるんだ・・・、うまく行ったら治るからね。」

 

「お父さん?もうー、あの携帯電話は防水じゃないって何度も言っていたのに・・・。」蛍の非難をよそに、精密ドライバーセットと無水エタノール、工業用蒸留水を準備する。

 

「治るんの?」れんちゃんが覗き込む、ボクはアシスト君を持ってきた箱の上で早速作業を始める。

 

「多分、湯船に落としてすぐに掬い上げたのならバッテリーのショートはしてないと思う・・・。」

あっという間にカバーを開け、バッテリーから基板を切り離しバラバラにしていく・・・。カバーは一度蒸留水で洗うと水をキッチンペーパーで拭き取り、夏日に晒す。

 

「ごめんね、いつもお父さんの修理に付き合わせて・・・。

よく電化製品を壊すんだ。」

 

「別にいいよー、ボクにとってはいい小遣い稼ぎだから。」蛍の申し訳なさそうな声に、ボクは答えた。

 

「・・・ボクくん、これでいくらもらってるんな?」

 

「今回はなんと3千円もくれるんだ!頑張らないと。」

 

「な!3千円!!ボク君はお大臣様なんな!」

 

「え?・・・東京で依頼したら一万円以上はするんだけど・・・。」二人のやりとりに蛍は突っ込む。

 

「おいおい、需要の少ない田舎をさらにデフレにしないでくれよ。水没、新規購入にならんだろうが・・・。」楓から非難が飛んだ。

 

「会社の電話だから、壊したら始末書というのを出さないといけないみたいだよ?始末書だしたらボーナスが、とか言ってた。」

 

「ボクくん頑張って!お願い!!絶対に治してね!!

・・・出ないと、私のお小遣いがー!!」蛍が突然涙目になって叫び出す。

 

「なっ!ほたるん、どーしたんな!!」

 

「どうやらボクくんの作業次第で、ボーナスの査定に響くらしい。

とんでもない小学生だな・・・。」楓が呆れ返るようにれんげに説明するが、れんげは得意げな表情に変わる。

 

「ふっふっふっ・・・、さすがうちが見込んだ男なんな。」れんちゃんの言葉に楓は経緯を思い出して苦笑いする・・・。

 

・・・

・・・・

・・・・・

 

パーツによって蒸留水洗浄と、アルコール洗浄、工業用ドライヤーを用いて再度組み上げしたボクは電源ボタンを押す。

蛍はもう、涙目で祈るように見つめていた。

フルーツのロゴが出るが、立ち上がり前にメンテナンス案内が出る。

 

「あちゃー、機械的には壊れてないけどデータが破損してるな・・・」

 

「これ?大丈夫なの?」蛍が不安そうになってつぶやく。

 

「うん!最近入れたデータはダメだろうけど、メンテナンスした時にデータバックアップ取ったからOS再インストール後にデータ復元で大丈夫!追加千円もらってやってあげよう。」

 

「・・・こまかく刻むな・・・。」楓は感心するように頷く。

 

「よかったー、この夏ボク君がきてなかったら最悪の夏休みになるところだったよ。」蛍が呟き、ガヤガヤと話し込んでいる中、れんげは池を見つめる。

 

「どうしたー、れんげ?」

 

「あしくさ君、なんか動いてるんの。」

 

「アシスト君だよー、って!ボク君引いてるー!!」蛍の声に一斉にアシスト君へ走る。

アシスト君は、制御インバータを組み込んだ動力装置。

モーター音もインバーターによる波形制御されており、静音動作でみんな気づかなかった。

 

反対に水面は激しく波打ち、ときおりその魚影が現れる。

 

「すごいのーん!あしすと君が主を完全に捉えているんなー!!」

アシスト君は主の引きの強さに合わせてトルクがかかるようプログラミングされており、一定の力が入ればトルクを緩めて糸の切断を防ぎ、力が緩むとその分巻き上げるように設計されていた。

魚の体力が奪われ、巻き上げの方が徐々に強くなっていく。

 

「もうちょっとかな?

・・・あれ?以前の主より大きいような・・・。」みるみるうちに現れる魚影は以前よりも大きく感じる、それは蛍も感じていた。

 

「それに、ちょっと姿が普通の魚とは違う感じがするよ。」蛍が指差す魚影は確かに年齢を重ねた里鯉とは違い、胴体が長細くて鯉とは思えない・・・、その異質な魚影に固唾を飲んだ,。

 

「あ、あれは・・・。」

 

「どうした?れんげ?」れんげの驚愕の表情に楓は相槌を打つ。

 

「この地にも異形の外来種が紛れ込んでいたのん・・・。

あれは、雷魚なんな。」

 

「雷魚?」ボクも聞きなれないその名前にれんげの言葉に重ねる。

れんげは水面から目を離す事なくこくりと頷く・・・。

 

「このあいだ、にゅーすでみたのん・・・。日本の川にも適応して繁殖していると聞いたんな。」

 

「ま、まさか・・・。」信じられないと言った感じで蛍は否定するが、アシスト君が捕らえた魚はみるみる大きく浮かび上がりその異形の姿が露わとなっていく。

バシャ!

大きな波紋と共に水面から姿を現した異形の魚が皆の目に飛び込んだ。

その姿は蛇とも思える禍々しさに息を飲む・・・。

 

「雷魚なん!それもすっごく大きいのん!」

 

「湧水の溜池に、外来種の雷魚が入り込む訳がない・・・。

誰かが飼えなくなって捨てたんだな。」少し苛立ちの表情をした楓がつぶやいた。

 

アシスト君はその雷魚を池から引き摺り出すと、トルクを失い巻き上げを止める。雷魚は所構わずびちびきと跳ね回った。

 

「なんか、グロテスクだね・・・。リリースする?」

 

「・・・いや、外来種は生態系を破壊するからリリースはまずい。

とりあえず持ち帰ろう。」楓の言葉にみんなは驚く。

 

「え、あれ持って帰るのですか?」蛍は少し青ざめる。

 

「少しアテがある・・・、とりあえずあれを入れて移動させる物を準備しよう。」楓は一度車へ戻り、移送の準備を始め出した。

 

・・・

・・・・

・・・・・

 

ピンポーン♪

 

「はいはーい!」小鞠は、呼び鈴の音に煎餅を頬張ったまま玄関を開ける。

 

「あっ!みんな朝からどうしたの?」

 

「お前こそ、こんな朝から煎餅を咥えて出てくるとはな・・・。」楓のツッコミに小鞠は慌てて煎餅を後ろに隠して恥じらう。

 

「はにゃー!ちょっと美味しそうだったからつまんだだけだよ。

・・・それで4人で朝からうちになんの用なの?」

 

「大した事ないんだ、最近雪子さんが池に魚が欲しいと言ってたろ。

今日、魚が手に入ったんだ・・・、とりあえず放していいか?」

 

「そうなんだー、お母さんずっと探していたもんね。

どんな魚?大きいの?」

 

「・・・ああ、大きさだけは保証する。」

 

「わかったー、お母さん呼んでくる。」小鞠は再び家に入り、母親を呼びにいく。

 

「今、聞いたか?

小鞠から同意はとった、放て・・・。」後ろで無言で頷く3人は、台車の上にあるアシスト君を囲っていたアクリルケースに入っている物を庭の池へと転がしていく・・・。

 

 

 

「へえー、大きな魚が手に入ったの?

夏海もなかなか捕まえられなくて難儀してたからねー。」

 

「という事は、池の主でも釣ったのか!

誰、誰が釣り上げたの?」

 

「わかんない、とりあえず駄菓子屋が大きい魚だって言ってたよ。」

 

「・・・・・・・・・。」

 

 

越谷家の面々が庭に出てくると、池から壮大に跳ね上がる雷魚に驚愕する。

雪子さんはその場で腰を抜かし、小鞠は泣き叫ぶ。

夏海は目を輝かせて驚き、卓は固まる・・・。

 

「「「なんじゃ、こりゃー!!」」」

一家の叫びと共に走り去るワンボックスカー、これでは雷魚を捨てた飼い主と同じである・・・。

 

「これでいいんでしょうか?

先輩・・・、すみません。」蛍は少し涙目になってあやまる。

 

「大丈夫だ、こういう時は夏海が好奇心でしばらくは面倒見るだろう。

・・・夏海が飽きる前に、それまでの間に飼ってくれる人を探して身の振り方を手配してみる。」楓は運転しながら答えた。

 

「かみなりおやじ、また会いにいくんなー。」

 

「・・・・・・また意味のわからん名前を・・・。」

 

「えっ!それ名前なの?」ボクはれんげちゃんのあだ名のセンスに愕然としながら戻るのであった。

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