郡徹は転生者である   作:シンマドー

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遠征の終わり


第十二話   帰還

 自分は何も無い荒野に立っていた。

 空を見れば、血のような色をして、太陽は闇に飲まれたかのように黒く、それでもなぜか光を照らしていた。

 

「ここは…一体?」

 

 自分は辺りを見回した。

 すると、少し離れた所に、何かを話し合っている一人の男と女が見えた。

 ここからじゃ聞こえないため、自分は近づいた。

 

「―――――――――」

 

「――――――――」

 

 しかし、口が動いてるのにもかかわらず声は聞こえなかった。

 二人は自分の存在に気づかずそのまま話していた。まるで、自分はここに存在していないかのように。

 だが、近づいたことで、二人の顔が見えた。

 

「!?……嘘だろ…」

 

 自分は驚きを隠せなかった。

 なぜなら、絶対に合わないと思った二人がここで話し合っているからだ。

 

「新崎と……姫神が…なぜ?…」

 

 そう、新崎と姫神だ。

 二人は真剣な表情をして何かを話し合っていたのだ。

 そして、話し合いの最中、新崎が何かを取り出そうとした。

 

「!?」

 

 その時だった。突然、頭に激痛が走った。

 まるでここから先は踏み込んでは行けない(・・・・・・・・・・・・・・・・)と警告しているかのように。

 

「なんなんだ…この光景は…一体…」

 

 その言葉を最後に、自分は意識を落とした。

 

 

 

 

 

 

「―――さん……兄さん!」

 

「……ち…かげ…?」

 

 誰かの呼ぶ声に目を覚ますと、そこには涙目で自分を見る千景がいた。

 

「…!兄さん!」

 

「うわ!」

 

 自分は体を起こした時、突然千景が抱きついてきた。

 不意に起こったことだが、自分は倒れないよう両手を後ろにやり、自分の体を支えた。

 

「よかった…兄さんが無事で…本当によかった…」

 

 千景は抱きついたまま言った。

 体が密着しているため、千景が震えていることが分かる。

 ……また自分は、千景を不安な思いにさせてしまったらしい。

 

「ごめんな、千景…不安な思いをさせてしまって」

 

 自分は千景の頭を優しく撫でながら言った。

 

「……もう無茶な行動はしないって約束して」

 

「ああ、約束するよ」

 

 そう言うと千景は抱きしめていた自分の体から離れ、言った。

 

「絶対…だからね…」

 

 その時の千景の表情は、先程の悲しみではなく、安心した表情をしていた。

 

 

 

 そんなこともあったが、とりあえず自分が意識を失っている間、何があったのか千景から聞いた。

 聞いた理由は他にもある、自分が意識を失った場所は、荒廃した建物周りに沢山あるところだ。

 だが目を覚ましたときには、視界に映る光景は荒廃した建物ではなく、どこかの田舎の村にいたのだ。

 千景から聞いた情報を整理すると以下の内容になった。

 

 自分が意識を失い、新崎と人型バーテックスが消えた後、巨大な旋刃盤に乗った球子、杏、ひなた、友奈が来た。なぜ巨大な旋刃盤に乗って来たかというと、どうやら球子達が避難した場所が名古屋だったらしく、そこには無数の巨大な卵のようなものが大地に根付いているという、異様な光景を大型ビルの屋上から見たらしい。

 その光景を見た球子は、ついカッとなり、切り札を使って無数の巨大な卵のようなものを薙ぎ払ったらしく、その後球子が、『これに乗って徹たちの所に向かおう』っと提案したらしく、戻ってきたらしい。

 そして、自分が意識を覚ますまでここで待機するのは危険なため、巨大な旋刃盤に乗って進む事に決まり、諏訪に着いたらしい。

 諏訪に着いても自分は目覚めることはなかったため、誰かが留守にすることになったが、妹である千景に決まったらしい。

 そして、千景以外のみんなが諏訪の探索に向かった数十分後、突然自分は苦しみ出したらしく、先程の出来事になったと……

 

 まとめた結果、今自分に出来ることは…

 

「とりあえず、みんなが来るまでここで待つか」

 

「そうね」

 

 ただ待つことだけだ。

 そのまま自分と千景は、適当な木に寄りかかりみんなを待った。

 

 

 

「徹!目を覚ましたのか!」

 

 待つこと三十分後、若葉たちが探索から戻ってきた。

 

「ああ、みんな迷惑かけてすまな「心配かけんじゃねえ!」ぐほぁ!?」

 

 戻ってきたみんなに迷惑をかけたことを謝罪しようとしたらいきなり球子に腹を殴られた。しかも思いっきり。

 

「なぜ殴るんだ球子!徹が気絶してしまうじゃないか!」

 

「大丈夫だ若葉、気絶しない程度に殴ったから問題ない」

 

「そうか、なら問題無いな」

 

「えぇ…………」

 

 なんで球子の行動を許したんだ若葉。

 なんか二人に恨まれることなんてしたか、自分?

 

「すいません徹さん、こればっかりはどうしようもなくて」

 

「まあ、私たちを心配させた罰ってことで諦めてください」

 

「…千景から聞いた話だとサクサク進んでた気がするが…」

 

 杏とひなたが慰めの言葉?をかけるが、自分は殴られた痛みを我慢して、言った。

 

「もおー、とおさんはなにもわかってないんだから」

 

 友奈が頬を膨らませて言った。

 

「なにが?」

 

「女心ってやつだよ。とおさんがどんなに短い時間に起きたとしても、私たちにとっては長い時間をかけて起きたことになるんだから」

 

「そうか…みんな、心配かけてしまって本当にすまなかった」

 

 とりあえず、みんなに心配かけすぎてしまったことが分かったため、自分は頭を下げみんなに謝罪をした。

 

「今回は無事に目覚めたから許すが、次に無茶な行動をしてみろ…その時は、分かるな」

 

 若葉が刀をちらつかせながら言った。

 半分脅迫に近かったが、これは自分のせいでもある。

 

「分かった」

 

 そのため自分は即座に返答した。

 

 

 

「よしっ!徹の件も終わったことだし、これからみんなで農作業をやるぞ!」

 

「「「「おーっ!!」」」」

 

「……おー」

 

 若葉の掛け声でみんなが声をあげる。千景も大声ではないが、みんなと声は合わせていた。

 

「すまない、なにがどうなったら農作業をやることになったんだ」

 

 だが、自分はそんなことは知らないため、頭が混乱していた。

 

「ああ、徹は意識を失っていたから知らなかったな。じつわな、遠征に行く前日、歌野さんからもし諏訪に着いたら畑を耕しておいてって頼まれてな、徹が意識を失ってる間にみんなで話し合ってやることになったわけだ」

 

「そうか…なら早くやっちゃいますか」

 

 若葉の言葉に、自分は納得する。

 

「ああ、早速やるとしよう」

 

 自分たちは、一本の鍬と蕎麦の種や他多数の種を持って農作業をした。

 なぜ鍬が一本だけかというと、若葉に聞いた所、地上にある鍬は全部ダメになってしまい使えなかった。

 だが、あの一本は木製の箱に入れられ、埋められていたものらしい。

 その証拠に、耕そうとする畑の付近に穴を掘った形跡があり、その隣に人の身長ほどの大きさがある木製の箱があった。ちなみに箱の中はもう何もなかった。手紙が入っていたはずだが、多分若葉が持っているんだろう。

 

 

 

 作業が終わり、みんなが諏訪大社上社本宮への階段で少し休憩してる中、自分は諏訪大社上社本宮にいた。

 しかし、諏訪大社上社本宮も本宮境内は無事だったが、神殿はバーテックスによって破壊されていた。

 それでも自分は気にせず神殿の前に立ち、手を合わせて祈った。

 ちなみに、ここに来た目的は、ここの神様に報告するためだ。

 なにを報告するかはもう決まっていた。

 

「(諏訪の土地神、あんたがまだ生きてるかはわからないが一応報告はしておく。あんたが今まで守ってきた諏訪のみんな、そして歌野と水都は無事に四国で暮らしている。だから、今はもう休んでてくれ)」

 

 これがちゃんと伝わってるかはわからない、でも、自分は伝わっていると信じ、立ち去ろうとした。

 その時だった。

 

 ドサッと後ろから聞こえた。

 

「なんだ?」

 

 自分は後ろを振り返る。

 そこには、一冊の古い本が落ちていた。

 自分はその本を拾う。

 

「結構古いな…題名は『願いを叶えるための戦い』っか、なんでこの本がここに?…まあ、土地神の贈り物ってことで貰っておきますか」

 

 自分はそう言い、本を持って神殿から立ち去った。

 

 

 

 そのあと、自分がみんなの所に戻ったと同時にひなたが神託を受けた。

 内容は、四国が再び危機に晒されているということだった。

 そのため調査遠征は中断し、自分たちは四国へと帰った。

 





次回、「バーテックスが来るのが遅いだと…なら英気を養う時だ!」
簡単にいうと、ほのぼの書く予定です。次回をおたのしみに

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