Fate/Grand Order in the Build   作:カイナイ

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オルレアン編が終わります。
3日で完成する予定でしたが思わず書く量が増えてしまいました、すみません…


オルレアンの結末

スターク「さぁ!どうする桐生戦兎!」

 

ロマン「前回のファヴニールよりも脅威度が高い!どうなってるんだ…ファヴニールをスマッシュ化させるなんて!」

 

ビルド「危ない!」

 

ネビュラ・ファヴニール「gaaaa!!」

 

禍々しい姿のネビュラ・ファヴニールが黒いブレスを吐き出す。

ビルドは万丈を抱え回避するも、その一撃で城は半壊した。

 

ビルド「なんて威力だ!」

 

マシュ「また来ます!先輩!」

 

巨竜は再び大きく口を開き、その身から怨嗟の炎を撒き散らす。

 

ジャンヌ「我が旗よ、我が同胞を守りたまえ!

我が神はここにありて(リュミノジテ・エテルネッル)』!」

 

ジャンヌの宝具が、炎からビルド達を守った。

押し潰されそうな威圧を放つネビュラ・ファヴニールに、そして嗤うスタークに、ジャンヌは毅然と立ち向かう。

 

ジャンヌ「ジル…これが貴方の選んだ道というのなら、私がそれを阻みましょう!」

 

ビルド「ジャンヌ…」

 

「『死神のための葬送曲(レクイエム・フォー・デス)』!」

 

音による魔力の重圧がファヴニールにのしかかる。

 

エリザベート「ちょっとコイヌ〜!」

 

エリザベートがこちらへ近づいてきた。一度別れた仲間達は、傷を負っているようだが全員無事らしい。しかし、未だ多くのワイバーンが彼らに敵意を向け、清姫とゲオルギウスのおかげでアマデウス、マリー、エリザベートの3人はその包囲網から抜け出す事ができたのだ。

 

ビルド「みんな!無事だったのか!」

 

アマデウス「おいおい!やっとこっちの決着がついたと思ったら何だアレ!前見たファヴニールより強くなってないか!?」

 

ビルド「スタークがファヴニールに手を加えたんだ!聖杯はファヴニールが持ってるから倒すしかない!」

 

ファヴニール「Guoooooo!!」

 

アマデウス「チッ!動き出しやがった!ほとんど効いちゃいない!」

 

ビルド「もう一度頼む!二人も宝具を!」

 

アマデウス「もうほとんど満身創痍なんだけどね…

死神のための葬送曲(レクイエム・フォー・デス)』!」

 

再びファヴニールの動きが鈍くなる。しかしそう長くはもたない。ならば、

 

ビルド(この一瞬にかける!)

 

マリー「『百合の王冠に栄光あれ(ギロチン・ブレイカー)』!」

 

エリザベート「『鮮血魔嬢(バートリ・エルジェーベト)』!」

 

「ボルテックフィニッシュ!イエーイ!」

 

3つの宝具とビルドのライダーキックがファヴニールを襲う。

 

ビルド(これだけの力が合わされば…倒すことはできなくても傷くらいは!)

 

ファヴニール「guuuuuu…」

 

しかし、その攻撃を受けた後でもファヴニールに変わった様子はなかった。確かに多少のダメージを負ってはいるが、かすり傷のようなものだ。

 

ビルド「くっ…!」

 

「パンダ!ロケット!Are you ready?」

 

ビルド「ビルドアップ!」

 

「ぶっとびモノトーン!ロケットパンダ!イエーイ!」

 

左手に備え付けられたロケットを噴射させ、動きを撹乱する。

 

「ボルテックフィニッシュ!イエーイ!」

 

ファヴニールの後ろを取り、必殺のボルテックフィニッシュを仕掛ける。死角からの攻撃。これが決まらなければ、いよいよビルド達にあとはない。

 

ファヴニール「gagagagaga!!」

 

しかしファヴニールは首を大きく上げたかと思うと、天に向かって光線を吐き出した。光線はとたんに放射状に広がり、強力な熱の雨となってビルド達の頭上に降り注いだ。

 

ビルド「ぐわっ!?」

 

マシュ「先輩!」

 

雨の一つに直撃し、攻撃の途中でビルドは叩き落とされた。そのダメージによって戦兎の体から鋼鉄の装甲は剥がれ落ちていく。マシュは落下する戦兎を受け止め、守るためにその盾で身体を覆った。

 

マシュ「うわぁっ!」

 

しかし盾を失ったマシュは、ファヴニールの光線をよけきれず直撃してしまう。

 

万丈「なんだよあれ…」

 

ジャンヌ「危ない!

我が神はここにありて(リュミノジテ・エテルネッル)』!」

 

ジャンヌは降り注ぐ光にどうすることもできない万丈と、まともに防御手段を持たない他のサーヴァントを宝具で守る。

 

ジャンヌ「くっ…」

 

なんとかファヴニールの攻撃を防ぎきったジャンヌだが、身体は重く思わず膝をつく。

魔力の限界か。ジャンヌはそう思った。

そもそも現界した時点で万全とは言い難い状態ではあった。いい加減、ガタがきたのかもしれない。

しかしーーーーーー

 

 

戦兎「うっ…はっ…ハァ、ハァ、ハァ…」

 

ほんの一瞬だが気を失っていた。

俺は確か…そう、戦闘中にファヴニールに叩き落とされたんだ。

身体が重い。ダメージによるものもあるが、何かが俺に覆いかぶさっているようだ。

予想外に重かったので、持ち上げずに被さっているものから這い出る。見ると、それはマシュがいつも持つ盾、彼女の宝具だった。

そしてそのすぐ近くに彼女もいた。目を閉じ、倒れている。一瞬動揺したが息はできている。

気を失い、情けなく落下していく自分を受け止め、攻撃から守ってくれたのだろう。

キッ、と炎の中に揺れるファヴニールを睨みつけた。

怒りがこみ上げてくる。ファヴニールにはもちろん、情けない自分自身にも。

深呼吸をする。ポケットにしまっていたフルボトルを取り出した。使えるかどうかも分からない不確定なものに頼るのは科学者としては本意ではない。

だけど…今なら!

 

 

戦兎はあらかじめ変身するときに万丈から借りたドラゴンボトルをもう片方の手に持った。

ボトルを振って腰に巻きつけたビルドドライバーに装填する。

 

「ドラゴン!セイバー!ベストマッチ!」「Are you ready?」

 

戦兎「変身!」

 

「セイバー・ドラゴン!アルトリア!」

 

光に包まれながら、冬木で強敵を打ち破った、かの騎士王の力をまとう戦士が希望とともに姿を現した———

 

かに、見えた。

 

ビルド「ぐわああああ!!!」

 

バチン、と火花が散るような音が鳴り響く。

セイバーボトルで変身したはずの戦兎は、突然身体に電流が流れたように全身が痛み出し、再び変身は解除されてしまっていた。

短時間に変身を繰り返すことは身体に大きく負担がかかる。ましてや、戦兎はスタークによる呪いが解かれたばかりの病みあがりのような状態だ。数回のビルドアップでも身体に思わしくない影響を及ぼす。

想いがいくら強かろうと、身体がついてこないのでは意味がない。戦兎の身体は既に限界だった。

 

万丈「戦兎!」

 

その一部始終を見ていた万丈が、なおも暴れ回るファヴニールの攻撃を、サーヴァント達の助けもあり間一髪でかわしながら倒れた戦兎に駆け寄った。

 

万丈「おい!戦兎!マシュも!大丈夫か!?」

 

マシュの透き通った声も、戦兎の憎たらしい文句も返ってこない。

今すぐ治療しなければいけないという状態ではない。しかし、このままではあの巨大な邪悪に戦兎たちが踏み潰されるのも時間の問題だ。

万丈の心は絶望で黒く塗りつぶされかけていた。

 

万丈「くそ!早くあいつを倒さねえと…こいつらが!」

 

 

「なら、俺がその役目を引き受けよう」

 

 

万丈の後ろから声がした。横を通り過ぎ、目の前に立っていたのは銀色の鎧、白い髪、見事なまでの大剣。

 

万丈「セイバー…」

 

ジークフリート「ああ」

 

万丈「……頼む…あいつを…ネビュラ・ファヴニールを…!」

 

ジークフリート「ああ」

 

ジークフリートが剣を空高く掲げた。

気配を感じたのか、ファヴニールが攻撃の手をやめこちらを振り向いた。

 

ジークフリート「久しぶり…というほどでもないな、ファヴニール。随分と姿形は変わったようだが、こう何度もお前と相見えようとは。先の戦いは俺の敗北に終わった。だが今度こそ…行くぞ、再び地に還るがいい邪竜!」

 

ジークフリートがファヴニールに向かい一直線に駆け寄る。

ファヴニールも応戦するが、読んでいたかのようにその攻撃をジークフリートは避けた。

そして一気に距離を詰め、ファヴニールの堅固な身体に一太刀を浴びせた。

 

アマデウス「はは…すごいな…」

 

その俊敏な動きを見て、アマデウスが感嘆を漏らした。

 

ジークフリート「はぁぁ!」

 

ファヴニール「gugu…gugaaaaa!」

 

なおもジークフリートはファヴニールに攻撃を続けている。

華麗ともいえるその動き。

ファヴニールの攻撃を上手くかわしながらも、少しずつではあるがダメージを与えている。

 

ロマン「すごい!いけるぞ!」

 

だがしかし、その動きに綻びが見え始めた。

 

アマデウス「なんだ…?あいつ段々動きが…」

 

ファヴニール「guooooo!」

 

ジークフリート「ぐっ…がはっ!」

 

ファヴニールの攻撃が、ついにジークフリートを捉えた。

 

ジークフリート(まずい…傷が完全には癒えていなかったか…!…今すぐ勝負を決めるしかない!)

 

ジークフリート「『幻想大剣・天魔(バルムン)ーーーー』」

 

ジークフリートは膝から崩れ落ちた。

なんとか立ち上がろうとするも、ファヴニールの光線が無慈悲にも迫ってくる。

 

ジークフリート(…ダメか…!)

 

万丈「くそ!セイバー!」

 

まさに憎き怨敵を完全に消し去ろうと、その一撃がジークフリートの眼前に迫ったとき。

 

ジャンヌ「はぁぁぁぁぁぁ!」

 

ジークフリート「!?」

 

ジャンヌ「『我が神はここにありて(リュミノジテ・エテルネッル)』!!!!」

 

すんでのところでジークフリートはその旗の輝きに守られた。

 

 

身体は痛む。

既に魔力はほとんど底をついた。もう現界しているのがやっとで、宝具はおろか旗の一振りも出来るかどうか。

しかし———立ち上がる。

オルレアンの人々を守らなければ。

そしてこれは彼が、ジル・ド・レェが仕掛けたこと。ならばその解決には私にも義務がある。止めてみせると誓ったばかりなのだ。

もう一つ。これは私の我儘に近いのかもしれないが。

私は戦いたいのだ。私の信じる、マシュさんや戦兎さん、万丈さんのために。

だから、これは。

誰かのためであり、己のためであり、そして。

 

ジャンヌ「私の信じるもののために!」

 

 

 

万丈「!!!」

 

目を見張った。彼女の言ったことは、ファヴニールと最初に出会った時の引き際に、セイバーが言ったことだ。

…俺は何をしていたんだ。ただ倒れた二人を見て、セイバーに助けを請いただけだ。

違うだろ、今の俺には力がある。信じるものがある。冬木に一人でいた昔の俺じゃない。

足りていなかったのは覚悟だ。たとえ自分一人になろうとも、立ち向かう覚悟。その覚悟を、こうやって目の前で見せつけられた。

———だったら、立ち上がるしかない。

 

 

万丈は戦兎のドライバーからボトルを取り出した。

 

万丈「クローズドラゴン!」

 

万丈の呼びかけに応えてクローズドラゴンはガジェットモードへと変形する。

万丈の振るボトルの色は青いドラゴンボトル、ではなく黄金のボトル。

そのボトルを装填し、クローズドラゴンごとドライバーに収める。

レバーを回し、変身に備えた。

 

「Are you ready?」

 

万丈「はぁぁぁぁぁ……変身!」

 

「Wake up CROSS-Z! Get SABER DRAGON・SIEGFRIED! yeah!」

 

白銀色の装甲。青白く光る胸部。手に握られた、竜殺しの魔剣。

そこにいるのは仮面ライダークローズ。しかし、その身に纏う力はまさしく。

 

ロマン「あのセイバーそのもの…!」

 

クローズ「今の俺は…負ける気がしねえ!」

 

ファヴニールがクローズに標的を変えた。彼を脅威と受け取ったのだ。

 

クローズ「オラッ!」

 

瞬時に躱し、ファヴニールを斬る。

ファヴニールの叫声が響く。

 

ジークフリート「よし、ありがとう。君はここで休んでいてくれ。まだ少し…戦える!」

 

ジャンヌとマリーの宝具である程度回復したジークフリートは、動けないジャンヌをマリーに任せ飛び出した。

 

ジークフリート「万丈!」

 

クローズ「ハァッ!…セイバー!」

 

ジークフリート「それがどういうものかは分からない。だが君に俺と同じ力が宿っているというのなら…!慎重に策せ、大胆に動け、広い範囲で物事を見ろ、深く一点に集中しろ。海のように、空のように、光のように、闇のように。矛盾する二つの行動を取れ。今の君なら…それが出来る!」

 

クローズがファヴニールの右側に、ジークフリートが左側に同時に走り出す。

ファヴニールは一瞬どちらを攻撃するか躊躇ったが、先に手負いのジークフリートを攻撃しようとその大口を開けた。

 

エリザベート「『鮮血魔嬢(バートリ・エルジェーベト)』!」

 

強烈な歌声にファヴニールの一撃は阻まれた。

 

エリザベート「ほら!さっさとしなさい!」

 

エリザベートの宝具で一瞬無防備になった悪竜の身体に、いくつもの傷が刻まれていく。流石の巨竜にも余裕の色は全く無いようだ。

 

ファヴニール「gahaa!」

 

ジークフリート「なっ!まずい!」

 

ファヴニールが放射状に広がるあの強力な攻撃を繰り出した。

標的を確実に仕留めるため、降り注ぐ光は全てクローズとジークフリートに絞られて放たれた。

エリザベートは宝具の連発はできず、ジークフリートとクローズの猛攻を耐えながら放った渾身の一撃。

 

クローズ「ぐわああああ!」

 

ジークフリート「ぐはぁっ…!!」

 

上手く躱そうとしたものの、数撃を受けてしまった。

身動きの取れない二人に、トドメと言わんばかりにファヴニールが顔を向ける。

 

ジークフリート「このままでは…!」

 

「汝は竜!罪ありき!

力屠る祝福の剣(アスカロン)』!」

 

ファヴニール「guaaaaa!!!」

 

クローズ「ゲオルギウス!」

 

ゲオルギウス「彼女が宝具で一瞬ですが道を拓いてくれたのです!おかげで間に合った!」

 

清姫は大蛇に転身して、全力の火炎放射でゲオルギウスを送り出したのだ。

 

アマデウス「『死神のための葬送曲(レクイエム・フォー・デス)』!!」

 

ファヴニールに重圧がかかる。ゲオルギウスに足を一本やられたこともあってファヴニールは動けない。

 

アマデウス「もうこれで打ち止めだ!さっさとケリをつけてくれ!」

 

クローズ「アマデウス…ああ!」

 

ジークフリートとクローズが、それぞれの剣を掲げる。

 

ジークフリート「邪悪なる竜は失墜し…」

 

クローズ「世界は今、洛陽に至る!」

 

二人「撃ち落とす!」

 

剣に光が収束する。

本来、同時に存在することなどありえない二振りの魔剣。

二人は高らかに、その名を天に向け吼える。

 

 

「「『幻想大剣・天魔失墜(バルムンク)』!!!」」

 

 

ファヴニール「gu…ga…gooooooo!!!」

 

圧倒的な魔力の波に飲まれ、ネビュラ・ファヴニールの身体は消滅していった。

それに呼応するように、あたりを飛んでいたワイバーンたちも消えていった。

スタークの姿も既にそこには無かった。

残ったのは、聖杯と魔力を帯びたネビュラガスの成分のみ。

変身を解いた万丈は、ファヴニールの残滓をそれぞれ回収した。

 

ロマン「聖杯の回収は完了した!すぐにでも帰還してくれ!」

 

エリザベート「もう終わりなの?…まあいいわ。じゃあね、コイヌたち!また私の歌を聴かせてあげる!」

 

清姫「全く…最後までうるさいドラ娘ですね。… けれどここで離れ離れなんて…でも大丈夫。またお会いしましょう。それでは、ごきげんよう。」

 

アマデウス「やれやれ…ようやくお役御免か。ともかく…万丈、戦兎

。君たちは指揮者というよりは演奏する側に近かったけど…どちらにせよ、君たちとの仕事は実に、実にやりがいがあった」

 

マリー「ありがとう、二人とも。お別れは寂しいけれど…でもまた会えそうな気がするの!それじゃあ、ヴィヴ・ラ・フランス!」

 

ゲオルギウス「どうやら終わりのようです…君たちの助けになれて、本当に良かった。しかし、この様子だと再び召喚される日も遠くはなさそうだ」

 

サーヴァントが口々に別れを述べながら、消滅していった。

その一言一言を、戦兎やマシュの分まで聞き入れようと万丈は噛みしめるように聞いた。

 

ジャンヌ「恐らく、貴方達と出会い、共に戦ったことは全て無かったことになるのでしょう。…少し悲しいですが。ですが、みなさんにはまた会えそうな気がします。私の勘は、結構当たるんですよ?」

 

万丈「…」

 

ジャンヌ「さようなら、そしてありがとう。全てが虚空の彼方に消えるとしても、残るものが、きっとーーーーー」

 

ジャンヌも、消滅した。

この時代に来て初めて会ったサーヴァント。バーサーカーと戦ったとき、初めての変身でまだ拙かった自分と共に戦ってくれた彼女。

その力は、その旗の輝きは、彼女の在り方は。どこか暖かさに満ちていた。

たった数日のことだが、これからもその温度はずっと自分たちのなかに残るのだろう。

 

ジークフリート「もう、行くんだな」

 

万丈「ああ」

 

ジークフリート「君と戦えて、実に光栄だった」

 

万丈「俺のセリフだよ」

 

ジークフリート「実を言うと、君に言ったあの言葉は…生前俺が成しえなかった事なんだ。自分のできなかったことを他人に願うのはどうかと俺自身も思うのだが…」

 

万丈「いや、ありがとう。俺もこれから、戦っていけると思うぜ。…あ!そういやさ、ファヴニールからどうやって逃げたんだ?一対一でジャンヌ ・オルタもいたんじゃ中々逃げれなかっただろ?」

 

ジークフリート「ああ、それは助けてもらったんだ。瓦礫の山に埋もれかけた瞬間、瓦礫が死角を作ってファヴニールにも見えなかったんだろう。その瞬間に、煙に包まれたと思ったら、既に近くの森にいた」

 

万丈「一体…誰に?」

 

ジークフリート「すまない…分からない。黒い外套を被って顔は見えなかった。だが君たちの使うボトルのようなものを持っているのは、ちらりと見えたんだが」

 

万丈「ボトル!?」

 

ジークフリート「ああ。紫色の、コウモリのようなものを意匠したものだったと思う」

 

万丈「コウモリ…」

 

ジークフリート「ああ、もう時間のようだ。…ありがとう、万丈龍我。いつかまた、君と共に」

 

万丈「…あぁ!セイバー!」

 

最後にジークフリートも消えていった。

 

ロマン「もう時間だ!準備はいいかい?」

 

万丈「あ!おい起きろ戦兎!マシュも!」

 

身体が宙に浮くように感じた。レイシフトが始まったのだろう。

戦兎とマシュを抱きかかえながら、万丈は顔を上げ、オルレアンの大地と空を見た。

このオルレアンで、様々なことに気づかされ、成長した。

目を閉じて、オルレアンの日々に思いを馳せながら。万丈はゆっくりと、その感覚に身を任せ————

 

 




次回は第2章

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