楓の家でのパソコンの応急処置で遅くなったぼくは、そのまま楓お姉ちゃんの所で食事をご馳走される事となった。
外にいたれんげちゃんと共に楓お姉ちゃんの夕食を頂き、昼間ドロドロだったボクはパソコンのメンテナンスでさらに汚れた為に洗濯機にかけられ、更にお風呂にまで入る事となった。
楓お姉ちゃんは二人の家に連絡まで入れてくれていたので心配される事はない。
「はあ、なんだかボク環境の激変についていけないな・・・。」一昨日まで自宅にいて昨日は一条家、そして今日は楓お姉ちゃんの家で夕食・・・、湯船でぼーっと考えていた。
「ボク君はもうほーむしっくになったんか?」
「!!」突然の返答に驚き、振り向くとれんげちゃんが普通に頭が泡だらけの状態で洗っていた。
「びっくりしたー、れんげちゃんいつのまに・・・。」
「普通に入ったら、ボク君が考え込んでたから普通に入ったのん。」頭をわしわしと洗いながらあのいつもの吸い込まれるような目でこちらを見据えていた。
「あの・・・。女の子が普通にお風呂に入ってくるっておかしくない?」
「そうなん?お風呂は一緒に入ると楽しいのん?よくねえねえや駄菓子屋と一緒に入るけど?」景気良くお湯をぶっかけて洗い流すとジャンプして湯船に飛び込むと、その衝撃にボクは湯船に沈んだ。
「うわっ!れんげちゃん!暴れないで・・・。」
「ボク君、覚悟なん!!」どこから取り出したのか、水鉄砲で襲いかかるれんげ、ボクは咄嗟に桶でガードする。
「甘い!」れんげは更にハンドガンタイプからタンクタイプの水圧のある水鉄砲に変えると一気に放水する。
桶に突然かかる水圧にボクは桶を落としてしまうと、れんげは再びハンドガンに持ち替えてボクの上体を抑えつつこめかみに突きつける。
「ちぇっくめいと、なん!!」勝ち誇るようににやりと笑うれんげちゃん、この子は一体何を考えてるんだ?
「ん・・・?んんん?」れんげは抑えていた左手を湯船からだしてその不思議な感触に目をぱちぱちさせた。
「ボク君のお腹付近に柔らかい物があたったんな・・・。」
「こらー!れんげ!!」楓がさらに乱入する。
れんげを引きずり出すと、手早くバスタオルを巻いてボク君に謝罪する。
「すまんなボク君、れんげなりにボク君を歓迎してのことだから許してやってくれ。」
「まつのん!ボク君はお腹に柔らかい物を隠し持ってるのん!」
「・・・心中察する。れんげには言い聞かせるから今日の所は勘弁してやってくれ。」楓は一礼すると騒ぐれんげにかるくげんこつを入れると風呂場を後にした。
ボク君は呆然と見送った後・・・。
「ぼく、お婿にいけないのかな?」湯船に沈みながら、一言呟いたのである。
恐る恐る出てきたボクは、またれんげちゃんの奇想天外な行動に目を白黒させる・・・。
先程巻かれたバスタオルをまるで日本古来の綿帽子のように装着し、三つ指ついてボクにひれ伏していた。楓はもう額に手を当てて事態が収拾できずに、匙を投げている様子である。
「な、何してるのれんげちゃん。」聞くのが怖い、ボクの心の中でよくない予感だけが胸をよぎっていた。
「ごめんなさい、のん。」
「え?」
「どうやらウチは知らぬとはいえ、ボク君の大事な所をさわってしまったみたいなん。駄菓子屋に聞けば、そこは他人がさわっていいものではないと聞き大いに反省していた所・・・。」
「れんげちゃん、大丈夫だよ。知らなかったことだし、ね?」なんとかいい方向に改善させようとするボクにれんげちゃんは目を潤ませる。
「なんとお心の広いボク君なん、れんげは感動しましたん!!こうなれば他人ではなく、ボク君のお嫁さんになるとまで誓っていた所なんな!!」
「どっひゃー!!」ボクはその場で腰を抜かしてしまう。楓はもう、後ろから両手を合わせて謝罪の意を表明している。おそらく風呂場の件を説明しているうちにれんげちゃんが間違った認識をした上に誤解を与えたのだろう・・・。
「れんげちゃん、ボクはまだ子供だから大丈夫だよ。」
「いつまでなら大丈夫なん?」
「わかんない、でもとりあえず今は大丈夫だよ。だから気にしないで遊ぼう!」れんげを励ますように伝えるとようやく少し笑顔を見せる。
「・・・よくわからないけど、ボク君が大丈夫ならわかったなん!またお風呂で一緒にあそぶなんな!!」
(しまったあああー!!)楓とボク君は心の中で墓穴を掘っていた事に後悔するのであった・・・。
その後楓に送ってもらい、一条家に戻ったボクは借りた釣り道具を確認しながら明日はどこで釣ってみようかと色々考えていた。
「ボク君おかえりなさい、今日は駄菓子屋さんでご飯を食べたんだって?」蛍がノックした後、ホットミルクを持ってボク君に渡す。
「蛍お姉ちゃん、ありがとう。」
「絵日記、今日は何を書くの?」蛍の持つカップはコーヒー、一口飲むと覗きこんだ。
「うん、でも今日は色々ありすぎて何を書こうか悩んでるんだ・・・。」
「そうなんだー。羨ましいな、私なんてあれから家で人形作って、お母さんと買い物に出かけただけだもん。」
「ボクは学校の近所で王冠と甲虫を探して、駄菓子屋さんでパソコンを直したよ。そのあとご飯食べて、れんげちゃんとお風呂に入って・・・。」
「ふええええ!れんげちゃんとお風呂?ボク君、なんて事を!」
「だって後から入ってきたんだよ、その後水鉄砲で酷い目にあったよ。」
「おははは・・・、れんちゃんならやりかねないかな・・・。
でもボク君、女の子とお風呂なんて入っちゃダメだからね。」
「蛍お姉ちゃんとも?」
「はわわわわ!!だ、め、ですー!」
「そうなんだ?蛍お姉ちゃんなら、昔入ったからいいのかな?と思ったよ。」ボク君は絵日記を描きならが返した。
(よかった・・・。もしこの話題にならなかったらいつか突然入ってきたかも・・・。)蛍は胸をなでおろして安心したのだった。
「さあ、明日もラジオ体操あるから早く寝たほうがいいよ。ボク君おやすみなさい。」
「うん、わかったよ蛍お姉ちゃん。おやすみなさい♪」
〜絵日記〜
8月2日
駄菓子屋さんのお家でれんげちゃんとお風呂に入った、仲良くなれたのはいいけどお嫁さんになられたらちょっと困る。