空中で新崎の攻撃を受け、その勢いで地面に激突し、土煙が起きる。
「くっ、こりゃきついな…」
「こらこら、よそ見は厳禁だよ」
「危なっ!?」
体制を立て直そうとするも、空中から自分の所に向かって新崎の追撃が来る。それをなんとか回避し、距離を取る。さっきまで自分がいたところに、新崎の拳が当たり、そこから轟音が鳴り響、土煙が舞った。
「徹!無事か!?」
「兄さん!」
若葉と千景が自分が吹き飛ばされて出来た穴から出てきた。
「はあー、僕は徹くんとだけ戦いたいんだよ、邪魔はしないでくれ」
「いや、それは無理の話だ。今すぐにそれをやめろ」
「兄さんに手を出さないで…さもなければ…」
若葉と千景は武器を構え、戦闘準備をした。
「若葉!千景!俺のことはいいから早くみんなと一緒に逃げてくれ!」
「それはだめだ!危険にさらされている仲間を見捨てていけるか!」
「他の三人はひなたを連れて先に避難しているわ…後は兄さんだけ」
「ふーん、君たちって結構仲間思いなんだ。でも、そう簡単にはいかせないよ」
そう言った新崎は指をパチンッと鳴らした。
音が響いた直後、突然、数体のバーテックスが穴から出てきた。
「なっ!」
「うそでしょ…」
「マジかよ…」
自分たちはそのバーテックスを見て呆然としてしまった。
バーテックスは四国の侵攻の時に何回も見ているため見慣れていた。
だが、今自分たちが見ているバーテックスは例外だ。
あれは、他のバーテックスとは訳が違う。
あれは、あのバーテックスは……
「人型の…バーテックス…だと…」
人の形をした二足歩行型のバーテックスが数体、若葉と千景に立ちはだかった。
「どう?すごいでしょ。これが天の神様から貰った力だよ」
「そうか…だが、人の形をしていてもバーテックスというのは変わらん。ただ切り捨てるのみ」
「容赦はしない…」
そう言い、若葉と千景は人型バーテックスに立ち向かおうとした。
その時、新崎の口から、最悪な言葉がでた。
「ああ、言っておくけど、そのバーテックスは
「なっ」
「え……」
「おい、新崎、一体どういうことだ…」
「うーんとねー、この能力の詳細わねー、『その人の負の感情を利用して、バーテックスにさせ、操れる』って能力なんだ。まあ簡単に言うと、僕の操り人形になるってことだよ」
「「「………」」」
自分たちは絶句した。
信じたくなかった。あいつの言ってることが嘘であって欲しかった。
でも、もしあいつの言ってることが本当だとしたら…まさか…
「新崎……ひとつ…聞いてもいいか」
「ん?なんだい?徹くん」
自分はおそるおそる言った。
「お前はそのバーテックス…いや、元人間は
「うん、そうだよ」
新崎は何の躊躇もなく答えた。
「いやー、凄かったよ。最初ここに飛ばされた時はみんなが地下街に避難している最中だったからさ、僕も地下街に避難しているみんなに紛れ込んだよ。いやねー最初は地下街にいるみんなを全員バーテックスの餌になる前に殺そうかなって考えてたんだよ。でもさー僕は思ったんだ。この能力を使うときだって!」
新崎は楽しそうに言った。
そこから新崎は段々と興奮し、話を続けた。
「そっから僕は能力が使える時がくるまで、地下街で暮らしてたんだよ。最初はみんな助けがくると信じて助け合ってたんだけどさー、段々と日数を重ねる内に、みんなの醜い部分が表に出始めたんだよ。特に大人かな、精神的にやばくなるとすぐケンカしちゃうんだよ。それで死人も出しちゃうし、まあ暇つぶしにはなったけど」
自分は歯を食いしばった。
「でもさー、まだまだ面白くなるんじゃないかなって僕は思ったわけよ。だから僕はね、みんなが寝ている時にこっそり武器を置いといたんだ」
無意識に拳を強く握る。
「結果だけ言うとね、大成功だよ!大人たちは自分の欲を満たすために化けの皮をはがして殺し合いを始めたんだよ!怒り、憎しみが大量に来たときには、僕は興奮してしまったよ。まあ最終的には殺し合いに参加しなかった大人数名と子供たち、そして僕が生き残ったけどね」
怒りがこみ上げてくる。
「そっから僕はね、みんなの絶望してる時に使ったんだ、この能力を。いやー、負の感情がたまってたから楽だったよ。簡単にバーテックスになっていくんだから。そういえばあの時の姉妹の絶望した顔は愉悦だったよ。妹の方がずっと、『お姉ちゃん』って、バーテックスになるまで言っててさ、中々――」
その時、自分の中でなにかが切れた。
「「貴様ァァァアアアアアアアッ!!」」
新崎の話を聞いて冷静にいられる人なんていない。
自分と若葉は叫びながら、千景は怒りの表情を浮かべながら新崎に突進した。
自分は剣を召喚し、新崎に斬りかかる。
若葉と千景は、一歩も動かない人型バーテックスを飛び越え、新崎に武器を振るう。
しかし…
「おおっと、危ない危ない」
「!?」
自分は新崎を斬ったと思った。だが違った。
剣を振った直後、大きな金属音が響いた。
いつの間にか新崎の手には、自分と同じ剣だが、その剣は自分の持つ剣とは違い、まるで希望の光を象徴にしているかのような、黄金の色をした剣が握られていた。
「ほい」
「なっ!?」
「くっ!」
そこから新崎はもう片方の手で、人型のバーテックスにかざすと、人型のバーテックスは、新崎を守るように立ちはだかり若葉と千景の武器を右腕を使って防ぎ、鈍い金属音を響きわたらせた。
「言っただろう、このバーテックスは僕の操り人形だって。君たちの相手は、そいつらがしてくれるよ」
「貴様っ!」
「……」
若葉と千景はどうにかしようとするも、人型のバーテックスに邪魔をされてしまいどうすることも出来なかった。
「さあ、続きをしようか」
「っ!いつの間に剣を!……いや、
つばぜり合いをしてるなか、自分は冷静に観察した。
「正解!でも僕には能力の限度があってね、これしか出せないんだ」
「そうかい、そりゃ良いことを聞いた!」
自分はそう言い、剣を受け流そうとした。
だが……
「でも、徹くんの剣と僕の剣の性能が同じってわけでは無いんだよね」
「?なにいって――うぉ!?」
新崎がそう言った瞬間、自分の剣に重みがかかった。
それは、最大出力の身体強化をしていてもなんとか耐えられるぐらいの重みだった。
「く、くそがっ……」
「凄いよ、よく耐えられるね。でも、残念だったね」
新崎はそう言い、逆に剣を受け流され、体制を崩した自分の腹に、膝蹴りをかました。
「っ!ぐは!」
「徹!」
「兄さん!」
それをくらった自分は、なすすべなく膝から崩れ落ちた。
意識が朦朧としているせいか、若葉と千景の声が遠くなっている。
「ふう、今回は見逃してあげるよ、別にここで殺してもいいけどそれじゃあ面白くないし、対等じゃない。僕はね、戦う時は自分の力と相手の力が対等じゃないと楽しめないんだ。それに、そろそろ他の勇者の援軍が来そうだからここで帰らせてもらうよ」
そう言うと、突然、新崎と人型のバーテックスの体が光だした。
自分は知っている、これは諏訪の救出に使われた神樹の転移と同じだということ。
「(だめだ。もう、意識が……)」
意識が薄れかけ、視界がまともに見えないなか、新崎は自分に近づき、言った。
「剣を調べてくれ。そしていつか、その剣で僕を、呪縛から解いてくれ」
その時の新崎の声は、陽気な声ではなく、冷たい声だが、どこか希望を求めているような感覚がした。
「(一体、なにを……言って……)」
その言葉を最後に自分は、意識を落とした。
そろそろほのぼのが欲しいと思った。
次回は、遠征から帰還するまでを書く予定です。
感想お待ちしております。