ある日の夜、薬品工場付近にて四つの影が動き回っていた。
鞭を振り回す白、両手に黒鍵を持ちそれをいなす橙。大きなハサミを持ち動き回る黒、剣を構え黒と相対する蒼。
それらの戦闘は激しく、周囲に少なくない被害を与えていた。幸いなのは作戦上、周囲の人々は全て避難していることだろう。
戦闘が始まってからしばらく経った頃。その戦闘を少し離れた所で見ていた櫻井了子の持つケースが突然激しい光を放出し、そこから一つの光が上空へと飛び出す。それを見た白は飛びあがり、それを掴もうとするが、咄嗟に割り込んだ蒼に阻まれ、その間に橙が確保する。
その瞬間、橙は黒に塗り潰され、周囲に強烈な『死』の気配が充満した。
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時は響が退院した後まで巻き戻る。無事退院し、二課に呼ばれ久しぶりに顔を出した時のこと。
「よし、これで揃ったな」
「風鳴司令、何があったんですか?」
ノイズの出現ではない時の呼び出しに何か起きたのだと判断した響は質問する。
「実は先日、広木防衛大臣が暗殺された」
「ッ!?」
「彼は二課に協力的だったんだが……非常に残念だ。そして彼が最後に残したもの。それが完全聖遺物デュランダルの移送作戦の計画書だ。彼の弔いとしてなんとしてもこの作戦を成功させなければいかん!その個々の役割を伝えるために呼んだのだ」
「さらにここ最近ノイズがこのリディアンを中心に出現が増えてきているのよ。それもこれに引き寄せられているのだと思われるから二重の意味でこの作戦は重要なの」
弦十郎の説明に了子が付け足す。響もノイズを引き寄せている(と思わしき)ものがリディアンから離れることで安全性が上がる可能性があるなら十全を尽くすつもりだ。
そして、数日後。櫻井了子命名の『天下の往来独り占め作戦』が始まった。
この作戦では弦十郎が本部から通信で指示。デュランダルを乗せた車を了子が運転、響が護衛として同乗。翼もバイクで車と並走。広木防衛大臣暗殺の件で検問を引いた、その中を目的地まで駆け抜けるという作戦だ。
前回のネフシュタンの少女等が襲ってくる可能性がないとは限らないので念のため、作戦に使う道路周辺の住民には避難してもらっている。
そして、案の定。走っていると突如地面が盛り上がって崩れ、護衛の車の一つが飲み込まれた。響がそれを見て唇を噛み締めるのを見た了子が、その程度でやられるうちのエージェントじゃない、と告げた。
その一言に少しは安心するも、ノイズが現れ接近してくる。それを了子は驚異的なドラテクでかわし、車を爆走させる。翼はバイクから飛び降り、ノイズの殲滅に動く。
「うわっと……了子さん、運転荒すぎません?」
「ふふふ、私のドラテクは狂暴だからね。さあ、もっと行くわよ!」
『三人とも!敵は地下から来ているようだ!』
「それくらい見ればわかるわよ!それでどうすればいいの?このまま突っ切る?」
『いや、ここは敵の裏を書く。近くに薬品工場がある、そこへ向かってくれ!』
「そんなことしたら下手するとデュランダルごと木端微塵よ!?」
『それこそが俺の狙いだ。敢えて危険地帯へと突っ込み敵の動きを制限する!』
『勝算はあるのですか、司令』
『ふっ。思い付きを数字で語れるものかよ!』
司令からの通信を受けた響は驚くと同時に、思い付きにしては中々いい作戦だと思った。響は体を強化しての格闘が出来るので特に気をつかう必要がない。その上、相手の武器は鞭。広範囲に攻撃したり、先日の光弾はデュランダルを巻き込む可能性があるため使えないだろう。それに、問答無用でやってきた場合は攻撃や爆発を『殺せば』いいだけなのだから。
ノイズと戦っている翼を置いて先に薬品工場へと着いた響と了子。しかし、それを待っていたかのように鞭が車へと飛んでくる。それを本能的に察知した響はデュランダルのケースと了子を抱え車から飛び出した。響たちは無事だったが、鞭の一撃を受けた車は大破・炎上している。
「ああー……私の車……」
「これは仕方ないですよ。それよりもこれ持って隠れていてください」
デュランダルを了子に渡し、鞭を叩きつけてきた敵。ネフシュタンの少女の方を向く。
「シキ!櫻井女史!」
翼もノイズを倒し終わったのか、合流した。
「人気者もお早い合流で。ノイズ退治ご苦労様さまってな」
「そうか、労ってくれるのであれば貴様も投降してくれればありがたいのだがな」
「残念だが、それは出来ねぇな。アタシはやらなきゃなんないことがあるんでね」
「では、力ずくで確保させてもらう!」
そう言った翼は剣を構えて駆け出し、少女へと振るう。
しかし、少女と翼の間に黒い影が割り込み剣を受け止める。
「何!?」
「すいませんが貴女の相手は私ですよぉ。せいぜい楽しませてくださいねぇ!ひゃははは!」
ピエロのような格好をして大きなハサミを持った黒い人。それが翼を弾き、少女と響から少し離れたところで戦闘を開始した。
「おい、D。間違っても殺すんじゃねぇぞ。怒られるのはアタシなんだからな」
「わかってますよぉ。殺さない程度に遊んでこいって言われてますからねぇ」
「くっ……」
武器以外はほぼ生身とみられるDに対し、翼は防戦一方だ。Dの攻めが苛烈なのもあるが、Dは鎧などの防御装備が無い。なので殺しかねないと思い、中々攻めに転じれないのだ。
【影縫い】
そのため、隙をみて小太刀を抜き影に突き刺した。そして意識を奪おうと首に一撃を当てようとするが、Dは影縫いによる拘束をものともしてないように動き、翼にカウンターを決めた。
「ガッ……ア……」
「ふひひひ。そんな小手先の術は効きませんよぉ?……おっと、危ない危ない」
「チッ……避けられちゃった」
「おいおい、アタシを無視すんなよ!」
翼がDに押されているのを見た響は黒鍵をDの頭に向けて投擲するも体をそらされて避けられる。
それを侮りと見たのか、少女は響に向けて鞭を叩きつける。それをバックステップでかわす響。
「それにしても頭を狙うなんてな。お前、あいつを殺す気か?」
「本来なら狙わないけど、あれは別。人間じゃないから殺す気でやった」
「は?……ちょっと待て。あいつが人間じゃないだと!?なんでわかんだよ!?」
少女はまるで…というか、実際に初めて聞いたらしくひどく驚いている。通信越しに聞いていたのか、二課と翼も息を飲んでいる。
「私は眼がいい方だから。明らかにあれは人間じゃないってわかったよ?」
まるでそれが当然のように言う響。
「それは眼がいいってレベルじゃないだろ!?」
思わずつっこんだ少女。通信越しに聞いていた二課のメンバーも首を縦に振って同意している。
「というわけなので、翼さん。人外相手に手加減なんてしてたら殺られちゃいますよ」
『……よくわからんが承知した』
そのツッコミは完全に無視して翼に忠告。自身も気を取り直して、デュランダルを守る為に少女と向かい合う。
そして話は冒頭に戻る。
飛び出した光……デュランダルを掴んだ響は、その瞬間に視界が暗転し、思考が汚染されていく。
殺せ、全てを殺せ、と。
それに飲まれ自我を失う。
黒に染まり暴走した響は辺りに響き渡る雄叫びをあげ、真上に跳躍するとデュランダルに漆黒のオーラを纏わせる。
「これは少し不味いですねぇ。撤退させてもらいましょう」
Dはそう言うと、姿を消した。
「不味い……櫻井女史!」
「翼ちゃん!」
翼も今の響を見て急ぎ了子の元へと向かった。
「失礼します!」
そして了子を抱えると即座に響から離れるように跳躍。
その直後、響はデュランダルを振り下ろした。
翼の判断が功を奏したのか、了子にケガはなかった。しかし翼と周囲は別だ。工場だった所は跡形もなく消え去っていた。先程の一撃は直撃はしていないが余波とDとの戦闘でのダメージが大きい。
「なんという威力……!」
「恐らくデュランダルの膨大なエネルギーにあてられての暴走ね。止めるにはデュランダルを手放させたらいいと思うのだけど……」
「それは……難しいでしょうね……グッ…」
「翼ちゃん……」
了子は悩んだ。フィーネとしての力を使うか否かを。使えば目的に限りなく近づいた今の櫻井了子としての生を捨てることになるかもしれない。しかし、使わなければここで終わるだろう。
……使っても止められるかはわからないが。何しろ、薬品工場を跡形もなく消し飛ばしたのだ。火の手すら上がらず消え去るほどの威力を持った一撃。それを放てるのだ。
思考している間に響は再びデュランダルに漆黒のオーラを纏わせる。そしてそれが振るわれる、その直前。
何処からか極光の斬撃が飛来して響へと命中する。
それは響からデュランダルを手放させることに成功した。了子と翼は驚きでしばし固まっていたが、すぐに響に駆け寄った。響は斬撃を受けた時のキズはあるが、軽いケガの範疇に収まっている。
付近にネフシュタンの少女の姿や反応がない事から、一応安全だと判断し二課のエージェントを呼び出し後片付けを開始した。
暴走した響を止めた謎の極光の正体はわからぬまま、今回の件は終息した。
何処からかデュランダルの移送計画が漏れていたと思われるため、デュランダルは再び二課に収容されることに決まった。
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「抑止力に動かれては話を見れないからな、今回だけ特別だぞ」
手に宝石剣を持ってそう呟いた爺さんが何処かの世界にいたとかいないとか……まあ、誰も知る人はいない。
●D
見た目等のモチーフは服の色が黒くなったメフィストフェレス(FGO)
種族:悪魔
フィーネが古くからある悪魔召喚の儀式で呼び出した。
翼もあるが基本隠している。
元々はレフ・ライノール・フラウロスをモチーフにする予定が……なんか喋らすとこっちの方が似合ったので……
●眼がいい
言わずもがな直死の魔眼のおかげ。Dには人間と比べて不自然なところ(隠している翼の部分)に線や点があったため人外だと判断。
●暴走ビッキー
デュランダルを掴んだことで暴走。デュランダルからのエネルギー供給でほぼ無限の魔力を得た。視界に入った『活きてる』もの全てを殺す殺戮マシーン。薬品工場が爆発ではなく消し飛んだのは直死の魔眼のせい。
●飛んできた極光の斬撃
正体は宝石剣の一撃。
暴走ビッキーがヤバイことなったので……あれ?これフィーネでも止められなくね?ってなって……よし、困ったときの宝石剣だな……という思考に陥ったせいです。
全ては暴走ビッキーを強化しすぎた作者のせい。