ダンガンロンパ インフィニティ   作:アカツキ

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プロローグ ~後編~

キーンコーンカーンコーン

 

突如鳴り響く鐘の音。その場にいる者、ある者は警戒を強め、ある者は音の出どころを探り、ある者は興味なさそうに目を閉じる。

 

『オマエラ全員揃ってるなぁ?』

 

そして響く誰かの声。無論この十六人の者のでは無い。また別の声だ。

 

『では、これから入所式をとり行いたいと思います』

 

声はステージの方から聞こえる。他の皆も気付いたようで全員がステージを注目する。

そして、声の主は現れた。

 

『全員起立!』

 

いや、正確にはステージの上に飛び出してきた。

 

『って言ったけどオマエラ起立してるよね?じゃあ、礼!おはようございます』

 

オレ達は誰も口を開かない。いや、開けなかった。

 

『あれれ?オマエラまさかの反応なし?生きてる?』

 

だって、出てきた声の主って言うのが……

 

「クマの……ぬいぐるみ?」

 

……クマのぬいぐるみだったからだ。

あまりの衝撃の大きさと現実味のなさに言葉が出なかった。

 

『うぷぷ。あまりの衝撃に声も出なかったようだね』

 

笑うクマのぬいぐるみ。

よく見るとそのクマのぬいぐるみは体の右半分を白色に。もう片方の左半分を黒色に塗っていて……うん。一言で言うなら可愛さのかけらもない。気色悪いぬいぐるみだ。

というか、動いて喋っている時点でもうただのクマのぬいぐるみではない。きっと、中には機械が詰め込まれているだろう。あの中身は綿じゃないはずだ。

 

『後、ボクはクマのぬいぐるみじゃないよ!ボクはこの施設の施設長のモノクマなのだ!』

 

……一瞬で頭の中に情報が流れ込んでくる。

モノクマ?この施設?施設長?何を言っているんだこの目の前の奴は。

 

「モノクマ?」

『そう!ボクはモノクマ。そしてオマエラは希望ヶ峰学園の認める才能の持ち主たち。世界の希望だね』

 

世界の……希望?

 

『そんなオマエラにはこの施設で共同生活を送ってもらいます』

 

……はぁ?

 

「モノクマとやら。それはどういうことだ?」

 

熊沢がオレ達を代表する形でモノクマに問う。

 

『うぷぷ。共同生活は共同生活だよ。鹿野クンの想像しているようなのと同じ意味だよ』

「なるほど……つまり、僕の理解は正しかったのか」

 

大方、共同で生活するって思ってたんだろうが、むしろそれ以外にどうやって解釈できるんだよ。

 

「違う。俺が聞いているのはそうじゃない。共同生活させる目的だ」

『目的?それはオマエラのような優秀な才能を持った高校生を保護することだよ』

 

優秀な……才能?

 

「えへへ~これは褒められていると受け取っていいんだよね?」

「優秀な才能?このバカもか?」

「……ありえない」

「うん。ぼくもそれはないと思う」

「神戸さんも杉谷さんも屋代さんも酷いよ!?僕の才能が認められてるってことじゃないの!?ねぇ天原くん!」

「ああ。世界中がお前のことをバカだと認めているってことだな」

「何だと!?モノクマ!人をバカ扱いして……ふざけるのも大概にするんだ!」

 

はぁ。だから、こいつはバカなのか。

 

『えぇーちなみにですがこの共同生活に期限はありません。つまりオマエラは一生ここで暮らすのです!』

 

…………今なんて言った?

 

「ワシの聞き間違いかのう。今、一生ここで暮らすと聞こえたのじゃが……」

「はい。ワタシもそう聞こえまシタ」

「いえ、お二人共。聞き間違いではないと思います。私も確かに聞いたので」

「ゆめもそう聞こえた~」

 

……一生暮らせ……だと?

 

『心配いりません。予算は豊富、食料も寝床もしっかりあります。ボクはオマエラに何不自由ない生活を送らせることをクマの神様に誓いましょう』

 

はぁ?

 

「まさかあの鉄板はウチらを閉じ込める為に?」

「吾輩達は閉じ込めたのか?」

 

クッ……もう拒否権はねぇってことかよ。

 

「これが袋のねずみ……」

「最悪ですね……」

 

清田と久保山が呟くがまさしくその通りだ。

 

「ふざけるのも大概にしろよ。ぬいぐるみ」

 

そんな中。怒りを表に出したのは意外にも古屋敷だった。

 

「予算とかそんなんじゃない。そもそもの問題、この施設で一生暮らせるわけがない」

「そうだ。古屋敷の言う通り我の計算でも99.99%不可能だ」

 

続く形で白数も反抗する。

 

『コホン。話は最後まで聞くものです』

 

咳払いをして、話を進めようとするモノクマ。

 

『そんなこの施設をどうしても出たいという人のためにあるルールを設けました』

「ルール……だと?」

『そうですよ天原クン。ルールです。殺し方は問いません』

 

はぁ?殺し方は問わない?何の事だ。珍獣狩りでもするのか?異世界人とでも戦うのか?

 

『誰か殺した生徒だけが出られる。それだけのシンプルなルールなのです』

 

誰かを……殺す?

 

『殴殺刺殺撲殺斬殺焼殺圧殺絞殺呪殺何でもいいよ?……うぷぷ』

 

なるほど……だから殺し方は問わないと。

 

「おい、ぬいぐるみ。一つ聞かせろ」

『おぉ?何かな古屋敷クン。もしや、もう誰かを殺す気になったの?』

「違う。その殺す相手はぬいぐるみ。貴様の操縦者を殺してもいいのか?」

 

古屋敷からの殺害宣言。その宣言に対しモノクマは……

 

『アヒャヒャヒャヒャヒャ。アヒャヒャヒャヒャヒャ……』

 

ただ、笑っている。狂ったように笑っている。

 

「何がおかしい?」

『アヒャヒャヒャヒャヒャ。まだ理解してないようだね?いいかいオマエラ?これからはこの施設こそがオマエラの家であり、暮らす場所であり、社会であり、世界なんだ。やりたい放題やらせてやるって言ってんだよ』

「そうか……なら、ぬいぐるみ。貴様はスクラップだ」

 

手をポキポキ鳴らしながらモノクマに近づく古屋敷。

 

「古屋敷……本気でやる気か?」

「止めるのかアンノーン?」

 

その腕を掴んで止めさせるが……

 

「いいや。オレもこの理不尽さには頭に来ている」

 

……こいつの眼は本気だ。オレも乗ってやるか。

 

「フン。勝手にしろ」

「はぁ。俺も仕方ない。一応この中だと武闘派の部類に入りそうだし……やるか……」

 

オレ、古屋敷、熊沢の三人でモノクマに仕掛けようとしたその時、

 

『うわわあああ。施設長への暴力行為はルール違反だよぉ。おいで!グングニルの槍』

 

オレ達三人の……いや、十六人の回りの至るところから槍が出てきた。

 

「……っ!?」

 

後数センチ……いや、数ミリずれていたら刺さっていただろう。後ろの皆も同様だ。

 

『うぷぷ。今回は未遂ってこととボクの権力の偉大さを見せつけるためワザと外したけど……ボクに暴力を振るおうものならどうなるか。今ので分かった?』

 

槍が体育館床にしまわれて行くのをオレは冷や汗を掻きながら見ることしかできなかった。

 

「で、でも!槍が地面から生えるなら空から奇襲すればいいじゃないか!」

 

そんな中。鹿野が突拍子もないことを言い出す。……空から奇襲すればいいって……。

 

『うぷぷ。もしもその時は……』

 

降りてきたのはガトリング銃。あーこれは、

 

『ハチの巣にしちゃうからね』

 

無理ゲーだ。コイツにはどうあっても敵わない。そう、圧倒的な武力と圧倒的な権力の前に人は……屈することしかできないのだ。

 

『ではでは、入所式はこれで終了となります。何か質問のある生徒はいますか?』

「では、私から一つ。よろしいですか?モノクマ様」

「おいおい、和合よ。モノクマに様をつける必要ないじゃろ」

「そうですよ和合さん。わたしもそう思いますよ」

「いえ。私の癖でして……」

 

どんな相手にも敬意を表せるのはいいことだと思うけど……さすがにモノクマには必要ないでしょ。

 

『うむ。いいでしょう和合クン。質問を認めましょう』

「ありがとうございます。先程モノクマ様は施設長への暴力行為はルール違反と仰っていました。では、お聞きしますが施設長への暴力行為以外にルール違反となる行為は存在するのでしょうか?」

 

そういえばそうだ。確かに、まだモノクマはこの施設でのルールを説明していない。

 

『あー、そういえばオマエラにすっかり渡すの忘れていたよ。はい、電子生徒手帳』

 

そう言ってモノクマはオレ達一人一人に端末を渡してくる。ふむ。大きさはスマートフォンと同じくらいか。

 

『一人一台。オマエラ専用だからな?故障とかしても、修理やメンテナンスは受け付けません!』

 

なるほど。そう思って起動させてみる。すると起動画面にはオレの個人情報が……?

 

「おいモノクマ」

『はい、何でしょう天原クン』

「オレの才能を示す欄が『超高校級の???』となっている。どういうことか説明あるか?」

『うぷぷ……さぁ?天原クンのだけ故障していたんじゃない?まぁ、修理する気はないけど』

 

分かりやすい嘘だ。コイツ……絶対ワザとだな。

 

『でも、ほら。生きてりゃいつか分かる日が来るって』

「それがコロシアイをさせたい奴の言葉か?」

『うぷぷ~施設長の言葉だよ?ありがたく頂戴しておいたら?』

 

……コイツは一体。何がしたいんだ……?

 

『えーコホン。そんなことより施設の規則の欄を見てください』

 

言われるままに施設の規則の欄を見るオレ達。そこには……

 

 

 

1.生徒達はこの施設内だけで共同生活を行いましょう。共同生活の期限はありません。

 

2.夜10時から朝7時までを“夜時間”とします。夜時間は立ち入り禁止区域があるので、注意しましょう。

 

3.この施設について調べるのは自由です。特に行動に制限は課せられません。

 

4.施設長ことモノクマへの暴力を禁じます。監視カメラの破壊を禁じます。

 

尚、規則は順次追加していく場合があります。

 

 

 

「我から質問いいか?」

『はい。何でしょう?』

「校則が追加された時は我らにしっかり知らせてくれるのか?」

 

あーそういうことか。

 

「天原くん。白数くんは何でそんな事聞いてるの?」

「あー例えば、廊下を走ってる最中に『廊下を走るな』って規則が追加され、それに気付かなかったらアウトだろ?だから、追加云々がされた時にオレ達に伝える手段があるかってことだよ。もちろん。全員平等にな?」

「そ、そういうことか……」

『んーまぁ、追加された時に分かるんじゃない?』

 

なんて適当な野郎だ。

 

「じゃあ、私からいいか?多分今の段階では最後の質問になると思うが」

『何でしょう。今ならボクのスリーサイズまで公開しちゃいますよ?』

「そのぬいぐるみのか?それとも操作している奴のか?」

『うぷぷ。その冗談は笑えないよ神戸さん?ボクに操作している奴なんていないよ?』

「まぁいい。では、率直に聞こう」

 

そう言って神戸は一息吸って……告げる。

 

「貴様の目的は何だ?何故こんなことをする?」

『あぁー誰か一人は絶対聞いてくるよね?目的。そんなにオマエラに取ってボクの目的が大事なの?ボクの目的を知っても無意味じゃないの?』

「御託はいい。さっさと教えろ」

『そうだね。ボクの目的は――――絶望。それだけだよ』

 

絶望……だと?

 

『うぷぷ~じゃあ楽しんでね~この施設で』

 

そう言って、体育館下に消えていくモノクマ。モノクマが消えた後を追ってみるもそこには何もなかった。脱出口らしきものも、ただの床で本当に何も残ってはいなかった……

体育館に訪れる沈黙。しかし、この沈黙は鹿野がやらかした時の沈黙とは違う。

疑心暗鬼。互いが互いを警戒し、誰も口を開かない状態。重い……この沈黙は重すぎる。

その沈黙状態は数分続いた。いや、体感時間的には数十分にも数時間ともとれる長い沈黙。

 

「なぁ、一旦話し合わないか?今の俺たち現状について、これから何をすべきかを」

 

最初に口を開き、沈黙状態を打ち破ったのは熊沢だった。

 

「そうですね。ぼくも賛成です」

「そうじゃのう。話し合えば現状の解決策を見出せるかもしれないし」

「……ボクも賛成。モノクマの言う通りに動きたくないし」

 

続く形で屋代と柴と杉谷も賛同する。

 

「フン。貴様らだけでやってろ司令塔。俺は降りる」

「そうだなぁ。我も参加する気はないな」

 

そう言って颯爽と体育館から出ていく二人。

 

「アイツらに協調性はないわけ!?」

「落ち着いてくだされ海部殿。まだ、吾輩たちは所詮会って数時間という関係。いきなり協力出来るとは限りません」

「で、でも……」

「ミカサン。今は心を落ち着けて、現状を見まショウ」

「ノエッチの言う通りだよこういう時こそ冷静に……ね?」

 

どうやら、ここに残った14人は一応協力する気はあるらしい。

 

「さてと、何から話し合うかだが……」

「ゆめは今は話し合わなくていいと思う~」

「どういうことだ?涼宮」

 

涼宮の意見に神戸が聞き返す。

 

「だって~……」

 

ピンポンパンポーン

 

『施設長が夜時間をお知らせします。それではオマエラ。おやすみなさい』

 

鳴り響くアナウンス。どうやら、もう夜らしい。いや、起きたのが何時か分からない以上今が夜の10時って認識で合ってるだろう。

 

「なるほど。確かに涼宮様の言う通り明日の方がよろしいですね」

「え?どういうことなの和合くん?」

「いいか鹿野。この規則に書いてある通り夜時間は立ち入り禁止の区域がある。話し合いもいいが探索となった時に夜じゃ探索できない場所もある」

 

というか、現状で話し合うことなんて特にないし。

 

「あ、そう言えば朝食ってどうするの?」

 

今そこかよ。まぁ、食事は大事だが……

 

「あ、電子生徒手帳に施設マップ欄がある」

 

海部の言う通り開いてみるとマップが出てきた。

 

「食堂は……二階にある見たいだね」

 

屋代の言う通り、二階には食堂。一階には大きくは皆の個室(?)と体育館があるみたいだ。

 

「でも、ワシらのうち誰が作るのじゃ?ワシは料理なんて出来ないのじゃが……」

「柴殿と同じだ。吾輩も料理は出来ない」

「ゆめも~無理~」

 

早々に三人からの出来ない宣言。

 

「あー俺も無理だわ。そうだな。この中のメンバーで料理ができる奴。手を挙げてくれないか?」

「オレは一応出来るぞ?」

「嗜む程度にやっておりましたので」

「家政婦にとって料理も仕事ですから」

「あー私も出来るぞ」

 

そう言われて手を挙げたのはオレと和合、それに久保山に神戸だ。

 

「えぇっ!?和合くんと久保山さんはともかく天原くんと神戸さんは料理できるの!?」

 

驚くバカ。そんなに意外なのか?

 

「おいこら。オレも一応料理もできる……らしいぞ」

「何で『らしい』んだよ……」

「記憶が欠けているんだよ……だが、まぁ、料理は出来る」

 

自分でも何ができて何ができないのか。残っている記憶から探っていかないといけないな。

 

「もしかしてあまっちの才能って超高校級の料理人とか?」

「キョウヤサンはシェフなのデスカ?」

 

いや、それは多分違うとは思うけど……

 

「そんな天原の正体なんて今はどうでもいい」

「いや、結構オレの正体って重要なことだと思うのは気のせいですか?」

「ああ、そんなの気のせいだ。今はどうでもいい」

 

酷い!まぁ、確かに現状で話し合っても意味ないと思うけどさ!

 

「そんなことよりも鹿野に私が料理をできないと思われていたことの方が問題だ!」

「なわけあるか!そっちの方がどうでもいいだろ!」

「はぁ!?あの鹿野にバカにされたんだぞ!黙ってられるか!」

「それはあの鹿野にバカにされるお前の問題だろうが!」

「まぁまぁ、二人共落ち着いてよ」

「……そうそう。喧嘩は良くない」

「全く……海部さんと杉谷さんの言う通りだよ。ほら、二人とも仲直りは?」

「「黙っていろこのバカが!」」

「ねぇ泣いていい!?」

 

ギャーギャーと騒ぐ主にオレと神戸。

まさか、ここまで話の分からない勉強家だとは思わなかった。勉強家の名折れだろ。

 

パンパン

 

二回手を叩く音が響く。その音に反応してオレと神戸は口を瞑る。

 

「はいはい。喧嘩はおいといて、明日は朝8時までに食堂集合。来なかった奴は呼びに行く。分かったな?」

「では、そうですね……朝食組は7時には集まりましょうか?よろしいですねお三方共?」

 

オレ達は了承の意味を込めて頷いておく。

 

「なら、解散」

 

この後、これ以上の口喧嘩はお互いの利にならない。続きは明日にしようということで話は終結した。

…………というか、明日もやるのかよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

当ての割れた個室。その中のシャワー室で、今日あったことを思い出す。

学校の門を通ろうとしたら意識を失ったこと。

目が覚めたら施設に監禁されていたこと。

施設長と名乗る謎の者(ぬいぐるみ)にコロシアイを宣言されたこと。

そして……

 

「オレは一体……何の才能でここに呼ばれているのだろう?」

 

……自身の才能が何かを忘れてしまったこと。

オレの才能が記憶からなくなっている。モノクマの反応とか対応を見る限り奴はオレが何の才能を持ってるか分かっている。いや、正確には知っている……か。

はっきり言って気味が悪い。

自分のことを自分が知っていないのに他の奴がオレについて知っている。

 

「まぁいい。出よう」

 

身体を拭きタオルを腰に巻きクローゼットを見ると同じブレザーが数枚ほど。……え?このブレザーで寝ろと?

 

「おいモノクマ……って、出て来るわけないよな」

 

カメラに向かって声を掛けてみるも反応はない。仕方ない。このまま寝るか。

 

「呼ばれたのでやって来たよ~」

 

律儀にドアを開けて入ってくるぬいぐるみ。……ん?ドアを開けて?

 

「おいモノクマ。オレってカギしていなかったか?」

 

おかしいな。ロックをかける時に『ここに電子生徒手帳をかざして下さい』って書いてあったからしっかりとかざしたのだけど。

 

「いいや?しっかりと電子ロックはかかっていたよ?」

「え?じゃあ、何でお前平然と入ってこれたの?」

「ボクは施設長だよ?天原クン。マスターキーぐらい持ってるさ」

 

なるほど。マスターキーねぇ……

 

「……ってこれはどう考えても不法侵入だろ!職権乱用じゃないのか!?」

 

モノクマがいつでも入ってこれるなんてこの個室にはプライバシーなんて存在しないじゃないか!……まぁカメラがある時点でプライバシーなんて初めから存在していないが。

 

「というか用件あるならさっさと言ってよ。ボクだって寝たいんだよ?」

「あ、ブレザー意外にオレの服ってあるか?日中は別にいいんだが、寝る時ぐらい制服以外のもので寝たい」

「ああそういうこと。それなら、しっかりと用意されていたでしょ?クローゼットの下の引き出しに」

 

確かにクローゼットの下の引き出しには、Tシャツと短パンが。まぁ、Tシャツの柄は無地の黒だな。うん。シンプルでいい感じだ。

 

「全くしっかりしてよ~天原クン」

「悪い悪い。じゃあなモノクマ」

「いい夢が見られるといいね。天原クン」

 

そう言ってドアを開けて出ていくモノクマ。取りあえずロックをかけて……と。

 

「今日はもう寝よう」

 

そのまま電気を消しオレは寝ることにした。

……もしこれがただの夢なら醒めてほしいと願いながら……

 

 

 

 

 

 

 

 

Prologue『希望の持つことの出来ない世界』 完

 

生き残り人数  残り16人


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