ぼくのなつやすみ 〜のんのんと一緒〜   作:Edward

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8月2日の午前中

駄菓子屋で朝早くから集まる子供達、ボク君に試練という課題を与える夏海はジェットサイダーの王冠50種集めを丸投げした・・・。

 

「それがダメなら虫相撲でウチに挑んでもいいし、川釣りでウチ以上の釣果を叩き出してもいい!ウチに勝てる物があるならどーん!と挑んできたらいいさ。」夏海は胸を叩いてボク君を挑発する。

 

「ボク君、夏海先輩は強いから無理して勝とうなんて思わないでね。」

 

「そうそう、まぐれでも勝ったら夏海はしつこいから大変だよ。」

蛍と小鞠はフォローの言葉を投げかける。

 

「ねーちゃん!なんて人聞きの悪い事を!!ウチ負けた時は潔くボク君に秘密を教えるよ。」

 

「虫相撲で連続して負けた時、ザリガニ出してきたのはどこの誰だ!私のカナブンを返せ!!」小鞠は半泣きになりながら反論する。

 

「先週、小鞠先輩が見つけた大きなカナブンに夏海先輩の自慢のノコギリクワガタが負けて出したのがザリガニで、カナブンはその餌食に・・・。」蛍はボク君に耳打ちする。

 

「虫相撲とはいえ、甲虫たちはウチ達が作ったデスゲームに巻き込まれているのん!一夏の尊い犠牲はウチたちに大事なものを教えてくれているのな!!」れんげはしみじみと言う、小鞠は泣きじゃくりまだ夏海を非難していた。

 

「じゃあやめようよ。」ボク君の一言にれんげは顔をあっぷにして反論する。

 

「不幸な事故はあったけど、これは掟なん。夏休みと虫相撲は切り離せないこの地の祭なん!!」

 

「わかったよ、れんげちゃん。とりあえず出来ることからやってみるよ。」ジェットサイダーのトンガ王国の王冠を握りしめるのであった。

 

 

 

蛍とボク君は朝ごはんを食べる為に帰り道を例のジェットサイダーの王冠を探しながら歩いた。

 

「しかし、夏海お姉ちゃんも蛍光塗料を塗っておくなんてお母さんに見つかるの想定内だったのかな?」ボク君は茂みを掻き分けながら蛍に話しかける。

 

「夏海先輩はそういうところは凄く勘がよくて・・・、それ以外は見抜かれてるけど。」

 

「ふーん・・・。あっ!あった!!」茂みを分けると太陽に当たって蛍光塗料が光る。スペインに続いて、アルジェリアの王冠が顔をだしていた。

 

「ボク君凄いねー。この調子だとすぐに見つけられるかな?」

 

「夏海お姉ちゃん、あちこち逃げ回ってなければいいんだけど・・・。」

 

「あー・・・。あの時のおばさん、相当怒っていて半日は夏海先輩を追いかけ回していたから・・・。川の中とか泳いで逃げてたよ。」

 

「川にも落としてるの?見つかるかな・・・。」

 

「ボク君、無理しないでね。」蛍はボク君を案ずる。

一学期、蛍は引っ越してからここでの生活は都会と違い危険度が高い遊びがある事を知った。女子という事で無理はさせられなかったが、男の子であるボク君は夏海先輩に危険な遊びを共有しかねなかった。

 

 

家にいる帰った二人は蛍のお母さんに出迎えられ、遅くなってしまった朝食をとる。

 

「そうそう、ボク君は機械が得意と聞いたけど。これできるかな?おばさんもおじさんも苦手で・・・。」

差し出されたのが無線LANのルーターであった。

 

「うん!ボクの家は全部ボクがやったよ。任せてよ!」

 

「うわあ、助かるわ!インターネットの契約は済ませたんだけど、ルーターの設定っていうのがわからなくて・・・。設定してもらうこともできるんだけど、この辺りでは結構な出張費取られちゃうのよ。」

 

「おばちゃん、でもお家が広いから一台じゃあ無線が行き届かないよ。」

 

「同じのもう一台あるけど、そういう使い方できるの?」蛍のお母さんは同じ筐体の無線LANを取り出した、ボク君は筐体にある切り替えスイッチを見て頷く。

 

「うん!これならできるよ。ブリッジにすれば二階もネットできるようになるよ。」

 

「うわあ、助かるわ!お駄賃弾むからお願いね。」蛍のお母さんは500円玉を取り出すと、ボク君に渡す。

 

「おばちゃん、ありがとう!」ボク君は貴重な収入を得ると早速機材を持って設定を急ぐのであった。

 

ボク君の活躍で一条家は無線LANによるインターネット環境の整備と各種PC、タブレット、ゲームなどがインターネットに組み込まれて都心にいた環境へと変貌する、なにより携帯電話のアプリ全般がネットにより息を吹き返したのだ。パケットによる通話や、動画のやりとりができるようになったのは大きい。

蛍お姉ちゃんも東京の同級生とビデオ通話をして喜ぶ事となった。

そして、ボク君もネットを使った活動がひろがるのであった。

にやり・・・。

 

 

朝ごはんを食べたボク君は蛍に教えてもらってバスに乗り蛍達の学校へ向かった、正確には学校の裏にある山であるが・・・。

蛍から借りた虫取り網と籠を持って虫相撲に使える甲虫の捜索と、ジェットサイダーの王冠探し、および昆虫採集、釣りをするポイントを確認する為である。

 

あちこちの木を調べて回るが、甲虫は一向に見つからない・・・。

 

「うーん、虫の見つけ方を夏海お姉ちゃんに聞いとくべきだったなあ。」蝉時雨の中、汗を流して探し回る。田舎の蝉は都会と違って鳴き声が違う・・・。

ボクの住んでいる町はジージーと鳴くアブラゼミや、シャワシャワうるさいクマゼミくらいしか聞けないがここではミンミンゼミが猛威を振るいうるさい・・・。

夕方になるとカナカナカナカナと鳴くヒグラシと、ツクツクボウシが一日の夏の暑さを労うように鳴き始める。初日のボクはそこに印象を覚えた。

 

「あっ!」ボクは山の一角に野菜の畑を見つけて駆け出した。

目的はその横に積んでいる収穫後に刈り取った枯れ草の束、それを掘り返すように調べていくと目的の物が出てきた。

 

「やったあ!なんの幼虫がわからないけどそろそろ大人になるぞ。」ボクはその枯れ草と一緒に見つけた幼虫4匹を虫かごに入れ、成虫になるのを楽しみにしつつ即戦力を求めて山を探索するのであった。

 

 

午前中、虫探しに精を出しお腹が空いたので家を出る前におばちゃんからもらったおにぎりを食べながら午後の予定である川の探索を計画していた。

学校の裏に流れる川は浅瀬ばかりで魚は見つけられないが、釣りに使う生き餌を採取し、ジェットサイダーの王冠を見つける予定であった・・・。

 

「ノコギリクワガタ一匹だけかあ。まだ小さそうだしなあ、まだ完全に成虫でなかったら大きくなるかな?

駄菓子屋によって成長させる栄養剤とかあるか聞いてみよう。」もぐもぐしていると不意に後ろから声をかけられる。

 

「おっ!きみはひかげが言ってたボク君かいー、こんにちはー。」一人の女性が声をかけてくる。

 

「こんにちは、ひかげお姉ちゃんを知ってるの?」

 

「まーねー、私は宮内一穂。ひかげのおねえちゃんで、ここの学校の先生をやってるんだよ。」

 

「学校の先生なの?なんか先生っぽく無いね。」

 

「あっはっはっは、私もそう思うよー。ここには先生として自ら志願してくる人いないからねー。

大学で教員免許とったら授業料免除してくれる、っていってたからなんとなくそっちの方向にいっちゃったんだー。

私としては理系で、研究職したかったなー。」

 

「そっちは、もっと向いてなさそうだよ。」

 

「・・・初対面でここまで言うとはねー。」肩を落としてため息を吐く。

 

「くれぐれも気をつけてねー、熱中症にならないように水をよくのむんだよー。」手を振って帰っていく、おそらく学校からボクの姿をみて注意してくれたのだろう。向いてないは言い過ぎたかな。

頭をかいて一穂の後ろ姿にごめんをするのであった。


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