ダンガンロンパ インフィニティ   作:アカツキ

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第一章『知は時に死を招く』
(非)日常編 1


翌朝。オレは目が覚めて周りを確認し…………落胆する。

 

「はぁ、結局コレが現実なのか……」

 

監視カメラに鉄板。うん。間違いなくここは昨日も使ったがオレに割り振られた個室だ。

昨日の一件が夢であってくれれば良かったのに……切実な思いである。

 

「まぁ、一晩寝ただけで記憶が戻るわけでもないか……」

 

昨日に引き続き自分の才能は思い出せそうにない。一種の記憶喪失だろうか?まぁ、今考えても仕方がない。思い出せないものは思い出せないのだ。

時刻は朝の6時23分。集合がオレは朝食組のため7時。

余裕を持って食堂に行こうとしたってまだまだ時間はある。

パジャマ代わりに着ていたTシャツと短パンを脱ぎ、昨日とは別の制服のセットを着る。あーこれらを洗い物に出したいなぁ……でも夜中とか朝に仕掛けると迷惑になるのかな?洗濯機のまわる音で他の人の睡眠を妨害したらこっちが申し訳ない。

この部屋って防音加工なのかな?後で検証してみるか……誰か使って。

軽く歯を磨き、寝癖を整え身なりをきっちりとする。ついでにベッドも綺麗に直して……

 

「よし、行くか」

 

ガチャ

 

部屋を出ると誰もいない。当然か。だってまだ六時台だし。

階段を上がって二階へと進みそのまま食堂に入る。すると、既に和合と久保山が居た。

 

「おはようございます。天原様」

「おはようございます。天原さん」

「うん。おはよう。和合。久保山」

 

二人ともオレより早く来ているなぁ……って、

 

「あれ?神戸は?」

「後ろだ天原」

「わっ!?」

 

いきなり後ろに現れた神戸。怖っ……。

 

「あ、神戸様もおはようございます」

「おはようございます。神戸さん」

「二人ともおはよう。ついでに天原もおはよう」

「お、おはよう」

 

……ってオレはついでかい!

 

「これで四人揃いましたね。さて、今日の朝食はどうします?御三方とも」

「わたしは何でもいいですよ?でも、16人分作るんですから早く決めた方がよろしいのでは?」

「16人分か……作っても食べるか?若干二名ほど」

「古屋敷と白数の二人か。あの二人なら『そんな毒が入ってるかもしれないもの食べるか』って言いそうだな」

「同感だよ神戸。今日は話が合いそうだな」

「奇遇だ天原。今日はお前と意見が合いそうだ」

 

昨日の敵は今日の友。昨日は言い争ったとしてもオレ達は犬猿の仲じゃない。だから意見が合う時もあるだろう。

 

「でも、16人分は作りましょうよ。あの二人も食事をとらないと死んでしまいます」

「久保山様の言う通りです。一応16人分を用意しておく。これでよろしいですね」

「まぁ、そこは異論はねぇ」

「全くだ」

 

というか、正直言って14人分作るのも16人分作るのも大差ねぇしな。

 

 

ピンポンパンポーン

 

『オマエラおはようございます。朝7時になりました。今日も一日、元気に過ごしましょう』

 

 

へぇ、この放送って朝の7時にも鳴るようになって居るんだ。

 

「今の時刻は……7時ですか。では、御二方。本日の朝食は何にいたしましょうか」

「そんなの決まっているだろう?」

「ああ、朝食と言ったらこれしかない」

 

そう言ってオレと神戸は同時に言う。

 

「「朝食と言ったらご飯(パン)だろ……ああん?」」

 

意見不一致。どうやらコイツとは意見が合わないらしい。でもまぁ、説得はしてみますか。

 

「おいおい、神戸。朝からパンだって?朝といったら白米に温かい味噌汁それに焼いた魚で決まりだろ?」

「はぁ?貴様こそ何を抜かしている天原。朝はトーストにヨーグルト。後は数種のカットフルーツで決まりだ」

 

説得失敗。コイツとはやはり合わないようだ。

 

「おい、神戸。ここは日本人らしく和食と行こうぜ?」

「はん。日本人だから和食?その理屈は実にくだらん」

「なら、何でテメェは朝からパン食を勧めたんだよ?」

「そんなの私が好きだから以外に理由が必要なのか?」

「テメェこそくだらねぇ理由じゃねぇか」

「少なくとも貴様より自分というものを持っている」

 

視線がぶつかり合う。本当にコイツとは意見が合わねぇ。

 

「まぁまぁ、天原さんも神戸さんも落ち着いて」

「そうですよ。御二方。食べられればどちらでもいいじゃありませんか」

「「良くない!」」

「そうですね……でしたらこう言うのはどうでしょうか?」

 

すると和合がオレと神戸の間に入り事態を収拾する案を提案する。

 

「ここで両方作るなんて案はあり得ません。ですので、ここは一つじゃんけんで決めてはいかがでしょう?」

「じゃんけんだと?」

「何だ。勝った方の提案を呑むってことか?」

「はい。そして、負けた方が全員分の朝食の片づけをしてもらう。これなら文句ないですよね?」

 

さすが超高校級の交渉人。これなら、納得の提案だ。

 

「おい、神戸。降りるなら今のうちだ」

「はん。天原、貴様こそ降りるなら今のうちだ」

 

ふむ。どうやら、コイツは降りる気がないらしいな。

 

「じゃあ、御二方。行きますよ?最初はグー。じゃんけん……」

「「ポン」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれから、十分ぐらいした後に熊沢、杉谷、海部の三人が。7時30分ぐらいには鹿野、柴、涼宮、屋代、ノエルの五人。その十分ぐらい後に荒川と清田の二人が揃い、例の二人を除いて全員が揃った。

 

「ほら、出来たぞ」

 

そう言って持ってくるのはパンとヨーグルト、それにカットされたフルーツに野菜ジュースと何だか健康に良さそうな朝食になった。

では、この朝食が意味するものは何か?至ってシンプル。オレがじゃんけんで負けたということだ。畜生。明日は勝ってみせる。

 

「皆様、少し早いですが食べ始めましょう」

 

和合がそう提案する。

 

「あの二人は待たなくていいの?」

 

海部が質問をするが、

 

「あの二人を待っていたら吾輩達はいつ食事にありつけるか分からんぞ」

「そうじゃな。先に食べておくかのう」

 

荒川が返し、柴が賛同する。

 

「ぼくお腹がすいた……」

「……ボクも」

「ワタシもデス」

「あーもう!らすっちとけんけん遅いよ!」

「いえ、あの二人は知らないと思いますよ?八時にここ集合って」

「あ……そういえばそうだったね」

 

何か女性陣が話しているがそう言えば白数も古屋敷も八時に食堂集合って知らないじゃん。

 

「だったら食べ始めようか」

 

すっかり、まとめ役のポジションが似合う熊沢がそう提案する。

 

「そうでございますね。いただきましょう」

 

和合からの食べ始める宣言。聞いた瞬間にみんな一斉に食べ始める。……お腹すいてたんだね……君たち。

 

「あ、あの神戸さん」

「何だ鹿野」

 

食べ始めて数分。オレの右隣に座る鹿野が、鹿野の正面に座る神戸に話しかける。ちなみに席順は適当だ。皆が思い思いの場所に適当に座っている。

 

「僕、野菜ジュースじゃなくて普通のジュースがいいなぁ~って」

「ゆめも~あっぷるじゅーすがいい~」

 

それにオレの左隣に座る涼宮も賛同する。あ、起きてたのね。

 

「そうか。野菜ジュースを飲みきったら勝手にしろ」

「んな横暴な!」

「そうだそうだ~おーぼーだ~」

 

反抗する二人。それに対し、神戸は……

 

「そうか。そんなに嫌か……おい天原。例のブツを持ってこい」

「えぇー自分で取って来いよ」

「じゃんけん。敗者。オマエ」

「……ッチ」

 

おかしいな。あのじゃんけんにこんな権限はなかったはずだぞ。……と考えながら冷蔵庫に置いてあるものを取ってくる。

 

「ほら、二人とも。これでも飲んどけだと」

「わぁーい……って、これ何ジュースなの?神戸さん」

「ん?どっからどう見てもグリーンジュースだろ?」

「ぐりーんじゅーす~?」

「グリーン……グリーン……そうか!スイカか!」

 

バカか。スイカで緑なのは皮だけだ。せめてメロンって答えろよ。……まぁ、メロンにしては緑が濃いが。

 

「「いっただきま~す」」

 

ゴクゴクと飲む二人。そして、

 

「「に、にがぁ~ぁ!?」」

 

あまりの苦さにあの普段は眠そうな涼宮さえもが目を見開いていた。

 

「言っただろ?見た目はグリーンジュース中身は私お手製の青汁ってな」

「言ってないからな?」

「そうだったか?」

 

そして二人の反応を心底楽しんでいるようにみえる神戸。まぁ、オレも楽しんでいるが。

 

「……ねぇ、神戸さん。天原くん。グリーンジュース飲む?」

 

……こいつバカだ。ここで「はい、飲みます」って言うわけねぇだろ?

 

「ああ、もちろん飲むさ。なぁ、天原?」

「はぁっ!?」

 

コイツ何を考えていやがる……!何故ここで飲むという選択肢が取れるんだよ……!

 

「そんなに飲みたいんだね~しょうがないなぁ~」

 

そういいながらオレ達のコップに注がれるグリーンジュース(神戸特製青汁)。うわぁ……本当に緑じゃねぇか……。体に良さそうではあるが。良さそうではあるが……!

 

「に、苦ぁ~っ」

 

予想よりも苦い。あの二人が目を見開くのも納得だわ。

 

「ふぅ~やはり食事にはこれが必須だよな」

 

そう言って美味しそうに飲む神戸。

 

「「……ゑ?」」

「何だ天原に鹿野。その顔は。『お前味覚大丈夫か?』って顔してるぞ?」

 

それってどんな顔だよ。いや、合ってるけどさぁ。

 

「なぁに、何年も毎食後私はこれを飲んでいるんだ。いい加減慣れている」

 

賽ですか……。

 

「さぁ、天原。残すのは私が許さんぞ?」

 

アンタは鬼かよ。そう思いながらオレは奴のお手製ジュースを飲み干すのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

口の中に残る苦味。これに慣れるとか実は神戸は味オンチじゃないかと疑いながらオレは話を聞く体制になる。

 

「さて。昨日言った通り、とりあえず、今後の方針を決めたいと思う」

 

最初に口を開くのはもちろん熊沢である。もうオレ達のリーダー的ポジションだな。完全に。

 

「まず、現状分かっていることについて。まず、ここが何らかの、そして何処かの施設であること。俺たちは全員希望ヶ峰学園の新入生であること。ここまではいいな?」

 

オレ達は肯定の意味で頷く。

 

「よし。なら、順を追って整理していくぞ。まず俺たちは学園に入学。入学式の日の朝、登校中に意識を失う。誰か日にちや時間が違うやつはいるか?」

 

オレも確かに入学式の日の朝だったな……そこは一緒だ。

 

「そこで仮定だ。俺たち16人は、入学式の日の朝。何者あるいは何処かの組織に拉致されここに連れてこられた」

「はい」

「海部か。何か意見か?」

「意見というかアレなんだけど、多分組織じゃないかとウチは思う」

「根拠は?」

「根拠というか、個人の犯行にしてはみんな朝とかだし、それにウチらは容易かもしれないけど熊沢君やここにはいないけど古屋敷君を拉致するなんて個人だと難しくない?」

「確かに、みかりんの言う通りかもッス。それに分身を使わない限り16人を同じ日の朝に拉致するなんて無理ッスよ」

 

なるほど……確かに個人の犯行では無理に近い話だ。

 

「……でも不思議」

「何がですか?杉谷さん」

「……確かに体格の大きい熊沢さんや古屋敷さんもだけど、ボクは超高校級のスパイ。そう簡単に拉致されたとは思えない。もしそうなら相手はかなりのやり手のはず」

「となると……超高校級の犯罪者とかデスカ?」

「いや、超高校級の拉致師かもしれない」

「うわぁ……なんじゃその不名誉な称号は。さすがに引くぞい」

 

ノエルに鹿野……それはさすがに不名誉すぎるよ……。

 

「だがノエル殿や鹿野殿の言うことにも一理あるかもしれませんね。ただ、相手が高校生とは思えませんが」

「そうなると……元超高校級の犯罪者とか拉致師ですか?」

 

屋代。元をつけて大人にしてもその不名誉な称号は何とかならないのか?

 

「えぇー皆様。今、私たちが持っている情報では、おそらく何も見えてきません。全て憶測で終わってしまいます」

「確かにな。私たちは和合の言う通り、裏付けするものを持っていない」

「ならどうするの~?」

「まずは、この施設について調べてみましょう。何か分かるかもしれません」

「そうだな。そうと決まれば行動あるのみだ。午後1時にもう一度集まろう。異論はないな?それと、なるべく二人以上で行動してくれ。今の段階ではモノクマの動向が読めんからな」

「「「はーい」」」

 

こうしてオレ達は探索を始めることにした……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、オレは今、約束通り食器を洗っている。探索しろって言われたけど致し方なしだ。だって、約束だしな。……決して破った時が怖いわけでは無い。

 

「何か手伝ってもらって悪いな。和合。久保山」

「いえいえ、私は最初から一人に任せるつもりはありませんでしたよ?」

「そうですよ。食事係なのですから、後片付けまでやるのは当然ですよ」

 

……この言葉を今の神戸が聞いたらどう思うのだろうか。

 

「でも、三人も後片付けに必要はなさそうですね」

「なら、オレと神戸で夕食の後片付けぐらいはやるよ」

「そうですか。なら、朝食の後片付けはわたしと和合さんが。夕食の後片付けは天原さんと神戸さんが。という風に分担しましょうか」

「そうですね。昼食は、その時に応じて。ということにしましょう」

 

何か話がすんなりと決まったな。

 

「そう言えば、ここの食材って何日分あるんだ?量はあったがこっちは高校生16人分。いずれ尽きるんじゃないのか?」

 

ここで、皿を拭きながら思ったことを口にする。朝確認したら量はあった。それもかなりの。ただ、消費するのは高校生16人。普段では想像もつかないスピードで食材が使われるはずだ。

 

「それなら、心配ありませんよ?」

「どうしてだ久保山?」

「朝、モノクマさんがわたしと和合さんに、『ここの食材は無くなったら補充する』と言っていました」

「はい。それにモノクマ様は調理器具も壊れたり使えなくなったりしたら直接言ってくれれば補充してくれるそうです」

 

なるほどね。黒幕側としてはあくまでオレ達にコロシアイをして欲しいわけだ。だから、そのための環境は整えてやるって感じか……胸糞悪いな。まるで、黒幕の掌の上で踊らされているようで。

それから数分。オレ達は後片付けを黙々とこなして……

 

「よし、終わった。二人はこの後どうするんだ?」

「そうですね。わたしはもう少し食堂やキッチンを調べてみたいと思います」

「では私もお手伝いいたしましょう」

「じゃあ、オレはどこか他の場所でも調べて来るよ」

 

キッチンと食堂。うん。ここに三人も必要ないはずだ。

 

「なら、私たちが昼食は準備しましょう。ここを調べるついでに」

「そうですね。それが良さそうです」

「悪いな二人とも」

「いえ、そんなに凝ったものを作るつもりはありませんから、お気になさらず。あ、神戸様にも昼食は私たちが作ることをお伝えください」

「ああ、分かった」

「それに、調査する人数は多い方がいいはずですよ。ですから、調査頑張ってください」

 

二人に言われるようにしてキッチンを出る。すると……

 

「…………すや」

 

食堂で爆睡中の涼宮がいた。おいおい、今はこの施設(?)を調査中じゃないのか?

 

「涼宮。起きろ」

 

そういや、こいつ。寝ることが才能だったか?

 

「……むにゃ?あさ?」

「そうだが?」

「朝ご飯?」

「いや、さっき食べただろ」

 

どうやら、寝ぼけているらしい。……全く。呑気な奴だな。

 

「……すや……」

「寝るな」

 

軽く頬を抓って起こす。

 

「いたい」

 

そう言ってオレの手を払う涼宮。

 

「お前調査しなくていいのか?」

「ちょーさ?…………おぉ~そう言えばちょーさしないといけない気がしました~」

 

……いや、調査しろよ。何が調査しないといけない気がするだ。

 

「おんぶして~」

「何でだよ」

「ゆめを運んで~」

「自分で歩けよ」

「疲れて足が~」

「疲れてないだろ」

「……むぅ~ケチ」

「……はぁ。分かったよ」

 

そう言ってしゃがんで涼宮が乗りやすいようにする。

 

「ほら、乗れよ」

「わぁ~い」

 

そう言って乗ってくる涼宮。……こいつ軽くね?まぁ、身長を考えるとこんなものか。

 

「えへへ~大きいね~」

「お前に比べたらな」

 

全く……無邪気というか何と言うか。

 

「で?何処行くんだ?涼宮」

「どっか行こ~」

 

うわっ。超適当。それって一番困るやつじゃん。

 

「じゃあ、二階から捜索してみるか。な?涼宮」

「……すや……」

「寝るの早すぎないか!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結局オレ達は食堂のあった二階から捜索を始めたが、二階は食堂以外の場所が閉まっていた。おそらく使えないと言うことだろう。そう言うことなら仕方ないと諦め、朝使った方の階段の方へと歩いて行く。

 

「あれ?このシャッター……?」

「んにゃ?しゃったーがどうしたの~?」

 

目の前にあるシャッターは一階へと続く階段のすぐ隣にある。

 

「天原も疑問に思ったか」

「ん?」

 

声がした方へと振り返ってみると……

 

「ヤッホー二人とも。へぇ~その二人で動いてるんだね」

 

熊沢と海部がいた。

 

「そ~だよ~」

「というか、天原。お前……何で涼宮をおんぶしているんだ?」

 

うん。そりゃ気になるよね?

 

「こいつと探索しようと思ったらおんぶするのが最適なんだよ」

「……えーっと。ウチには分からなかったからもう少し分かりやすく……」

「涼宮が探索中だろうと寝るからな。はぐれたりトラブルが起きないための措置だ」

「そうか……」

 

そう言うと熊沢はオレの肩に手を置き……

 

「お前は超高校級の御()りだったのか」

 

などと言ってきた。はぁ?オレが超高校級の御守り?

 

「それはないない」

「いや、お前の正体はあらゆる可能性がある。……本当に御守りかもしれないぞ?」

 

それは……なんか嫌だ。性に合わないというかなんか嫌だ。

 

「良かったね涼宮。天原君は子どもに優しいみたい」

「えへへ~だからね~安心して寝られ……すや」

「あはは……こりゃ、天原君大変そう……」

 

いやいや海部。笑い事じゃないから。何なら今すぐ君と立場を交換しようか?

 

「そういや、二人は二階の探索か?」

 

話を探索の話に戻す。

 

「ああ、他の皆は基本一階へと向かったからな」

「そうそう。だから、ウチと熊沢君は皆が見ていない二階を探索することにしたの」

 

なるほど。賢い選択だ。

 

「でも、二階の設備って食堂しか使えないよな?」

「ああ。俺たちも確認したがそれ以外はシャッターが降りていたり、カギがかかって入れない」

「うーん。あそこには何があるんだろう……?」

 

三人で考えてみる……が、何も出てこない。そりゃそうか。ノーヒントであそこにある設備が何なのか当てられる方が凄いか。

 

「後、気になるのはこの目の前のシャッター。おそらく三階への階段だと思うのだが……」

「そこは俺も同感だ。だが、この施設を外から見たことない以上。何階まであるのかは予測がつかないな」

「そうだよね……でも、どうやったら開くんだろうね?この階段もだし、他の設備も」

「皆目見当もつかないな。何か特定の行動をする……とかか?」

「……ゲームじゃあるまいし……」

「うーん……?」

 

ダメだ。何故ここのシャッターが降りているか分からない。何故だ?何故なんだ…………?

 

「よし。俺と海部はもう少し二階を探索してみる。もしかしたら何かあるかもしれないし」

「そうだね。分かったよ。天原君達は?この後何処に行くの?」

 

オレ達か……。

 

「オレ達は一階へ行ってみるよ。そっちにも同じようにカギがかかった部屋があるかもしれない」

「そうだな……じゃあ、1時の集合には遅れるなよ」

「オッケー」

「じゃあ、天原君。また後でね」

 

二人と別れ階段を降りていく。……閉ざされているシャッター。一体……何のためなんだ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

階段を降りて、客室の方に行こうか体育館の方に行こうか迷った結果。体育館に行くことにしたオレと涼宮。その通路に……

 

「何か……おかしなものが多いな……」

 

今まで……というか、昨日はあまり気にしていなかったが、この通路には絵とか誰かの作品とか美術品(?)が置いてある。でもまぁ、

 

「センスが悪いんじゃねぇのか?モノクマの銅像とか……他にもいろいろと」

「……同感ですね」

「わぁっ!?……って、杉谷か……驚かすなよ」

 

突如隣に現れたのは杉谷だ。さすが超高校級のスパイ。隠密行動が得意というわけか……!

 

「わぁっ!」

「……何してんだ清田?」

「何で驚かないんッスかあまっち!なっつんのは驚いたのに!」

「気配でバレバレだ。出直して来い」

「……というか、ボクは驚かすつもりなかったんだけど……」

 

というか、この二人で組んでんのかよ。明らかに性格正反対だろコイツら。

 

「むにゃ。あまはらうるしゃい」

 

ぺシッという効果音が似合う感じで頭を叩いてくる涼宮。うるさいって……

 

「あ、ゆめゆめ起きたッスか?というか何であまっちが……?」

「食堂で寝ていた涼宮をオレが探索に連れてきた」

「きょ~せ~れんこ~されてます」

「……最低?」

 

おっと杉谷。それは誤解だ。オレは善意でやってるからな。

 

「……はっ!分かったッス!」

 

すると、何かが分かったご様子の清田。

 

「あまっちの才能……ズバリ!超高校級の御守りッスね!」

 

……あれぇ……?さっき誰かに言われなかったっけ?

 

「……なるほど」

「いやいや納得されても困るから!絶対に違うから!」

「……証拠は?」

「証拠?」

「……うん。天原さんが超高校級の御守りじゃない証拠」

 

グぬぬ……否定できる証拠がない……!

 

「なら御守りで決まりッスね。まぁ、自分はいいと思うっスよ!」

 

勝手にオレの才能が御守りにされる……まぁ、不明よりマシだけどさぁ……!マシだけどさぁ!

 

「……ところで清田さん」

「なにかな?なっつん」

「……この絵。誰がモデルなの?」

 

杉谷が指す絵。そこには、金髪に近いような感じのツインテールで、笑顔でモノクマの人形を抱き締める女の子が。…………え?誰?この人。

 

「はっ!こ、この人は……!」

「なんだ?有名なのか?」

「全く知らない人ッス!」

 

ガクッっと崩れるオレと杉谷。…………こいつから鹿野と同じバカの匂いがするぞ。

 

「でも、絵は上手いッスね。プロとかそういう人たちに描いてもらった感じがするッス」

 

……まぁ、上手くないとこんなところで貼り出されないだろうよ。下手なのに貼り出されたらそれはもうただの恥さらしだ。

 

「……上手い……の?」

「あれ?なっつんにはこの絵の上手さが分からないッスか?」

「……うん。あまり、こういう絵とか全然分からないから……」

「なら自分が今度教えるッス」

「……いいの?」

「もちろんッスよ!」

 

盛り上がる杉谷と清田。こうなるとオレはもう蚊帳の外だな。

そう感じとったオレは二人にバれないように体育館通路を後にするのだった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

体育館に入ったオレ。そこでは……

 

「何やってんだ?柴。荒川」

「天原も来たのじゃな」

「おお、天原殿か」

 

いや、先ずオレの質問に答えろよ。

 

「うむ。ここの体育館の窓には鉄板があって脱出が不可能ということが分かったのじゃ」

 

……ふーん。で?見りゃ分かるだろ。

 

「モノクマが現れた演説の台にも仕掛けはなかった」

 

……ふーん。で?

 

「で?君たちは何でボールとかたくさん出してるわけ?」

 

オレが見える限りではバスケットボール、サッカーボール、野球ボール、テニスボール、卓球の球、バドミントンの羽……何でこんなものが?

 

「ふむ。それがのう。体育館の倉庫の中に入っていたのじゃ」

「体育館倉庫?」

「なら、天原殿付いて来てくれ。案内する」

 

そう言って二人に案内され、緑色の扉の中に入る。するとそこには……

 

「うわっ。普通の体育館倉庫じゃん」

 

特に変哲のない体育館倉庫があった。

 

「というか、色んな物がおいてあるな。何でこんなに用意したんだ?」

 

そこにはバレボールの支柱から、卓球台から、マット、跳び箱、ボクシンググローブそしてミニサッカーゴールまで……普通の体育館倉庫にしては品揃え豊富だな。

 

「コホン!それについてはボクから説明しよう!」

 

すると、呼ばれていないのに出てきたモノクマ。それに対してオレ達の反応は……

 

「帰れ」

「呼んでないぞ」

「また今度な」

「オマエラ酷くない!?」

 

上から柴、荒川、オレの順である。

 

「というか、いきなり現れてやったのにノーリアクションかよ~つまんない人間共だな!」

 

何かぬいぐるみにつまらない人間と言われた。ぬいぐるみに言われた。ムカつく。

 

「で?モノクマさんよ。さっさと説明しろや」

「うぷぷ。天原クン。そんな言葉遣いじゃ、超高校級の御守りへの道はまだまだ遠いよ!」

 

このぬいぐるみ野郎。監視カメラでオレ達の会話聞いてやがったな。

 

「あーだから涼宮をおんぶしていたのじゃな」

「何か自然過ぎて気付かなかったわ」

 

そしてお前ら。なんだよその反応は。というか、涼宮を背負っているのが自然ってどういうことだわ。

 

「コホン。ではではオマエラの為に何故無駄に体育館が広いのか。何故無駄に体育館倉庫が充実しているのか説明してあげよう」

 

そしてぬいぐるみ。テメェは上から目線で物言うのをやめろ。

 

「いいかい?健全な高校生たるもの。時には運動も不可欠なにです!それにこんな閉鎖空間で発散する場がなければイロイロと溜まっちゃうでしょ?」

 

ニヤつくモノクマ。ああ、確かにそうだな。テメェへの怒りとかこの環境へのストレスとかテメェへの怒りとかな。

 

「おい、モノクマ。サッカーやろうぜ!」

「おぉ。天原クン……そんなにボクとの仲を深めたいんだね!」

「お前ボールな」

「天原クン!人を何だと思ってるだよ!」

「お前クマのぬいぐるみだろ」

「どっちにしろボールじゃないよ!」

 

どうやら、オレとモノクマも反りが合わないらしい。……まぁ、逆に合ってもどんな反応すればいいかわからないが。

 

「まぁまぁ、天原殿。冗談はそれぐらいで」

「そうじゃぞ。モノクマに暴力行為をしたらワシらが校則違反で罰せられるぞ」

 

止めに入る荒川と柴。まぁ、今のはさすがに冗談だ。

 

「冗談はおいといて、モノクマ。一つ聞く」

「何さ天原クン」

「……お前は姑息な事しないよな?」

「姑息な事?」

「例えばサッカーのシュートを撃った時にシュートコースにワザと現れて暴力行為だとかな」

「そんな小物くさい事するわけないじゃん。ボクはそんな小さなことをしてオシオキをして優越感に浸るほど小物じゃないよ」

「……今の言葉。聞いたからな?」

「ボクも確かに言ったからね?」

 

これで言質は取った。ククッ。面白いこと考えた。

 

「じゃあ、ボクは行くね」

 

そう言って消えるモノクマ。

 

「じゃあ、オレ達も別の場所を探索してくるよ」

「うむ。ワシらはもう少しここを探索しておる」

「ここは柴殿と吾輩に任せてくれ。隅々まで調べよう」

 

そう言ってくれた二人に後を任せ、オレは体育館を出ていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

通路を通ったが特に杉谷とか清田とかに鉢合わせることなく、そのまま倉庫に入っていった。

 

「何だお前らも来たのか」

「キョウヤサン。それにユメサンモ」

 

倉庫には神戸とノエルの二人がいた。

 

「で?ここには何があるの?」

「ああ、一言で言えば多種多様な物がある」

「…………はい?」

「ノート、スケッチブック、シャーペンなどの文具セットから拳銃、ナイフ、改造スタンガンなどの人を殺せそうなものまであるってことだ」

「うわぁ……物騒だな」

「でも、キョウヤサン。マイクもあったんですヨ?これで歌が歌えマス」

「それは良かったね」

 

……何なんだこの置いてあるものの多さ。そう言えばモノクマはオレたちにコロシアイをさせたいんだっけ?なるほどそういうことね。

 

「ところで天原。お前涼宮を背負ってるようだが、まさかお前の才能って――」

 

はいはい。超高校級の御守りって言うんでしょ?さすがに分かってますよ。二度あることは三度あるって言うしね。いや、もう三回ぐらい言われたか。

 

「――超高校級のロリータコンプレックスなのか?」

「誰がロリコンだコラ!」

 

というか、略さず言うなよ!もっとストレートで分かりやすく言おうよ!

 

「お前」

「こいつ!何のためらいもなく言いやがった!」

 

こいつの中でのオレの評価ってどうなってるんだろうか?甚だ疑問である。

 

「まぁまぁ、落ちついて下サイ」

 

制止に入るノエル。というか、思ったが……

 

「ノエルって、背が高いし、スタイルいいよな」

「へ?あ、ありがとうございマス?」

「神戸って、ノエルと並ぶと子供っぽく見えるよな」

「天原。それは私への挑戦と受け取っていいのか?」

「いいや?事実をありのままに述べただけ」

「よし。その喧嘩買った。表に出やがれ」

「まぁ、外には出られないみたいだけどな」

「二人トモ!今は喧嘩はダメデス!」

 

ノエルの制止が入る。ッチ。さっきの仕返しなのに……。

 

「今は仲良くしましょうヨ。ネ?」

「「こいつとは無理だ」」

 

綺麗に声が重なるオレと神戸。どうやら思ってることは同じらしい。

 

「Oh……これが犬猿の仲ってやつですネ……」

 

お、ノエル上手い。

 

「やれやれだ。そういや、神戸」

「何だ天原」

「昼食は和合と久保山が作るって言ってた」

「そうか……何かあの二人に任せるのは悪いな」

「まぁ、それはな」

「そうだ。当番制にするってのはどうだ?」

「当番制?他の奴らも巻き込むのか?」

「違う違う。朝食は私たち四人で。昼食はあの二人。夕食は私たち二人で作る。これならアイツらだけに負担は大きくないはずだ」

 

なるほど。確かに、こうやって分担すればいいかもな。一番作る量とか大変そうなのをオレと神戸が受け持ってあの二人を少しでも休ませるというのは。……それだったら、朝食をオレ達二人が受け持った方が良くないか?まぁ、どっちでもいいけどさ。

 

「じゃあ、会議の時に和合たちに言っておくか」

「そうだな」

 

そうと決まれば何を作ろうか考えないとな。うーん……。

 

「お二人は凄いですヨ。料理も出来て羨ましいデス」

「そんなことないよノエル」

「そうだ。ノエルにだって料理が出来るようになる。やろうとすればな」

「そうでしょうカ?」

「だって、ここの勉強バカにも料理ができるんだぜ?ノエルも必ずできるようになるさ」

「そうだ。そこのロリコン野郎にも料理は出来る。お前も絶対出来るさ」

「そうですネ……今度挑戦してみたいデス」

 

やる気になったノエル。そんなノエルを尻目に……

 

「おい天原(ロリコン)。誰が勉強バカだ」

「そんなこと言ったら神戸(勉強バカ)。誰がロリコン野郎だ」

「貴様。勉強バカになるほど私はバカじゃない」

「そんなこと言ったらオレがロリコンなんてあり得ないだろ」

「何ですぐに言い争うのデスカ!?」

 

この後、オレと神戸が言い争い、ノエルが止めようとしても止まらず、結局涼宮が起き、オレの頭を叩くまで続いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何だアンノーン。俺の顔に何かついてるのか?」

 

個室のある方に向かう途中。オレは古屋敷に遭遇した。

 

「ま、まさか、古屋敷までもが探索しているとは思わなくて……」

「探索だと?くだらん。俺はこの地図が正しいか検証しているだけだ」

 

そう言って見せてきたのは施設マップの欄だ。

 

「ただ、この地図には不備がある」

「不備だと?」

「例えばこの部屋とか。カギが開かない部屋はこの地図には載っていない」

 

なるほど……そう言えば二階のところには食堂しかないしな。開かない部屋とかはいくつかあったのに。

 

「じゃあな。俺は行く」

 

去ろうとする古屋敷。

 

「その前にいいか?」

「……何だ?」

「……今日の13時に食堂に来てくれ。今後の話をしたい」

「……それは16人でか?」

「ああ」

「フンッ」

 

そう言うと本当に去っていく古屋敷。……クールというかドライというか興味なさそうだな。

 

「全く。ああいう奴は困るな」

「ああ、同感だ……」

 

白数の言葉に頷くオレ。ああ、本当にああいう一匹狼タイプは――

 

「――って、ちょっと待て。白数。お前も人のこと言えねぇからな?」

「我か?まぁ、確かにそうだな!」

 

何でお前はそんなに偉そうなんだよ……

 

「でも、我にはそんな会議に出る意味を感じないのだが?」

「意味を感じないって……」

「まぁ、気が向いたら顔ぐらいは出してやってもいいが」

「だから何でそんなに偉そうなんだよ……」

 

何故だろう。この男は何かがおかしい。

 

「さて、我は行くぞ?」

「何処に?」

「どこかに」

「あ、そうですか」

 

そのまま歩いていく白数。現状、白数と古屋敷はオレたちと協調する気がない。……はぁ。何でこんな訳の分からない状況で纏まることができないのだろうか……。

 

「いや、これが普通かも知れないな」

 

そう思うことにしてオレは個室の方に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うーん。どうやっても入れないね……」

「それはそうだと思うよ?」

 

自分の個室の方に向かって歩いていくと、ある部屋の前で腕を組んで立つ鹿野と呆れる屋代が居た。

 

「どうしたんだ二人とも?自分の個室なら入ればいいのに……ってこの部屋オレの部屋じゃねぇか」

 

二人の立っていた目の前の部屋はオレの部屋だった。

 

「おい、鹿野。お前の部屋は隣だろ?」

 

どう考えてもアマハラキョウヤと書かれたネームプレートがこの部屋の扉についている。カタカナで書かれている以上鹿野が読めなかったわけではないと思うが……。

 

「いやね。天原くん。僕は考えていたんだ」

 

そう言って鹿野は自分の考えを口にする。

 

「……どうやってこの部屋に侵入するかを」

「よし。貴様を警察に突き出してやろう」

 

何でこの男は真面目に人の部屋に侵入することを考えているんだよ。

 

「わわ、ま、待ってよ。これには訳があるんだ」

 

言い訳を始めようとする鹿野。いや、人の部屋に不法侵入しようと考えている時点でアウトだから。

 

「分かった。言い訳を聞いてやる」

「実は「女子部屋に侵入するための方法を考える」ためなんだ!って屋代さん!?それじゃあ僕がただの変態になってしまうよ!」

 

……こいつ。バカだけじゃなくて変態でもあったのか……。

 

「はぁ……いいか?鹿野。精神年齢が五歳児でも、身体や戸籍上は高校生だ。そんなことしたら捕まるぞ?」

「いや知ってるからね!そこまでバカじゃないから!」

「「「え……?」」」

「何で三人してそんな意外そうな顔ができるの!?」

「だって、鹿野だし」

「はい。鹿野くんですから」

「かのだからね~」

「何その評価!まだ会って一日経ってないよね!?」

 

出会った時間は関係ない。ただ、一日経たなくともお前の性格は大抵わかったということだけだ。

 

「……って涼宮さん!?何で天原くんの背中に!?」

 

……うん。久しぶりに聞いたわこの反応。やっぱこれが普通――

 

「まさか天原くん!こんないたいけな少女を誘拐していたのか!」

「なわけあるかい」

 

――やっぱ、こいつはバカだ。

 

「あまはらはね~とても優しいんだよ~」

「良かったね涼宮さん。天原さんがいい人で」

「えへへ~」

 

どうやら、涼宮は起きたらしいな。

 

「ところで鹿野と屋代。部屋を調べてたのか?」

「うん。でも、防音性に優れていたこと以外割と普通だったよ?」

 

……お前の部屋には監視カメラがあって窓枠に鉄板が打ち込まれているのか?お前は実は囚人か?

 

「あ、後女子と男子では部屋の作りに違いは無かったですよ」

「そうか……ん?防音性に優れているといったよな?」

「うん。そうだけど?」

「なら、夜にランドリーを使っても迷惑にはならないな」

「ら、らんどりー?」

 

おっと。この鹿野の反応はもしや、ランドリーを知らないのか?

 

「……ねぇ鹿野くん。ランドリーでまさか通じないわけがないよね?」

「も、もちろんわかってるさ!」

「じゃあ、説明してみろ」

「え、えーっと、ランランってトリがダンスをするところだよね?」

 

………………こいつ高校生か?実は体は高校生、中身は五歳児とかいう裏設定ないか?

 

「えぇーい皆して僕をバカを見る目でこっちを見るんじゃない!」

 

よくわかってるじゃないか。

 

「そうだ!涼宮さんも分からないよね!?」

「洗濯をするところ~洗濯機があるはず~」

「……なぁ鹿野。今どんな気持ち?」

「……ちょっとショックを受けた気持ち」

 

……哀れなり鹿野和馬。

 

「そうだ。この機会に洗濯しておくか。溜め込むと面倒だし。まだ時間はあるよな?屋代」

「あ、うん。一応あるよ?」

「ちょっと洗濯物を取ってくるわ」

「あ、僕も」

 

そう言って部屋に入る。あ、

 

「机の上にメモ帳があったな。一応メモしておくか……」

 

何となく一番下のメモ用紙に書いておくか、

 

防音性〇

部屋の鍵〇

 

……よし、行くか。

その後、オレ達四人はそれぞれの洗濯物を持って行き洗濯機を動かした。まぁ、若干二名程洗濯機を動かすのに時間がかかったり、洗剤の量を間違えたりいろいろやらかしたが……。

そんなドタバタを終えると丁度いいくらいの時間だったのでそのまま四人で食堂に向かうことにしたのであった。


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