【 あの子の話 】   作:夜空 星月

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第二話

 

 

 

「まりちゃーん?まりちゃーん

父上、母上。まりちゃんまだ起きないの?」

 

 

 

蜂蜜色の髪をした可愛らしい女の子が、同じく蜂蜜色をした

女の子の顔を覗き込んでそう言った。

 

それに困ったように両親らしき2人が笑いながら女の子の頭を撫でた。

 

 

 

緋鞠(ひまり)はね、今 一生懸命に起きようと頑張ってるの。

急かしちゃダメよ。きっともうすぐ目を覚ましてくれるわ」

 

「そうだね。僕たちがゆっくり待っていてやらないと。

あまり急かしちゃ、緋鞠は拗ねてしまう。そういう子だからね」

 

 

 

その言葉に女の子はにっこりと笑顔を浮かべると、「うん!」

と元気よく頷き また緋鞠と呼ばれた女の子の顔を覗き込んだ。

 

 

 

「私、いつまでも待っててあげるからね。

だから、絶対、目を覚ましてね。まりちゃん」

 

 

 

頭を優しく優しく撫でる。

 

ああ、この 緋鞠 という女の子は愛されているんだな。

待たせてちゃ可哀想だ。この子も、この子の両親も。

 

 

 

「…この子が目を覚ましたら、立派なお姉ちゃんになるんだよ。

 

 

_______ミツバ。」

 

 

 

「うん!」

 

 

 

 

 

 

この子の名前はミツバ。ミツバって言うんだ。

綺麗な名前。とても可愛らしくてすごく似合ってる。

 

ふと、ミツバちゃんと目があった気がした。

それはミツバちゃんも同じなようで、両親の着物の裾を

掴み軽く引っ張りながら私を指差した。

 

 

 

「見て!父上、母上!あそこ、あそこにまりちゃんがいたの!」

 

「緋鞠が?

…そうか。じゃあそろそろ戻ってきてくれるのかもしれないね。」

 

「もしかしたら、ただ単に迷子になっていただけかもしれませんよ。

この子、まだこんなに小さいんだもの。

…こんなに目が覚めないなんてことある、はずが…ない…」

 

 

 

目を潤ませながらそう言う母らしき人物は、私の方を見た。

けれど目が合っていないとわかる。私が瞳に映っていない。

 

 

 

「…緋鞠。そろそろ起きてちょうだい。あなたの弟が、もうすぐ、生まれるのよ」

 

 

 

私は自分の体を見た。緋鞠と呼ばれた女の子と全く同じ容姿。

 

 

そこで、はたと気付く。私が、緋鞠なんだ。

 

私が今日から 緋鞠として生きていこう。

 

 

 

布団の上で固く目を閉ざした女の子へ手を伸ばせば、引き寄せられるように

その体へと入って行った。暖かい、これが人の温もりというものだろうか。

 

そっと目を閉じれば どこからか声が聞こえた。

 

 

 

『わたしのかぞくをよろしくね。すぐうまれてくる、おとうとのことも。』

 

 

 

ああ、あなたが緋鞠ちゃんなんだね。

私をずっと待っていてくれたの。あなたがもうここにいられないから。

 

任せておいて。

正直、子供っぽくはできないかもしれないけど

私は私なりに、あなたの分まで思う存分 生きさせてもらうよ。

 

沖田緋鞠 として。

 

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