「まりちゃーん?まりちゃーん
父上、母上。まりちゃんまだ起きないの?」
蜂蜜色の髪をした可愛らしい女の子が、同じく蜂蜜色をした
女の子の顔を覗き込んでそう言った。
それに困ったように両親らしき2人が笑いながら女の子の頭を撫でた。
「
急かしちゃダメよ。きっともうすぐ目を覚ましてくれるわ」
「そうだね。僕たちがゆっくり待っていてやらないと。
あまり急かしちゃ、緋鞠は拗ねてしまう。そういう子だからね」
その言葉に女の子はにっこりと笑顔を浮かべると、「うん!」
と元気よく頷き また緋鞠と呼ばれた女の子の顔を覗き込んだ。
「私、いつまでも待っててあげるからね。
だから、絶対、目を覚ましてね。まりちゃん」
頭を優しく優しく撫でる。
ああ、この 緋鞠 という女の子は愛されているんだな。
待たせてちゃ可哀想だ。この子も、この子の両親も。
「…この子が目を覚ましたら、立派なお姉ちゃんになるんだよ。
_______ミツバ。」
「うん!」
この子の名前はミツバ。ミツバって言うんだ。
綺麗な名前。とても可愛らしくてすごく似合ってる。
ふと、ミツバちゃんと目があった気がした。
それはミツバちゃんも同じなようで、両親の着物の裾を
掴み軽く引っ張りながら私を指差した。
「見て!父上、母上!あそこ、あそこにまりちゃんがいたの!」
「緋鞠が?
…そうか。じゃあそろそろ戻ってきてくれるのかもしれないね。」
「もしかしたら、ただ単に迷子になっていただけかもしれませんよ。
この子、まだこんなに小さいんだもの。
…こんなに目が覚めないなんてことある、はずが…ない…」
目を潤ませながらそう言う母らしき人物は、私の方を見た。
けれど目が合っていないとわかる。私が瞳に映っていない。
「…緋鞠。そろそろ起きてちょうだい。あなたの弟が、もうすぐ、生まれるのよ」
私は自分の体を見た。緋鞠と呼ばれた女の子と全く同じ容姿。
そこで、はたと気付く。私が、緋鞠なんだ。
私が今日から 緋鞠として生きていこう。
布団の上で固く目を閉ざした女の子へ手を伸ばせば、引き寄せられるように
その体へと入って行った。暖かい、これが人の温もりというものだろうか。
そっと目を閉じれば どこからか声が聞こえた。
『わたしのかぞくをよろしくね。すぐうまれてくる、おとうとのことも。』
ああ、あなたが緋鞠ちゃんなんだね。
私をずっと待っていてくれたの。あなたがもうここにいられないから。
任せておいて。
正直、子供っぽくはできないかもしれないけど
私は私なりに、あなたの分まで思う存分 生きさせてもらうよ。
沖田緋鞠 として。