ぼくのなつやすみ 〜のんのんと一緒〜   作:Edward

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8月2日の早朝

ちゃん♪ちゃん♪ちゃ♪ちゃ♪ちゃ♪ちゃ♪ちゃ♪、ちゃん♪ちゃん♪ちゃ♪ちゃ♪ちゃ♪ちゃ♪・・・。

 

朝のラジオ体操で一際輝く異色の存在にボクは沈黙する。まるで体操とは違い、レッツダンシングする一人の少女・・・。

あ!「れっつ!ダンシングー!!」とか言ってる。ボクの視線はその少女に釘付けだった・・・。

 

「ム!誰なん?うちをじっとりみているあなたは!!」指をびしっ!とボクを指す。ラジオ体操の最後をうまく決めのポーズとしてダンスとミックスさせた無駄のない動き・・・、ある意味すごい。

 

「・・・・・・あの、ボク・・・。」

 

「ムムっ!見かけない男の子なん!どっから来たですか!!」少女は腕をブンブン回しながら距離を詰めてくる、なんかこの子すごいな・・・。

 

「れんちゃん。この子私の従兄弟なの、昨日から私の家に来ているのよ。」蛍が助け舟を出してくれる。

 

「ほたるんの?むむー・・・。にゃんぱすー。」

 

「え?えと、・・・・・・。にゃん、ぱす?」

 

「ほたるんと反応が同じなん!わかった、君はほたるんの従兄弟だ!!」何を納得したのかさっぱりわからないまま、疑惑を勝手に納得した少女は手を差し出して来た、次はなんなんだろ。

 

「宮内れんげなん、できましたら名前を教えてくださいなー。」

 

「ぼくはボクだよ。」握手をしながらそう伝えると、明らかに不愉快な顔をする。

 

「宮内れんげなん、できましたら名前を教えてくださいなー。」

 

「だから、ぼくはボクだよ。」というと、再び不愉快な顔をする。

 

「ほたるんの教育が悪いからこうなってしまったんな?よし!うちが矯正してあげるんなー。」

 

(れんちゃん、あだ名がつけられないから怒ってるんだ。)蛍はようやくこのれんげの事をわかり始めた今日この頃、ボク君に向いた牙に今日何かが起こると察してしまった。

 

「れんちゃん、それでどうするつもり・・・。」恐る恐る聞いてみる。

 

「ふっ、ふっ、ふっ!しれた事、新入りはまずなっつんの洗礼を受けてもらうまで・・・。」

 

「えっ!夏海先輩ですか?」蛍は聞き返す、れんげは仁王立ちして立ちはだかる。

 

「そうなん、なっつんのとびきり猛烈な洗礼を受けないと世知辛いこの場所で生きていけないんな!!」再び指差しされるボク・・・。

 

「えっと、よくわかんないけどれんげちゃんの友達を紹介してくれるのかな?ありがとう。」

 

「!!・・・ほたるんと違ったぽじてぃぶなあぷろーち。むむむ、ボクとやら、あなどれん・・・。はやくなっつんに会わさねば。」

 

 

「あんたたち!はやくこっち並ばんねっ!!スタンプやらんよっ!」ラジオ体操の係りのおばさんが怒り出した。よく見たらボク達以外はすでにスタンプをもらって帰り始めていたからだ・・・。

 

「なっつんのお母さんな、怒るとこわいんな。」れんげの言葉におばさんは再び雷を落とす。

 

「あら?この子みなれんね。どっから来たの?」スタンプを押しながら見慣れない顔に言葉が出る。

 

「私の従兄弟のボク君です、夏休みの間こっちで過ごす事になりまして・・・。」蛍が説明した。

 

「そうなのー。何も無いけど、時間と自然だけはいっぱいあるからうちの子達と遊びに連れて行ってもらいなよ。」

 

「うん、ありがとうおばちゃん。」ボクは頭を下げる。

 

「そうなん、今からなっつんのところにつれていくん。」れんげは鼻息荒く、おばさんに伝えた。

 

「え、夏海に?ロクな遊びしか教えんよ。」

 

「だからなん!なっつんにここの掟を体に覚えこませてもらうんな!!」スタンプが行き渡った事を確認したれんげはボクの手を掴んで引っ張り出す、蛍はそれについて行く・・・。

残されたおばさんはあっけにとられ、見送る事しか出来なかった。同じ行き先なのに・・・。

 

 

 

昔ながらの古民家のドアをチャイムを鳴らす事なく、れんげは開け放つ。

 

「なっつん!なっつんはいないのですか?」れんげの啖呵に現れるのは小鞠であった。

 

「どうしたの?夏海なら駄菓子屋に行ったけど・・・、その子誰?」

 

「私の親戚のボク君です。」

 

「もういいのん!挨拶はそろってからするのん!!こまちゃんもついてくるのん!!」れんげは駄菓子屋に向かい出す。

 

「強制かい!ってこまちゃん言うな!!私もやりたいことあるのに・・・。」

 

「すみません、先輩。」

 

「蛍が謝る事ないけど・・・、れんげを張り切らせるなんてボク君はなかなかやるな。」

 

「え?ぼく何にもしてないよ。」

 

「今はれんげの暴走に付き合うしかないか・・・。」小鞠はそういうと割り切って駄菓子屋に向かう。

(先輩巻き込まれるのに慣れすぎて、順応が早い・・・。)蛍はそう思うのであった。

 

駄菓子屋に着くと、れんげの言っていた夏海がいた。

サイダーを一気飲みして、プハーッとしている。

 

「なっつん!新入りなん!!」

 

「おっ!れんちょん、新入り?この子か?」

 

「そうなん!ぼくをボクと言って名前をいわないのん。」

 

「エクセントリックネーム!!れんちゃん、この子の名前はぼくと言うのだよ。な?ぼく!」

 

「うん、ぼくはボクだよ。」

 

「うそなん!名前には苗字もあるのん!!」

 

「れんちょん、時には苗字もない子もいるのだよ。そこは言ってはいけないぜ。」

 

「そうなん?」

 

「そう!れんちょんは物分かりがいい!」びしっ!と指を突き立ててポーズを決めるとれんげは納得する。

(納得するんかい!!)非難する・・・。

 

「名前の事は納得したん、ボクさんごめんなさい。でも!新入りはここでの掟を体に覚えないといけないんなん!なっつんからお願いします。」

 

「まーたわけのわからん事を・・・。

ぼく君とやら、君は夏休みの自由研究を決めたのかな?」

 

「え?うーん特に決めてないけど・・。」

 

「夏休みはあっという間だ。決めてないと素晴らしい研究はできない!君にお題をあげよう、それができたら夏海先輩がここでの秘密を教えてあげよう。」

 

「どんな、秘密?」

 

「秘密だから、達成したら教えよう!」

 

「わかった!どんなお題なの?」

 

「一つはこのジェットサイダーの王冠集めだ!

駄菓子屋は、昭和に流行ったジェットサイダーの復刻を見つけて入荷した。この王冠50種を見つけてくる事だ。」夏海は今飲んだサイダーの王冠をボク君に渡す、その王冠には国旗があった。

 

「実はうちが集めていてコンプリート直前だったんだけど、母ちゃんに見つかって捨てられそうになって、逃げ回ってるうちにあちこちに散らばっちゃったんだ。駄菓子屋にあと3本残っていて、今うちが飲んだから46個はこのあたりに散らばっている。川の中にもあるかもしれない、でも散らばる前に蛍光塗料塗っておいたから近づけば光って分かる。」

 

「これが研究になるの?」

 

「なる!なぜなら王冠のうらにはその国の特徴が書いてある、それを丸写しすれば各国の研究になる。」

 

「それで夏海あつめていたのかー。」小鞠が口を挟んだ。

 

「まあねー。でもそれだけではない!あの王冠を持っていると、水中にいる時間が長くなる!ような気がする・・・。」夏海の話に全員がずっこけた・・・。


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