ブルーモーメント   作:はじ

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去らばイ級!

「何で治らないの?」

 

工作艦の明石です。試作のS Kブースターで飛んで行ってしまった暁さんのペットのイ級ちゃんを探していたら遠征任務中の天龍さん達が戦艦ル級含む連合艦隊に襲われている場面に夕張と一緒に遭遇しました。無線で連絡後、天龍さん達と協力して半数を撃破までは良かったんですが、皆さん大破や中破で戦闘継続不可能な状況に追い込まれ、航行不可能状態の睦月ちゃんが魚雷に狙われた時いきなり現れたイ級ちゃんが睦月ちゃんを庇って轟沈寸前になってしまいました。その後増援の暁さんが来なければもっとひどい状況になっていたでしょう。その場は暁さんに任せイ級ちゃんを曳航して鎮守府に戻ったのはいいんですが傷が治りません。以前はこれで治っていたのですがどうしたらいいか分かりません。

 

「明石どうだ、治療できそうか?」

 

「分かりません、以前はこれで傷が治っていたんですが今回は治らないんです」

 

暁さんからの報告を受け日本全土にイエローアラートが発令され、各基地はスクランブル状態になりました。今の鎮守府にはほとんど艦娘がいませんが、皆さん暁さんのペットとはいえ深海棲艦が艦娘が庇ったという事例に驚きを隠せませんでした。しかし、総旗艦である吹雪さんに諭され心配そうにイ級ちゃんを見守ってくれています。あとは、私が頑張らないといけないのに手の打ちようがありません。自分の無力さに涙が出てきます。

 

「戻ったぞ、元帥状況はどうなってる?」

 

「全土にイエローアラートを発令したよ、各基地はスクランブルで哨戒に当たらせてる。今の所新しい情報は上がってきてないから、救援部隊は補給後待機してくれ。天龍達はドックへ、申し訳ないが、中破の四人はその後にはいってくれ。バケツの使用許可は出したから使ってもらってかまわない」

 

「了解。それでイ級はどうだ?」

 

「それが治らないんです。いつもはこれで治っていたのに今回ばかりはどうも出来ないんです」

 

「そうか・・・・・・でも最後まであきらめないでくれ、こいつは睦月を、仲間を守ってくれた。いや、俺達の立派な仲間の一人なんだ。バケツを使ってるから夕張もいずれ戻る。一人でダメなら二人、それでもダメなら俺も手伝う。といっても俺に出来るのは資材を集めてくる位だけどな」

 

「睦月も手伝うにゃ!この子は睦月を庇ってこんな目にあってる。だから助けるのは当たり前にゃしい」

 

「電も手伝うのです。電は敵でも助けたいのです。この子が仲間ならなおさら助けないといけないのです」

 

「私だって手伝うわ、ちゃんと頼ってよね!」

 

「うん、仲間なら助けないといけない。沈ませる訳にはいかない」

 

「お前達、俺はこのイ級を誇りに思う。過去は敵だったかもしれない、でも今は仲間を助ける為に身を投げ出す献身。そんなことを出来る奴を俺は知らない。そして、そんなこいつを仲間と呼んでくれるお前達に礼を言いたい、本当にありがとう!」

 

あの暁さんが頭を下げて睦月ちゃんと姉妹艦の三人に礼を言っています。私も含め周りで見ていた者達も驚きが隠せません。そしてこちらを向くと私にも頭を下げました。

 

「すまない明石、こいつを連れてきたのは俺だ。我が儘かもしれないがよろしく頼む」

 

あぁ~もぅ、こんなことになったらやるしかないじゃないですか!泣いてる場合じゃありません。やってやる!やってやるぞぉー!

 

「お任せください。最後まであきらめない!」

 

 

 

 

 

鎮守府に戻って来た暁だ。睦月や姉妹達がイ級を仲間と呼んでくれてすっごい感動してる。年を取ると涙脆くなるなぁ。明石もやる気になってくれたみたいだし、あとはイ級が元気になってくれるといいな。遠征もあいつが荷物係をしてくれるからいつもより多く持ち帰れるんだよね。俺にとってはいなくてはならない相棒だ。明石がいろいろとイ級の状態を見ながら治療をしている。俺は見守るしかない。

 

「暁お姉ちゃん、イ級ちゃんが!」

 

電がお姉ちゃんって呼んでくれた。嬉しいぞ。なんて考えてる場合じゃねぇ。イ級の身体が輝きながら透けてきたぞ。

 

「これでもダメなの!」

 

「イ級ちゃん!行っちゃダメー!」

 

睦月が泣きながらイ級にすがりつこうとするが身体をすり抜ける。

 

「あぁ・・・・・・ダメにゃしい。イ級ちゃん!」

 

イ級の身体から黄金色の光が溢れて明石と睦月ごと光に包まれてる。明石と睦月ごと?大丈夫か、明石、睦月!光が徐々に薄くなる中聞き慣れない声が聞こえた。

 

「睦月ちゃん、無事で良かった」

 

そこにイ級はいなかった。立ち尽くす明石と座り込んだままの睦月と見慣れない女の子。誰?

 

「貴方が私の司令官ですか?如月と申します。おそばにおいてくださいね」

 

如月?誰?それよりもさっきの光は?イ級はどうなった?

 

「如月ちゃん?」

 

「うふふっ、如月よ。睦月型二番艦の如月。睦月ちゃん、この姿で会えて嬉しいわ」

 

「まさか、そんな!」

 

何か知ってるのか元帥?それよりも睦月型二番艦って、今まで顕現してなかったはずだ。建造でもなくいきなり現れるとはどういうことだ?周りもポカンとしてるぞ。

 

「元帥!どうなってる?何か知ってるのか?」

 

「あ、あぁ、今まで仮説でしかなかったんだ。こうして目の前で立ち会うとは思ってなかった。詳しい話は執務室でするから、吹雪と暁、明石それと如月だったか?お前達四人は執務室に来なさい。他の者達はまだスクランブル中だ、待機の者はそのまま待機で、睦月や第六駆逐隊の三人はドックへ行きなさい。それではこの場は解散」

 

皆、納得いかない顔でぞろぞろと動き出したな。さて妹達は、睦月もか。動かないな。いや動けないってのが正しいか・・・・・・

 

「響、雷、電、睦月!あとで教えてやるから今は傷を癒してこい。」

 

「お姉ちゃん!分かったのです。睦月ちゃん、響ちゃん雷ちゃんも行こう」

 

電が最初に動いたか・・・・・・残りの三人もしぶしぶ行ったな。さて、俺も行くか。さっさとこのもやもやをどうにかしないと、イ級のことも聞かないとな。

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