郡徹は転生者である   作:シンマドー

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ドールズフロントラインやってたら遅れましたすいません(言い訳)

では、本編どうぞ


第十四話   進化

 あの時、徹が来なければタマも杏も死んでいた。

 でも、徹はタマたちを助けるために新しい力を使った。

 かっこよかった。まるで漫画に出てくる正義のヒーローみたいだった。

 その時の徹の姿を見て最初に思ったことはそれだった。

 でも、現実はそう甘くなかった。

 タマたちのせいだ。

 タマたちのせいで、徹は……一人で苦しむ思いをしてしまったんだ。

 

 

 

 ある日の夕方、事前に神託で言われていた、バーテックスの侵攻が起こった。

 今回の神託には『今までにない事態が生じる』という不吉な解釈があったため、ひなたは勇者全員に普段以上の警戒を促した。

 いつも死と隣り合わせでバーテックスと戦っているため、今までにない事態が起こるなんておかしくないだろう。

 

「(しかし、今回の侵攻はとても重要な分岐点だ。なんとしてでも球子と杏を助けなくては)」

 

「今回は切り札を使う事は無しにしましょう」

 

 そんなことを内心思っていると杏からの注意がきた。

 そこから杏の精霊を宿す危険性を説明で自分たちは納得し、使わなければいけない場面以外は使わないと決め、バーテックスとの戦いが始まった。

 

 

 

 戦闘開始から数分後、ことは順調に進んでいた。

 今回は事前に若葉に前衛から中衛に移ると行ってあるため、前衛は若葉と友奈、千景が敵を倒し。

 中衛の自分は前衛から抜けてきた敵を残さず倒す。

 そして後衛の球子と杏は互いに支援しながら遠距離から攻撃する、バランスのいい陣形で戦闘は進んだ。

 

「進化体が来るぞ!」

 

 そうしているうちに、若葉の言ったとおり遠くの方でバーテックスが集まり出して進化体が形成し始めていた。

 

「させませんっ!」

 

 唯一射程が届く杏が射撃するが、仕留めてもすぐ埋め合わせがくるため効果がなかった。

 

「だったら俺が『シフト』を使って――」

 

「待ってください、徹さん!ここは私がやります!」

 

『シフト』を使おうとするが、杏に制止されてしまった。

 

「皆さん、その場から動かないでください! 今いる敵は私が一掃します!」

 

 そう言い杏は、神樹へとアクセスし、精霊をその身に宿した。

 その精霊の名は、全てを凍て付かせる氷と雪の化身であり真白な死の象徴、雪女郎。

 杏はクロスボウを上空に放つ、するとそこを中心に猛吹雪が起こった。

 吹雪は進化体と周囲にいるバーテックスを飲み込み、止んだ時には全てのバーテックスが氷漬けになり、そして地面にそのまま落下し砕け散った。

 

「おお、すごいな……あんず」

 

「やったね、アンちゃーん! もう敵、少ししか残ってないよ!」

 

「はあー、別に切り札は使わなくても俺が――ッ!」

 

 球子は驚き、友奈は杏を褒めながら残りの敵を片付けてる中、頭痛が突然自分を襲った。

 

「…?兄さん、どうしたの?」

 

「いや、大丈夫だ。ちょっと目がくらんだだけだから」

 

「そう……」

 

 自分の異常に気づいた千景が声をかけてきたが、大丈夫と返した。

 だが、頭痛は未だに収まらない。 

 

「おい…ヤバイのが来たぞ…」

 

「(くそっ…こんな時に)」

 

 そしてとうとう、分岐点の最大の敵が来た。

 球子が言った先には、バーテックスの大群がいたが、問題はそれを率いるように進む、今まで戦ってきたのとは格が違う、まるで巨大なサソリのような姿をした個体だった。

 

「何て言うか……巨大なエビ……かな?」

 

「むしろ、サソリに近いと思うわ……高嶋さん……」

 

「私が行きます! 今は一番攻撃力は高いはずです!」

 

 そうしてる間に杏は跳躍してサソリ型バーテックスを射程に捉え、先程の拡散した雪を今度は一点凝縮し放った。

 普通ならあの攻撃を受けたら一撃で倒せる。

 だが自分は記憶を見ているから知っている、あれは、自分たちが知っている奴らとは大きくかけ離れていることに。

 

「そんな……っ!」

 

 杏が驚きの声を上げる。 

 一撃を食らったサソリ型には体表に霜が着いた程度で全く効いていないと思われる様子だった。

 そしてサソリ型は鋭い尾針を杏に突き出した。

 

「わっ!?」

 

 間一髪で杏はよける。

 自分たちも援護に向かおうとするが、バーテックスの大群がその道をふさいだ。

 杏がサソリ型の集中攻撃を受けていたが、球子が輪入道を宿し、巨大化した旋刃盤で相手の尾を弾き、その隙に杏を旋刃盤に乗せて救い出した。

 

 だが安心するにはまだ早い。

 恐らく杏が発案したのだろう、高熱と極低温の連携攻撃を受けてもサソリ型には全くダメージを与られず、逆にサソリ型の尾に強く叩き飛ばされてしまい、二人は地面に落ちた。

 それによって切り札の装束は消滅し、精霊による強化が解除されてしまった。

 

「くっ…俺があの二人を助ける!若葉たちはコイツらを頼む!」

 

「分かった!頼んだぞ!」

 

「任せて、とおさん!アンちゃんとタマちゃんをお願い!」

 

「兄さん、行って…!」

 

 ここは三人に任せて、自分は未だに収まらない頭痛を我慢しながら『シフト』を使いながら球子たちの方に向かった。

 しかし、向かっている間にも、サソリ型の巨大な針は攻撃が来る、それを球子が旋刃盤を楯形状にして防ぐ。

 だが、それを防ぐ旋刃盤にもヒビが入り始め、いつあの巨大な針が二人を貫き通すのは、時間の問題だ。

 

「間に合え……」

 

 自分は全力で向かう。

 

「間に合え……」

 

 時がスローモーションのように動く。

 

「「間に合え……」」

 

 誰かの声が重なる、だが考える時間はないため自分は気にせず向かう。

 視界には、最後の一撃だと思われるサソリ型の鋭い尾針が振り上げられていた。

 

「「間に合えええぇぇぇええええ!!」」

 

 ついたときには、鋭い尾針が突き出してきた。

 自分は考えるよりも早く、球子を後ろに突き飛ばし、先頭に立つ。

 先頭に立った時には鋭い尾針は目の前まで来ていた。

 その時、自然に右手が構えをとった。その構えはまるで楯を構えるようだった。

 

「(死んでたまるか…みんなを救うまで、絶対に!)」

 

 そう思ったと同時に、右腕に光が纏わる。

 そして、右腕の光と鋭い尾針がぶつかり、轟音と強い風が発生した。

 

 

 

 時間は少し戻って球子視点――

 

 

 

「あんずっ! 起きろっ!」

 

 意識が失っている杏に呼び掛けるが、目を覚まさない。

 

「くそっ……!」

 

 サソリ型は巨大な針を振るう。

 

「くそおおおおおおっ!」

 

 旋刃盤を楯形状にして尾の針を防ぐ。

 

「ぐっ、うう……!」

 

 尾の針は何度も突き出される。

 

「ううあああぁぁ……!!」

 

 殺すために、何度も。

 防ぐ度に、全身の骨が衝撃で砕けそうだ。

 

「(逃げるな、杏を守るために、耐え続けろ!)」

 

 自分に言い聞かせるように心の中で叫び、耐える。

 

「……う……た、タマっち……先輩……?」

 

「目、覚ましたか……!」

 

「タマっち先輩……?」

 

「早く逃げろ……あんず……!」

 

 目を覚ました杏に言っている間に、楯にヒビが入り始めた。

 

「(壊れるのも、時間の問題か…杏、早く逃げてくれ)」

 

「何言ってるの!? タマっち先輩こそ逃げないと!」

 

「タマは、無理だ……」

 

「どうして……!?」

 

「こいつの攻撃で……足が、痺れてる……! というか……骨、砕けてるかも……動けない、んだ……!」

 

「……!」

 

 杏は言葉に詰まる。

 その時だった。

 

「間に合えええぇぇぇええええ!!」

 

「徹さん!?」

 

「と、おる…?」

 

 後ろを少し覗くと、先程まで遠くにいたはずの徹が目の前まで来ていた。

 

「(頼む…杏を連れて、逃げてくれ…)」

 

 球子は最悪、自分を犠牲に杏が助かればいいと思っていた。 

 二人が助かる方法なんて無く、徹はきっと杏を連れて逃げるだろうと。

 

 だが徹は違った。

 

「なっ!?」

 

 徹は球子を後ろに突き飛ばし、先頭に立った。

 そして突き飛ばされたと同時に、サソリ型の尾針が突き出された。

 

「とお――うわっ!?」

 

 徹の名を言う前に、轟音と強い風で音と視界が遮られた。

 

「徹、無事か!って……え?」

 

「徹さん、大丈夫…で…すか…え、うそ…」

 

 轟音と風が収まり、徹の無事を確認しようとした時、視界に映った光景に驚きを隠せなかった。

 

 なぜなら…

 

「なんで…徹が…タマの武器を持っているんだよ!」

 

 そこには、球子の武器、旋刃盤の楯形状でサソリ型の尾針を防ぐ、徹の姿があった。

 




さて、やっと武器召喚の本領発揮。

やったね徹、これでみんなを救えるよ。

次回、力を得るにも運命を変えるにもそれ相応の対価は必要だよね。

ま、徹なら大丈夫なんじゃないかな(白目)

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