郡徹は転生者である   作:シンマドー

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 最近、夏の暑さで、色々とやばい自分です。
 今回は二回目の侵攻とその翌日の話です。
 では、本編をどうぞ


第七話   二回目の侵攻と兄妹の買い物(デート)

 初陣が終わってその翌日の朝、自分は自室で記憶の確認をしていた。

 

「(うーむ…どうしたもんか)」

 

 自分は今、あることで悩んでいた。

 それは……

 

「(若葉の件、どうしようかなー)」

 

 記憶では、自分の母親の症状が悪化したと連絡がくるはずだが、今回は来なかったためまだ安心できる。

 でも、問題は若葉だ。若葉は三年前の大災害からバーテックスに強い憎しみを抱いている。そのため、戦う時はいつも最前線にいた。しかし、その憎しみが強いせいか、よく周りを見ずに突っ込んでしまう。そのせいで色々と問題が起こってしまうわけなんだが…

 

「(二回目の侵攻で、俺がどう行動するかで大きく変わるな…)」

 

 三年前に手助けをしたわけだし、少しは言うこと聞いてくれると自分は信じ、そのままいつも通りに日常を送った。

 

 

 

 時は経って、二回目の侵攻。

 

「徹、今回はあなたも戦ってもらいますよ」

 

「無論、そうさせてもらう」

 

 若葉の言葉にすぐに自分は返答した。

 昨日の件もあって今回の戦いは自分も出た。

 

「うんうん!これで全員戦えるね!」

 

「そうだな、まあ徹はタマたちの足を引っ張らないことだな」

 

「ほおー言ってくれるな球子」

 

「まあまあ、落ち着いてください徹さんにタマっち先輩。バーテックスがもうすぐくるんですよ」

 

「そうだよ!二人とも、今は目の前のことに集中!」

 

 友奈と杏の言葉で自分と球子は少し落ち着いた。

 

「すまん、友奈、杏」

 

「こっちもすまん」

 

「さて、話はおしまいだ。そろそろ起動しろ」

 

 若葉の言葉で自分たちは勇者システムを起動し、構える。

 自分は剣を右手に召喚し、若葉の隣に立つ。

 

「徹、私が先に行く。だから徹たちは後ろから――」

 

「若葉、その前に約束事がある」

 

「なんだ、約束事とは?」

 

 自分は若葉の言葉を遮る。遮ったことで若葉は少し不機嫌な顔をしたもののすぐに冷静な顔に戻る。

 

「奴らを率先して倒すことはいいことだが、単独先行はやめろ」

 

「…理由を聞こうか」

 

「俺たちは神樹に向かう奴らをここで食い止めなくちゃいけない。お前がそこから離れれば色々と困難になる」

 

「…極力近くにいることを努力しよう」

 

 若葉は少し考え、そう言った。

 

「そうしてくれ、俺たちが今を生きる人々を守ることを忘れるな」

 

「ああ、わかった」

 

 こうして、二回目の防衛が始まった。

 

 

 それから数分、自分たちは順調に敵の数を減らした。

 最初は若葉が先行で突っ込んだため、また注意しなければと思っていたが、そんなに遠くには行っておらず支援できる範囲で戦っていた。

 そこから自分たちは出来るだけ離れずにそれぞれの敵に突っ込んだ。ちなみに自分は身体強化を使って訓練で学んだ技術をいかし、動きを最小限に、思考を加速させ敵を一体一体確実に一撃で斬った。

 

「進化体がくるぞ!」

 

 そうしている間に若葉の言うとおり、バーテックスの融合が始まり、一体の進化体となった。

 その姿は元の姿の口部分を残したまま巨大化した形だった。

 

「でかくなっただけか……?」

 

「どうなんでしょう……?」

 

 球子と杏は不思議そうに首を傾げる。

 

「とおさん、なんかやばい予感がするんだけど」

 

「兄さん、私も高嶋さんの言うとおり、なにか嫌な予感が――」

 

 千景が言い切る瞬間、進化体の巨大な口が開き、無数の矢が自分たちめがけて射出された。

 

「みんな!各自で防御しろ!」

 

 若葉の言葉で、それぞれ行動した。

 球子と杏は、球子の旋刃盤の楯形状で防御し、若葉は神速の居合で来る矢を斬っていた。

 そして自分と千景と友奈は…

 

「と、とおさんって結構早いんだね」

 

「に、兄さん…急につかまれるとびっくりするからやめて…」

 

「すまん、とっさの行動だったからさ」

 

 進化体が矢を射出する瞬間に自分は千景と友奈を抱えて先に攻撃範囲から出ていた。

 

「それよりどうするの兄さん?あのままだと三人とも危ないわよ」

 

「そうだよとおさん!ぐんちゃんの言うとおり、早くしないと!」

 

「ああ、わかってる」

 

 自分は攻撃範囲内にいる三人を見る。杏を守る球子と矢を斬る若葉もそろそろ限界だと分かる。

 それを見た自分は次の行動に急ぐ。

 

「えーと、とおさん、なにしてるの?」

 

「ん?なにってこっから進化体を倒すんだよ」

 

「まさか兄さん…その剣、投げるつもり?」

 

「そのつもりだが」

 

「ええ……」

 

「……兄さん……」

 

 友奈と千景の視線がなぜか痛く感じた。剣を槍投げの構えで投げるのが、そんなにおかしいのだろうか?

 だが今はそんな考える暇もない、一刻も早く助けなければ。

 

「まあ、見てなって」

 

 自分はそう言い、狙いを定める。

 

「(少し照準を上に上げてっと)行っけええ!!」

 

 自分は進化体の口部分の少し上を狙い、思いっきり投げる。

 進化体も接近してくる剣に気づいたのか、射出する方向を剣の方に変え、矢の波が剣を襲う。

 だが、剣の勢いは止まらず逆に迫り来る矢の波を壊していき、そのまま進化体の狙った部分に当たり大きくのけぞった。

 

「すごい…やったよぐんちゃん!とおさんがやっつけたよ!」

 

「いえ…まだよ高嶋さん…まだ倒しきってない」

 

「ああ、まだだ…当たった部分が浅すぎる」

 

 隣で千景に抱きついて喜ぶ友奈に自分と千景は注意する。

 そうしている間にも進化体が起き上がろうとしている。

 

「だったら早く攻撃しないとまたたくさんの矢が降ってきちゃうよ!」

 

「わかってるわ高嶋さん…でもさっきの兄さんの速さでも間に合わないわ」

 

 後ろで話し合っている友奈と千景は一旦置いて、無数の矢の範囲にいた三人を見る。

 球子も若葉も限界だったのか膝を付き息切れしてることが分かる。杏の方もなんとか攻撃しているが効果が薄いことが分かる。

 

「(このままでは誰かが切り札を可能性が高い…仕方ない、初めてだがあれを使うか)」

 

 自分はそう思い、目を閉じ集中する。

 

「…?兄さん、どうしたの?」

 

「おーい、とおさん、どうしたの?」

 

 自分の行動に気づいたのか、千景と友奈は不思議そうに見る。

 だが今自分は集中しているため声は聞こえない。

 

「(よし!イメージは出来た。後は実行するだけ)んじゃ、行ってくる!」

 

 そう言い自分はイメージしたことを実行した。

 

 その時、自分以外のみんなは唖然としていただろう。特に目の前で見ていた友奈と千景は驚いただろう。

 なぜなら自分は……

 

 友奈と千景の目の前から突然消え、進化体の剣が刺さっている部分に現れたからだ。

 

「(初めての『シフト』は成功っと)残念だったなバーテックス、終わりだ!」

 

 そう言い、自分は剣を取り、進化体を切り刻み、最後は跳躍をして体の遠心力を使って進化体の体を両断した。

 

 

 

 こうして、二回目の侵攻も勇者たちの勝利となった。

 

 

 

 二回目の侵攻が終わった翌日。自分はリビングでくつろいでいた。

 あの後、昨日とまったく同じ状況になりちゃんとみんなに『シフト』の説明をした。説明したことでなんとかみんな納得することができ、最後は友奈の「みんなでご飯食べに行こ!」発言で解決した。

 

「(今日は休日だからなー、しかも侵攻もないっていうしどうしよう…)」

 

 今日は休日で、しかも、ひなたから今日は侵攻はないと神託がきたと聞かされ自分は心の中でまるで久しぶりに休暇がとれた社畜のようなテンションになっていた。でもいざってなると全然やることが思いつかない。

 

「兄さん、ちょっといいかしら」

 

 そうしてると、千景が部屋から出てきた。

 

「どうした千景?」

 

「今日、買い物に付き合って欲しいんだけど、いい?」

 

「ああ、いいよ」

 

 どこかに出かけに行くのは分かったが、今日に限って千景の頬が少し赤くなっているのが気になる、兄妹で買い物に行くのが初めてじゃないし、なぜ恥ずかしがってるのかが謎だ。

 

「それじゃあ兄さん、先にいつもの場所に行ってて」

 

「ん?一緒に行くんじゃないのか?」

 

「いいから……」

 

「あ、ああ、分かった」

 

 一瞬千景の言葉に恐怖を感じすぐに自分は答えた。

 とりあえず、一回自室に戻り、財布とスマホをポケットに入れ、普段着の上に上着を羽織る。

 

「じゃあ、先行ってるからな」

 

 そう言い、自分は先に寮から出た。

 

 

 

 そこから数分後、自分はいつものショッピングモールの入口で待っていた。

 

「おまたせ、兄さん」

 

「ああ、千景。意外とはやかっ…た…」

 

 自分は歩いてくる千景の方を見て、言葉を失った。

 なぜなら千景の服装がいつもと違うからだ。

 胸元に白いリボン、白黒の縦じに、スカートの部分に白いフリルのついたワンピース、そのうえから深紅の上着を羽織っていた。しかも、黒ニーソで絶対領域も見えてしまう。

 

「どう…かな…兄さん…」

 

 千景の頬が赤くなり、恥ずかしそうに聞いてきた。

 この時、自分はこの買い物の本当の目的に気づいてしまった。

 千景が自分を先に行かせたこと、そして千景のいつもと違う服装、これらから分かること、それは……

 

「(まさかの兄妹でのデートだと!?)」

 

 よし、落ち着け自分。ここはまず千景の質問に答えよう。

 

「ああ、その服、すごく似合ってる。可愛いよ、千景」

 

「っ!?……ありがとう…兄さん」

 

 千景があまりの恥ずかしさに、小声になっていた。

 これで分かった。今回のデートで、自分が行うべき行動を……

 

「(自分がやるべきことはただ一つ、千景が望む行動をいち早く察して実行に移すことだ!)」

 

 恋愛ゲームなら暇な時に何回かやったことがある。今それで身についた知識をフル活用する時が来た。

 自分は意を決して、この兄妹でのデートに望むのであった。

 

 

 

 視点は千景に移り――

 

 

 

 あのあと私と兄さんはショッピングモールに入り、のんびりと歩いた。

 

「(落ち着くのよ、私。昨日予習したことをただやればいい、簡単なことよ。でも……)」

 

 私は兄さんの方をちらりと見る。

 兄さんの顔はいつもどおりの優しい顔だった。でも今日はその顔を見るだけで、緊張してしまう。

 私はこれまで、兄さんとデートするために昨日、高嶋さんに協力してもらった。

 高嶋さんから、デートを成功させるまでの過程と、工夫するポイントを教えてもらった。

 最初は大丈夫だろうと思っていたけど、実際にやるとしたら不安でしかなかった。

 

「(でも、私から言わなければ始まらない…よし、いこう)」

 

 私は決意をして口を開く。

 

「兄さん、買い物する前に、ゲームセンターで遊んで行かない?」

 

 まずは楽しく遊べる場所で、互いの仲を深めなくては。

 私の勝手の発言だけど、兄さんはどう返してくるのか…

 

「ああ、いいよ。今日はなにもないんだ。思う存分遊んでいこう」

 

 兄さんは笑顔で答えてくれた。

 

「(よかった…やっぱり兄さんは優しい)」

 

 私は少し安心することができ、兄さんと一緒にゲームセンターの中に入っていった。

 

 

 

 この時、徹と千景は気づいていなかった。

 ゲームセンターに入ったとき、その後ろをこそこそと付いていく五人の姿を…

 そして……

 

「うたのん…昨日退院したばっかりだけど大丈夫?」

 

「ノープログレムよ、みーちゃん。だから今日は、必要な物をたくさん買っちゃいましょう」

 

「そうだね、うたのん」

 

「それじゃ、レッツショッピング!」

 

 ショッピングモールに諏訪の二人が向かっている事に。

 




次回、デートの話がメインです。
このデート、一体どうなってしまうのか?
それは次回のおたのしみってことで。

感想をお待ちしております。

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