神のヒーローアカデミア   作:鮫田鎮元斎

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二人の天才10

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「おらどうしたどうしたァッ!」

 

 グリスの猛攻を受けてヘルブロスは大きく体をのけぞらせる。

 

「バカなっ……! 能力値は我々の方が高いはず!」

「ンだよそれ。オレに聞くんじゃねえよ!」

 

 葛城親子の開発したシステムはハザードレベルと呼ばれる指標で強さが変化していく。

 

 確かに、ヘルブロスの言うようにスペック上は確実にグリスに勝っている。

 

 しかしグリスはハザードレベルを異常上昇させることで限界を超えているのである。

 

「ノースヒーローグリス……あなたは人体実験を受けていないのに何故」

「だから――オレに質問すンじゃねえよっ!」

 

 更に、彼の個性は特異的にシステムとマッチしていた。個性因子がネビュラガスと奇妙なまでに一致しており、本来必要な適合実験を行わずとも様々なバックアップが受けれているのだ。

 

「さっきから聞いてりゃ何だ? シラケることばっかり言いやがってよ――戦い(マツリ)を楽しもうぜェッ!」

 

 黒いゼリーで急加速し、ブロスを蹴り上げる。

 

「最大ッ!」

 

 アッパーの後に回し蹴りを放つ。

 

「無限ッッ!!」

 

 反撃をあえて受け、そこから頭突きを放ち、ふらついた所をさらに右ストレートで追い打ちをかける。

 

「極地ィィッッ!!」

 

 まさに狂戦士(バーサーカー)の名にふさわしい暴れっぷりだった。

 

「もっとオレを満たしてくれよォッッ!!」

 

\スクラップフィニッシュ!!/

 

 一際高く飛び上がり、急激な推進力で懐に入り込み、バタ足のような連続キックを放つ。

 

 初撃と二撃目はガードされるも、その次は崩されて何度も攻撃が命中する。

 

「ぐあぁッ!」

 

 ヘルブロスの変身が解除され、無様に転がされる。

 

「――兄貴ッ!」

「一旦退くぞッ!」

 

 銃から煙を放ってブロスたちは姿をくらませてしまった。

 

 

「……すげぇ」

「これがプロの実力ッ」

 

 自分たちが敵わなかった相手に圧勝して見せたグリスを前に、轟も爆豪も対抗心を募らせる。

 

「――足りねえなぁ……追うぞ、ゴラ」

 

 グリスは気持ちを昂ぶらせ過ぎたのか、次なる相手を求めて上層階を目指していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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『オールマイトォ……そういや手前がいたな』

「拘束されていたヒーローたちもいずれこの場にやってくるだろう。貴様の負けだ! ブラッドスタークッ!!」

 

 その構図は10年前の再現だった。

 

 違う点は二つ。

 

 オールマイトが力を失いつつあること。スタークは力を取り戻し、エボルトとして活動していること。

 

『負け……? 俺が? 調子に乗るのも大概にしやがれ!』

 

 先程までとは打って変わり、超高速の動きでオールマイトに迫る。

 

 だがオールマイトも動きの速さなら負けては無い。その速度に対応し見事に反撃を加えている。

 

(!? 十年前よりも強くなっている)

 

 彼の驚きと共に口から血反吐があふれる。

 

「ゴフッ……!」

『隙あり、だ』

 

 強烈なキックを喰らい、壁を貫通して外へと放り出される。

 

『さぞ戦いにくいだろう? その腹に風穴があいた後じゃァな』

「――ぐっなぜ、それを」

 

 勝利のピースサインを示す彼の髪は、情けなくしおれる寸前だった。

 

『生意気にも、この俺を配下にしようとした不届き物が居てね。少し灸をすえてやった――ちょうど5年前の話さ』

「!? まさか」

「随分戦いやすかったろ、トシ?」

 

 親友だった男の声で言われ、愕然とする。

 

 宿敵オール・フォー・ワンがこの男の手で弱体化されていた事実、それでもなお自分の体を再起不能まで追い込んだ実力。

 

 不意に、昼間セントから指摘されていたことに思い当り、寒気がした。

 

 もしこの偶然が起きなければ――自分は負け、ワン・フォー・オールは永遠に失われていたかもしれない。

 

『俺への感謝の気持ちを胸に――消えろ』

 

\レディー・ゴー!!/

 

 エボルトが再びベルトのレバーを回転させると、彼の右足を中心に星座図が現れ力が充填される。

 

\エボルテック・フィニッシュ!! ――チャオ!!/

 

 エネルギーは右脚に集中し、緩やかな弧を描いてオールマイトに命中した。

 

 200kgはあるその巨体はいとも簡単に吹きとばされ、屋上から落ちる寸前となるも、指をめり込ませて踏ん張った。

 

「……平和は継承できなければ意味がない、か。言ってくれるじゃないか葛城少年……!」

 

 オールマイトの体から煙が上がっている。

 

 活動限界が訪れ、個性が解除されつつあるのだ。

 

「ブラッドスターク! 私は貴様を斃し、次へと平和を継承するッ!」

 

 拳の風圧で急加速する。彼は相性不利さえも筋肉で解決できる究極のパワータイプ。

 

 故に、どのような強い装甲も拳で粉砕するのみだった。

 

「TEXAS――」

 

 それにエボルトは手の平ほどの大きさの装置を掲げることで対応する。

 

 

「――SMAAAAAAASH!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――

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「メリッサさん!」

 

 緑谷は毒を受けたメリッサへと駆け寄り、その体を抱き起す。

 

「へいきよ……おおげさ、ね……っ!」

 

 彼女の顔は驚くほど青ざめていて、呼吸も普段より荒い物だった。

 

「え、ええと毒物を摂取してしまった時はまず――いや待て僕が習ったのはあくまで普通の毒物を摂取してしまった時の場合でこういった特殊なケースの時は何を」ブツブツブツブツブツ

「――気道確保だ」

 

 追いついてきたクロトが彼女の顎を押し上げる。

 

「そして吐瀉物による窒息を防ぐ」

「え、でも」

「対処法が分からない以上こうするしかあるまい」

 

 慣れた手つきで介抱しようとするも、メリッサはそれを拒む。

 

「いらないわ……それよりも、やることが」

 

 立ち上がろうとしてふらつく。だがそれを麗日が脇で支える。

 

「お茶子、さん」

「私じゃあんま役に立たんけど、せめて支えにはなるよ」

「……あり、がとう」

 

 何とか操作盤の前までたどり着き、セントを押しのけてロックの解除作業に入る。

 

…………何やってるんだ、メリッサ

 

 声に覇気が籠っておらず、呼吸と共に吐き出されたかのようだった。

 

「前に、言ってたでしょ――対スタークの、とっておきがあるって」

 

…………無駄だよ

 

 

 指が止まる。それは決して毒の影響によるものではなかった。

 

「……ビルドシステムは平和のために作ったつもりだった……でも、本質は奴の言う通り兵器だ…………」

「だったら、なによ?」

「ここに保管されているアイテムは全部世に出回ってはいけないと判断された物――俺はスタークを口実に自分の為の兵器を作っていたッ! 力が欲しくて暴れまわる――ヴィランと同じだったんだよッ!」

 

 セントの頬が叩かれた。

 

 毒のせいか殆ど力は籠っていなかったが。

 

「……自分で作った? 己惚れんじゃ、ないわよ」

 

 彼女の頬を涙が伝う。

 

「あなたのパパが計画して、私たちが作ったんでしょ? この力は、セントの為の、ものかもしれないけど――私たちが作った物を、勝手に兵器にしないでよ……ッ!」

 

 システムが解除パスワードを要求してくる。

 

 それはセントが自ら設定したものであり、メリッサには教えていなかった。

 

 それでも迷うことなく、彼女はキーボードをたたく。

 

愛と平和のために(ラブ・アンド・ピース)……」

 

“LOVE AND PEACE”

 

 ロック解除の状態に入ったことがモニターに表示される。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ラブ&ピースだ、セント』

 

 

 

 

 

 

 

 

 彼の脳裏に、亡き父の言葉が響く。

 

 

 

 

 

『昔、科学は戦争の道具だった。その事実は変えることはできないさ。でもラブ&ピースの心を胸に抱いていれば、きっと科学は明るい未来をもたらしてくれる』

 

 

 

 

 

 その言葉は、今でも心に残り続けている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「パパたちの研究を、悪用する人はいっぱいいる……っでもそれだけじゃないでしょ? 私たちが目指したビルドは、きっと兵器なんかじゃないよ」

 

 限界を迎えたのか、メリッサはその場で崩れ落ちる。

 

「セントのヒーローネーム、ビルドは――“平和を作る”“愛で溢れる世界を形成する”……って意味のビルド」

 

 保管庫のロックが解除され、扉が開く。

 

「そのための力は、ヴィランなんかと一緒じゃないわ……」

 

 身動きの取れない彼女の代わりに、クロトが中身を取りに行く(流石に空気を読んだ)

 

「……最悪だ」

 

 セントは僅かに生気の戻った声でつぶやいた。

 

「メリッサに慰められる日が来るなんてな……!」

「これが、君の作った品だろう?」

 

 クロトからケースを受け取る。

 

 中には巨大なフルボトルが収められていた。

 

「ああ、間違いない――が、これだけじゃ足りない。少し足止めしてきてもらえるかな? 壇 クロト君?」

「ふん私の才能に不可能などない」

 

 頼られるのが大好きなクロトは満面の笑みを浮かべていた。

 

「足止めとはいっても――別に斃してしまっても構わないのだろう?」

「それ、死亡フラグだけど、任せたぞ!」

 

 セントは三度のロック解除を行う。

 

 対エボルト用の秘密兵器を取り出すために。

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