郡徹は転生者である   作:シンマドー

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ふうー 何とか間に合いました。
 今回はあれから三年後のお話です
 では、駄文ですが、本編をどうぞ。


第四話   勇者たちと転生者

 私は彼を初めて見たとき、彼から何かを感じた。でも、それは一瞬で消えたため気のせいだと思い、ひなたに彼のことを聞いてみたがどうやらひなたも私と同じ彼から何かを感じたらしい。

 彼は郡徹といい郡千景の兄らしい。郡徹、彼は初の男の勇者であり謎多き者だ。もし、三年前のあの黒い剣が彼の武器だとしたら、その時はお礼を言いたいものだ。

 

 

 

 午前六時、自分はエプロンを着て朝食の準備をしていた。

 あの日から三年の月日が経った。あのあとすぐに香川県につき避難所に入ることが出来た。そこからはなんやかんやあって今現在は丸亀城を一部改築した全寮制の学校の寮で暮らしている。

 

「おはよう…兄さん」

 

 寝室から可愛らしいパジャマを着てまだ眠そうな顔をしている千景が出てきた。

 

「おはよう千景。朝食の準備はもうすぐ出来るから、その間に歯を磨いて、顔も洗っておきな」

 

 千景は「うん…」と言った後、眠そうにふらふらしながら洗面所に行った。

 数分後、リビングにあるちゃぶ台にご飯と味噌汁を二人分置き、朝食の準備が終わったと同時に千景も洗面室から出てきた。

 

「兄さん、待った?」

 

「いや、今準備が終わったところだ」

 

「そう、今日も美味しそうね…いただきます」

 

「それはよかった。それじゃいただきます」

 

 自分たちははしを取り、食べ始めた。ご飯と味噌汁一杯と少ない量だが兄妹揃って朝は食欲が無く、そのためいつもこれぐらいの量しか食べられなかった。

 

「「ごちそうさま」」

 

 朝食が終わり自分は片付けをし、千景は着替えをするため寝室に戻った。

 片付けが終わった頃に寝室から制服姿の千景が出てきた。

 

「おまたせ兄さん」

 

「ああ、それじゃあ行こうか」

 

 玄関を開け寮を出る。数分歩くと校舎についた。この学校は自分たちを含め七人の生徒しか通っていない、理由は簡単だ。ここは勇者の力に目覚めた少女達が集められ戦いに備える、いわば学校というなの訓練所だ。

 

「今日もうるさいくらいに騒がしいな」

 

「…それはいつものことでしょ」

 

 校舎に入り、廊下を歩けば自分たちの教室が見え、先に何人か登校しているのか、教室から賑やかな声が聞こえる。引き戸を開けるとそこには4人の後輩がいた。

 

「おっ、おはよう!徹先輩!」

 

「お、おはようございます、徹先輩」

 

「おう、おはようさん二人とも」

 

 元気に挨拶してきたのは、二年生の土居球子。おずおずとしながら挨拶したのが、一年生の伊予島杏だ。

 二人はまるで姉妹のように仲が良く、いつも一緒にいるところをよく目にする。

 この学校は生徒数など色々な関係上、学年混合で授業が行われている。そのため下の学年がいても何の問題がないわけだ。

 

「お二人とも、おはようございます」

 

「おはようございます。郡さんに徹先輩」

 

「ああ、おはよう。朝っぱらから元気だなあんたらは」

 

「いやーだって、今日の朝若葉ちゃんの寝顔写真がとれたんですもの」

 

「くっ、私が油断したばかりに撮られてしまうとは」

 

「そうか、そりゃ不幸なこって」

 

 朝っぱらからほっこり顔をしているのは上里ひなた。最初、彼女は大人びている感じだったが今になってはそんなのが一切感じなかった。

 そして、自分の寝顔写真を撮られ後悔しているのは、乃木若葉。二人とも二年生で幼馴染なため、固い絆で結ばれていることがよくわかる。

 

「……」

 

 自分が挨拶している間に千景は無言で席に座って兄をじっと見していた。千景は他人と関わるのが苦手で、唯一関われるのは自分と一人の少女しか今はいない。まあ、その少女はそろそろくるだろう。

 そして、始業チャイムが鳴る直前に最後の一人が駆け込んできた。それと同時に千景は兄から視線をはずしその少女に視線を向けた。

 

「おはよーございまーす! 高嶋友奈、到着しました。良かった、遅刻じゃない!」

 

 彼女は高嶋友奈、みんなのムードメーカーであり、誰にでも仲良くできるため千景より年下だが、友人同士のように話してくれる。これには兄である自分も安心できる。

 友奈は全員に元気に挨拶をし、そのまま千景の隣の席に座った。

 

「おはよう……高嶋さん。今日は遅かったね」

 

「おっはよー、ぐんちゃん!いやー、昨日は格闘技の番組を見て、見よう見まねで練習してたら興奮して眠れなくなっちゃって。てい!縦拳!回し蹴り!」

 

 友奈は激しく動き、そして足を高く上げた。

 

「あ……」

 

 女の子がスパッツをはいてない状態のスカートで足を高く上げたら何が見えると思う?

 それを男の自分が見てしまったらどうなるか、だいたい察せるはずだ。

 この窮地を回避する方法は自分の考えた中でただ一つ。それは――

 

「(目をそらすことだ!)あいたっ!」

 

 目をそらすために首を勢い良く曲げたせいか、グキッ。と聞こえてはいけない音が響いた。

 

「高嶋さん……あんまり足、高く上げない方がいい……パンツ、見えそうだから。後、兄さん首大丈夫?」

 

「あ!えへへ……とおさんごめんね」

 

「あ、ああ…大丈夫だすぐ治る」

 

 千景と友奈の優しい言葉で涙が出てしまいそうだ。

 

「あはははははっ!!」

 

 でも球子、なぜあんただけ腹抱えて笑うんだ。

 

「ちくしょう…球子、笑うんじゃねえ」

 

「いやー、朝っぱらからいいもん見せて貰ったよ。ま、どんまい徹先輩」

 

 そうしている間にチャイムが鳴り、担任の教師が教卓の前に立った。自分は首の痛みを我慢しながらも席に戻った。

 女子六名。男子一名。の偏りすぎる教室で、授業が始まった。

 

 

 

 午前の授業では一本のテープを見せられた。

 テープの内容は三年前の大災害の日のことだった。

バーテックスと呼ばれる化け物がこの世に現れ、人類のほとんどが死に追いやられた。

 通常の兵器では効かず意味がない。それを知らない自衛隊は、次々と化け物に食われていった。

 

「……こりゃひでえな」

 

「……ええ、そうね」

 

 千景もそうだが、みんなその光景に顔をしかめている。一方的にやられている映像は、最後に撤退を決め、退くところで、この映像は終わった。

 担任の教師が生徒たちに告げる。

 

「唯一奴らに対抗できるのは『勇者』だけです。あなたたち『勇者』の力が必要とされています」

 

 勇者とは、バーテックスが来たと同時に四国に『神樹』という土地神の集合体が、自らの力を託すに値する、と判断し、力を授かった少女たちのことをいうらしい。

 そして、四国で選ばれた少女が、若葉、友奈、千景、球子、杏の五人だった。

 なら、なぜ自分がここにいるのか疑問に思うだろう。ひなたは神の声を聞く巫女なため大丈夫だが、自分はどうやら神樹に、バーテックスと戦える力を持っていると気づかれたため初の男の勇者として選ばれた。

 でも、力を持っているだけで身体強化と武器召喚は気づいてなかったけど。

 

「どうせだったら……土地神が戦えばいいのに……」

 

 千景がぼそりと呟いた。それに球子が答えた。

 

「多分、戦ったんだと思いますよ。ほら、バーテックスが攻めてくる前に、地震とか災害とか起こってましたし。あれ、土地神がやりあってたせいだったんじゃないですか」

 

「………」

 

 千景がムッとしたように黙り込んでしまった。

 

「(ほんと、この世界は残酷だな…)」

 

 自分はそう思い、授業が終わった。

 

 

 

 その後は戦闘訓練だった。ひなたは巫女なため違う場所で訓練を受けている。勇者がやる訓練はどれも大変だ。

運動。戦いの基礎技術。座禅による精神修養。他にも訓練があって一つ一つがどれも厳しく、辛いものだが、自分は身体強化でよく体を動かしていたため、弱音を吐くことなんて一切なかった。

 

 

 

 訓練が終わると昼休みが来る。自分はこの昼休みが一番の楽しみだった。七人全員で食堂に向かう、食事はセルフサービス形式になっていて、みんなは大体うどんを取ってくる。トッピングはそれぞれ違うが。

 だが、自分は違う。

 

「なあ、徹先輩。どうしていつも天丼ばっか食ってんだ?」

 

「君は何を言っているんだい。自分はうどんよりも天丼のほうが好きだから食っているだけ。ただそれだけだ」

 

 球子の質問に即答する。

 そう、自分はいつも天丼を食っている。誰に何と言われようとも天丼を選ぶ、理由はさっきも言ったとおり、うどんよりも天丼のほうが好きだから食っている、単純な理由だ。

 

「いつか、徹先輩にはうどんが好きになるように洗脳しなくては」

 

 若葉がなんか恐ろしいことを言っていたが聞こえていない振りをしておこう。

 

「訓練の後のご飯は美味しい!」

 

 友奈は満面の笑みで言い、それを微笑まし気に見る千景。

 

「こらっ、あんずっ。行儀が悪いぞ」

 

「ああ!?今良い所だったのに…」

 

「ダメだ、食べ終わってからな」

 

「はーい……」

 

 杏の本を球子が取り上げ注意した。

 

「(杏は相変わらず、隙あらば読書をするな)」

 

 そう思い視線を天丼の器に向け考え事をした。

 

「(記憶ではバーテックスの侵攻は後数日で来る。まだ初戦だから敵も弱い、でももし、記憶にないことが起こったらその時は...バレることを覚悟してこの力で……)」

 

 そう考えている時だった。

 

「……にしてもさー、毎日毎日訓練訓練って、なんでタマたちがこんなことしないといけないんだろーな」

 

 球子がボヤくように言った。それにひなたが答える。

 

「バーテックスに対抗できるのは勇者だけですからね…」

 

「そりゃ分かってるよ、ひなた。でもさ、普通の女子中学生って言ったら、友達と遊びに行ったり、それこそ恋……とかしちゃったりさ。そういう生活をしてるもんじゃん」

 

 溜息をつく球子。

 この問いに、若葉が答える。

 

「今は有事だ、自由が制限されるのは仕方あるまい」

 

「うーん……」

 

「我々が努力しなければ、人類はバーテックスに滅ぼされてしまうんだ。私たちが人類の矛とならねば――」

 

 球子が声を荒らげそうな顔で口を開くが、その前に自分が口を挟んだ。

 

「まあまあ、落ち着いて。いつかそんな生活ができるようになるよ」

 

 球子が自分に視線を向け力なく言った。

 

「徹先輩。いつかって、いつなんですか……」

 

「バーテックスとの戦いが終わるまでかな」

 

「徹先輩。心意気はいいですが、いささか大言壮語だと思いますが」

 

「確かに、おおげさだとは思うが、俺はそう信じている」

 

 みんなからしたら難しいどころの話ではないだろう。でも自分は記憶を持っているからこそ言えることだ。

 しかし、この記憶どおりに行ってしまったら、確実に誰かの死が確定してしまう。

 

「(それじゃダメなんだ!みんなが生きていなければ意味が無いんだ……)」

 

 そう考え、心が沈みかけようとしたとき。

 

「ごちそうさま!今日も美味しかった!」

 

 場の暗い中、友奈だけそんなことお構いなしに、両手を合せ満足そうにしていた。そして、キョトンとした顔で周りを見回した。

 

「どうしたの、みんな?深刻そうな顔して」

 

「……友奈……さっきまでの話、聞いていなかったのか?」

 

「え、えっと……ごめん、若葉ちゃん! うどんが美味しすぎて、周りのことが意識から飛んでっちゃって……」

 

「「「「「「はあ……」」」」」」

 

「ええ!?なんでみんなため息吐くの!?」

 

 溜息をつかれたことにショックを受ける友奈。

 でも、すぐにいつもの調子に戻り、友奈は言う。

 

「大丈夫だよ。私たちはみんな強いし、みんなで一生懸命頑張ればなんとかなるよ!」

 

 笑顔で、そう言った。

 

 

 

 それからの日々は何も変わりなく過ぎていった。

 生活に不平や不満が出たが、生活自体は平穏だったため、そこまで大きな問題にはならなかった。

 

 

 

 そして、バーテックスが侵攻してくる前日、放課後千景と一緒にとある場所に来ていた。

 

「兄さん。神樹様に用があるって言ってたけど一体なんなの?」

 

「ああ、それはな千景、俺の勇者システムが完成したってさっき大社の人から連絡が来てな、神樹さまから直接もらってくれって言われたんだ」

 

「そうなんだ、これで兄さんも私達と一緒に戦えるんだね」

 

「ああ、そうだな」

 

 そう、自分たちは今、神樹様に会える門の前に立っていた。昨日の夜連絡が来て、今日の放課後に神樹様からもらってくれと言われたため、千景と一緒に来たのだ。

 門の前には門番らしき人が二人立っていて、その一人が自分を見て近づいてきた。

 

「郡徹様。お待ちしておりました。神樹様がお待ちになっております、どうぞ中へ」

 

 門番はそう言い、門を開けてくれた。

 

「じゃあ千景、兄さんは行ってくるから待っててくれ」

 

「ええ、分かったわ兄さん、気お付けて」

 

 自分は「へいよ」と言って、そのまま門の中に入った。

 

 

 

 中はとても室内とは思えない光景が目に入った。周りを見ると壁と天井がなく、辺り一面に芝生が敷き詰めてあり、空を見ると今は夕方のはずなのに青空だった。ここはまるでもう一つの世界としか思えなかった。

 そして、視線を前に戻し中心にある神樹を見つめた。

 

「来てやったぞ神樹、さっさと俺に勇者システムを寄越せ」

 

『よく来たな男の勇者よ、力が欲しければ我の幹に触れるがよい』

 

 脳内に直接、神樹の声が聞こえた。

 自分は神樹の言葉に従い、神樹の幹に触れた。

 

「触れたぞ神樹」

 

『よろしい、それでは早速力をさずけようではないか』

 

 そう神樹が言ったとき、体に何かが流れる感覚がした。それは数分続き、感覚がなくなったと同時に幹から手を離した。

 

『これで貴様も勇者システムが使えるようになったのだが、貴様、これが目的ではないのだろう』

 

「よくわかったな」

 

『当たり前だ。貴様の体にある力は我らと同じ力だということは最初から知っておる。そうでなければ貴様を勇者に選んだりはせん』

 

 確かにそうだ。自分の持つ魔力は神樹のエネルギーと同じだ。でもこれも一応目的なんだけどな。

 一回自分の魔力をまとって戦装束を作ろうとしたんだが、常に魔力を保ってないとすぐ解除されてしまった。

 そのため、神樹に頼らずにはいられなかった。

 それはいいとして、そろそろ本題に入ろう。

 

「それもそうか。なら話が早い、神樹。あんたと交渉がしたい」

 

『ほう、神である我に交渉に出るとは。面白い言ってみろ』

 

「今日の夜、諏訪にいる住民達、そして白鳥歌野と藤森水都を香川県に転移させろ」

 

『大きく出たな、だが無理だ。全員を転移させることは可能だがその分の力を使うわけにはいかない』

 

 知ってる。だがここで終われば諏訪のみんなが死んでしまう。

 自分は覚悟を決めて言った。

 

「いや、俺の力を一部捧げる。俺の腕一本を供物として使えば足りるだろう?」

 

『貴様、正気か?それをすれば貴様の腕は機能を失うぞ、それでもいいのか?』

 

 ああそうだ、片方どちらかの腕を供物にすれば機能を失い永遠に動かなくなる。そうすればみんなが心配してしまう。

 だからここは――

 

「腕の機能を失うんじゃない、腕自体をあんたに捧げよう」

 

『なに…!?』

 

 さすがにこれには神樹も驚いたようだ。そりゃそうだろ、そんな選択する人なんて自分くらいしかいないと思うし。

 

『ふっ、フハハハハハハッ!』

 

 突然、神樹が笑い出した。声が脳に直接聞こえるため、めっちゃうるさい。

 

『まさか、貴様でこんなに笑うとは、いいだろう貴様の話、乗ってやろうではないか』

 

「交渉成立だな。なら早くやってくれ、時間がないんだ。」

 

『そうか、なら貴様のどちらかの腕を我の幹に触れるがいい。安心しろ、腕を失うかわりに貴様の腕そっくりの義手でも付けてやろう。我を笑わせた報酬だ』

 

 神樹の言葉に少し安心し、左手を幹に触れた。だが、左手は幹に触れず、ずぶずぶと、幹に沈み始めた。

 自分は気にせずそのまま左手を沈む。左腕まで沈むと、そこで沈みが終わる。

 

『では、始めるぞ』

 

 神樹の言葉を聞き、自分は覚悟を決めた。

 

 

 

 門から出ると、外で待っていた千景が近づいてきた。

 

「兄さん。意外と早く終わったようだけど、大丈夫?」

 

「あ、ああ、大丈夫だ千景。それより、俺が門に入ってからどれくらい経ったんだ」

 

「えっと…だいたい五分くらいしか経ってないけど」

 

 まじか、一時間ほどあそこにいたのにこっちではたった五分ぐらいしか経ってないとか、さすが神樹、無茶苦茶すぎる。

 

「そっか、それじゃあ千景今日の夕飯の食材を買って帰るか」

 

「そうね、今日は私が作るから、兄さんは荷物持ちをお願い」

 

「ああ、兄さんに任せとけ」

 

 自分たちは夕飯の食材を買うため商店街の方に歩いた。

 歩いてる最中、千景にバレないように自分の左腕を見る。

 神樹に自分の左腕を捧げ、その代わりに付けられた義手はまるで本物の人間の腕そのものだった。

 

「(これでいいんだ…これで…みんなが救えるのなら…)」

 

 自分はそう思い、視線を前に戻す。

 その時見た夕日は、いつもより輝いて見えた。

 

 




 次回は初戦闘になると思います。

 あのあと、諏訪がどうなったかは現在番外編として書いておりますので、投稿が遅くなると思いますが、次回をおたのしみに、感想をお待ちしております。
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