――ズザァァァァ!!――
響たちがリディアンに着くと、そこはノイズによる被害で一部が崩れ、ノイズの成れの果てらしき炭が一面に残っていた。ノイズが残っていないことを確認した三人は一度ギアを解除し、周囲を捜索する。
「ゲホッゲホッ……まだ少しクラクラしやがる……」
「リディアンが……皆は無事なのか!?」
「未来……」
その最中、コツン、コツン……と、足音が聞こえ三人はそちらを向く。
「遅かったな。シンフォギア装者たちよ」
「誰……櫻井女史!?」
そこに居たのは二課の技術者・櫻井了子。だが、彼女を見てクリスが声を荒げる。
「これはてめぇの仕業か?フィーネ!」
「フィーネ……だと!?櫻井女史が!?」
クリスの言葉と翼の驚きを前に、彼女はかけている眼鏡を外し、髪をほどく。すると、彼女が光に包まれる。
それが収まると金のネフシュタンを纏ったフィーネの姿が露になった。
「そうだ、私がフィーネだ。……まあ、そこの融合症例は気づいていたようだがな?」
「そうだね。一応聞くけど、
「ほう?……そうさな、十二年前に櫻井了子は食い潰された。いや、意識が死んだと言ってもいいな。
超先史文明の巫女であった私は、子孫がアウフヴァッヘン波形に触れることで私の意識が目覚める仕掛けを施した」
「十二年前、アウフヴァッヘン波形……まさか!?」
フィーネの言葉で何かに翼が気付いた。
十二年前、翼が天羽々斬を偶然とは言え起動させたのだった。
「そうだ、風鳴翼。お前が天羽々斬を起動させたことにより私は目覚めたのだ」
「それで、甦ったてめぇは何をしでかそうとしてやがる!」
「月を穿つ!」
「……月を?」
「穿つ……だって?」
「そうだとも!このカ・ディンギルでな!」
フィーネのその宣言と同時に地面が激しく揺れ、地下からリディアン校舎を突き破って天高く聳え立つ塔が姿を現した。
「ッ!校舎が……」
「太古より月は不和の象徴とされていた。それは月にかけられたバラルの呪詛という呪いのせいだ。だから私はこの荷電粒子砲カ・ディンギルを用いて月を穿つことで人類にかけられた相互理解を妨げる呪いを解除し、世界を統一する!」
明らかになるフィーネの計画。そのスケールの大きさに聞いた三人は声が出なかった。さらにフィーネは言葉を続ける。
「……ああ、それと二課の応援は期待しない方がいい。最高戦力の風鳴弦十郎は既に倒し、通信も切断してある」
「な、司令が!?」
「ずいぶんと用意周到なこって」
「やつは中々手強かったがな」
フィーネの脳裏に浮かぶのは先ほど下した弦十郎との戦いだった。
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時はほんの少し戻って、響たちがノイズと戦っている最中のこと。
二課の最深部・サクリストDことデュランダルの保管庫前で二人の人物がぶつかりあっていた。一人は特異災害対策機動部二課司令官・風鳴弦十郎。もう一人は二課の技術者・櫻井了子改め、今回の騒動の下手人・フィーネ。
フィーネは完全聖遺物であるネフシュタンの鎧を纏っているが、それに相対する弦十郎は生身。普通ならばフィーネの圧勝だろう。だが、フィーネの前に立つのは我らがOTONA。規格外もしくは人外……いや、歩く憲法違反と言う言葉が相応しいレベルの戦闘能力を持っている男だ。その力を持ってフィーネを止めようとしていた。
戦況は弦十郎が終始有利だった。完全聖遺物を纏うフィーネに全く引けを取らず、それどころか完全に押していた。
「まだ続けるか、了子」
「……その名前で私を呼ぶか」
「ああ、君が戻ってきてくれるなら何度でも呼ぶともさ!大切な仲間だからな!」
「…………」
「…………」
そのまましばらく無言が続いたかと思えば、唐突に二人は動きだし拳と鞭がぶつかり合う。人知れず始まり繰り広げられた激闘、その勝者は、
「ゴホッ……」
「……やはり甘いな。だからこうなるのだ」
「そればかりは性分だからな……」
フィーネだった。弦十郎が終始押していたのは間違いないが、最後にフィーネが櫻井了子の声・口調で『弦十郎君』と一言告げた所、弦十郎の動きが僅かに止まりそこを鞭で腹を貫いたのだ。本来ならそれで死んでいるであろうケガだが、いまだ弦十郎が生きているのはフィーネが手加減したからか、それともOTONAだからなのか……
弦十郎を下したフィーネはデュランダル保管庫へと入って行った、他に誰も侵入出来ないように入り口付近を壊して。
「一体何が……司令!?」
その直後、破壊音を聞いた緒川が何事かと調べに来たところ倒れている弦十郎を発見。治療の為に避難所へと運ぶのだった。
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そして時間は現在に戻る。
「何もしないのなら貴様らに手は出さん。だが、邪魔するのであれば容赦はせんぞ」
「それはこちらの台詞だ。月を破壊など、させるわけにはいかない」
「Balwisyall nescell gungnir tron」
「Imyuteus amenohabakiri tron」
「Killter ichiival tron」
フィーネを止めるため、装者三人が戦闘態勢に入る。
「そうか、ならば……」
それを見たフィーネは一度鞭を地面に叩きつけ、叫んた。
「貴様らを倒して我が悲願を達成するまでだ!」
戦闘も入れようかと思ったけど、きりがいいし次でいいかな?って思ったのでここまで。
保管庫にフィーネが来た時には既に弦十郎が待ち構えていたという。そして少しの問答の後、戦闘。なお、393とNINJYAはその時点では生徒たちの避難所への誘導をしていました。