夢を見ていた。
一人の少年が黒い剣と黄金の剣を持ち、百を越えるバーテックスを難なく斬る。
そして少年は叫びながら奥を目指す。
その先には、二人の勇者がサソリ型の攻撃を受けていた。一人はサソリ型の攻撃を防ぎ、もう一人はサソリ型の攻撃を防いでいる勇者に何かを言っていた。
そして、少年が二人の勇者に着くとと同時にサソリ型の尾針が二人の勇者を貫く。
少年は間に合わなかった。二人を助けることが出来なかった。
「――おい」
「――おい起きろ」
「起きろ、徹!!」
「うるせえぇぇ!」
訳の分からない夢を見たと思ったらうるさい声で起こされる始末、最悪の目覚めだな。
「目覚めて最初の言葉がそれか、徹」
「当たり前だろ若葉、人がぐっすりと眠ってるところを普通邪魔するか?…ていうかなんで俺病院のベットで寝てるの?」
自分は現状を確認する。
さっきまで病室のベットで寝ていた自分、服装が患者が着る服で、腕には管が刺さっていた。
そして自分が起きたことがまるで奇跡のような感じで驚いているみんな(若葉とひなたを除いて)。
…ああ、うん、これだけでもう察してしまう。とりあえず、今自分がやることは一つ。
「えっと…心配かけてすまなかったな、みんな」
それは謝罪だ。自分が眠っている間、色々とみんなに苦労をかけたこと、不安をかけてしまった事への謝罪だ。
さて、みんなの反応は…
「「「「…し」」」」
「…しっ?」
「「「「心配かけすぎ(だよ!)(よ!)(です!)(だ!)」」」」
友奈、千景、杏、球子に同時に怒られてしまった。
「はっはっは、まあ私は徹が目覚めると最初から分かっていたがな」
「ふふっ、若葉ちゃん、そんなこと言って、この二日間、徹さんのことばっかり考えてたじゃないですか」
「なっ!ひなた、それは言うな!」
「ちょっと待って、今二日間って聞こえたけどそれはほんと――」
「徹くん!やっと目を覚ましたのね!」
「徹さん!」
「ああもう、みんな一回落ち着いてくれーー!」
歌野と水都の介入によってこの場がさらにうるさくなり、最終的に看護師さんに怒られてしまった。
みんな落ち着いた所で、自分はみんなから色々と聞いた。
どうやら自分は、あの時意識を失った後すぐさま病院に搬送されたらしい。それで医者が診断した結果、心身ともに大丈夫だが意識が戻らない、いわば植物人間だったらしい。
でだ、それから二日が経ち、みんながお見舞いに来たときに起こった。突然自分が何かを呟いたらしい、それで若葉が大きな声でかけたら自分が目を覚ましたってわけだ。
…うん、ほんとに目覚めたのが奇跡レベルだったなほんとに。
それからのこと、授業の時間を削って来たらしいが、訓練の時間は削れないらしくみんな帰っていった。
歌野と水都も、やることがあるため帰り、病室には自分一人となった。
「…さて、時間はたっぷりある、色々と調べようじゃないか」
最初にやるのは、武器召喚の確認だ。
とりあえず、一通りやってみて分かったことがある。
まず、今まで黒い剣しか召喚できなかったはずが、あの戦いから、若葉と友奈、球子、杏、そして千景の武器を出せるようになっていた。
「(…これ以上の調べは部屋でやるか)」
まだ調べ足りないが、ここは病院、看護師に見られたら面倒ごとになる、これは一旦やめ、次のことをやろう。
「さて、やりますか」
自分は腕に刺さっている管を外し、勇者システムを起動する。
そして、窓から飛び降りると同時に身体強化をし、人に見つからないように移動し、寄宿舎に向かった。
……まあ、ただ自分の部屋にある本を取りに行くだけなんだけど。
「ふうー、ミッションコンプリート」
時刻は夕方になった頃、なんとか無事に誰にも見つからず本を取りに行くことができた。
自分は勇者システムを解除し、そのままベッドに寝転がった。
「さてさて、諏訪で取ってきた本で、色々と分かればいいんだけどなー」
遠征で諏訪に来たときに土地神の贈り物としてゲットした本、『願いを叶えるための戦い』正直、ファンタジーの架空物語だと思っているが、土地神がくれた本だから信じろと自分に言い聞かせ読むことにした。
数分後――
「おーす、見舞いに来たぞ徹ってなに読んでんだ?」
「ん?ああ、球子に杏か、いやちょっと暇潰しに本を読んでたわけよ、でも何書いてあるのか分からなくて」
「徹さん、少しその本を見せてください」
見舞いに来た球子と杏に、例の本を見せる。
「…あー、タマにはさっぱり分からん」
「これは…古文でしょうか…」
「ああ、でもその古文、滅茶苦茶難しいんだよ」
「…徹さん、その本貸していただけないでしょうか?」
「別にいいが…翻訳してくれるのか?」
「はい、今すぐ部屋に戻ってやりますので」
「えっ!?今からやるの!?」
「はい!それでは徹さん、また明日!――タマっち先輩、頑張ってください(ボソッ)」
そう言い杏は病室から出た。
「「……」」
病室に静寂が訪れる。こういうのに普段我慢できないはずの球子は、自分から見て右の椅子に座って何か恥ずかしそうにモジモジとしていた。
「な、なあ球子、球子と杏以外のみんなはどうしたんだ?」
なんとか会話しようと、球子に話題をふる。
「え、あ、ああ!今日の見舞い当番はタマと杏なんだ」
「そ、そうか」
なんなんだ今日の球子は!?なんか調子が狂ってしまう。
「…なあ徹」
「ん?どうした」
そう思っていると球子が話しかけてきた。
「あの時助けてくれてありがとな、もし徹が来てくれてなかったらタマと杏あの攻撃で死んでいたと思うんだ」
「…そうか」
「でもさ、徹が意識を失った時、悔やんじゃったんだ。タマたちにはどうにもできなくてただ徹が目覚めるのを待つだけ、そんな無力なタマをずっと責め続けたんだ」
「…」
球子の声からは今にも泣き出しそうな声がしていた。
それを自分はただ聞き続けた。
「それから二日が経ってさ、徹が目を覚ましたとき、嬉しさが込上がってきたんだ。徹が無事に目を覚ましたって、また楽しい日々を送れるんだって……なあ徹」
球子は自分の右手に片手を置いた。球子の手の温かさが右手に伝わる。
「お願いだ。勝手にタマたちの目の前から消えないでくれ」
球子は顔を俯きながら言った。表情を隠しているつもりだろうが、頬から涙が流れ、シーツにポタポタと落ちていった。
「…なあ球子」
「なに――ってなんでタマの頭をなでるんだよ!」
球子は頭を撫でている手をどかし、そのまま涙をぬぐった。
「いやー、球子がいつもらしくないんでな、ついからかいたくなっちゃって」
「ぐぬぬ…はあ、やっぱ徹はぶれないな」
「そうか?」
「そうだよ…ってやば!そろそろ帰んなくちゃ!」
壁にかかっている時計を見るともう六時を指していた。
「もうこんな時間か、いい暇つぶしになってくれてありがとな球子」
「くそー、覚えてろよ徹!」
そう言い球子は椅子から立ち上がって、急いで病室の扉に手をかけた。
「あっ!そうだ。なあ徹!」
「ん?なんだ」
球子が病室から出ようとする時何かを思いついたように自分の方に振り返った。
「これからは球子じゃなくて、タマって呼んでくれ!呼んでくれなかったら怒るからな!」
「え!?ちょ、まてたま――」
「それじゃ、徹また明日!」
球子は自分の言葉を聞かずにそのまま勢い良く病室から出ていった。
「…はあ、たく仕方ねえな」
まあ別にこれから球子のことをタマって呼べばいいだけだ。そう難しい話ではない。
「まあ、それよりもめんどくさいことが俺の体に起きているんだけどな」
自分は左目に魔力を送るのをやめた。
すると突然、さっきまで写ってた視界の左半分が、
「これが今回の戦いで失ったものか…いや、球子と杏を救えたんだ。こんなの、安いもんだよな」
多分、これからの戦いで自分は色々と失うかもしれない、でもいいんだ。
例えどんなことが起きようと、自分はみんなを守るために戦い続ければいいだけなのだから。
自分の文才だとここまでが限界でした。
…そろそろ徹くんに地獄がやってくるかも(ボソッ)