雷魚騒動から引き上げた一向は楓の車で送られ、一旦家路についた。
遅い朝食を蛍と談笑しながら食べると、蛍は宿題をする為に自室に戻る。
僕も現在の拾得物を並べて昼からの行動に悩んだ・・・。
現在、ジェットサイダーの王冠は23種・・・。
初めはよく落ちていたが、ここ2日は見つけていない。そろそろ普段行かないような場所を探さないといけないと思われる。
昆虫はノコギリクワガタとコクワガタ、こちらは全く夏海に勝てるとは思えない・・・。
「んー、そろそろ幼虫が羽化してくれたらなー・・・。」なんの幼虫かわからないが、以前見つけた幼虫に期待する。
おじちゃんのスマートフォンもすっかりデータも復元を完了させ、書斎の机に置く・・・。
今日は電話を家に忘れてしまった、という言い訳にしたスマートフォン・・・、とりあえず電話がかかったらややこしいので機内モードのままにしておいた。それと同時に書斎のドアがあいておばちゃんがボクを呼んだ。
「あっ、ボク君にお客様よ。」
「え、誰だろう・・・。」一階の玄関に向かう。
「・・・・・・・・・。」
「あっ、・・・えと、卓お兄ちゃん。」ボクは玄関に立つここでは珍しい男の子である卓が訪ねてきたのである。
とりあえずリビングに通されソファーに座り、対面に座るがこちらを見据えるだけで声を発しない。
「え、えと・・・、ご用件は?」卓から話しかけてくる様子はないので、こちらから問いかける。卓は一つ頷くと、鞄から出されたタブレット・・・。そこには、先程捕獲した雷魚の姿があった。
そして次のスライドには大きなどじょうが一匹、卓の自漫気な表情を浮かべて釣り上げた姿が映されていた。
そして手前にアップの夏海が満面の笑みでピースサインをしていた。
「卓にいちゃん凄い!」
「・・・・・・・・・。」そして沈黙のまま横にスライドすると、どじょうの墓の前でがっくり項垂れている卓をとり、その前で先ほどの写真と同じく夏海が輝く笑顔とピースサインの写真、そして日付は先ほど。
それをみたボクは背筋がぴしっと凍った・・・。
「も、もしかして・・・、雷魚のせい?」問いかけたボクに、卓は一雫の涙を流して頷く・・・。
「ご、ごめんなさい!まさか雷魚より先にどじょうがいたなんて・・・。」卓は、眼鏡を外してハンカチで涙を拭うとボクの肩にそっと手を置くと一つ頷いた。
「卓にいちゃん・・・、何かボクに出来ることがあるなら、罪滅ぼしがわりに手伝いたいんだけど・・・。」ボクのその言葉を待っていたかのように、卓は眼鏡を光らせる。
この人、この言葉を待っていたな。と思うくらいに次の行動が早かった・・・。早速、乗ってきた自転車に僕を乗せると凄い速さで移動を始めた・・・。
・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
駄菓子屋へ急行した卓は、楓の車に乗ってデパートのある街まで繰り出すことになった。
楓も、雷魚の件でボクと同じ様な経緯で車を出す羽目になり、それに便乗した小鞠、夏海、蛍、れんげ、卓にボクが街に繰り出す事になった・・・。
「まさか、今からデパートに繰り出すとはな・・・。それで卓、なにが目的なんだ。」楓の問いかけに再びタブレットを開くと、パソコンが映し出される。
「パソコンを買い替えたいのか?」楓の言葉に頷いた。
「卓にいちゃん、今回は自作PCに挑戦したいみたいだからボクがアドバイス役で駆り出されたみたいなんだ。」
「自作!お兄ちゃん大丈夫なの?」小鞠が問いかけると、卓はボクの肩に手をおいて親指を立てる。
「ボクくん次第か・・・、でも自作がうまくいけばメーカーのパソコン以上の性能で安く作れんでしょ!
ウチの家のパソコン古いから、にいちゃんのパソコンでゲームが出来る!」夏海が気合を入れた。
「あ、そういう魂胆なんだ。」蛍がつぶやく、たしかに越谷家の家電製品はよく言えば物持ちがいいといえるが、全てが古くゲームはレトロと言えるものしかない・・・。夏海の目が輝くのは無理がなかった。
「ボクくん、どーなん?なっつんの欲しがるパソコンは作れるんか?」
「うーん、卓にいちゃんの欲しいパソコンはゲーム用ではないけど、CADも使いたいみたいだから両立できるGPUボードと相性のいいCPU次第かな?」
「・・・ボクくんの言ってることがほとんどわからないな・・・。」
「私も・・・、蛍は?」小鞠も頷いた。
「えっ、・・・だいたいわかります。」
「蛍すごーい、リケジョってやつ!」小鞠の言葉に蛍は照れる。
「蛍って裁縫とか料理も得意だし、簡単な電気工作も作ったことあるって言ってたし。ほんとすごいねー。」夏海も賞賛すると蛍は真っ赤になっていく・・・。
「そんな、私なんて・・・。理系なんてボク君の方が凄すぎるんだから。」
「へえー、まだボク君には素晴らしい才能があるの?」
「うん・・・。この間、家にボク君の電気工事の免許が届いたよ。」蛍の言葉に楓が驚いた。
「へえー、あの国家資格を取ったのか!君の年で筆記試験は通らないだろう?電気の計算は確か、中2の理科の知識があっても解けないとか聞いたが・・・。」
「計算問題は、ほとんど捨てました・・・。」
「残りでカバーしたのか・・・。」楓の感嘆する。
「おいおい、最年少取得じゃないのか?」
「ボクより一回分早く受験した人が最年少です。」
「どっちにしても、すごいなあ。」楓とボクの会話にれんげは首を傾げる。
「何がすごいんな?」
「その免許があれば、家の電気工事ができるようになるんだよ。」
「んなっ!」
「試験に合格して、免状の送付をこっちにしておいたんだ。
・・・何か、役に立つかな?と思って・・・。」
(何かに、使う気だ・・・。)楓以外はそう思った。
(何に、使わせようか・・・。)楓は邪悪な笑みを浮かべる。
・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
「デパートなーーん!」れんげは大の字になって叫ぶ。
「私も久々です、婦人服売り場はどこかな?」
「姉ちゃんは子供服売り場だねー。」
「夏海ー!」
「おーい、好き勝手いくのはいいけど、何かあったら連絡してこいよー!」楓がちらばる前に叫ぶ。
卓は早速、デパートの一角にあるPCショップに向かった。
かなりの品揃えで、一通り満足するものが揃っていた。
「えーっ、と・・・。
卓にいちゃん、これはスペック上げすぎだよ。冷却と電源容量を上げないと発熱ですぐ壊れちゃうよ。」卓はふむふむと頷く。
「それにペルチェ水冷って・・・。流行り物を詰め込めばいいわけではなくて、もう少し費用対効果を考えないと。」
「PCなんて長く使える物を考えなくていいから、今必要なスペックで安く作って必要ならグレードアップするか買い換えるくらいで・・・。」
近くを通る通行人は奇妙な二人組を訝しげに見ていくのであった。
「いやあー、遊んだ遊んだー。」夏海はゲームセンターでUFOキャッチャーをやっていたのか、微妙なキャラのぬいぐるみがわんさかと入った袋を持って楓の前に現れた。
「相変わらず、身銭がつかない使い方をしとるな。」
「えっ!なんでー、楽しいじゃんー。」
「まあ、お前がそれでいいなら構わんが・・・。」
「れんちょんは、何買ったの?」
「うちは、36色の色鉛筆な・・・。駄菓子屋では16色までしか売ってなかったから、具をさらに細かくかいてあげるんなー。」
「すまんな、れんげ・・・。言ってくれれば発注するからな。」
「ただいまー。」小鞠と蛍が更に合流する。
「あっ!姉ちゃん!姉ちゃんは何を買ったの?」
「えっ、蛍が私のシュシュを選んでくれたの。可愛いでしょ!」サイドアップにつけた新しいシュシュ、ひまわり柄がよく映える黄色のシュシュを早速身につけて一回りした。
「他にも、ヘアーアクセを何点か買ったんだー。」
「ほ、蛍は何を・・・。」
「私ですか!私は可愛い麦わら帽子があったので衝動買いしちゃいました。」
「・・・・・・。」夏海は、手に持っているぬいぐるみや玩具を手にしている事が無性に恥ずかしくなり後ろで隠した・・・。
楓がにやにやと笑っている。
「お兄ちゃんと、ボクくんまだかな?」
「ああ、確かPCショップだったな・・・、いってみるか。」一行はなかなか来ない二人に痺れを切らし、PCショップに向かって歩き出す。
その時、カラーン、カラーン♪とベルを鳴らして景気のいい言葉が響いた。
「おめでとうございまーす。
特賞、沖縄旅行3泊4日の旅ご当選でーす。」
「いいなあー、沖縄の旅だって!
さっき買った時に福引券もらったような・・・。」小鞠が一枚もらっていたのを思い出した。
「先輩、私も一枚貰いました、いってみませんか?」
「そうだね、行ってみよう。」二人は福引所に足を運ぶと、特賞を引き当てたボク君が頭をかきながら目録を受け取っていた。
「えっ!ボクくんが沖縄の旅引き当てたの!」
「う、うん・・・。卓にいちゃんのパソコンのパーツ買ったら何枚か貰って、お礼にもらったんだけど・・・。当たっちゃった。」
「す、凄い!」
「・・・それと、これも当たっちゃった・・・。」
横には二等と書いた品、55インチの有機液晶パネルを当てていたのだった・・・。
カラーン、カラーン♪
「お嬢ちゃん、おめでとうございますー。
3等高級黒毛和牛セット大当たりでーす。」
「ふっ、ふっ、ふっー。ボク君ばかりにいいかっこはさせないんなー。」後ろを見るとれんげちゃんも当てており、仁王立ちであった。