ダンガンロンパ インフィニティ 作:アカツキ
そして午後一時。オレたちは報告も兼ねて食堂に集まっていた。
「これで、14人……仕方ない。定刻となったし始めようか」
オレたちは和合と久保山の作ってくれたサンドイッチを片手に会議を始めようとしたその時、
「これで16だ。司令塔」
「うむ。我らで最後だな」
声のする方に顔を向けると、そこには食堂の出入り口に立つ古屋敷と白数の姿が。
「二人とも……!」
「フンッ。そこの御守りがどうしてもというから来てやっただけだ」
「御守りってオレのことか!?」
「貴様以外に誰がいる。元アンノーン」
「誰だ!誰がそんなことを言った!」
食堂に集まったメンバーを見渡すとほぼ全員がオレと目を合わせようとせず顔を背けた。背けなかったのは涼宮と和合と久保山と……
「なんだロリコン。私の顔を見るなりため息をついて」
神戸だった。
「……テメェ……後で覚えとけよ……勉強バカ」
「はぁ。俺に教えてきたのはぬいぐるみだ。御守り」
「あのクマ野郎の仕業か!」
あのクマ……!自分が安全圏にいるからって調子に乗りやがって……!
「そんなことより司令塔。さっさと話を進めろ」
「そうだぞ。我だって暇じゃないんだ」
……一番協調性ない君たちがそれを言っちゃったよ。
「じゃあ、まず各自報告があるものから言っていくことにしよう。まず二階を探索した結果だが……」
「うん。ウチらが調べた限り、この階で使えるのは食堂だけみたい。後はシャッターが降りていたりして入れなかったり鍵が開かなかったよ」
やっぱり、開かなかったか……となると二階で使えるのは食堂だけということか。
「それに、階段のところにもシャッターが降りていたから少なくともここは三階以上の建物だと思う」
謎だ……施設の規則ではこの施設を調べることは自由。だが、いまのオレたちでは調べられない場所もある。一体そこには何があるというんだ……
「そうでございますね。二階で唯一使える食堂を調べた結果色々と分かりました」
そう言うと和合と久保山が食堂について調べた結果を報告する。
「そうですね。まず、ここの食材はモノクマさんが補充してくれるそうです。冷蔵庫や冷凍庫も大きくかなりの量も入りそうです」
「それって飲料もか?家政婦」
「はい。元々あるのに加えて希望すれば用意すると言っていました」
なるほど。食の面では十分。飢え死にさせるつもりはなしというわけか。
「後は食器がそれぞれ16人分ずつあったことでしょうか」
「16人分ずつ?」
「はい。小皿にティーセット、グラス、箸、スプーンやフォークなど全て16人分ずつ用意してありました」
……本当に用意周到というか何と言うか……。はっきり言って怖いぐらいだ。
「分かった。ありがとう。じゃあ、次は……」
「ワシらから話そう」
そう言い出したのは柴だ。という事は体育館についてか。
「吾輩たちは体育館について調べた。まぁ、体育館の広さは昨日集まって見てもらった通り、普通の学校の体育館より少し広いかな程度。体育館倉庫には様々なスポーツ用の道具が置いてあった」
そこまでは、知っている。確かにここの体育館は少し広い。まぁ、運動出来る場所が広いのはありがたいことだ。
「後はワシらが調べた限り開かなかった扉が三つ。こじ開けようとしたが無理じゃった」
開かなかった扉……か。
「後は窓があると思われる場所の鉄板。あれも壊すことも外すこともできなかった」
「熊沢よ。体育館は以上かのう。あまり役に立てそうな情報がなくてすまないのじゃ……」
「そんなことないさ。これだけ分かれば充分だ。ありがとう」
体育館にも開かなかった扉。どうやら、この施設は調べれば調べるほど色んな物が出てきそうだな……。ただ、調べられればの話だが。
「ところで、イラストレーター」
「何ッスか?けんけん」
「……けんけんだと?」
「はいッス。古屋敷賢人だからけんけん。いい呼び名でしょ?」
「くだらん。人の名前ぐらいしっかりと呼んだらどうだ?」
……それ君が言っちゃう?君も人のこと名前で呼ばないよね?
「……そんなことより、古屋敷さん。清田さんに聞きたいこととは何ですか?」
「ああ。そうだったなスパイ。イラストレーター、あの体育館通路の置きものや絵は何なんだ?貴様は美術系の才能だ。何かわかるんじゃないのか?」
「何なんだと聞かれても困るッス。作者不詳製作意図不明何ッスから」
「……でも、ボクはあの絵とか結構うまい人が書いたと思う」
それは、オレも見て感じたよ。
「そうッスね。後は銅像を動かしても絵を回転させても何も仕掛けが発動しなかったッス」
「……本当に何のためにあの美術品たちはあそこに置いてあるんだろう。不思議」
いやいや君たち。それで、おかしな仕掛けが発動されても困るからね?主にオレたちが。……まぁ、それが脱出につながればありがたいがそんなこと、あのモノクマというか犯人たちがするわけがない。
「そうか……体育館の方も目ぼしい発見は無しか……」
「先に言っとくが私とノエルの調べた倉庫には脱出できそうなところはなかったぞ」
「お役に立てず申し訳ありまセン……」
堂々と言い切る神戸と申し訳なさそうに言うノエル。
「でも、マイクとか使えそうなモノも沢山ありまシタ」
「へぇ~例えばどんなものがあったのノエルさん」
「そうデスね……スケッチブックなどの文具セットから、懐中電灯などの非常時セット後は……」
「スタンガンとか凶器となりそうなモノも多くあったぞ。まぁ本当に多種多様だな」
スケッチブックと聞いた時には清田の目が輝いたが、凶器という単語が出てきた瞬間、みんなの表情に陰りが見えた。やはり、ここはモノクマによって作られた閉鎖空間内でコロシアイをさせようとしている場なのだと痛感する。
「後は、備品のチェックリストなるものが存在していなかった作っておいた方がいいかもしれない」
そう言うと言い終えたということで熊沢に進めろという感じの空気を出す。古屋敷や白数があからさますぎるが、神戸も協調性という観点で言えば低そうだな。まぁ、オレが言えたことでは無いが。
「そうだな。今後のためにもこの後何人かの面子を募ってリストを作成した方がよさそうだな」
凶器もあるんだ。なくなってても分かるようにしておいたほうがいいだろう。念のためにな。
「後、報告がある人はいるか?」
「あ、僕らから一応」
「うん。部屋とランドリーについてだね」
「部屋は防音性に優れていたのと不法侵入ができなさそうってことかな。防犯面はいいね」
……まぁ、マスターキーを持っていていつでも誰の部屋にでも侵入できそうなクマを知ってるけどな。でも、別に言う必要性はないだろう。
「ランドリーには16台の洗濯機が置かれていた。説明書や洗剤、カゴとかも近くに置かれていたよ。今使ってみているけど、普通の洗濯機と変わらないと思う」
「なるほど、あの音は洗濯機を回す音だったのか」
「あれ?白数くんもランドリーに居たっけ?」
「いいや?我は廊下を歩いていたが、まぁ、音の正体が分かってよかったな」
なるほど。廊下は音が聞こえるのか。まぁ、ランドリーは部屋というかそういうスペースに近い感じだったし当然か。
「これで以上か……この後は各自自由。調理担当。夕食は何時にする?」
「ああ。じゃあ、19時ぐらいでいいか?」
「分かった。なら、それまで解散だな。後、さっき言ったように倉庫や体育館の方の倉庫も備品リストを作りたい。協力してくれる人は俺と来てほしい」
わぁー熊沢って、司令塔というか、キャプテンとかリーダーだよな。完全に。
あれから、流れ解散になったオレたち。オレと神戸で夕食を作る旨と当番制という提案を和合と久保山に伝えたところ、二人とも快くオーケーしてくれた。それに加えて、大変だったら手伝うとも。何ていい人たちだろうか。どこかの勉強バカとは大違いだ。
熊沢以下鹿野、柴、荒川、和合、久保山、屋代、ノエルの計八人は、倉庫の備品チェックリストの作成に行った。残った面子はと言われるとまぁ、各々に過ごすそうだ。オレは15時半に食堂に来ることを神戸に言われたので後二時間ほど、何して過ごそうか部屋で横になりながら考える。
「大体三十分ぐらいしたら洗濯が終わるはずなんだよな……」
そしたら、洗濯機から洗濯物を出して……あ、干す場所どうしよう。まぁ、クローゼットの中にハンガーがあったし、部屋にあるシャワー室でいいか。あそこにある突っ張り棒になら掛けられるだろう。
「考えても仕方ない。暇つぶしに体育館にでも行くか」
八人ほどが倉庫でワイワイやってるのを尻目にオレは体育館に到着した。
ザスッ
体育館につくとバスケットボールがゴールリングをくぐるのを目にした。お、ナイスシュート。誰がやってるのを見てみると……
「なんだ。杉谷に海部か」
「……天原さん」
「天原君も運動に来たの?」
「何となく時間つぶしにな。二人は?」
「……運動した方がお腹がすくから」
「こんな空間に閉じ込められているから。運動したくて……ね」
なるほど。杉谷はともかく、海部は運動部だったか。
「本当はプールや海で潜ったりしたいんだけどね」
そう言えば彼女はダイバーだったな。水に潜れないのは彼女にとってはこの環境は酷なのだろう。
「二人とも運動神経よさそうだよな」
「……運動神経の悪いスパイはカッコ悪い」
「腐っても運動系の才能。運動神経はいい方だと思ってるよ」
確かに言えてる。この二人はおそらく女子の中では運動神経がいい方なのだろう。
「……ところで、涼宮さんは?」
「そうそう。彼女はいないの?それか、鹿野君」
「あの二人とセットで考えるな。涼宮はどうせ寝てるだろうし、鹿野は倉庫にいる」
やれやれ、何故セットで考えられてしまうのか。
「さて、オレは観戦でもしてのんびりするか」
「……やらないの?」
「別に。運動しに来たわけでもないし、どっちでもいいよ」
「やって見たら天原君。もしかしたら、超高校級のバスケットボール部かもしれないよ?」
……なるほど。散々御守り御守り言われたが、オレの才能は結局のところまだ不明。出来るものから試すのも悪くはないな。
「じゃあ、やってみようかな」
「……でも、その服と靴でやるの?」
そっか、オレの服装ってブレザーというか制服だわ。
「確かにネクタイは危ないから取っておくか」
「いや、制服でバスケやるのが問題でしょ」
「そうか?」
ブレザーとネクタイを取り、上をカッターシャツだけにしておく。
「別に問題はないだろ。というか、靴って……あれ?二人はそんな靴履いてたか?」
「ううん。体育館倉庫に十六人分あったよ?しっかり誰のか分かるように名前付きで」
「じゃあ、ちょっと取ってくる」
倉庫に向かい割と手前のほうに体育館シューズと呼ばれるものが並んでいた。あれ?こんなの置いてあったっけ?まぁいいか。とりあえず、オレの分のを履くがこれまた綺麗にサイズが合うやつだった。モノクマはこういうところが変に意識されてるというか何と言うか。アレは何がしたいんだ?
「……閃いた」
「何を?」
「……天原さんの才能の絞り方」
「ほう」
「……ボクたち二人と勝負して勝ったら運動部系とか身体を動かす才能。勝てなければ少なくともバスケ部では無い」
「なるほど。そして運動神経がなければ運動系の才能でもない。杉谷って賢いんだね」
「よし。じゃあ、やってみるか」
かれこれ一時間ほどやっただろうか。予想通り……というか、予想以上に二人の運動神経は高かった。流石超高校級だ。オレ一人では二人と互角に相手するのが精々だった。三人で食堂に移動し、スポーツドリンクを取り出して一気に飲む。
「……運動の後の一杯は最高」
「そうだよね玲奈ちゃん。疲れた身体に染みわたると言うか何というか」
この一時間で、この二人の仲は少し進展したようだ。まぁ、一緒に汗をかけば仲も深まる……って運動部の青春かよ。
「……天原さん強かった」
「ほんとだよ天原君。何であんなに強いの?」
「さぁ、オレにはわからん」
特に才能に関する記憶のないオレにとっては、あ、自分ってこんなに動けたんだ程度にしか思わなかったけど。どうやら、相手をした二人から見ればオレは強いらしい。
「……でも、これで文化系の才能はなそう」
「ほんとだよ。これで超高校の読書家とか言われたら笑い物だよ」
「案外そうかもしれないけどな」
そう言うと二人はお互いを見合って笑う。まぁ、読書家は嫌だな。……何か神戸の才能と近い感じがするし。
「というか、二人も凄いな。やっぱ、スパイとダイバーだからか?」
「……物心ついた頃にはスパイになる特訓をさせられていた。だから、人よりは運動神経があると思う」
「物心つく頃からって……」
「……うん。一般教養も教えてもらってたし、スパイとしての心得?的なのも教えてもらった」
「玲奈ちゃんも勉強してたんだね……」
「……でも、ボクは必要以上のものを教え込まれていない。だから、弥香さんや天原さんの方が人としてはいろんな事を知ってると思う」
なるほど。だから、絵のうまさとかがイマイチ分からないのか。納得した。
「というか、記憶の欠如した人間に知識量で負けてることはないだろ」
「……そうかな?」
「そうだよ。多分」
そう思うとオレって、もし神戸みたいな才能だったらかなりの記憶が失われていることになるのか……何か嫌だな。
「大丈夫だよ弥香ちゃん。私もダイビングは詳しくても、勉強とかはイマイチだったから」
そっか、海部はダイバーだもんな。ダイビングに詳しくて当然か。
「でもダイバーって、学校にダイビング部でもあったのか?」
「ううん。学校では水泳部に入っていたの」
「まぁ、さすがにダイビング部はないか」
「でも、実家がダイビングショップで部活の友達とよく潜ってたんだよ」
なるほど。実家がダイビングショップか。さっきの杉谷もだし、各々の才能には親とか家族の影響もあるのだろうか。なら、オレの親は何をしていたんだろうか。…………ダメだ。思い出せない。才能が関わっているからなのか?
「……やっぱり、泳げないとダイビングって出来ないの?」
「そんなことないよ。泳ぐのとダイビングは違うからね。正しく器具を扱ったりすれば誰でも出来るよ」
へぇ~てっきり、泳げないとダメかと思った。
「……そういうものなの?」
「そうなの。そうだ。ここから出たら皆でダイビングしに行かない?」
「いいかもなそれ」
「……楽しそう」
「絶対楽しいよ!だって、海の中に広がる景色っていうのは凄いんだよ!」
「……でも、ボクなんかが……」
「海って言うのは誰もが入れるの!ダイビングするのに資格はいらないの!」
面白そうだな。ここから出たら是非ダイビングを一度、体験してみたいものだ。
その後軽い談笑をした後、オレたちはシャワーを浴びたりするためにそれぞれの自室に帰った。
シャワーを浴びた後、一つ重要な事を忘れていたことに気付いた。
そう。洗濯機から洗濯物を出してないことだ。
すぐにランドリーに向かうと、ランドリーには二人の人影が見えた。
「……やっぱり、鹿野と屋代か」
「あ、天原くんだ」
「天原くんも洗濯物を取りに?」
「まぁな。すっかりバスケやったり、話をしていて忘れていた」
「ぼくもついさっき思い出したところ。これから体育館で備品のチェックだけど、抜けてきたんだ」
「僕も屋代さんに言われるまですっかり忘れてたよ」
さすが鹿野だ。やはり記憶力も低かったか。
「というか、倉庫の方は終わったんだな」
「うん。何か色んな物が出てきて、こんなに時間がかかったよ」
現在は3時を過ぎたぐらい。つまり、8人がかりで一時間半もかかったんだ。きっと、あの倉庫にはかなりの量のモノが入っていたのだろう。まぁ、広さもそこそこあったしな。
「大変そうだったな」
「そうだよ。ところで天原くんは誰とバスケを?まさか一人で?」
「そんなわけないよ屋代。海部と杉谷の二人とだよ」
この言葉に屋代と鹿野の反応は違った。屋代は……
「あれ?涼宮さんや神戸さんと一緒ではなかったんですね」
いやいや、あの二人とオレをセットに考えるなよ。一方鹿野は、
「天原くん!君ばっかり何で女子と一緒に居るのさ!」
っと、軽い嫉妬心をむき出しにして言ってきた。ただな、
「お前の隣にいる奴は女子だろ?」
「……あ」
……お前は最低か。
「いいよ。ぼくなんて皆に比べたら可愛くもないし……」
「そんなことないよ!屋代さんも凄い可愛いと思う」
「ありがとね。お世辞でも嬉しいよ」
「なわけないだろ屋代。このバカにお世辞を言うだけの頭はない」
「そうだよ!僕にお世辞が言えると思ってるの!」
……どうしてお前は胸を張って言ってるんだよ……。
「うん。そうだね」
「というか屋代。思ったんだけど、お前って謙虚っていうか、自分が超高校級の生徒と一緒にいることに後ろめたさみたいなのを感じているよな?」
最初の自己紹介でも思ったことだ。何か自信がないって言うか……まぁ、普通の学校生活ならいざ知らず、今はコロシアイをしろとか訳の分からん状況だし、案外こういうのが普通なのかもな。
「……だって、皆ぼくなんかより凄い人ばかりだし……」
「別に誰もお前が幸運だからって下に見たりしてねぇだろ」
「でも……」
「なぁ、鹿野。屋代って凄いよな」
「うん!だってだよ!屋代さん僕よりも物知りなんだ!」
それはほとんど皆に当てはまるだろう。
「少なくとも僕みたいに超高校級のバカなんて不名誉な肩書きより幸運の方が絶対いいよ!」
「な?それにオレは不明だし。下手したらそこの鹿野より笑い物になる才能かもしれねぇしな」
「……ロリコンとか?」
「それだったら大爆笑だな」
「……ありがとう。もう大丈夫だよ」
少しは元気が出た様子の屋代。まぁ、流石にオレの才能は鹿野よりも笑い物になる事は無いだろう。……無いよね?本当に。
「ところで、二人とも」
「なんだ鹿野」
「なんですか?」
立ち止まる鹿野。やれやれ、今度はなんだ?
「さっきランドリーでこんなの拾ったんだけどさ。見覚えある?」
そう言って見せてきたのは一枚のコイン。
「さぁ?オレは分からん。屋代は?」
「ぼくは見覚えあるよ」
「え?」
「……というか既に何枚か拾った」
そう言って見せてくる何枚かのコイン。どうやら、鹿野の持ってるものと同じもののようだ。
「一体なんだろうね……」
呟く屋代。うーん。イマイチ分からん……ゲーセンで使うのか?いや、ここにはゲーセンなかったと思うし……
「コホン。お答えしましょう!」
目の前に現れたのはモノクマ。
「わぁっ!」
「で、出たぁ!」
鹿野と屋代は驚くような反応を見せる。対してオレは……
「さっさと説明しろ」
別に驚くことは無かった。いや、午前中に会ったばっかだし、いい加減慣れた。
「天原クンは何で冷たいのかな……まぁいいや。気をとり直して説明しましょう!」
妙にテンション高めに言ってくるモノクマ。このテンション面倒くせぇ。
「それは、モノクマメダルです」
「「モノクマメダル?」」
そう言ってメダルを見る二人。
「あ、モノクマの顔が彫られてる」
「全然気付かなかった……」
「で?このメダルの使い道は何だ?まさか、何の使い道もないただの記念メダルか?」
「そんな無駄なものボクが配るわけないでしょ?」
「さぁな?まぁ、この電子生徒手帳は割と便利だがな」
「そうでしょ。もっと褒めてもいいんだよ」
「はいはい。さっさと話を進めろ」
「そうだね。そのモノクマメダルを使って、モノモノマシーンを回すことが出来るのです」
ふーん。で?そもそもモノモノマシーンって何?
「あ、もしかして、モノモノマシーンって、ランドリーの近くにあったガチャガチャのこと?」
「その通りです!」
へぇーそんなのあったんだ。
「屋代さんよく見てるんだね……全然気付かなかった」
「最初使った時に偶然見つけたの。まぁ、鹿野くんと涼宮さんは洗濯機と戦ってたし、天原くんも二人に使い方を教えてたからね。気付いてなくても無理はないと思うよ」
「要するにガチャガチャを回すためのコインってことだろ?」
「その通りです!何が出るかはお楽しみ。少なくとも普通のガチャガチャなんかより出て来る種類が豊富ってことは施設長であるこのボクが保証します!」
保証ねぇ……全く当てにならねぇな。
「というわけで記念に君たちにメダルをプレゼント~。早速回してみたら?うぷぷ。じゃあね~」
そう言って三人に一枚ずつそのモノクマメダルとやらを渡してくるモノクマ。
「二人とも!一緒にガチャガチャをやりに行こう!ほら、善は急げってやつだよ!」
別に急がなくてもモノモノマシーンとやらは逃げないだろ。
「ぼくはいいけど……」
「悪い。オレはパスだ」
「何で?」
「これから神戸と夕食の準備を始める。メダルはやるからお前たちだけで遊んで来い」
「わぁーい。ありがとう」
メダルを渡すと喜ぶ鹿野。実に単純な奴だ。
「……天原くんって……やっぱり御守りなのかな?」
誰が御守りだ誰が。
「天原。悉く貴様とは意見が合わないな」
「そうだな神戸。オレもいい加減にして欲しいぐらいだ」
食堂にて、またも火花が散っているオレと神戸。
「お二人トモ……喧嘩はその辺にしたらどうでショウカ」
「「そんなわけにはいかない!」」
「Oh……どうしたらよいのでショウカ」
「放っておくのが一番だぞ。ノエル殿」
「で、デモ……」
「どうせ、天原殿と神戸殿のことだ。そのうち収まるさ」
何やらノエルと荒川が話しているがそんなの関係ない。
「夕食のメニューには肉料理にする。これは決定事項だ」
「何が肉料理にするだ。そんなのより魚を使うべきだ」
「おい天原。肉の方が好きな奴は多い。だから肉料理にすべきだ」
「神戸。誰が肉の方が好きだって言ったんだ?魚の方がいいに決まってるだろ」
「「ああん?」」
まさか、ここまで話の分からんやつだとは思ってもいなかった。
「ところで、リョウイチサン」
「何だ。ノエル殿?」
「何故食堂の方にいらしていたのデスカ?」
「ああ、おやつの時間だったのでな。ちょっと食べに来ていた」
「そうでしタカ」
「ノエル殿は?何故ここに?」
「ハイ。ワタシは料理を勉強しようカト」
「そうか。勉強熱心だな」
「ありがとうございマス」
「でも……あの二人から学ぶことが出来るのか?」
「それは……分かりまセン」
口論をし続けるが、一向に神戸は折れない。何て頑固な野郎だ。
「いいだろう。こうなればジャンケンだ」
「望むところだ。朝は負けたが今回は勝つ」
「ほう。言い切ったな」
「ああ、今回は勝たせてもらう」
今回こそ、オレが勝って夕食は魚をメイン料理にしてやる。
「ところで、魚と肉、両方使うのはダメなのでショウカ」
「なるほど。それなら天原殿も神戸殿も争わなくて済むな」
「「それは却下だ!」」
神戸と声を揃え、荒川とノエルの提案を却下する。
「何故デスカ?お肉もお魚も使われていて、いい提案だと思いマスガ」
「そうだ。二人が妥協すれば済む話だろう」
「「最初から妥協する戦いは嫌いだ!」」
「お前ら……子供かよ……」
「そう……デスネ」
こういう時だけはコイツと意見が合うな。本当に。
「おい天原。ただのジャンケンじゃつまらない。そうは思わないか?」
「まぁ、確かにな。ならどうするんだ?」
「心理戦アリで行こうと思う」
なるほど。心理戦アリか……
「何故わざわざ心理戦アリにするのデショウ」
「悪いが、吾輩にもこの二人の考えが分からん」
ハッハッハッ。君たちには分かるまい。
「乗った。じゃあ、オレはグーを出す」
「ほう。なら私はパーを出そう」
「じゃあ、行くぞ?」
「「最初はグー!ジャンケン、ポンッ!」」
「へぇ~夕食は魚がメインなんだね」
夜の7時になる少し前。時間に遅れないよう食堂にやってきた鹿野がそう呟く。
「これで14人。一応揃ったな」
「あれ?僕が最後?」
「そうだよまろく」
「あれ?古屋敷くんと白数くんはいいの?」
「お前らと一緒に食べる必要はない。とか言って先に自分で食べて戻っていったよ」
「そ、そうなんだ……」
「熊沢の言う通りだ。古屋敷も白数も大体6時頃食堂に来て、何か食べて戻ったよ」
やれやれ、本当にあの二人は協調する気がないと言うか何というか……
「とりあえず、食べましょうか」
「そうだな。じゃあ、いただきます」
熊沢の号令の下、一斉に食べ始める。今回のメニューは和食をイメージしている。炊き込みご飯に味噌汁。後はメインの焼き鮭に、おひたしときんぴらだ。
「おいしいね。天原くん」
「まぁな。てか、作ったのオレと神戸だし」
「というか、何で神戸さんは不機嫌そうな顔をしているの?」
そう。鹿野の目の前に座っている神戸はいかにも不機嫌ですって顔をしている。その空気には隣に座る熊沢と屋代も耐えられないのか、少し距離を取っている。
「……なんでもない」
「なに、単純な話だよ鹿野。ジャンケンで神戸が負けて今日の夕食の献立を決める権限を奪われたからだよ」
あの後話し合った結果。どうせ、他のメニューを決める時も反発するのだったら、もう勝った方が全部決めればいいってことになり、まぁ、オレが全部決めたってことだ。
「……クソ。まさか、この男が単純にグーを出すとは想定外だった……」
そう。あの心理戦を制したのはオレ。まぁ、オレは宣言通りグーを出したが、神戸が深読みしてチョキを出し、オレの勝利。やったね。
「あまはら~」
「何?涼宮」
「おさかなのほねとって~」
「……自分でやれよ」
「むぅ~だって~取りにくいもん」
「はいはい」
「わぁ~い」
ったく。仕方ねぇやつだな。
「ねぇねぇ天原くん」
「何だ鹿野」
「僕のお魚の骨も取ってほしいなぁ~って」
「自分でやれ」
「だって、取りにくいじゃん」
「知るか」
「対応が雑!?」
やれやれ、呆れた奴だ。
「……って、あれ?屋代さん」
「どうしたの?ぼくの顔に何かついてる?」
鹿野がオレの正面でご飯を食べる屋代に話しかける。
「いや、その魚の皿が綺麗だなぁって、骨はなかったの?」
「うん。ぼくの食べた部分は骨が一本もなかったよ」
「……これが超高校級の幸運の実力か……」
いや、たまたまじゃないのか?
「というか、鹿野」
「なんだよ天原くん」
「あらかじめ大きな骨は取ってあるんだ。別に小さな骨ぐらい食べても平気だろ」
「そっか、それもそうだね」
「だろ?あ、涼宮、取れたぞ」
「わぁ~い。ありがと~」
納得する鹿野。やれやれ、単純な奴で助かった。
「おい、天原」
「なんだ神戸」
「おかわり」
「いや、自分で行けよ」
「おかわり」
「だから、自分で……」
「お・か・わ・り」
「……仕方ねぇな」
奴から差しだされた茶碗を手にご飯を付けに行く。やれやれ、
「……そんなに食ったら太るぞ。ほら」
「あぁ?何か言ったかロリコン」
「いや、何でも」
はぁ。何というか、神戸って負けず嫌いなところがあるんだな。
「あ、天原くん。ついでにウチの分もおかわり」
「……え?」
「なら、俺の分も頼めるか?」
「……はい?」
「天原よ。ドリンクが切れたのじゃ。新しいものを持ってきてくれないか?」
「いや、あの……」
ちょ、ちょっと待ってくれ三人とも。いつから、オレはそんな役になったんだ?
「あ、吾輩の分もおかわりを頼む」
「ねぇねぇあまっち。デザートとかってあるッスか?」
「……そうですね。ボクも甘いものが欲しくなりました」
「キョウヤサン。ワタシの分の魚の骨も取ってほしいのデスガ」
加えて四人からのオーダー。
「ま、待て。何でそんなことをオレが――」
「天原」
すると、すぐそこに座る神戸から一言。
「口より身体と手を動かせ」
「「「うんうん」」」
うんうんって頷いてんじゃねぇよ!
「あーあもう!分かったよ!やりゃいいんだろやりゃ!要望のあるやつはさっさと言いやがれ!」
畜生!これじゃ、雑用みたいじゃねぇか!
この後、結局14人分のデザートを作ったり、神戸に扱き使われたり、涼宮と鹿野の面倒を見たり、神戸に働かされたり、色々とあった。
「結局、収穫なしか……」
既に時刻は夜の9時30分を回っていて、まもなく夜の10時だ。神戸と後片付けをしたり、シャワーを浴びたり、ああ、涼宮に洗濯取りに行くようにさせたり、うん。まぁ色々とやっていて、ようやく一心地付けたところだ。
「記憶もイマイチだしなぁ……」
ベッドの上で横になり、天井を見つめながら呟く。
朝からこの施設を探索したが、外へとつながる出口はない。それに、オレの才能に関する記憶はまだ何も掴めていない。
「というか、才能に関する記憶がないって割と重要だよな」
今更ながら置かれている状況の深刻さを知るオレがいた。
そう。才能に関する記憶がないということはこの生きてきた人生の下手したらほとんどの記憶を失っているかもしれないのだ。一番厄介なのは何処から何処までのどんな記憶を失っているかをオレ自身が把握出来ないことだ。オレは一体どんな記憶を失っているのか……
「そういや、記憶を失う前のオレって、どんな性格だったんだろうか」
今は何かこんな感じだが、元のオレって、どんな感じだったのだろう。体育会系の才能を持っていて暑苦しい奴だったのか?それとも、古屋敷みたいな、ボードゲーム系の才能を持っていた冷静な奴だったのか?どれも想像だし、正しいのか分からない。
ピンポンパンポーン
『施設長が夜時間をお知らせします。それではオマエラ。おやすみなさい』
考え事をしていると、気付けば夜時間突入か。考えても仕方ない。寝るに限る。明日も早いしな……。