幻想郷創造記   作:テーブルの木目

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お待たせしました第2話です。
前回から時間が一気に飛んでおります。これ以降は暫く日常回が続く予定です。
遅筆ですが、じわじわと更新して行きますので気長に待っていただければと思います。


第2話 覚醒

「…………」

 どこまでも新緑の広がる世界。

 全盛期からは時が経ったものの、それでも地球上では未だ恐竜が食物連鎖の頂点に立っていた時代。後世で白亜紀と呼ばれた時代の末期

 

「……んぅ……」

 

 地平線の果まで緑が続く原風景の中、身じろぐ影がひとつ。

 それは例えるならば一面の赤い薔薇(ばら)の花畑の中に咲いた一輪の青い薔薇。

 太陽の寵愛を一身に受けたような美しい黄金の長髪は緩やかなウェーブを描き、その体は瑞々しくも赤子のような柔らかさと同時に見るもの全てを魅了する魔性を孕み、黄金の前髪から見え隠れする顔は少女特有の端整な顔つきながら隠しきれぬ色香を放つ。

 

 ソレは永きにわたる眠りから覚めた。────

 

 

<✤>

 

 

 ──眩しい──

 

 全身を包み込むような、どこまでも大きくて暖かい陽の気。

 

 ──あぁ、()()()()()。私は、これを識っている。──

 

 其は、地上の全てを遍く照らす生命の活動源。

 

「たい、よう…」

 

 ……寝起きで頭が上手く回らないけれど、どうやら上手くいったよう()

 

 寝惚け目を擦りながら(ソラ)に意識を向け、混沌の存在を確認する。

 

 私という個と繋がり、創世の素となった渾沌はその全てを宇宙中の物質に変えていき、今もその形を変え続けている。

 

 正直半分賭けのようなものだったから不安だらけだったのだけれど、今の所順調に、私の計画したとおり進んでいるみたい。

 

 あの時、渾沌と繋がって創世をなした私の意思は本来なら創世が成された時点で用済みとなり消滅するはずだった。

 

 そもそも渾沌自体が()()()()()()()()()()()()()()()()()という矛盾を抱えるモノであると言うのに、私のカラダはそれで出来ていたのだ。

 

 何物でも無い筈のモノが()という個を形作っているという矛盾。

 

 勿論その矛盾は創世の為の渾沌の意思による意図的なバグであるのだが、私が生まれた渾沌が創世を成せばその後に生まれるのは「有」の世界。

 そこに私という「無」でありながら「有」という矛盾を孕む存在がいるのは正にバグなのだろう。

 言うならば私はテレビゲーム制作のためのツールのようなものだ。

 ゲームを制作する時は必要不可欠なものだが、無論そんなツールはゲームの型ができた時点で用済みだ。型ができた後ゲーム制作のためのツールが残っていれば、それは作られた型に何の影響を及ぼすか分からない。

 そんな訳で、元より渾沌の意思は私の意思も自らと共に消滅させるつもりだったようだ。

 

 創世前、創世の準備をしていた中それに気づいた私は薄まりつつある意識を懸命に保とちながら、《地球での人の誕生》という因果に強引に自分という存在を結びつけることで消滅から逃れることを決意した。

 

 正直、分が悪い賭けだった。

 私が創世に自らを巻き込んだら、気付いた渾沌の意思が創世に混じった私という異分子(バグ)に対してどんな手を打ってくるか分からなかったからだ。

 とにかく折角繋げた因果を渾沌によって壊されたくなかった私は、私の操作が必要な段階を過ぎても自分の意識が保つギリギリまで創世の準備を進め続けた。

 渾沌の意思そのものは元々希薄なものだが、創世の素となる混沌の力は侮ることなどできない。よって、実行は創世の瞬間。

 完全に渾沌の意思が感じられなくなった瞬間に私は創世に自らを巻き込む必要があった。

 

 意識が朦朧としていた為か創世の瞬間どうなったか覚えてはいないけれど、今私がこうして無事に地球にいるということは最悪の事態は避けることが出来たらしい。

 

 

 

「さて…、まだまだ気になることはあるけれど。いい加減無視することも出来ないわね。」

 

 ところで今の私は真っ裸である。真っ裸で草原の真ん中で寝転んでいる状態である。

 太陽が暖かいなーとか、すっぱだかでいるのって女としてどうなのかしらとか意味もなく考えてるけれど、どうやっても現実は変わらない。

 

 私の目の前には、巨大な生物がいた。

 凶悪と言えるアギトから涎を垂らし、こちらをじっと見つめる爬虫類特有の縦に割れた眼には哀れな美少女(エサ)が映っている。

 

「…………」

 

「Grururururu…」

 

「………ニコッ」

 

「Fshuuuuu…ニチャァ」

 

 ……笑顔の起源は、自分を害する可能性のある外敵に大して威嚇する時に使うもだったという。

 確かにこれは威嚇だなぁとひどく私は納得し、

 

「あぁぁぁぁぁあああ!!!???」

 

「GruaaAAAAAAAAAA!!!!!!」

 

 直後肉食獣の声と私の声が太古の空に木霊した。

 

 

 

<✤>

 

 

 

「助けてぇぇぇぇえええええ!!!!」

 

 草原を全裸で走る少女の影一つ。

 少女は、時代が時代であれば傾国の美女と謳われたであろうその美貌をクシャクシャに歪めて背に迫る脅威から少しでも離れようと意味もなく大声を出しながら逃げ惑う。

 

「GruuuuuaAAAAAAAAA!!!!!」

 

 そんな少女の背を追うのは体長10メートルを越えようかという大きさの恐竜。後の世では有名なティラノサウルスと呼ばれる恐竜の同種。

 そんな恐竜は、中々掴まらない目の前の獲物に痺れを切らせ、怒りを込めた咆哮を轟かせる。

 

「何で恐竜がいるのよぉぉぉぉぉおおおおお!!!!」

 

 少女の嘆きは空に虚しく空に響くのみ。

 やがて注意が散漫になった為か少女は足元の石につまづき、盛大に転ぶ。

 

「ぶへっ」

 

 およそ淑女が出してはいけない声を出し、体の痛みにその端正な顔を顰めるも、自分の身に迫る脅威を思い出しすぐさま逃げ出そうとしたが、その一瞬はハンターである彼らにとっては大きすぎる隙であったらしい。

 顔を上げた彼女が目にしたのは自らを頭から食いちぎらんとする大きな口。

 凶悪な歯が並ぶ様を見て少女は硬直し、嫌でも自らの死を理解する。

 

「っ………!」

 

 もはや少女に出来るのは目をつぶることだけ。

 せめて痛みが少なくなりますようにと願いながら。

 

 それでも彼女はとんでもなく運がいいらしい。

 

<✤>

 

 ──なんで、どうして…こんな…──

 

 私は人と逢いたかった。混沌から生まれながら、その体はもはや人とは呼べぬものであっても。ただ、他者と触れ合いたかった。そう思って、この地球に自らを巻き込んだのに。

 目の前にいるのはどうしようもなく強者で、私はどう足掻いても弱者で、自分がここで死ぬのを嫌でも理解してしまった。

 

 もはや目と鼻の先にある大口。逃げたくて、でも体が動かない。

 涙が知らず出てくる。

 死にたくないっ、しにたくないっ。誰か、なんでもいいからっ

 

「助けてっ…」

 

 目の前のアギトが私を噛み砕かんとしたその時

 

「GugyaaaaaaaAAAAAAA!!!!???」

 

 恐竜の目に矢が刺さった。

 

「助けるのが遅れてごめんなさいね」

 

 目の前に私を背にして立つ少女。

 腰まで届く銀の長髪。10代半ば程の見た目ながら完成されている美しさを持つ少女は、背中に背負った矢筒から矢を取り出し弓に番えると

 

「ここから逃げるわよ、立てる?」

 

 流れるように残った恐竜の目を寸分違わず穿ち私に言った。

 場違いながら私は、そんな彼女を美しいと思ってしまったのだ。

 

<✤>

 

「ふぐっ、ひぐっ、うぅぅ」

 

「よしよし、怖かったわね」

 

 あまりの恐怖に腰を抜かした私は目の前の少女に肩を貸して貰いながら命からがら逃げだした。今は少女から羽織っていた外套を貸してもらい、少女が住むという村まで向かっている。

 

「うぅぅ、こ"わ"か"っ"た"よ"ぉ"お"」

 

「はいはい、怖かったわね。もう大丈夫よ~」

 

 人とあえたこともそうだが、あの緊張から解き放たれた私にこれまでの事が色々と堰を切ったように流れ込み、緩まってしまった涙腺を抑えることも出来ず恥も見聞もなく彼女に抱きつき泣き出してしまった。

 

「ひぐっ、うっ、ふぅ、ふぅ…。急に抱きついてごめんなさい」

 

「良いのよ。誰だって死んでしまうのは恐ろしいもの。泣き出してしまうのも仕方がないわ。」

 

「うぅ、本当に助けてくれてありがとう。貴女は命の恩人よ。」

 

「ふふっ、どういたしまして」

 

 彼女に抱きついて十分に泣いたお陰か、安心すると共にじりじりと炙るような羞恥が湧き出てきた。

 不味いわ、ちょっと恥ずかしすぎて彼女顔を見れない…。

 

「……落ち着いたみたい、ね?」

 

「えっ、ええ。あの。改めて本当に助けてくれてありがとう。」

 

「良いのよお礼なんて。私だって今日たまたま足りなくなった薬草を取りに都から出たんだもの。感謝するなら私と貴女を巡り合わせてくれた天照様にしてちょうだいな。」

 

「……あまてらすさま?」

 

「……やっぱり知らないのね。」

 

 瞬間、目の前の少女の雰囲気が一変する。

 

「ひっ」

 

「あっ、ご、ごめんなさい、悪気があった訳じゃないの。ただちょっと気になることがあって…」

 

 すっと威圧感が消えると、少女は申し訳なさそうに私に謝った。

 

「き、気になること?」

 

「ええ、そう。色々と聞きたい事があるのよ。あんな所で貴女はどうしてオオトカゲに追いかけられていたのかとか、貴女が一体何者なのかとかね」

 

 …オオトカゲというのはさっき私が追いかけられていた恐竜ということで間違いないだろう。

 ──待て、……恐竜のいる時代に人?そんな馬鹿な。

 冷静に考えるとおかしい。

 ヒトは白亜紀末期の恐竜大絶滅の後に現れた霊長類の子孫のであって、間違ってもこんなどこぞのモンスターハンティングよろしく恐竜と戦うような修羅ではなかったはず。

 

 自然と彼女を観察するように見てしまう。

 美しい銀髪は頭の後ろで一つに纏められ、目覚めるようなその美貌はこちらを伺うように私を覗き込んでいる。

 何故か顔が少し熱くなり、慌ててその双眸から目をそらし改めて彼女の服を観察する。

 ……狩猟用なのか身軽さをもちながら必要最低限の所を守るようになっているそれは、どう見ても西暦20世紀以降の技術で出来ているようにしか見えない。舐めした動物の革特有の鈍い輝きをもたず、暖かくも通気性に優れたその衣装は否応にも科学の力によるものであると私は理解する。

 

 ……どうゆうことなの……

 

 なんかもう怒涛の非常識の連続で考えることが億劫になってくる。

 

「…とりあえず、その様子じゃ貴女身寄りが無いんでしょう?」

 

「え、えぇ」

 

「そこで提案なのだけど」

 

「貴女、私の家にこない?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ご精読ありがとうございました。
前回あんなに壮大な感じだったのにこれだよ(呆れ)
いや私の中ではですね極端な二面性をもつゆかりんを表現したいなぁと思っているんですけども、全然表現できてませんねクォレハ…
颯爽とゆかりんを助けた謎の少女、一体何者なんだ()
前書きのとおり第3話からは日常回が始まり、ほのぼのタグがようやく仕事を始めます。
それではまた次回
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