いつも細々と活動していた私にとってかなり驚きましたが、それ以上にこんなに「のんのん」と「ぼくなつ」の合作を支持してくださる人がいらっしゃって嬉しい限りです。
よろしくお願い致します。
ラジオ体操を済ませて一条家で朝ご飯を食べるボク君におばちゃんから声がかかる。
「昨日加賀山さんのお家でパソコンを直してあげたみたいね、すごく喜んでたよ。」おばちゃんが、やけた目玉焼きのお皿を置きながら伝えた。
「うん!あり合わせの部品で直ってよかったよ。」
「小さい時から機械いじりが好きだったけど、そんなことまで出来るようになったんだ。」
「うん!近所にいる博士から教えてもらったんだ!!変な物ばっかり発明しているおじちゃんだけど、すごく電気の事知ってるんだ。」
「へえー、ボク君はすごいなあ。じゃあ今度の休みにおじちゃんのノートパソコンを見てほしいな。」おじちゃんが突然話にはいってくる。
「あら?最近買い換えたばかりのノートパソコンもう調子が悪いの?」
「あ、ああ・・・。ちょっとばかりな・・・、今度の日曜日にでも見てくれるかい?」
「うん!わかったよ。」
「ボク君、私のゲーム機も見てほしいな・・・。」蛍もボク君の技能に依頼する。
「ボク君大人気ね♪」おばちゃんはにこにこしながら食事の準備を急いでいた。
・・・ ・・・ ・・・・ ・・・・ ・・・・・
「ごちそうさまでした!」家族の朝ごはんが終わるとおじちゃんは早々に車に乗って仕事へ向かう。
おばちゃんは今日も買い出しで街までいくそうだ。
ぼくは釣り道具の手入れを終えた頃、蛍がノックと共に入室する。
「ボク君、明日みんなで海に行くんだけど、よかったら一緒に行く?」
「海?」
「電車でちょっと遠出になるんだけど、どうかな?」
「うん!行きたい!!」
「よかった、じゃあ明日は朝ご飯を小鞠先輩の家で食べて出発するみたいだから遅れないようにね。」
「わかった!ありがとう蛍お姉ちゃん。」
「うん!今日はどうするの?」
「楓お姉ちゃんから釣り道具借りたから釣りをしにいくよ、蛍お姉ちゃんは?」手入れした釣り道具を見せながら答えるぼくに行くあてのなさそうな蛍は考え込む。
「じゃあ私もペチの散歩ついでに一緒に行っていいかな?」
「うん!一緒に行こう、蛍お姉ちゃんと遊びにいくなんて久々だなあ。」ぼくの喜びように蛍も微笑む、弟ができたように嬉しくなるのであった。
楓から聞いた例の池に向かう。新たな道なのでジェットサイダーの王冠を探し、さらに珍しい虫を見つけては虫取り網で捕獲する。
「ボク君、すごい荷物の多さだね。持ってあげようか?」蛍はその重装備に驚く。
虫取り網に虫籠、釣り道具には釣竿と、おじちゃんから借りたキャンプ用のクーラーボックス・・・。
まるで学期の終わりに置き教科書をしまくり、朝顔の鉢植えやらをまとめて持って帰る一年生のようになっていた。
「ちょっと、失敗だったかも・・・。でも釣りに来ていた時に虫相撲に使える甲虫が出てきたら・・・。」
「ボク君欲張りすぎだよ、じゃあ虫取り網と虫籠持つよ。」まるでお姉さんのようにたしなめた蛍はぼくから受け取った。
「ありがとう、お姉ちゃん。」この笑顔に蛍は弟を持った気分になり、満更ではない気分になる。
「あっ!蛍お姉ちゃん!珍しい蝶々が!!とって!」
「え!ええええ〜!」蛍は突然の指令に混乱するのであった。
そんなこんなで余計な時間をかけたがジェットサイダーの王冠を一つ見つけることができた、池に着いた時は蛍はもう息を切らしながらへたり込んだ。
「さあ!やるぞー!!」ボクは初めてだらけの経験に疲れを忘れて竿を振り回す。
「ボク君すごいねー、・・・私少し休憩するね。」蛍は木陰に入ると木にもたれかかって様子を見る事にする。
ペチはボクの横で何をするのかと興味津々で尻尾を振って走り回る。
さっそく餌と重りを取り付けて竿を振るとヘロヘロと飛んでいき、トプンと落ちていく・・・。
「これでいいのかな?」ボクはネットで見たとおりにしたつもりだが、心許ない・・・。とりあえず黙って手応えを待った。
「こないね・・・。」ボクは呟いた・・・。
「うん・・・。」蛍も小さく返す。
あまりにも当たりがなく、退屈になった二人は竿を固定して体育すわりで池を眺めていた。ペチは退屈ですっかり竿の横で寝てしまっている。
「退屈だね。」蛍は立ち上がると軽くお尻を叩いて夏草を落とす。
「うん・・・、夏海お姉ちゃんは意外にも我慢強くまってるのかな?」
「・・・・・・。」蛍は思い浮かべる。夏海は絶対におとなしく待つタイプではない・・・、下手をすれば飛び込んで魚がいるかどうか確認するくらいではないかと思ってしまった。
「ねえ、ボク君?魚が釣れるまで私と遊ばない?」
「え、どんな?」
「せっせっせー、でもどうかな?女の子の遊びだけど・・・。」
「うん!やってみたい!どんな遊び?」ボクは立ち上がって蛍の前に立った。
「リズムをとって相手の手と動作を合わせる遊びだよ。」そういうと蛍は歌い出して、一人でその動作の見本を見せる。
「せっせっせっー、のよいよいよい♪
アルプスいちまんじゃーく♪こやりのうーえで♪
アルペン踊りをさあおどりましょ♪
らんら、らんらんらんらんらんらん、らんら、らんらんらんらんらん♪
らんら、らんらんらんらんらんらん、らんらん、らんらんら♪」
まるで優雅に手を突き出す蛍にボクは目を輝かせた。
「すごいや!蛍お姉ちゃん!これを二人で振り付けして手を合わせるの?」
「そうだよ、綺麗に合うと気持ちがいいよ。ゆっくりやってみよっか?」
「うん!」そして二人は歌いながらせっせっせーに励む。
はじめの1回目は散々たるもので蛍から
「かなり間違えちゃったね・・・。」と言われてしまうが、2回目、3回目と繰り返す事で随分と慣れていく。
「・・・らんら、らんらんらん♪へいっ♪」ようやく、間違い二回くらいで合うようになり楽しくなっていた。
「ボク君、すごいねえー。もうちょっとでゆっくりコースを達成できそうだよ。」
「まだ、これでゆっくりかあー。でも女の子の遊びもハードだね。」
「もう一人いたら、ゴム跳びも教えられるんだけど・・・。また今度ね。」二人は笑い合うと、ペチが鳴いているので振り向いた。
「ああ!かかってる!!ボク君引いてるよ!!」
ペチは固定した竿が池に持っていかれそうになっているので咥えて戻そうとしているが、引きが強くてペチごと引き摺り込まれそうになっていた。
ボクは慌てて竿を取って引っ張る・・・。
「うわあ!さかなってこんなに引っ張るの!!」
「ううん!これは大きいよ!!見て・・・。」池から見える影は相当大きかった、太陽が池越しに浴びる魚影は鱗が光って綺麗に反射する。
蛍も加わる事で力は均衡するが、持久力は魚の方にあった。
維持できなくなった二人を察したのか、ペチが糸を噛み切って戦いは終了する。
二人はその魚影が底に沈んでいくのを見守ることしかできなかった・・・。