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思わず早く家を出てしまった。
「うお…ちょっと寒いな…」
四月といえどまだ冬の名残が残っていて、少し肌寒い。
今日は総武高校の入学式の日だ。総武に受かることができた俺は、新たなスクールライフに胸をときめかせすぎて一時間ほど早く家を出た。いつもはやる気ない感じで自転車を漕いでいるが、今日は自転車を漕ぐ足にも力が入った。
「うし、頑張りますかね!」
と、これから頑張ろうと決意した矢先、
「あ…!ちょっと!サブレ!」
大きな声がしたので、思わず声がした方を見る。
「…ん?犬?……!まずい!」
頭で理解した瞬間、思い切り自転車を漕いだ。リードが離れた犬が車道に飛び出してしまい、そして運悪くでかい黒塗りのリムジンがそこを走っている。
『頼む間に合ってくれ!』
俺は勢いよく自転車を降りると同時に、犬に覆いかぶさるように飛び込んだ。
キキーーーーーッ
「いてて…」
結論から言うと犬は助かった。リムジンがギリギリのところでとまってくれたのである。がしかし、勢いよく飛び込んだ俺が無事なわけもなく…腕と腰を強く打撲、おまけに数か所擦り傷ができてしまった。今は病院の一室でベッドに横になっている。
ていうか、俺飛び込み損じゃねえか…ただ犬に向かって全力ダイブした挙句ケガした変な人じゃん…
「大丈夫?」
「は、はい。まあ多少痛むが問題ないですよ」
この人の名前は雪ノ下陽乃。あのリムジンに同乗していたらしい。なんでも俺と同じ総武の新入生で、入学式に向かっていたところにタイミング悪くあの犬が飛び出したそうだ。つか、リムジンで登校とはいい御身分だなおい…
「ほんとに?ならよかった」
「というか、雪ノ下さんこそ大丈夫なんですか?自分を病院に送ってもらったせいで入学式欠席させちゃいましたし」
そう、あのあとわざわざ雪ノ下さんと件のリムジンの運転手さんが病院まで送ってくれたのである。
「いいのいいの、比企谷君、とてもじゃないけど入学式に出られる状態じゃなかったし。それに、別に入学式なんて大したことやらないんだしでなくてもいいわよ」
「そういうもんですかね?割と最初のイメージって大事だと思いますけど」
「まあ、なんとかなるわよ」
と、少し笑いながら言われた。本人には言えないが、ぶっちゃけめっちゃ美人だと思う。今の笑った顔もとても綺麗だ。
まあこれはあれですよね、考えるまでもなく学校始まったら一言も話さないやつですよね。なんかもう住む世界違うし。
「じゃあ比企谷君、私帰るね。今日のこと一応自分からも親に言っておかないとだし。じゃあまた学校でね!」
そう言って彼女は部屋を出て行った。…社交辞令だとわかってはいるのだが、心のどこかで期待している自分がいた。
しかし何だろうか、違和感というほどではないのだが、何か彼女と話していて引っかかるものがある。…ま、いいか。また彼女と話せるかもわからんのだし、そんなこと気にするだけ無駄だろう。そう自分に言い聞かせて、俺は眠りについた。