「え~、暁が家出しました。なので暁がやっていた仕事の割り振りを行いたいと思います」
横須賀鎮守府打撃部隊旗艦の長門だ。家出?暁さんが?意味がわからないぞ。
「どういうことだ元帥?」
「私が理由は話します」
秘書艦の吹雪さんが元帥をマイクの前からどかして答えてくれた。
「まず前置きになりますが、この横須賀鎮守府は元帥が兼任で司令官をしています。私も大本営と鎮守府の両方の秘書艦をしています。本来であれば、大本営と鎮守府は分けるべきですが、皆さんがご存知の通り第二次妖精さんの乱以降、なかなか司令官を出来る人材を輩出できていません。その為この鎮守府は実質暁さん一人で回していました。それは元帥が建造を行わず、他の基地から艦娘を引き取るという考えに暁さんが賛同したからでもあります。これにより艦種も練度もバラバラなので、練度上げや連携等の出撃や遠征プランから鎮守府内の細々した生活に至る所の対処が必要になりますが、それを暁さんが対処してました。通常の基地で行う司令官業務よりも大変だったと思います。そしてここからが本題である暁さんが出て行った話です。まず、那珂さんのプロデュース業。これは大本営管轄でしたが元帥命令で暁さんが行ってました。そして先日の元帥の話であった特撮のシナリオを暁さんにやらせるというもので暁さんは申し訳ないがこれ以上の仕事は出来ないと辞表を出して出て行ってしまいました。誤解してほしくないので言っておきますが、皆さんがこの鎮守府に来たことは確かに暁さんの仕事が増える原因の一つと言えますが、私も暁さんも負担だとは思ってません。なぜなら暁さんは皆さんのことを家族だと言っていましたから、艦娘が家族なんておかしな話かも知れませんが家族の為の仕事だから大丈夫だとそう言って笑ってました。だから今まで頑張ってくれた暁さんに今回は長い休暇を楽しんでもらいましょう。そして暁さんが戻って来るまで全員で鎮守府を、家を守りましょう」
暁さん・・・・・・家族か!これは胸が熱いな。元大本営第一艦隊旗艦ではあったが暁さんに会って上には上がいると知ってこの鎮守府に移動希望を出したが正解だった。こんな気持ちになれるなんて思わなかったぞ。周りを見ても皆の雰囲気が変わったのが分かる。
「吹雪さん、我々に何でも命じてくれ。暁さんが戻るまでこの長門どんなことでもしよう!」
「ありがとうございます。これから各艦種の代表、各部署のメンバーに残ってもらい割り振りを行いたいと思います。軽巡や駆逐艦はこれから負担が増えると思いますがよろしくお願いします。それでは解散」
暁さんが行っていた仕事か、これで恩が返せるな!どんな仕事でもこなしてやる。ビック7の力、侮るなよ!
ようやく落ち着いた生活を始めた暁だ。今はのんびり釣りをしてる。晩酌用の肴を何匹か釣り上げた所なんだがな。
「おい、まるゆ!魚が逃げて釣りにならん」
「いつから気づいてたんですか?」
釣り針を水着に引っ掛けられたまるゆがぽちゃんと海から出てきた。まるゆ!捕ったどー!
「上から丸見えだ。気づいてなかったのか?」
「はい、全然気づきませんでした」
驚くだろう?これでもまるゆは海軍憲兵隠密部隊隊長なんだぜ。
「まったく。茶ぐらい出すから上がってこい」
「はい」
多分吹雪だよな。まるゆ一人を寄越したってことは戻って欲しいんだろう。まぁ戻らないけどね。姉妹のことは気になるがよほどデカイ戦いにならない限り心配ないだろう。それにまるゆが来てるってことは憲兵案件も落ち着いてるってことだから、心配すべきは先日の襲撃だな。わざわざ連合艦隊組んで来たんだ、威力偵察だろう。対潜装備がなかったのが痛いな。ソナーがあれば潜水艦の有無も確認出来たのに。準備だけでもしておくかねぇ。
「あ、あの暁さん。この部屋、大本営の執務室より立派なんですけど」
「家具職人妖精さん達に好きに作って良いって言ったらこうなった。それでここに来た理由は?」
「まず、ここのことは吹雪さん、あきつ丸さんと私しか知りません。吹雪さんにあきつ丸さんと二人だけ呼ばれてこの場所の事を教えてもらいました。元帥からは憲兵隊で捜索に当たるように言われましたが動いてるのは私一人です。ここに来た理由は吹雪さんから伝言です。とりあえず暁さんの仕事だった鎮守府関係は割り振りして行っています。それにより暁さんは各セクションの相談役になりました。あと那珂ちゃんのプロデュース関係は人間のマネージャーさんを付けて回しているので、曲関係だけお願いします。それと暁さんの現状は有給休暇で処理してます。一応2ヶ月ちょいありますが2ヶ月を目処にしてください。とのことです」
なんだかなぁ。知らないうちに昇格してるぞ。そんなつもりはないんだけど、静かに暮らしたいし。まぁ仲間や家族と決めた奴らは守るつもりだ。そう誓ったしな。
「戻るつもりはないんだがなぁ」
「そうなんですか?暁さんの姉妹の六駆の三人が落ち込んでましたよ。何も知らないで酷いこと言ってしまったって、それにそこにおいてある通信システムはたしか海軍の通信傍受用のものですよね。気にかけてるなら戻ってあげて下さい」
ぽわんとしてるようでちゃんと見てるんだな。それに今回のことはあいつらのせいじゃないしな。悪いのはすぐに調子にのる元帥だ。
「気にかかってることがある、吹雪に伝言頼めるか?」
「なんでしょうか?」
「先日の襲撃は知ってるな?」
「もちろんです」
「空母がいなかったんだ。戦艦を含む連合艦隊を組んでるにもかかわらずだ。生憎対潜装備を持ってるやつがいなかったから推測しか出来ないが、威力偵察だと思ってる。実際に戦闘をしたのは遭遇した遠征部隊と明石・夕張・俺だ。それと帰りに一航戦の二人に索敵と護衛で艦載機を出してもらった。救出部隊の速力なんかも見られた可能性がある」
「それって不味くないですか?」
「あくまで推測だが、救出部隊はまんま打撃部隊の面子だから装備関係の見直しと編成の変更まで考えておいて欲しい。それと、次の作戦が漏れてる可能性があるから気をつけろと伝えて欲しい」
「スパイがいるってことですか?」
「違う。敵は解放した近海まで来たんだ、あれが威力偵察ならもっと踏み込んできていた可能性がある」
「作戦内容が漏れていたからこその威力偵察ってことですね」
「そう考えておいて損はないだろう、それと持って返って欲しいものがいくつかある。まず妹達にこれを頼む。それとこれを夕張に渡してくれ」
「手紙と設計図?」
「カレー大会用のレシピだ、三人に渡してくれ。設計図は元帥にばれないように渡してくれ。外においてあるやつの改修案だ。元帥には見つけたけどこれおいて逃げられたとでも言っておけ」
「あれも持って返らなきゃいけないんですか・・・・・・」
あ、まるゆがちょっとへこんでる。コンテナみたいなもんだしな。改修後はもっとかっこ良くなる予定だ。カレーのレシピは俺が元の世界でバイトしてたカレー屋のものだ。今までのも人気のものだったが渡したレシピは一番売れてたもののレシピだ。料理が素人でも簡単に作れてなおかつ美味しい。辛さも調節ができ、トッピングも大抵のものは合う。スパイスの調合が面倒だがそれも比率でいける。カレー大会はなんとかなるだろう。三人も楽しんでくれるといいんだが。夕張に渡す改修案は機械設計の仕事をしていたからこそだな。それにしても設計図無しでも話だけで形にする妖精さんはなんなんだろうか?いまだにあの謎パワーが理解出来ない。何で燃料と鋼材、弾薬、ボーキサイトで艦娘が出来るんだ?うん、気にするだけ無駄だな。
「頼む。それと見つけた場所は東北だとでも言っておけばいい」
「反対方向ですね」
「あぁ、今はそれでいい」
「あっ、忘れてた。元帥からの手紙です」
正直いらない。今さら謝られてもむかつくだけだ。
「持って帰ってくれ」
「ふぇぇ、そんなこと言わないでくださいよ~、元帥も反省してましたから」
しょうがない。まるゆに免じて読むだけ読んでやる。
『てへぺろ(・ω<)』
「殺す!」
ぐしゃぐしゃに丸めてゴミ箱にダンクしてやった。今度会ったら絶対殴る。右ストレートでぶっ飛ばす。真っ直ぐ行ってぶっ飛ばす!よし一度殴りに戻ろうか!
「なぁ吹雪。ここに置いといた封筒知らない?」
「覚えてないんですか元帥?暁さんに会ったら渡してくれってまるゆちゃんに渡してたじゃないですか」
「あっ!こっちを渡そうと思ってたのに間違えた」
「えっ!・・・・・・元帥、内容は?」
「今の暁に見せたら俺が大惨事になるな」
「元帥、骨は拾って上げますからね」
「決定事項なの!」