Fate/Grand Order in the Build 作:カイナイ
「さあ、実験を始めようか。」
戦兎はそう言うと、両手のボトルを下腹部に巻かれたベルトの、2つのスロットに1本ずつ装填した。
ドライバー「ラビット!タンク!ベストマッチ!」
勢いよくベルトが音声を鳴らす。その音を聞いて戦兎は自信げな笑顔を浮かべると、ベルトのレバーを回転させた。戦兎の周りを赤と青のチューブ状のものが覆い、戦兎の前方と後方で人型に形作られる。
ドライバー「Are you ready?」
勢いよくファイティングポーズを取る。お決まりのポーズだ。
戦兎「変身!」
ファイティングポーズを解いた戦兎に赤と青の装甲がぶつかる。鋼鉄に覆われた桐生戦兎のその姿にマシュとオルガマリー、キャスターさえも大きく目を見開き、驚愕に囚われていた。
ドライバー「鋼のムーンサルト!ラビットタンク!イェーイ!」
キャスター「何だそれは…宝、具…?」
初めて見るその現象に、キャスターは一つの可能性を考えた。しかし、それは違う、とすぐに自ら否定する。魔力の流れを、一切感じないからだ。
ビルド「仮面ライダービルド。創る、形成するって意味のビルドだ。さあいくぞキャスター。勝利の法則は…決まった!」
意気揚々と語る戦兎。その後ろ姿を見るマシュ。
彼は先輩で、カルデアの科学者で、自分のマスターで、そして————————
マシュ「仮面ライダー…ビルド…」
キャスター「ハッ!抜かせ!」
ビルドとキャスターがぶつかる。ビルドのスピードはボトル1本を手にしていた時よりも格段に速くなっており、キャスターの猛攻を防ぎ、避けながら、互角の戦いを繰り広げていた。
オルガマリー「何!?あれは何かの礼装!?貴方、彼の知り合いなんでしょう?説明して!」
オルガマリーが美空に詰め寄る。
美空「…あれは仮面ライダービルド。私のお父さんが戦兎に与えた科学の力、ビルドドライバーとフルボトルで変身する…正義のヒーロー」
美空は腕につけられた金色の腕輪をさすりながら答えた。
「仮面ライダービルド」
聞き慣れない言葉、そして今目の前にある、サーヴァントとさえ渡り合える戦闘能力を持った人間が、魔術ではなく科学の力で戦っているという美空の発言に、オルガマリーは驚きを隠せなかった。
ビルド「くっ…中々厄介だな、その炎。それなら!」
ビルドはドライバーの左側に挿している青いタンクボトルを引き抜き、代わりに腰につけていた赤いボトルを差し込んだ。
ドライバー「消防車! Are you ready?」
再びビルドがレバーを回すとビルドの青い装甲が赤の装甲に変わった。
ビルド「ハッ!」
ビルドは左腕に装着された銃形状のものから水を噴出した。その水がキャスターの放った炎を搔き消す。そして仕返しにと言わんばかりに、キャスターに向かって炎を噴射した。ビルドのうちだした炎がキャスターを包む。
キャスター「ぐっ…はぁ…だったら…っ!とっておきをくれてやる!我が魔術は炎の檻、茨の如き緑の巨人。因果応報、人事の厄を清める社…」
オルガマリー「魔力が高まってる…マズイ!宝具を使う気よ!」
キャスター「遅い!サーヴァント共々燃え尽きな!焼き尽くせ、木々の巨人!『焼き尽くす炎の檻(ウィッカーマン)』!!!」
キャスターがその杖を頭上に掲げたかと思うと、炎を纏った巨大な現れた。
巨人がビルドに手を伸ばす。その後方には、美空たちがいる。
ビルド(どうする?あれだけ大きな相手じゃ防御しても俺はともかく美空たちが…。…いや、迷ってる場合じゃない!)
ビルドは消防車ボトルを引き抜き、再びラビットタンクフォームへと戻った。そしてもう一度レバーを回転させる。
ドライバー「ready go!ボルテックフィニーシュ!イェーイ!」
ビルドは大きな放物線をなぞりながらキャスターの放った宝具に蹴りを繰り出した。ビルドが持つ必殺技、兎の力で飛び上がり、放物線の上を滑るように加速、そして戦車の力を持った右足で攻撃するライダーキックである。
ビルド「ぐっ…うおおおおおおおおおおお!!!」
宝具の巨人とビルドがぶつかる。
完璧な角度、計算されたスピードで打ち出された必殺のライダーキック。しかし、巨人の体を打ち破るには、まだ足りない。
キャスター「ふん………う…ぐ…違う、そうじゃねぇ…やめろ…」
だが一瞬、巨人の力が弱まった。何故か、キャスターがうずくまっている。
しかしその一瞬を見逃すような戦兎ではない。キャスターによって放たれた宝具を打ち破ったビルドの必殺技が、キャスターを襲った。
キャスター「ぐおおおおおおおおおおお!!!」
キャスターは後方へ大きく吹き飛ばされた。大きな傷を負ったキャスターは戦える状態ではなくなっていた。すると、倒れたキャスターから煙のようなモノが立ち込める。
戦兎「あれは!?」
変身を解いた戦兎は、中に何も成分が入っていないボトル、エンプティボトルを取り出し、蓋の部分をキャスターへと向けた。するとキャスターから立ち込めていた煙のがボトルへと吸収された。
戦兎「やっぱり…でもこれは…?」
その煙は戦兎の想像したとおり、スマッシュを倒したときに得られる成分だった。だが戦兎が掲げたボトルは通常得られる成分より少なく、ボトルのおよそ4分の1ほどしか溜まっていなかった。
戦兎(このまま浄化しても…ボトルとしては使えないか…)
キャスター「ぐ…」
オルガマリー「!?ま、まだ倒しきれていないわ!」
キャスター「ま、待て。さっきまで…俺は俺じゃなかった…」
キャスターは必死に訴えかけるようにこちらを見た。オルガマリー達は怪訝な目を向けていたが、戦兎はキャスターから成分を回収できたことからキャスターの話を聞くことにした。ひとまずオルガマリーを説得し、キャスターの傷を回復させることに成功する。
キャスター「ハァ…悪かったな、いきなり襲っちまってよ」
戦兎「それはまぁ、いい。それよりも俺じゃなかったってどういうことだ…?」
キャスター「ああ、俺はこの冬木の聖杯戦争で呼ばれたサーヴァントでな。しかしある時聖杯戦争の何かが狂っちまった。だがセイバーは聖杯戦争を続けていてな、奴に倒されたサーヴァントは皆んなおかしくなっちまった。」
戦兎「お前も…それで?」
キャスター「いや、そして俺がセイバーを倒す機会を伺っていた時だ。妙なコウモリ男が現れてな。そいつがいきなり仕掛けてきやがった」
戦兎「コウモリ男…」
戦兎の頭にその言葉が当てはまる男の記憶がよぎる。男に人体実験をされる。記憶喪失の戦兎が唯一持っていた記憶だった。
キャスター「んでそいつの相手をしていたんだがな。後ろから何かの毒を刺されたのかそこで意識を失っちまった。倒れる前にそいつの顔を見たんだが…俺と戦ったコウモリ男に似たような、赤いヘビ男だったぜ。そのあと目を覚ましてな。何故だかお前らを攻撃しなきゃいけないような、お前らを生かしておいてはいけないような気が、いや確信があった。おそらく眠っている間に何かされたんだろうが…」
戦兎「なるほどな。そういうことか…。」
戦兎は先程の4分の1ほど溜まったボトルに目を落としながら納得した。戦兎はそういったことに思い当たることがあった。
オルガマリー「戦兎、言うことを信じるの?」
戦兎「はい、おそらくキャスターの言うことは本当です。俺が日本で仮面ライダーとして戦っていた相手、スマッシュは、本来ただの人間だったものがガスを注入されて変質されたものです。彼らは理性を失い、手当たり次第に破壊行為を行います。そのガスの成分がキャスターから回収できたということはスマッシュと同じ、ガスの注入を受けた可能性が高い。キャスターが理性を保ったまま、俺たちだけを狙った理由までは分かりませんが…」
オルガマリー「スマッシュ…ガス…うぅ、分からないわ…」
キャスターが歩ける程度まで回復すると、戦兎達はキャスターを引き連れ再び事態の原因を探ることとなった。戦兎は歩きながら自身が仮面ライダーへと変身することになった経緯や、記憶にあるコウモリ男のことを話した。
ロマン「そんなことが…。大変だったね。」
戦兎「いえ、俺を拾ってくれたマスターや美空に支えられてきましたから」
ロマン「そうか…。と、ところでキャスターは何故一緒に?」
キャスター「あん?そりゃ決まってるだろ。俺を利用したアイツラが気に食わねえからさ。まあもちろんこの事態の解決ってのもあるがな」
美空「でも…信用していいの?」
キャスター「そんなに心配なら俺の真名を教えてやるよ。…我が名はクーフーリン。アイルランドの光の御子」
マシュ「クーフーリンさん…でしたか。「クランの猛犬」と言われた赤枝の騎士。影の国の女王に弟子入りし魔槍ゲイボルグを賜った…」
クーフーリン「あぁ、大体そんな感じだ。俺もランサークラスで呼ばれていたら少しは違っていたんだろうがな。どうもキャスターってのは性に合わねぇ」
オルガマリー「ところでキャスター、聖杯の居所はあの山の大空洞、という場所で間違いないのね?」
クーフーリン「ああ。だがあそこはセイバーの野郎が守っているからな。俺とそこの嬢ちゃん、そしてボウズの妙ちくりんな力を合わせても全員傷を負った今のままじゃ恐らく無理だ。だから…」
クーフーリンが指を指す。指の先には、大きな純和風の屋敷があった。
クーフーリン「あの家で一晩休憩だ。どうせこの街にもう人はいないだろうしな。」
オルガマリー「はぁ…そうね。何事にも準備は必要だわ。…マシュ、戦兎、あと美空。本日はここで休息をとります。しっかり休んで、セイバーとの戦いに備えなさい」
3人「「「はい」」」
戦兎が屋敷の扉に手をかけ、開いたその瞬間。
???「ウラァッ!」
玄関の闇の中から、何者かの拳が戦兎めがけて飛んできた。ギリギリのところで体を仰け反らせた戦兎は、その腕を下から弾き、弾いた腕とは逆の腕で奇襲してきた相手にアッパーを食らわした。戦兎の強烈な一撃を食らった何者かは、頭を打ちそのまま気絶してしまった。
戦兎「何だコイツ…」
クーフーリン「この街にもまだサーヴァントでない人間がいたのか…すまねえ、俺のミスだ。見たところただの人間らしい。そいつに話を聞きたい。傷を見てやってくれねえか?」
クーフーリンは男を担ぎ出し、マシュが用意した布団へと運んだ。美空が家にあった救急箱である程度の治療をし、見張りをクーフーリンと戦兎に任して女性3人はそれぞれその広い家の中を探索することになった。
しばらくして男が目を覚ました。
???「ぐっ…痛ぇ…ハッ!?」
男は飛び起き、様子を見守っていた戦兎とクーフーリンに向かって戦闘態勢に入る。
その姿が妙に様になっているのを見て、戦兎は何か格闘技をやっていたのかと思った。
戦兎「まぁ待て。俺はお前の敵じゃない。お前が気絶しても何もされず手厚く治療されてるのがその証拠だ」
???「あ、あぁ…そうだな…確かに…」
男がファイティングポーズを解く。信用してくれたらしい。
戦兎「俺は桐生戦兎。こっちはクーフーリン。俺たちは今事態の解決に向かって動いてる。お前の名前と…何故こんなところにいたのか教えてくれないか?」
万丈「…俺は万丈、龍我。彼女の香澄と出かけてた時に…変な、ヘビみてえな男に襲われて…目が覚めたら今度はコウモリ男に…無理矢理何かの実験をされてた。それでまた気を失って気づいたらこんなところに…」
戦兎(またコウモリ男にヘビ男…、そして人体実験…。何だ…俺の記憶と関係が…?)
クーフーリン「…なるほどな。事態はセイバーを倒すに止まりそうにもないかもしれねえな…」
戦兎は自身が冬木の地に来た経緯や、自身が日本でやっていた仮面ライダーの活動などを万丈に話していた。万丈もそれを聞き込み、半分ぐらい理解しながら少しずつ戦兎たちに心を開いていった。
しかし、
「キャーッ!!」
戦兎「!美空の声だ!」
突如上がった悲鳴に、戦兎とクーフーリンは反射的に飛び出した。少し遅れて、戸惑いながらも万丈も後を追う。
中庭に出ると、美空は2体の異形の怪物に襲われていた。
戦兎「あれはスマッシュ!?何故こんなところに!?」
戦兎がラビットタンクフォームへと変身し、クーフーリンが杖を構えた。
遅れて万丈が追いつき、変身した戦兎と不可思議な魔術を使うクーフーリンの姿に驚いた。
万丈「何だアイツら…俺が見てきた骸骨とは全然違え…」
????「よう」
万丈「っ…テメェッ!」
クーフーリン「アイツは…!」
万丈が見上げた先の屋根の上に、赤い全身と蛇を模した形の緑の目、パイプに絡まったような上半身を持つ男が座っていた。万丈とクーフーリンを襲った蛇男だ。
スターク「オイオイ、テメェとは失礼だな。俺の名はブラッドスタークだ」
万丈「うるせぇ!どっちでもいい!お前俺に何しやがった!ここはどこだ!何が目的なんだテメェ!」
スターク「随分と自分のことばかりだなぁ。もっと大事なことを忘れちゃいねえか?」
まくしたてる万丈に、ブラッドスタークと名乗る男は嘲笑う。
万丈「あぁ!?」
スターク「お前の恋人…どこに行ったんだろうなぁ?」
万丈「!?テメェ…香澄にも何かしやがったのか!?」
スターク「フッ…そこのオレンジ色の怪物…お前の恋人、だったりしてなぁ!」
ビルド「何!?」
万丈「グッ…テメェェェ!!!」
ビルド「だ、大丈夫だ!倒した後に成分を回収すれば…」
スターク「無駄だ。その人間の体は弱くてなぁ…もし倒して成分を回収し人間にでも戻れば…そのまま消滅するだろうからなぁ」
ビルド「な、なんだと!?」
万丈は言葉を失う。目の前で暴れる怪物が自身の恋人であり、彼女を人間に戻した瞬間、彼女の命が絶たれてしまう。その事実が万丈の怒り狂っていた心を、黒い絶望で蝕んでいた。
ということで万丈、ちょこっとだけ登場です。あと1話で終わらない気がしてきました…