Fate/Grand Order in the Build 作:カイナイ
今回は少し長くなりそうだったので2つに分けました。次話は3日後には投稿できると思います。
気がつくと、戦兎は不思議な空間に立っていた。
何処を見てもひたすら白い世界が広がり、空には幾重もの扉が浮かんでいる。
戦兎「何だ…ここは…」
???「桐生戦兎」
ふと、自分の名を呼ぶ声がした。
しかしあたりを見渡しても、声の主の姿は見当たらない。
???「無駄だよ。いくら見渡しても、君には今はまだ見えない。君が僕という存在を認識できていないからだ。」
戦兎「お前は…誰だ?」
???「…それは言えない。君が僕を認識しない限り。」
戦兎「ここは一体…」
???「今僕が君に言えることは1つ」
戦兎の言葉を遮るように謎の声が響く。
???「君は…
その瞬間、意識が引っ張られるような感覚とともに戦兎は目を覚ました。
戦兎「夢…か…」
戦兎は分厚い寝袋に包まれていた。寝袋から這い出し、上半身を起こす。
マシュ「先輩!目が覚めたんですね!」
戦兎「パンドラ…ボックス?スカイウォール?」
聞きなれない単語。
戦兎は自分の手を見つめていた。
マシュ「あの…先輩?」
戦兎「あ、あぁ。マシュか…ごめんな、心配かけて…」
申し訳なさそうに頭を掻く。
どうやら夜らしい。辺りは木々に囲まれ、少し離れた場所で万丈達が焚き火をしている。
マシュ「いえ…もう起き上がっても大丈夫なんでしょうか?」
戦兎「ああ、まぁ戦うことは出来ないけど…」
ロマン「そうだね…だけどその状態は一時的なものだ。やっぱり完全に呪いを解かない限りはいずれ…」
戦兎「死に至る…」
疑いようのない事実が、重くのしかかる。
ライダーが施したのは応急処置のようなもので、やはり戦兎にかけられた呪いを解くには、ジャンヌともう一人の聖人サーヴァントによる洗礼詠唱が必要だ。
マシュ「今夜はここで休息をとります。食事を持ってきますので、先輩もゆっくり休んでいてくださいね。」
戦兎「あぁ、ありがとう、マシュ。」
マシュが立ち上がり、焚き火の方へ歩いて行った。
入れ替わるように万丈が戦兎に近づく。
万丈「よう、目ぇ覚めたか」
戦兎「おう」
万丈が戦兎の枕元に座った。
戦兎「変身したんだろ?」
万丈「…あぁ…仮面ライダーに変身して初めて分かった。力を持ったことの重さってもんが…」
戦兎「…ま、お前がそれを、正義のために振るうのなら問題はないさ…」
マシュ「先輩、お待たせしました」
両手に焼いた肉を携え、マシュが戻ってきた。
戦兎が眠っていた間にサーヴァント達が森で動物を捕まえてきてくれたようだ。
万丈「サンキュー」
戦兎「ありがとう、マシュ」
万丈「ところでよ、これから、ング、どうすんだ?」
戦兎「食いながら喋んじゃないよ…聖人を探すんだっけ?」
マシュ「はい。ライダー…マルタさんの情報によれば、ここからさらに南に行った街に聖人のサーヴァントがいるようです。」
万丈「セイバーを…待たねえのかよ」
マシュ「……」
ロマン「申し訳ないけど…これだけ待って来ないってことは、彼はもう…」
万丈「……」
戦兎「…まぁ、どこか別の場所に逃げてる可能性だってあるんだ。今はライダーの助言に従おう。」
ロマン「そうしてほしい。それにしても…しばらく姿を見せていないスタークとローグが気がかりだな…」
食事を済ませ、しばらく談笑し戦兎と万丈は目を閉じた。
だが眠りにつくまでの間、戦兎の頭の中には「パンドラボックス」そして「スカイウォール」という2つの言葉がずっと渦巻いていた。
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エリザベート「行っくわよー!」
アマデウス「騒がしい…」
森を抜け、しばらく歩くと小さな街が見えた。
街に入ると、すかさず見たことのないサーヴァントが目の前に現れる。赤銅色の鎧を身につけた高潔な雰囲気の男性だ。ライダーが言っていたサーヴァントだろうか。
サーヴァント「そちらで止まってください。何者ですか?」
敵対するような、棘のある雰囲気だ。しかし、問答無用で斬りかかってくるわけではなくジャンヌ・オルタに従っているような感じはしない。
マリー、続いてジャンヌ、戦兎、マシュが名乗りでて、あらかたの事情の説明をした。サーヴァントの警戒は解けたようだった。
ゲオルギウス「失礼しました。次はこちらから。私はライダー、ゲオルギウス。今はこの街の警備を任されている者です。」
ジャンヌ「一緒に来ては戴けませんか?」
ゲオルギウス「ええ、この街の住民の避難が完了次第、出発しましょう。」
ジャンヌ「ありがとうございます!」
ジャンヌ達が避難を手伝っていると、機械の通知音が鳴った。
ロマン「多数の敵性反応だ!スマッシュの反応もある!サーヴァントが一体!どうする?」
ジャンヌ「迎撃します!街の住民を守らなければ!」
街を大量のワイバーン、そして三体のスマッシュが襲った。
率いているのはナイトローグとジャンヌ・オルタと初遭遇した時のバーサーク・セイバーだ。
ロマン「ナイトローグ!現れたか!」
万丈「あのコウモリ男は俺とマシュに任せろ!他の敵を頼む!」
万丈とマシュは一直線にローグの方へ向かう。
エリザベート「この私に雑魚の掃除をさせようだなんて…まあいいわ!ちょうど暴れたかったところだし!」
ジャンヌ「では私はセイバーの相手をしましょう」
マリー「私もご一緒していいかしら?」
バーサーク・セイバー「王妃…」
アマデウス「マリーがいるなら僕もこっちだ。さぁ、行くか!」
乱戦が、始まった。
アマデウスとマリーは先の戦いで見せたように、魔力の弾丸を放ち、ジャンヌは前方に立ってセイバーと直接剣を交える。
ジャンヌ(ものすごい剣技…ですが!)
瞬時に身を低くし、セイバーの突きを避ける。
ジャンヌ(
思い切り旗をセイバーの腹部の叩き込んだ。野球ボールのように叩き飛ばされたセイバーに、アマデウスとマリーの魔力弾が追い打ちをかける。
セイバー「はは…やるね。いいだろう、私を苛む狂化の呪いも疼いている…
『
セイバーが高く飛び上がったかと思うと、背後には大きな百合の花が浮かび上がった。その幻想的な光景に、戦っていた3人は目を奪われる。
マリー「綺麗…」
セイバー「そこだ!」
途端、幻惑に囚われていた3騎にセイバーの剣が刻まれる。
ジャンヌ「くっ…宝具ですか…体がうまく…」
アマデウス「魅了以外にもパラメーターダウンの効果もあるのかっ…」
確かにセイバーの攻撃は黒いバーサーカーには及ばない。しかし、セイバーの戦闘スタイルはそもそも宝具の美しさに惑わされた敵に容赦なく剣を振るうことにある。
アマデウス「思ったより面倒そうだな…」
一方、ナイトローグを相手取るクローズとマシュ。
クローズ「ハァッ!」
マシュ「ふん!」
2人の連携は、拙くも形になりつつあった。ローグも若干押され気味になっている。
ローグ「フッ!剣はどうした!」
クローズ「フン、素手の方が俺は慣れてんだよ!」
ローグ「流石の成長速度だな…万丈龍我…!」
一方でエリザベートと清姫、ゲオルギウスはワイバーンに囲まれていた。
清姫「はっ!」
エリザベート「邪魔!」
清姫とエリザベート、ゲオルギウスは、戦兎を守りつつ次々とワイバーンを蹴散らしていく。
しかし、ワイバーンはいくら倒してもその分湧いてくるのだ。まるでキリがない。また、未知の敵である3体のスマッシュにも気を配らなければならない。
エリザベート「あぁっ!もう!イライラする!もういいわ!…サーヴァント界最大のヒットナンバーを聞かせてあげる!」
エリザベートの魔力が高まると同時に、巨大なアンプを携えた城が召喚される。
清姫「ちょ、エリザベート!?こんなところで貴女の宝具を撃ったら…!」
エリザベート「『
エリザベートの壊滅的に音痴な歌が響き渡る。いわばスーパーソニックブレスである。
セイバー「な…ぐわっ!」
その広範囲にわたる衝撃に、セイバーも吹き飛ばされる。
アマデウス「ひどい音だ!でも…今だ!」
ジャンヌ「ぐ…はああああ!」
セイバー「しまっ…ぐはっ!」
隙をついたジャンヌの決定的な一撃がセイバーを突き刺し、そのままセイバーは消滅していった。
「ready go!」「ドラゴニックフィニッシュ!」
ローグ「ぐはぁっ!」
同じように、隙ができたことでクローズはナイトローグにライダーキックを叩き込んだ。
クローズ「どうだ!」
ローグ「はぁ、はぁ、はぁ…万丈、龍我…」
クローズ「あん!?何だよ」
ローグ「ジャンヌ・オルタを倒したいのなら今しかない。ファヴニールが貴様らのセイバー…ジークフリートとの戦いで負った傷のせいで動けない今しか」
クローズ「え?おいどういうことだよ!」
クローズがその真意を問いただそうとしたが、ローグは煙に紛れ逃げてしまった。
マシュ「なんだったんでしょう…」
エリザベート「ねぇー!なんかこの怪物から黒い煙みたいなのでてるんだけどー!」
万丈「ああ!成分回収しねえと!」
万丈は変身を解除し、倒れている3体のスマッシュから成分を回収していった。
マシュ「これって…!?」
成分を回収したことで露わになったその姿は、ワイバーンだった。
ロマン「ワイバーンすらスマッシュに変えることができるのか…」
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夜。
戦兎らは新たな仲間とともに再び拠点へと戻った。
ロマン「あのナイトローグの言葉…少し不可解だな…」
マシュ「はい。敵である私たちに情報を流す理由が…」
清姫「ですがやはり、進軍するなら味方が多く集まった今でしょう。」
ロマン「そうだね。いずれは行かなきゃならない。あまりぐずぐずしていたら敵の戦力が増える可能性も高いんだ。ナイトローグを信じるか信じないかは別にして、今が一番ということに間違いはない」
ジャンヌ「できました!」
戦兎「はぁ…」
ロマン「お、戦兎君の解呪が完了したみたいだ。」
ジャンヌ「はい。これで戦うことはできそうです。ですが…しばらく変身することは控えた方がいいでしょう。」
ロマン「そうだね。どのみちビルドドライバーは一つしかない。今は戦兎君にあまり負担はかけられないし、今回は万丈君に任せよう。…いいかな?」
少し申し訳なさそうにロマンは万丈に目を配った。任せろと言わんばかりに、万丈が拳と掌をあわせる。
ロマン「ありがとう…よし、明朝出発だ。みんな、しっかり休んでね。」
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大量のワイバーンと数々のサーヴァントと対峙する。
目指すはジャンヌ・オルタの居城。
狙うは聖杯。
万丈「っしゃあ!行くぞ!」
ロマン「総力戦だ!どうやら敵側にも新しいサーヴァントがいるみたいだが…気を引き締めていってくれ!」
ロマン(巨大な反応は今のところなし、か…ナイトローグの言葉、信じていいのかもしれない…)
B・アサシン「来たのね」
エリザベート「決着よ!」
バーサーク・アサシンが目を鋭くし、エリザベートが槍を構える。
マリー「あら?」
アマデウス「お前は…シャルル・アンリ・サンソン!」
サンソン「やあ…マリア」
知り合いに話しかけるようにマリーが微笑み、アマデウスが憎しみを込めて叫んだ相手、サンソンが虚ろな目を上げる。
B・アーチャー「壊してやる…何もかもおおおお!!!」
清姫「乱暴な方ですね…」
暴れ回るバーサーク・アーチャーを見据えながら、憂鬱そうに清姫が扇を整える。
ゲオルギウス「守護騎士の名にかけて…このオルレアンを守り抜きましょう!」
ゲオルギウスは大量のワイバーンを前に己の誓いを口にする。
万丈、マシュ、ジャンヌ、そして戦兎は一直線にジャンヌ・オルタのいる城へ駆け上がる。味方のサーヴァントがそれぞれ相手を抑えているため、邪魔はない。
ロマンのナビゲートに案内され、ジャンヌ・オルタのいる部屋のドアを蹴破った。
ジャンヌ・オルタは新たなサーヴァントを召喚しようとしていた。手を止め、憎しげにジャンヌ達を睨む。
ジャンヌ・オルタ「こんなにも早く来るのは少し予想外でしたが…」
ジャンヌ「こちらにも、心強い仲間がいるのです…!」
ジャンヌ・オルタ「黙りなさい…無様に塵となるがいい…!」
万丈「変身!」
「Wake up burning! Get CROSS-Z DRAGON!! Yeah!」
万丈がクローズに変身した。
戦兎「フッ!」
フルボトルを片手に戦兎も応戦する。まだ多少は痛むが、問題なく戦えるようだ。
ジャンヌ「ハアアアア!!」
戦兎が軽く牽制したところを、ジャンヌが旗を大きく横薙ぎする。ジャンヌ・オルタは後ろに下がりそれを避けるが、下がった先にはマシュが待ち構えていた。
盾を大きく振り上げ、ジャンヌ・オルタを上空に打ち上げる。
ジャンヌ・オルタ「くっ…!」
「ドラゴニックフィニッシュ!」
クローズ「一気に終わらせる!」
ジャンヌ・オルタ「舐めるな!」
クローズのライダーキックにジャンヌ・オルタは黒い炎をぶつけ相殺しようとする。
クローズ「うおおおお!!」
ジャンヌ・オルタ「何!?」
しかし、クローズは炎に包まれても止まりはしない。
驚愕に囚われた黒いジャンヌにクローズが一撃を加えようとした、その時。
???「きしゃああああ!!!!」
無数の触手に阻まれ、クローズは叩き落とされた。
クローズ「くそっ!」
ジャンヌ・オルタ「ジル!」
ジル「愚かな匹夫どもめ…貴様らに我が聖女の復讐を邪魔させるものか!それが例えジャンヌ…貴女だととしても!」
ジャンヌ「ジル…」
ロマン「海魔の召喚術…キャスターだ。察するに真名はジル・ド・レェのようだが…」
戦兎「今も海魔が続々と召喚されてる…どうやら無限に近いみたいだな。数の有利が一瞬で覆された。」
途端にジルの召喚した多数の海魔に囲まれた。
海魔一匹の力は、今の戦兎でも倒せる程度だ。しかし、あまりにも数が多い上にジャンヌ・オルタとも立ち回らなければならない。海魔の主であるジルを叩こうにも、海魔が邪魔をする。
マシュ「っ…!」
ジャンヌ・オルタ「燃えなさい!」
クローズ「ぐあっ!クソ…」
戦兎(不味いな……いや、でもあのフォームなら…試す必要はあるか!)
戦兎「万丈!」
クローズ「あ!?なんだよ!」
戦兎「選手交代だ!」
クローズ「は!?……っ仕方ねえ!いけるんだろうな!」
絡みつく海魔を払いながら万丈は変身を解き、戦兎にビルドドライバーを投げ渡した。
戦兎「あぁ!ここからは主役の出番だ!」
万丈「フン、よく言うぜ…」
ロマン「大丈夫かい、戦兎くん」
戦兎「はい。問題ないと思います。………さあ、実験を始めようか」
戦兎の取り出したボトルの色は橙色と灰色。
手慣れた様子でドライバーに装填する。
「タカ!ガトリング!ベストマッチ!」
「Are you ready?」
戦兎「変身」
「天空の暴れん坊!ホークガトリング!イエーイ!」
タカと機関砲を模した複眼。背に広がる翼。手に持っているのはオルレアンに出発する前に造ったホークガトリンガー。新たなビルドのベストマッチフォーム、ホークガトリングだ。
ジャンヌ・オルタ「別の姿…!」
ビルドがトリガーを引くと、6匹もの海魔が一瞬で散った。
ジル「きしゃあああああああ!!!!!」
奇声を発しながらジルは海魔をさらに召喚する。
「10!」
リボルバーが回転したことで、ガトリンガーがカウントをする。
トリガーを引くと更に10匹の海魔を倒した。
ジャンヌ・オルタ「このっ…!」
ジャンヌ・オルタが止めに入ろうとしたが、ビルドは飛翔しそれを回避した。更にマシュとジャンヌがオルタを止めに入る。
ロマン「おお!空飛んでるよ!」
「20!」「30!」「40!」「50!」
ビルドがレボルバーを更に回し、上空から追撃を加える。
ただの海魔のみでは敵わないと思ったのか、ジルは巨大な海魔の触手を数本操り空を飛ぶビルドを捕らえようとする。触手を上手くいなしていくも、その内の一本に捕まってしまった。
ビルド「うわっ!?」
ジル「フフフフ…どんなに足掻こうと所詮は蛮族…貴様ごときが我が望みを阻もうなど…」
万丈「オラッ!」
ジル「ぐぬ!?」
予想外の万丈の攻撃がジルの追撃を止めた。変身を解いた万丈に大した脅威はないとタカをくくっていたのだ。
万丈「今だ!戦兎!」
「60!」「70!」「80!」「90!」
「100!フルバレット!」
タカの形のエネルギーを纏った弾丸が降り注ぐ。
ビルド「どうだ!」
倒した、と思った。しかし、
万丈「何!?」
煙の中から伸びた触手がビルド、マシュ、万丈、ジャンヌを捕らえた。
ジルとオルタは共に深い傷を負っているものの、致命傷には至らなかった。ジルが咄嗟にオルタを引き寄せ、海魔の壁を作りダメージを軽減させたのだった。
ジャンヌ「マズイ!」
ジャンヌ・オルタ「っ…これは憎悪に寄って磨かれた我が魂の咆哮…
『
竜の魔女の宝具、彼女の怨嗟の具現ともいえる黒炎が降り注ぐ。ビルド達に打つ手はない、かに見えた。
「『
巨大な城壁が降炎からビルド達を守った。
ジャンヌ・オルタ「なっ…どうやって!?」
ビルド「ホークガトリンガーの弾丸は自由に操れる。こうなることをあらかじめ考えてさっきの攻撃から念のため数発残しておいたんだ。それがマシュに絡んだ触手をちぎった。…これが勝利の法則だ!」
ジル「匹夫がああああああ!!!!!」
マシュ「マスター!」
「鋼のムーンサルト!ラビットタンク!イエーイ!」
「ボルテックフィニッシュ!イエーイ!」
ビルド「とどめだ!」
敵を拘束し、兎の跳ね上がり、戦車の馬力で繰り出すラビットタンクのライダーキック。
ジャンヌ・オルタとジルは防ぐこともできず、その蹴撃を受けた。
ジャンヌ・オルタ「な、に…そんな…私が負ける、なんて…」
ジャンヌ・オルタの体は消滅が始まっていた。悲しそうに、そして恨めしそうにつぶやく。
ジル「いえ、いいえジャンヌ…貴女は少し疲れただけ…大丈夫、私に任せて少し眠りなさい。その間に…私が全て終わらせています…」
しかしそういうジルの体も消滅が始まっている。消えるのも残り数分の問題だろう。
ジャンヌ・オルタ「そう、そうよね。ジルが戦ってくれるなら、安心して…」
ジャンヌ・オルタは消滅していった。しかし、驚くことに彼女の体があった場所に聖杯が顕現していた。
ジャンヌ「やはり…彼女は貴女が聖杯で創り出していた、のですね…」
ジル「ええ…勘の鋭い御方だ…」
ビルド「そういうことだったのか…」
聖杯で創られたジャンヌ・オルタ。それこそがこのオルレアンで聖杯を持ったジル・ド・レェの願いだった。
万丈「ん?どういうことだ?」
ビルド「バカは黙ってろ」
万丈「バカってなんだよ!」
万丈を軽くいなし、ビルドはジルに話しかけた。
ビルド「だが…それは本来のジャンヌじゃない。本当のジャンヌなら、そんなことはしない」
ビルドの言葉を聞き、体のほとんど消えかかったジルが怒りに肩を震わせた。
ジル「貴様に…貴様に何が分かる…!思い上がりも甚だしい!たとえ彼女が憎まずとも私が憎んだのだ!彼女は赦すだろう。しかし、私は赦さない!…滅ぼしてみせる。殺してみせる。それが聖杯に託した我が願望…我が道を阻むな!桐生戦兎ォォォォ!!!!」
もう攻撃のひとつも十分に出来ないはずのジルの剣幕に、ビルドは後ずさりをした。
ジル「スターク!!!」
スターク「呼んだか?」
ジルが名を呼ぶと、まるで最初からそこにいたかのように柱の陰からブラッドスタークが現れた。
ロマン「なっ、いつの間にそこに!?」
ジル「……始めなさい」
スターク「おいおい、仕方ねえなぁ」
そういうと、スタークの手から三色の箱が出現した。
その箱を見た瞬間、ビルドの頭に鋭い痛みが走る。
ビルド「なんだ…?あの箱…どこかで…?」
万丈「お、おい!窓!窓!」
マシュ「あれは…!」
窓に見えたのは巨竜、ファヴニール。
身体の所々に傷はみられるが、問題なく動いている。
ロマン「くそ!やっぱり嘘じゃないかナイトローグめ!」
ファヴニールは城の屋根を破壊した。
スターク「なんというんだったかな…?…あぁそうか!…さあ!実験を始めよう!フハハハハハ!」
箱が光り出したかと思うと、光はファヴニールを包み込んだ。そしてジルの持っていた聖杯が浮かび出したかと思うと、引き合うようにファヴニールに吸い寄せられていった。
ジル「これこそが…我が破壊の象徴!怨嗟の集塊!最高のCOOLを!今こ」
スターク「じゃあなお前もそこそこ役に立ったぜ」
スタークがジルを撃ち抜いたことにより、ジルは完全に消滅していった。
ジャンヌ「ジル!」
スターク「おおっと…俺に気をとられている場合じゃないぞ。なにせ俺もここからどうなるかは少し分からないからなぁ!」
光の繭が次第に解ける。その姿がゆっくりと露わになる。
スターク「フッハハハハハ!!完成だ!聖杯とパンドラボックスの力の融合!お前は…ネビュラ・ファヴニールだ!」
ネビュラ・ファヴニール「Guoooooooo!!!!」
その姿はまさに破壊と怨嗟の象徴。その咆哮はまさに憤怒による魂の唸り。
ビルド「最悪だ…!」
皆さまジオウ、どうでしょうか。
なかなか設定が凝ってて面白いな〜と思います。ここからどう平ジェネにつながっていくんでしょうかね〜
それと小説のご感想等お願いします!