【 あの子の話 】   作:夜空 星月

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第四話

 

 

 

時間の流れとは早いもので、7月8日が来てしまった。

 

でも1週間違いのようなものだし、流れが早いという

わけではないのかもしれないけど。

 

 

 

「ねぇね、まりちゃん。」

 

「なに?姉さん」

 

 

 

手に持っていたのか赤いあやとりだった。

それをこちらに見せてニコリと笑った。

 

 

 

「一緒に遊ぼう!きっとお母さん、まだかかると思うから」

 

 

 

ボーとしていた私が暇そうに見えたのだろうか。

きっと気を使ってくれたんだろう。

 

優しげに細められる目を見て、心が温かくなった。

 

姉さんは指を動かして、しばらく経つと

私の目の前のスッと出した。

 

 

 

「これ、ホウキ」

 

「うわ…すごい!こんなあっという間に」

 

「えへへ。まりちゃんにも教えてあげる」

 

 

 

結構手伝ってもらったけれど、なんとかできたあやとりのホウキ。

それに感激して、姉さんの方へ手を持っていき見せた。

 

 

 

「上手上手!あやとりもっと練習すればもっと上手になるね!」

 

「うん!姉さん、他にも教えて」

 

「もちろん」

 

 

 

その他に ゴム や 指ぬき 橋、亀、飛行機。2人あやとり

なんかも教えてもらって。全て覚えられたわけじゃないけど

結構覚えることができた。

 

 

 

「実はね。まりちゃんが眠ってる間に、一緒に遊べるように

あやとり一杯覚えたの」

 

 

 

少し照れ臭そうに言う姉さんに、抱きついた。

 

 

 

「ありがと、姉さん。次は私と一緒に一杯覚えて

弟くんに教えてあげられるようにしよう!」

 

「…そうね。うん!」

 

 

 

そう言って顔を見合わせて笑った時、オギャーオギャーと

赤ちゃん特有の泣き声が聞こえた。

 

きょとんと顔を見合わせたまま、数秒

お母さんに付き添っていたお父さんは、体を震わせながら

分娩室から出てきた。

 

 

 

「生まれたよ。…お前たちの弟が。」

 

「ほ、ほんと?」

 

「入ってもいい?」

 

 

 

中に入れば涙を流しながら、赤ちゃんを抱く

お母さんの姿だった。

 

こちらに気づくと綺麗に微笑み、

 

 

 

「あなたたちの弟、

 

名前は 沖田総悟 よ。」

 

 

 

そう言って見せてきた。

 

さすがにまだ持てないから、と下で父さんが支えながら

2人で一緒に持った。

 

小さくて、潰れてしまいそう。

 

 

…あれ、なんでだろう…泣きそう…?

 

 

 

「どうかした?まりちゃん」

 

 

 

「……っ」

 

 

 

どうしよ、まるでコップから水が溢れ出すように、色んな感情が

湧き上がる。抑えようにもブレーキが効かなくて、涙が零れそうだ。

 

 

 

「ごめん、私ちょっとウンコ行ってくる!

父さん、落とさないように気をつけてね」

 

 

 

泣きそうなのがバレたくなかったから慌ててお父さんに返した。

軽く小走りで走った背後から「ウンコなんて下品な子と言うんじゃありません!」

という声が聞こえたけど、母さんも思いっきり大声で言ってるよね?

というのは無視したほうがいいんだろうか。

 

 

 

「…っぅ」

 

 

 

赤ちゃんを抱っこしたのは初めてだけど、赤ちゃんを見て泣きそうに

なったことなんて今まで一度もないなんでこんなに胸が締め付けられるんだろう。

 

ただただ、今は胸が苦しくて切ない。

 

 

 

「(…いや、本当はわかってる。)」

 

 

 

生まれたばかりの赤ちゃんを抱いて、命の尊さと自分の醜さを感じた。

さっきから前世の私が脳裏にちらついてしょうがないから。

 

 

 

母が一生懸命お腹を痛めて産んでくれたのに、

死にたいと強く願っていた私。

母の最初で最後の望みを自ら拒否した私。

 

 

 

こんな自分が大嫌いで仕方がなかった。

 

 

 

「どうかしたの?まりちゃん」

 

 

 

気がついたら体が暖かさに包まれていた。

 

ぽんぽん、と背中を優しく撫でながら

 

 

 

「なんで泣いてるのか、話してくれない?」

 

 

 

姉さんは優しい。

話してほしいけど無理には話さなくていい、っていう気持ちが

深く伝わってくる。でも、こんな理由…いくら姉さんでも

話せるわけない。今の幸せを壊したくない。

 

 

 

「そーごを、抱っこしたら、…ひっく。急に涙が

止まらなくなっちゃった…!」

 

 

 

私は身勝手だ。「拒絶されたくない」から話せない。

前世の醜い私を知られたくないから。

 

 

 

「……」

 

「……」

 

 

 

反応を見せない姉さんに戸惑っていると遠くから総悟を抱いた

母さんと父さんが来た。

 

て、あれ。総悟がすっごく泣いてる。

 

 

 

「さっきから泣き止まないの。

 

緋鞠、おねーちゃんになるんだから、泣き止ませてくれない?」

 

 

「ええ!?なんで私!」

 

「下で支えてあげるから、持ってみな」

 

 

 

父さんに下で支えてもらっている中、そっと抱き上げれば

嘘のように泣いていたのがピタッと止まった。

 

 

 

「うふふ。やっぱりおねーちゃんのとこが一番安心するみたいね?」

 

「これからは総悟を守ってあげないとな。…姉として」

 

「ふふ。ええもちろん!」

 

 

「わかった。

 

 

私、守るよ」

 

 

 

 

私は、君を守る

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